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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >伊藤 恵理子氏 Vol.2

営業職からブランド・マネージャーへ – 後編

伊藤 恵理子氏 Vol.2 フロンディア株式会社 代表

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【伊藤 恵理子氏のプロフィール】

大学卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)で営業職を経験したのち、個人向け金融商品のマーケティングを担当。

当時、花王(株)より転職してきて偶然自分の上司となったマーケティング・マネージャーの下でマーケティングの基本を学び、マーケティングに目覚める。

2年間の米国留学後、消費財メーカーのサンスター(株)でOra2(オーラツー)等、複数の製品のブランド・マネージャーを担当し、中長期ブランド戦略立案、ブランドのリニューアル、新製品・改良品の導入等を牽引し、同社の売上アップに貢献する。

その後、格安航空会社(LCC)エアアジア・ジャパン(現バニラ・エア)に移り、営業/マーケティング部長として日本のLCC事業立ち上げに携わる。

2014年5月にかねてより切望していた、既存のやり方にとらわれない新しいサービスの立ち上げとマーケティングを行うことを目指し、フロンディア(株)を設立して独立(http://www.frondia.co.jp)。



ブランド拡張の成功。しかし、そこにも苦労が

聞き手

『Ora2(オーラツー)』のブランド戦略は、どのようにされましたか?


伊藤

『Ora2(オーラツー)』で行ったのはブランドの拡張です。『Ora2(オーラツー)』も昔のように売上が大きく伸びることが無くなっていて、売上を伸ばすために新たな施策が必要でした。私が行ったのは『Ora2(オーラツー)』の強みを使って更に強める施策でした。強みを使ってワンランク上の新商品と、それに合わせた歯ブラシを出しました。アッパー路線の2商品を付け足して、全体をリニューアルしたのです。
しかし、大変な思いもしました。アッパーのラインを設けると、通常のラインとの間で自社製品間で市場の食い合いをすることが起こります。そのため、住み分けをどうするのか、消費者が2商品の違いを認識できるかを、開発会議で盛んに議論しました。製品的には違いがありますが、歯磨き粉は買うかどうかを3秒で決められてしまうので、既存の製品との違いが即座に消費者にわからなければ売れないのです。逆に既存のラインと違いすぎると、今度は全く違うブランドだと思われてしまう点にも気を配りました。ネーミングをどうするのか、アッパーゆえの成分説明をどうするのか、パッケージをどうするのか、価格をどうするのか、それでいてどのようにブランドとしての統一性をどこまで持たせるのか、あらゆる側面から考えました。夜22時に大阪にいる開発メンバーとテレビ会議をしてあーでもないこーでもないと眠い目をこすりながら悶々と議論していたのが、今となっては良い思い出です。最後まで課題に残っていた広告コピーの開発も大変でした。なかなか良いものが決まらず、スケジュールがギリギリになってしまい、会議の席で社長にどなられました(笑)。そして、広告代理店さんともさんざんやりあった末、これが最後、という会議の前夜に、ようやく広告コピーとコミュニケーションのモチーフが決まりました。もうダメだ!時間切れだ!と追い詰められたところでの奇跡的快挙!と思いました。コピーは「輝き力」というキーワードを使ったもの。コミュニケーションのモチーフも高級感のあるイメージを連想させるパールを使うことになりました。



聞き手

とても壮絶な感じがしますね。3つ目に関わっていた、新しいブランドはどうでしたか?


伊藤

残念ながら、それは生まれませんでした。


聞き手

初めて協会にいらした時は、この時期でしたよね。


伊藤

そうです。そのブランドのことで悩んで、講座を受講しようと決意しました。


聞き手

当時は受講されて、いかがでしたか?


伊藤

花王から来た元上司と同じくらい、私にインパクトを与えてくれました。いま進めている『和izm』という新しいプロジェクトを作る時に、ブランド・アイデンティティと、ブランド要素を設計するところで、協会で教えていただいたことを利用しています。今でも、協会の教科書は持っていますよ。


新しいブランドを立ち上げることは新しい文化を作ること

聞き手

サンスターから転職をされる、きっかけは?


伊藤

サンスターに在籍していたころから、新しい価値や新しいマーケットを創り出す事業に興味を持っていました。そこへある医療機器の会社から、とある製品をネットで売るプロジェクトの話がきたんです。以前からのB-Bの世界にB-Cを持ち込んで新しい市場を創り出そうというものです。しかし、結局は業界の慣習に従ってB-Bで売ることになってしまいました。本来やろうとしたことができなくなったところに、日本版LCC(格安航空会社)立ち上げの話がきました。日本にLCCという新しいカテゴリーを作って、航空業界の市場自体を大きくするんだと、とてもわくわくしました。会社も設立してからまだ数か月しかたってなくて、私が営業/マーケティング部門の初めての人間だったんです。だから、最初にやったことは採用です。とにかく一緒に進めていく仲間を作らなくちゃ、と(笑)。



聞き手

これまでになかったものを、一から立ち上げるわくわく感が得られた。実際に携われて、どうでしたか?


