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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 平野 朋子氏/三浦 路夫氏

一貫した価値提供で売り上げ24%増を実現!
真のエシカルを実践した小さな肉屋の
ブランディングとは?

合同会社Brand. Communication. Design./三浦事ム所平野 朋子 三浦 路夫

Profileプロフィール

平野 朋子
合同会社Brand. Communication. Design. 代表
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 エキスパートトレーナー・シニアコンサルタント

サンタモニカ大芸術学部グラフィックデザイン学科卒業後、ロサンゼルスでスケートボードメーカーのグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタート。
帰国後、広告代理店や通販会社で経験を積み、ブランド戦略における企画やプロモーションに携わる。
独立後は、新規事業立ち上げや既存事業のブランディング、社内向けのブランド浸透のブランディング支援を行う。
年間50回以上のセミナーやワークショップに登壇し、1000名以上のビジネスパーソンにブランド戦略の重要性を伝えている。
ブランディング事例コンテストで、2023年度「持続可能な地域ブランディング」で地方創生審査員特別賞を受賞。
2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」では「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」で準大賞・最優秀賞を受賞。

三浦 路夫
三浦事ム所代表代表
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ミドルトレーナー

2003年三浦事ム所設立。
朝日新聞社様のイベントポスター、Billboard Classics様のイベントポスター、万作の会様のイベントポスターなど、一流アーティストや伝統芸術のイベント広告を中心にアートディレクション業務に従事。
2015年より経営戦略の風上からクリエイティブに関わる必要性を感じ、ブランディング専門のデザイン会社へ事業転換。
最近の主な仕事には、隈研吾氏が代表理事として代々木競技場の世界遺産登録を推進する、一般社団法人G.Y.S.C.のロゴ、およびブランドデザイン全般を制作。
2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」では「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」で準大賞・最優秀賞を受賞。
また「国産うずら卵のブランディング」で中小企業庁長官賞 受賞。

「本物の一流肉を、汚すことなく届ける。」をブランド・アイデンティティに、無添加のハム・ソーセージを販売するサイトウハム。
一時は売り上げが右肩下がりになるも、販売手法やターゲット層を見直し、一貫した価値提供を行うなどのブランディングによって、売り上げ24%増を実現しています。
はたして「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」とはどのようなものなのか。
ブランディングを担当した合同会社Brand.Communication.Design. 代表の平野朋子氏とブランドデザインを担当した三浦事ム所代表の三浦路夫氏にお話を伺いました。

プレゼン資料表紙

販売手法やターゲット層を見直し

Q.

本日は、2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」で準大賞と最優秀賞を受賞した「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず、今回のブランディングの経緯について教えてください。

平野「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」は、持続可能な未来を作るため、非常に手間の掛かる少量多品種のものづくりに徹している小さなお肉屋さんのブランディング事例になります。

まず今回のクライアントについて説明すると、株式会社サイトウは1976年に創業した加工肉の製造販売業を営む小さなお肉屋さんです。
肉屋をスタートしたころ、牛の内臓疾患があまりにも多いことに気づいた創業者は、畜産物にストレスを与えるような飼育方法が広く行われていることを知り、「霜降りがある」ということだけが牛の等級を決める評価ではなく、良い飼育方法で育てられた健康な牛こそが本物の一流肉なのではないか、と考えたそうです。
そして、一流肉を育てられる生産者が持続可能に畜産業を続けていくためには、効率が良い部分買いではなく一頭買いを決断したのですが、一頭買いは使い切れない部位が出てしまいます。

そんなとき、ちょうどお客様からも「無添加のハムやソーセージが欲しい」という声が上がり、創業者は一頭丸ごと使い切ることができるハムづくりのためにドイツの設備を本格導入。
その後世界の数々のコンクールで受賞し、売り上げや社員も増え、株式に組織変更するまでに成長したのですが、2014年頃から売り上げが右肩下がりになってしまったのです。
そこで我々が携わり、再生を図ったというのが今回のブランディングの背景です。

お客様の声

Q. どのようにブランディングに取り組んでいったのか、教えてください。

平野はじめに問題点の発見に取り組みました。
まず販売手法では、時代に合わなくなったテレマーケティングを行っているという問題がありました。
また、固定客の高齢化という問題があることもわかりました。
お客様が高齢化していることによって消費の量が減り、それに伴って売り上げも減少していたのです。

次に、市場分析を行いました。
マクロで見ると、エシカル消費市場自体は年々成長傾向にあります。
また、ターゲットとなる見込み客の若い層に対してインタビューを行ったところ、「高くてもいいから体に良いものが欲しい」「アレルギーなので安心安全が大事」「子供が安心して食べられるものが欲しい」というニーズがあることを知りました。
実際、既存顧客の声も見込み客へのインタビューの声と一致するため、世代が違えど「価値観やニーズは普遍的なものである」とわかりました。

ターゲット分析

そこで、エシカル消費市場の規模は年々拡大していて、無添加の加工肉食品を求める市場はむしろ成長しており、販売方法やコミュニケーション手段を今の時流に合わせて改善すれば、ターゲットを若返らせ、過去最大の売り上げを取り戻せるのではないか……という仮説を立てました。
目指すゴールは、ターゲットをシフトし、過去最大の売り上げ3億円を取り戻すことです。
現状のリソースでは売り上げは最大3億円までが限界なので、この最大限を目指そうと思いました。

