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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 坪田 有希子氏

廃棄食材の“麦芽かす”を使ってスイーツを開発
おいしさ&環境への配慮を意識したブランディングとは?

有限会社TTDESIGN坪田 有希子

Profileプロフィール

有限会社TTDESIGN 取締役副社長
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー

嵯峨美術短期大学卒業。
グラフィックデザイナー・イラストレーターを経て、クリエイティブ・ディレクター・ブランド・マネージャーとして活動。
2002年創業の有限会社TTDESIGN立ち上げメンバー。
創業時2名だった会社の規模拡大、東京進出や関連会社の立ち上げにも携わる。
人材雇用、マネジメント、チームビルディング、財務管理など、経営も学ぶ中でクリエイティブと経営、2つのマインドを身に付ける。
中小企業経営者、デザイナーとしての視点を活かし、企業価値向上のためのブランディングサポートを行う。
2022年度ブランディング事例コンテストでは「株式会社九重雜賀のブランディング」で農商工連携審査員特別賞を受賞。
2023年度ブランディング事例コンテストでは「サステナブルなスイーツづくりのブランディング」で優秀賞を受賞。

廃棄食材を使うなど、サステナブルなスイーツづくりに挑戦している大阪の洋菓子店「パティスリー ラヴィルリエ」。
おいしいだけではなく、環境にも人にもやさしいスイーツとして、“麦芽かす”を有効活用したモルトサブレを開発。
参加した百貨店のイベントでは既存商品より高価格であるにもかかわらず即完売になるなど、すぐれた実績をあげています。
モルトサブレなどのブランド「ラヴィ・ヌーヴォー」のブランディングとは?
ブランディングを担当した有限会社TTDESIGNの坪田有希子氏にお話を伺いました。

“麦芽かす”から新商品を開発

Q. 本日は、2023年度のブランディング事例コンテストで優秀賞を獲得した「サステナブルなスイーツづくりのブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず今回のブランディングの背景について教えてください。

今回のブランディング対象は、大阪市北区で洋菓子の製造販売をしている企業です。
その実店舗「パティスリー ラヴィルリエ」では、「幸せと喜びをつなぐおもてなしのパティスリー」をコンセプトに、こだわりのケーキや焼き菓子で多くのリピーターを獲得しています。
固定ファンが多く、口コミサイトでも高評価を獲得している人気店ですが、課題もありました。
それは、庶民的なイメージが根強いこと、目新しさに欠けること、原材料の質の高さや製造工数を価格転嫁できていないこと、社会貢献の意欲を自社製品で表したいと思いつつも形にできていないこと、などです。
そこで、そうした課題を解決するため、廃棄食材を使ったスイーツ商品の開発を提案したのです。
SDGsの浸透や健康志向の高まりなどの社会的背景を踏まえ、おいしいだけではなく環境への配慮や資源の有効活用が当たり前に考えられる企業への成長を目指しつつ、「おいしさ+α」の価値を顧客に届けることをゴールに設定し、ブランディングに取り組みました。

廃棄食材を使ったスイーツ開発

Q. まず、どのようなことからブランディングに取り組んでいったのでしょうか。

廃棄食材は、初めは規格外野菜の使用を検討していました。
味には問題がないけれど形の悪さや傷があるため一般の流通ルートで販売できず、廃棄される商品です。
ただ、農家の方や市の担当者の方と意見交換をしたところ、様々な理由から、安全な規格外野菜を安定的に入荷することは難しいとわかったんです。
そのため、今回は提供いただく側に負担がなく、かつ安定して入手できる“麦芽かす”を採用しました。

麦芽かすとは、大麦麦芽からクラフトビールを作る際に出る余りかすのことです。
麦芽かすには美容や健康に役立つ成分が多く含まれている一方、水分が多く独特の匂いや食感があるという理由で、ほとんど廃棄されていたんです。
そこで今回のブランディングでは、食品廃棄物に新たな価値を与え、廃棄時に排出される脱炭素量を減らす一助になればと考え、麦芽かすを原料にした新商品づくりに取り組んでみたのです。

その結果完成したのが、麦芽かすを乾燥させて小麦粉と混ぜて焼きあげたモルトサブレです。
また、これのみに留まらず今後も商品展開することを考え、ブランディングではファミリーブランドづくりにも取り組みました。

