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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >長田 敏希氏 Vol.1

デザインが企業経営にもたらす可能性 – 前編

長田 敏希氏 Vol.1 株式会社クレオ アートディレクター/ブランド・マネージャー 東京農業大学非常勤講師

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【長田 敏希氏のプロフィール】

株式会社クレオ アートディレクター/ブランド・マネージャー、東京農業大学非常勤講師。

経営戦略立案から、CI、VI、商品開発、空間演出等、ブランディングに関する様々な領域で、右脳発想を重視したブランド構築ソリューションを提供。

現在、大手コンビニエンスストア、飲食チェーン、食品メーカーを中心に事業活動を行っている。

またパートナー企業と連携し、意匠、商標等の知的財産権管理のアドバイザーも努めている。


デザインが企業経営にもたらす可能性(前篇)

岩本

本日はよろしくお願い致します。まずは、長田さんのご経歴を伺えますか。


長田

私は東京工芸大学の広告研究室で、広告の基本やアイデアを考える発想術などを学びました。たとえば愛について300個のビジュアルを一週間で考えてくださいというような課題がでたりしましたね。そこでアイデアの楽しさに気づいて、広告代理店の株式会社クレオに入りました。


岩本

クリエイティブの分野に進もうと思ったのは、いつ頃からですか?


長田

中学の時に美術の先生に、絵が達者だなと褒められたのがきっかけです。それで高校も美術の専門にいきました。


岩本

広告のクリエイターとして、大学などで学んで役立っていることはありますか?


長田

自分なりの表現のディテールを突き詰めたことですね。社会に出ると時間やお金の面で難しくなるので、そういうところに時間を費やせたのは良かったです。


岩本

広告代理店では、主にどういったことをやってこられましたか?


長田

2年目くらいまでは、メーカーのパッケージデザインを流用して定型のポップを作る仕事が主でしたね。3~4年目くらいからPB開発の仕事が増えてきました。はじめは競合コンペが多かったですが、リサーチ、パッケージデザイン、販促物と総合的に制作させていただきました。



岩本

最初はあまりクリエイティブでない仕事が多かったようですが、そのころからもっと自分はこうしたいという思いはあったのですか?


長田

やっぱり企業の課題の根本のところを捉えて、実際に解決するところをやりたいというのはありましたね。トータルにやっていきたいという。


岩本

なるほど。


長田

あとはセールスプロモーションの分野で著名なデザイナーはまだそんなにいなかったので、他のデザイナーと差別化しやすいかな……ということも考えていました。


顧客の声を聞くデザイナー

岩本

ありがたいことに、いろいろな方にブランド・マネージャー認定協会をご紹介いただいていますが、それはどういうお考えで紹介しようと思われたのですか?


長田

よく後輩などに相談されるのですが、こういうパッケージデザインをやりたいというのがあったとして、それを単発で提案してもなかなか通りません。それをやるには企業の全体の課題を考えて、その中でパッケージデザインの提案をしないと、お客さんも納得しないわけです。だからブランドについて包括的に見ることができて、話もできるデザイナーになった方が目標達成しやすいよ、と。そういう学びの場として、ブランド・マネージャー認定協会を紹介していますね。競合コンペで私が勝つ秘訣を知りたい、と言ってくれる上司などにも紹介しています。


岩本

競合コンペの勝因も、包括的に物事を捉えることなのですね。デザイナーの陥りがちな失敗とは、どんなことですか?


長田

一概には言えませんが、表現のカッコよさ、おしゃれさの方向に行ってしまいがちな面は多いですね。最近読んだレビット教授という方の著書にもありましたが、消費者がほしいのは「かっこいい、様々な機能の付いたドリル」ではなくて、「必要な大きさの穴を空けてくれるドリル」だということです。課題解決や企業のマーケティング活動を無視してやってしまうデザインというのが、ありがちな失敗なのかなと思います。


岩本

アート化している、ということですね。


長田

そうですね。顧客の声を聞けていない、というのがあるかもしれません。今、あるメーカーのCI開発をやっているのですが、これも経営者だけでなく、現場の人にワークショップ形式で企業のミッションを考えてもらったり、外部環境分析などもやって、それを様々なセクションの方と共有して、やっと課題が明確になってきました。企業の状況をどれだけ深層心理のところから引き出せるか、といったところが重要だと思います。


岩本

課題を解決するようなクリエイティブが求められているということですね。


長田

はい。どんな顧客に向けた商品かというのを理解していなかったり、どこに置かれるのかということが考えられてないパッケージデザインは使えませんから。


岩本

課題解決のためのデザインをしようよ、という方向に向かわせるためにはどうすればいいでしょうか?



長田

まず、経営とかブランドといったものに興味を持つ必要があると思います。そして、ちゃんとリテラシーを持つための勉強ですね。これがないと対等に話せません。


岩本

経営をちゃんと学ぶということですか?


長田

経営者のように全部を学ぶ必要はないでしょう。これからは会社のビションづくりのところにデザイナーが関わる必要もあると思います。デザイナーがビジョンを捉えて、しっかり社内の課題抽出もできれば、そのビションを視覚化する点についてはデザイナーは優れていますから、理念と視覚化が一体となったコミュニケーション効果の高いCIになります。


岩本

企業経営を理解するとともに、理念やビションといった「何のために経営するのか」といったところを深堀するわけですか。やっぱりそこまで理解するマインドを持っていないと、課題を解決するクリエイターになるのは難しいですよね。


長田

人・物・金というところも、ちゃんとヒヤリングしていきます。新しいCIを作ったら、それは行動指針になり、社員は強い影響を受けるわけです。だからそういうものを作る際には、社員一人一人の声とか、これからやりたいミッションをちゃんと吸い上げていかないと、たんなるお飾りになってしまいますね。


後篇へ続く