目指したゴール

本物を伝えるブランドストーリーを全製品で展開

Q. 具体的には、どのようなことに取り組まれたのでしょうか。

平野ニーズや価値観は普遍的だとわかりましたが、見込み客と既存顧客では、年代もライフスタイルも違います。
そこでコミュニケーション手段は、それまでの口コミやチラシ、DM、テレマーケティング、カタログなどから、レビューやSNS、ギフトサイト、楽天、自社ECなど時流に合わせたコミュニケーション、販売方法へ変えようと決めました。

市場機械の具体化

そして、ブランド・アイデンティティは同店のハムやソーセージが無添加自然素材のみを使い、大量生産とは一線を画した独自の価値を持つことから、「本物の一流肉を、汚すことなく届ける。」と定めました。
ここで言う「本物の一流肉」とは、A5ランクなどのサシが入った高級肉という意味ではなく、健やかに育てられた家畜の肉を指しています。

ブランド・アイデンティティ

三浦ロゴマークは、 本物を作り続けるマイスターをシンボル化し、そのロゴマークを基に、マイスターと看板商品でもある「ポリポリくん」のキャラクターを作り、絵本作家の「アーノルド・ローベル」のような牧歌的な世界観を表現しました。
そのキャラクターを活用してブランドストーリーを作成し、ブランドブックも制作しました。
さらに、「無添加」という言葉だけでは語りきれない本物を伝えるブランドストーリーをすべての製品、パッケージ、ウェブサイトで展開しました。

サイトウハムロゴ

サイトウハムキャラクター

サイトウハムブランドブック

サイトウハム製品パッケージ

ブランディングで売り上げは昨年対比24%増を実現

Q. ブランディングの成果について教えてください。

平野昨年対比で売り上げは24%増となり、目標の「売り上げ3億円」を達成することができました。
また、例年赤字だった4月期、5月期の売り上げも1000万円アップで黒字化しました。
さらに、ターゲットのシフトという目標については、ブランディング前は顧客属性の90%がシニア世代でしたが、ブランディング後は子育て世代とシニア世代がともに50%と変化。
SNSのフォロワーは、Xが10万フォロワー、Instagramが2万フォロワー、Threadsが8000フォロワーとなるなど、開始2年で多くのフォロワー獲得に成功しました。
楽天ランキングでは3部門で1位を獲得し、月間MVP賞も受賞しました。
高島屋や名鉄百貨店、四つ星ホテルなどから引き合いも出るようになっています。

目標売り上げ達成

1000万円売り上げアップで黒字化

Q. ブランディングの成功要因、ポイントについて教えてください。

平野5つの成功要因があったと考えています。
まず、やはり重要なのは「ブランド・アイデンティティとの一貫性」です。
ブランド・アイデンティティが内部浸透し、体現できているからこそ、「本物の一流肉を、汚すことなく届ける。」という一貫した価値提供が実現できたのだと思います。
次に、「埋もれていた価値」です。
ブランディングでは、クライアントが気づいていないような、当たり前になってしまっているような価値を細かく掘り起こして、すべてを見える化しました。
3つ目は、「インフルエンサーとの良好な関係構築で新たな優良顧客を獲得」できたことです。
フォロワー数増加の起爆剤になったのは、やはりインフルエンサーと良好な関係が構築できたからこそだと思います。
そして4つ目は、「想いの発信の継続で共感を呼び、ファンを醸成する」こと。
しっかりと自分たちのフィロソフィーを発信し続けたことでファンがつきフォロー外しを防ぐ要因になっているのではないかと思います。
最後に5つ目は、「顧客メリットのある販路の拡大」です。
楽天やamazon、ふるさと納税サイトなど販路を広げたことで、認知と売り上げ拡大につながったのだと思います。

ブランド・アイデンティティとの一貫性

埋もれていた価値を発掘し、すべて見える化

インフルエンサーとの良好な関係を構築

思い発信の継続が共感を呼び、フォロー外しを防ぐ

顧客メリットのある販路の拡大

Q. 今後の展望を教えてください。

平野展望は2つ。
まず事業目標です。
3年以内に今の顧客属性の子育て世代とシニア世代のバランスを、9:1にすることです。
エシカル消費に関心の高い30代のファミリー層を獲得し、安定経営を目指すことが掲げている目標のひとつですね。

エシカル消費に関心の高い30代のファミリー層を獲得し、安定経営を目指す

もう1つは、ブランディングのビジョンの話ですが、今はプロテインクライシスといって、人口増に伴って世界のお肉が足りなくなるという市場予測がされています。
その中で、植物由来の代替タンパク質市場は拡大が予測されており、そこに対応できる準備をしています。

植物由来の代替タンパク質市場は拡大が予測されている

状況によっては古いものを捨てる勇気や変化する力を持つ必要がある場面も出てくるでしょう。
そんな中でも、変えないことは差別化であると考え、たとえ原料が肉から大豆に変わったとしても自然との調和を乱さないために努力すること、どんな市場環境においても本物を残していくことに挑戦していきたいと思います。

自然との調和を乱さないために努力すること

※掲載の記事は2025年2月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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