伊藤

新しいブランドを立ち上げることは、新しい文化を作ることだと思います。今まで5万円出して乗っていた飛行機が、5千円くらいで乗れるようになる。そうすると飛行機の乗り方が全く変わります。今まで特別な乗り物だったのが日常的になります。実際にいらしたんですが、お孫さんの運動会を見に札幌からちょっと飛行機に乗って東京に来たって。人々の生活が変わりますよね。だから、文化が変わるんだと思いました。でも、LCCでは、飛行機の予約変更ができない、機内食も有料、荷物を預けるにもお金を取られます。だからクレームもたくさんきました。文化が変わるには、たくさんの障害や不安があるんです。更に日本の場合は、わずか数か月の差でしたがすでに競合がいたので競合との競争も激しくなっていました。そしてサービスそのものについても前例がなくて手探りで進めていく部分が少なからずあって、予測通りに行かないことがたくさん出てきます。そうしたありとあらゆる障壁を払拭し、誰に何を言われようとも、何が起ころうとも這いつくばってでも前に進んでいかなければいけません。強い心が必要だと思いました。


聞き手

ブランドを作るということは、文化を作ることなんですね。新しい文化を作るためには、強い心が一番大事。それ以外にも、障壁を乗り越えるためのポイントはありますか?


伊藤

中途半端なことをしても、効果がないということです。すでに他社が先行者メリットをさらっていたので、そこをうち崩すにはどうするかを悩みました。短期で立ち上げるのであれば、結局は予算をかけて投資をしなければいけなかったのかもしれません。しかし、何が成功するかどうかわからないという不確実性に取り囲まれていた中、もっと予算をかけましょうと言えないジレンマがありました。カリスマ的なリーダーシップが必要だ、と痛感しました。


ブランド・マネージャーは、わくわくする職業

聞き手

これからブランド・マネージャーになる方が、身に着けるべきスキルや素質・資質など、必要ことは何でしょうか?


伊藤

ブランド・マネージャーは、とてもわくわくする職業です。生活文化を創り出す先導者です。だから、”リーダーシップ”を持ってほしいと思います。自分が変えると言い出さない限り、絶対変わらないのです。もう一つは、ビジネススクールで学んできたので、あえて言えば、マーケティングは”経営戦略”です。これは協会の理事でもある水野与志朗さんも言っていることですが、ブランド・マネージャーには、経営者として振舞ってほしい。ブランド・マネージャーには、事業の責任を持ってすべてを見届ける信念、気概、理念、責任感を持って臨むことが必要なマインドです。


聞き手

ブランド・マネージャーは、スキルよりもマインドが重要ということでしょうか?


伊藤

そうですね、マインドも大切です。スキルは最先端の知識は必要ありませんが、基本理論は最低限必要です。それに、個人的にはデータの収集方法と読み方は知っておいてほしいと思います。また、企画書を創れることと、コミュニケーションスキル。企画書をプレゼンして、プロジェクトを推し進めなければなりませんし、みんなに納得してもらって巻き込まなければなりません。あとは財務データが読めることです。売上、コスト、利益はどうかを見なければいけません。経営者であると言ったのは、ここの部分のことです。財務計算までできる必要はありませんが、P/Lを自分で組み立てられる必要があります。まとめると、重要なことは次の五つです。
・マーケティングの基本理論
・データの収集方法と読み方
・企画を創れること、プランニング力
・コミュニケーション/プレゼンと言ってもいい
・財務知識
小さな会社では、社長=ブランド・マネージャーになってしまう理由は、このようなところにあります。企業理念は、まさにブランド・アイデンティティ、そのものです。


日本の生活文化を豊かにすることを目指して

聞き手

『和izm』を立ち上げ、セミナー講師もされていますが、今後、伊藤さんの目指しているところを聞かせてください。



伊藤

「フロンディア株式会社」という、マーケティング会社を創りました。理念として挙げたのが「日本の生活文化を豊かにするマーケティング会社」で、今までの思いをぶつけていきたいと思っています。その一つが、『和izm』です。(http://www.wa-izm.com/)『和izm』では、日本の良いところを、子供たちと世界に正しく広めていきたい。日本のアイデンティティを広めていくところに、私のマーケティングの能力が使えないだろうかと考えています。もう一つは、ずっとやりたかった新しいブランドの立ち上げです。ユニクロやMUJIのように、日本発の世界ブランドに育て上げたい、という野心を持っています。そのためには、コツコツと努力するのみです。経験を積んで、自分の大きな夢に向かっていきたい。それと、セミナーを開催しているのは、現場では難題が降ってきて、私もそうでしたが、みんな悩んでいます。ですので、私が知ったことを包み隠さずに教えることで、現場の方が時間をかけずに成長していってほしいと考えたのです。日本のマーケティング力の底上げに、少しでも貢献したいと思っています。


聞き手

本日はどうもありがとうございました。


※掲載の記事は2017年7月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。