モルトサブレ

“環境配慮商品”を前面に出さない

Q. ブランド構築について教えてください。

経営者2名と広報担当者のチームで、丁寧に戦略構築ステップを積み上げていきました。
まず3C分析を行い、「おいしいお店」としてすでに認知が確立されていること、リピーターが多くいることなどの強みや、材料・工数にコストがかかること、コストを価格に反映するのが難しいことなどの弱みを抽出しました。
また、体に悪いものは口にしたくない、SDGsという言葉をよく聞くが何をすればいいかわからないなど、顧客のニーズや不安要素も抽出しました。
市場機会は、消費者のサステナブルな取り組みへの期待、環境問題への興味関心の高まりから、おいしいだけではなく環境に配慮された企業姿勢を表す商品にニーズがあると捉え、「おいしさ、温かいおもてなしにプラス、環境にも人にもやさしいスイーツで意識と行動をシフトする」としました。
限られた資源が有効活用できれば、材料高騰で利益を圧迫されている企業側のプラスになりますし、廃棄物の削減にもつながります。
同時に、このスイーツで顧客や業界の環境への意識が変わるきっかけづくりにもしたいと考えたわけです。

3C分析

次に、ペルソナづくりに取り組みました。
最も悩んだのは「環境配慮商品は購買につながるのか?」ということです。
そこで、様々な企業が公表されている意識調査のデータ収集を行い、さらに独自のインタビュー調査も実施しました。
そうした調査の結果、環境意識が高い方たちでも、環境配慮商品であることが最重要項目ではない、という結果が得られたので、ペルソナはSDGsなど社会課題について関心はあるけれど我慢をしてまでおいしいものを諦めたくない、スイーツで感じる幸せな気持ちを大切にしたい……そんなマインドを持った女性に設定しました。

こうした取り組みを経て、ブランド・アイデンティティは「おいしさにプラス。未来へつながる環境にも人にもやさしいスイーツ」と決め、このブランド・アイデンティティを軸にブランド要素を作成していきました。

ブランド・アイデンティティ

まずファミリーブランドのネーミングは「ravi:nouveau(ラヴィ・ヌーヴォー)」としました。
ここには「ラヴィルリエ」の新しい境地であると同時に、「捨てられるはずの食材に新たな命を吹き込む」という意味を込めています。
ブランドコピーは「ラヴィ・ヌーヴォーは廃棄される食材に新たな価値を生み出し、『おいしいだけじゃない、環境にも人にもやさしいスイーツ』を提供するアップサイクルブランドです。」とし、さらにヨーロッパで「賢者の象徴」とされるカメレオンをモチーフにしたシンボルキャラクターも作成しました。
このキャラクターには、環境の変化に賢く柔軟に寄り添って未来へ希望をつなげる、という意味も込められているんです。
また、缶のパッケージの色味やデザインはメリハリのあるポップな色使いを採用し、「未来へつながる」というブランド・アイデンティティを表現しています。

パッケージデザイン

缶の中にはコンセプトカードも同梱しますが、調査結果でわかったように環境配慮商品かどうかは環境への意識が高い方にとっても最重要項目ではないので、環境配慮商品であることを前面には出さないようにしています。
それよりもむしろ、スイーツとしての価値を十分に提供した上で、企業の環境へのスタンスを知ってもらうことにつなげていきたい、と考えたのです。

また、ブランド体験の1つとして、サブレ缶を再利用するサービスを始めました。
サブレ缶をお店に持参するか送っていただいたお客様には、リーズナブルな価格で新たに中身を詰めてお返しするわけです。
サービスを通して、お客様に環境配慮の意識を高めてもらうことを狙った施策で、幅広い層の環境に対する意識を刺激できればと考えました。
このほか、社内向けの取り組みとして、ブランドについての基礎セミナーも実施しました。
ここではブランド・アイデンティティの成り立ちを冊子にしてレクチャーし、社内の意思統一をはかりました。

高価格でも即完売に

Q. ブランディングの成果を教えてください。

百貨店のクッキー缶イベントに出店しました。
百貨店から「いつもと違う新しい商品を出してほしい」と依頼があったので今回の商品を提案したところ、通常の2倍の発注依頼を受けることができ、さらに既存の商品より高価格だったにもかかわらず店頭、オンラインとも即完売となりました。

成果

Q. 最後に今後の展望を教えてください。

今後は、体験して楽しむラボ型カフェ「Ravi,e relier RABO 26+(ラヴィルリエ ラボ ヴァンシス プリュス)」のオープンを計画しています。
このカフェは、自然と人の循環をスイーツとともに体験して楽しむというもので、「体験」「環境」「素材」へのこだわりを差別化ポイントとして考えています。

まず「体験」については、店内でハーブを栽培して食べる直前に摘み取る体験や、養蜂でハチ蜜を採取する体験など、自然の恵みに直接触れることができる体験を提供したいと考えています。
そして「環境」については、サブレ缶の再利用をはじめ資材のリサイクルを行い、さらに廃棄食材を利用したアップサイクルスイーツのラインアップを増やして社会貢献がかなう商品を提供します。
最後の「素材」については、オーガニック食材の利用、グルテンフリー対応商品など、体をねぎらい、心も体も満足する素材を選ぶ予定です。
現在は来年の春頃のオープンを目指し、ブランド要素の制作や店舗の設計を進めているところです。

Ravi,e relier RABO 26+のこだわり

※掲載の記事は2024年3月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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