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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >江上 隆夫氏 Vol.2

ブランド構築とは、<アイデンティティ>を見出すこと – 後編

江上 隆夫氏 Vol.2 有限会社ココカラ 代表取締役

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【江上 隆夫氏のプロフィール】

鹿児島県生まれ。長崎と愛知で育つ。

大学卒業後、広告制作会社を皮切りに大手広告代理店に18年近く勤務。

コピーライターおよびクリエイティブディレクターとして商品から企業まで、

広告を通じた数々のブランディングを手がける。

2005年末に、有限会社ココカラを設立。

以後、クリエイティブディレクターとして広告制作および

多くのブランドづくりのコンサルティングをスタートする。

最近はコピー、ブランディングなどのセミナー、講演も行っている。

東京コピーライターズクラブ新人賞、朝日広告賞、日経広告賞グランプリ、

日経金融広告賞最高賞、日本雑誌広告賞、IBAファイナリスト

ほか広告関係の受賞多数。

東京コピーライターズクラブ(TCC)会員


江上 隆夫氏の主な著書

  • 無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?



ブランド構築で最も大切なのは「コンセプト」

聞き手

江上さんはブランド協会のマスタートレーナーをされていますが、 協会で開催している講座参加者へのアドバイスが非常に好評です。
どういう視点から、アドバイスをされているのですか?


江上

ブランド構築においては、社内の人を巻き込んでいく インナーブランディングなどの仕組みも大切です。
しかし、ブランド構築の過程で一番重要なのは「ブランドコンセプト」、 すなわち「ブランド・アイデンティティ」です。
さきほどの「壊れないプレステージ・スポーツカー」のような言葉を作れるかどうかが重要です。
そこで多くの皆さんはつまずくな……というのを感じて、 今回の本を書きました。どうにかして普通の人でも、 この「ブランド・アイデンティティ」を作れるようにできないだろうか、 というのが今回の本を書いたきっかけです。


聞き手

『無印良品の「あれ」は決して安くないのに、なぜ飛ぶように売れるのか?』ですね。
この本で読者に一番伝えたいメッセージは、どんなことでしょうか?


江上

ブランドにおいては、「コンセプト」が最も重要だということです。
日本人はコンセプトを作るのも、使うのも下手です。
しかし「無印良品」は、コンセプトがあまりにも素晴らしい。
そして業績も非常に良い。
同社の松井会長が『無印良品は仕組みが9割』という本を出されて、 無印良品は仕組みが素晴らしいということを話されていますが、 コンセプトはもっとすごいと思います。


聞き手

無印良品のコンセプトとは?


江上

「無印良品」という4文字のブランド名が、全てを表しています。
「ノーブランドだけど、良いものを作る」という宣言です。
そして、「良いもの」とはどういうことかと言うと、 無印良品は「これでいい」と言えるものを作ろうと決めたのです。
「これがいい」ではなく。
私はそこに、非常に感銘を受けました。
「これでいい」には、諦めとか小さな不満足が含まれるように聞こえますが、 無印良品は、この「これでいい」のレベルを どれだけ高みに上げられるかという部分で勝負しているのです。
ノーブランドで良いものを作り、「これでいい」と言われるものを、 より高いレベルで製品として出していく。
このコンセプトは非常に深いものですし、 常にそのレベルは上がっていくでしょう。


「コンセプト」と「型」

聞き手

「無印良品」の例も出てきましたが、 日本の企業は「永続経営」とか「老舗企業」がとても多いですね。
これとコンセプトの関連性は何かありますか?


江上

日本の企業にあるのは、コンセプトというよりは「型」ですね。
「型」で動いていると思います。
さきほどの本の中でも、「型」に行き過ぎると良くない……と言っています。
誰でも「型」を覚えると使えるようになりますが、 「型」の良さもあるのですが、限界もあります。
コンセプトは目標というか仮説を置いて、チャレンジするものです。
「型」というのは経験値を蓄積・抽出して見出していくものですね。
前提や一般法則を考えず、とにかく経験から見出して、 洗練させていく日本のやり方です。
コンセプトと「型」どちらも使って行くのが良いと私は思います。


聞き手

「型」を重視して老舗になった企業が多いけれども、 コンセプトという考え方も取り入れるべきだったということですか?



江上

そうです。日本では、「型」の中からコンセプトを見出す例が多いですね。
たとえば老舗のお醤油屋さんが醤油づくりを繰り返して、 経験から最高の方法論を見出している場合です。
そこから「醤油づくりは、○○だ」という一種のコンセプトを見出してきました。
しかし、これは時間の流れがゆっくりとした時代だからやれたと思いますし、 当時の時代背景なども理由だったのだと思います。
今のようなスピーディーな時代は、 経験からコンセプトを見出しているとスピードが追い付きません。
コンセプトは現状を見ながら、こういう仮説を置いてみよう、 やってみよう、ダメだったら……という、いわゆるPDCAです。
アメリカは80年代あれほど経営的にも金融的にも駄目だったのに、 金融立国とコンテンツで生きていく方向に舵をとりました。
国として、新たなコンセプトを打ち出したわけです。
結果、「Google」「Apple」といった企業が生まれました。
日本はスピードが合っていないのです。


聞き手

今までの老舗や企業も、一回仮説を立てて、 ブラッシュアップするという考え方が必要だということですね。


江上

老舗も振り返りや、見直しはやっているでしょう。
そうでなければ何百年も保ちません。
しかし、これからの日本の企業は、「型」を意識しつつも、 コンセプト作りを軸においてやらないとまずいと思いますね。
とにかく日本のエスタブリッシュされた企業は動きが遅いと思います。


聞き手

コンセプトができないままに進んでいって、 ブランドができていないから 消費者から受け入れられない状態になっているわけですね。
それこそ「とらや」さんも、美味しい羊羹を高めてやってきて、 気付いたら今のコンセプトになっている、と。


江上

そうですね。理念はブレていなくて、その展開の仕方として、 「とらやカフェ」といったチャレンジを積極的にしていると思います。


聞き手

最後に、江上さんにとってコンセプトの定義は?


江上

簡単に言えば、「原理原則」です。
様々な辞書で、「創造された作品や商品に貫かれた骨格となる発想や感銘」 「概念。企画、広告などで全体を貫く視点や考え方」 「抽象的な何かにつながった、原理原則」などと表現されています。
「プリンシパル」という言葉をご存知だと思いますが、 「原理原則、功利、行動指針、主義、特技、決定的特質、本質、原動力」 といった意味があります。
私はこれがコンセプトに近いと考えていまして、 「目的を達成するための原理原則を短く明確に表現した言葉」としています。


聞き手

なるほど……「ブランドコンセプト」とは、 企業としてのアイデンティティ、原理原則、規範であり、 端的な言葉で表現される。
そして、それは新たな挑戦に結びつき、PDCAを回していくものである、 ということですね。
本日は、ありがとうございました。


江上

お招きいただき、ありがとうございました!


※掲載の記事は2016年7月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。