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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 久保 貴裕氏

コロナで激減した売り上げが2倍以上に増加
出張し“本物の味”を提供する
「いちごの庭プロジェクト」とは?

シュンビン株式会社久保 貴裕

Profileプロフィール

ブランド・マネージャー認定協会2級資格

2010年に株式会社ワコール入社。
人間科学研究開発センターに所属。
2022年、シュンビン株式会社に出向。
2022年、ブランド・マネージャー認定協会2級資格を取得。
2022年度のブランディング事例コンテストでは「おさぜん農園の新規事業ブランディング」で農商工連携審査員特別賞を受賞。

いちご農園を運営する、おさぜん農園。
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、売り上げが5分の1にまで落ち込んでしまうという苦難に見舞われますが、ブランディングで新たな事業を生み出しV字回復を達成。
コロナ前の2倍以上にまで売り上げが増加するという成果をあげています。

逆境を乗り越えたおさぜん農園の新規事業とはどのようなものなのか。
ブランディングを担当したシュンビンの久保貴裕氏にお話を伺いました。

「なぜいちごなのか」を明確化

Q. 本日は、ブランディング事例コンテスト2022で農商工連携審査員特別賞を受賞した「おさぜん農園の新規事業ブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず、今回のブランディングのクライアントと、ブランディングの経緯について教えてください。
今回のブランディングのクライアントは、京都で100年続く「おさぜん農園」です。
この農園を2007年に受け継いだのが現社長の長村善和氏でした。
長村社長は、この地で約100年「善兵衛」という屋号を受け継ぎ農業してきた長村家の長男です。
先代までは野菜や果樹中心の生産農家でしたが、長村社長は老若男女を問わずに好かれるいちごの専業に舵を切り、現在はいちご狩り農園を運営しています。
ただ、いちご農園を運営する中で、いちごのイメージや事業、商品パッケージに統一感がなく、行き当たりばったりの経営になりがち……という課題を抱えていました。
そこで、中小企業の企画を代行する我々シュンビンコーポレートブランディングを手掛けることになったのです。
Q. ブランディングはどのように進めていったのでしょうか。

最初に取り組んだのは、「ブランド戦略検討会」という15時間にわたるワークショップです。
ここでターゲットや競合との差別化ポイント、ブランドコンセプトを構築するため、おさぜん農園様の社員の方全員にご参加いただき、ブランドの深堀りを進めていきました。
そこでまず考えたのは、「なぜいちごなのか」ということです。
そして、ワークショップを進める中で、いちごはほかの食べ物と比べて「食べたときの笑顔が違うから」だと明確化することができました。
さらに、その笑顔のためにおさぜん農園様がいちごの味に徹底的にこだわっていることもわかったため、ブランド・アイデンティティは「特別な笑顔を提供するいちご農家」と決めました。
ブランド・プロミスは「いちごのあらゆる可能性を追求しよう」です。
並行してロゴマークやパッケージ、ウェブ、キッチンカーからユニフォームまで、多岐にわたって一貫したブランディングを行いました。

おさぜん農園ロゴ

しかし、プロジェクトが順調に動き始めた矢先、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で売り上げが5分の1にまで激減してしまったんです。
そこで、新たな経営の柱となる事業が必要だと考えた長村社長からブランディングのご相談をいただき、新しい事業について、前回と一貫した形でブランディングを行っていくことになりました。

新規事業で売り上げがコロナ前の2倍以上に

Q. 新しい経営の柱を作るため、どのようなブランディングを行ったのでしょうか。

ブランディングで生まれたのが、今までの「来てもらう事業」ではなく「こちらから行く事業」です。
それが「いちご狩り」の新しい形、子供から大人まで楽しめる体験型イベント「いちごの庭プロジェクト」です。
コンセプトは、「意外性のある体験を求める方に、美しいいちごの庭を」で、コロナ禍で移動制限がある中、身近で楽しみたいという新しいニーズがあるのではと考え、ブランディングが進んでいきました。
ペルソナは、ホテルの企画マネージャーを務めており、家族思いで自然に触れるのが好きな39歳男性です。
このペルソナに向けて「いちご体験」をデザインしていきました。
具体的には、まずロゴマークを決めました。
いちごと緑の葉が一面に広がる空間を赤と緑のチェック柄で表現したもので、農園の素朴なフェンスをモチーフにしながら洗練されたデザインになっており、フェンスの先に特別な空間が広がっていることを表しています。
チェック柄は終わりなく続くイメージで、そこにはこのプロジェクトをどんどん広げていくという意味も込めています。
ちなみに、このログマークは、日本タイポグラフィ年鑑2022で入選しています。

いちごの園プロジェクト

「いちごの庭プロジェクト」の開催に向けては、それぞれの開催先のニーズとプロジェクトのコンセプトをマッチングさせることを意識しました。
そのために、シュンビンも一体となって、ビジネスモデルや空間建築デザインも併せて提案をしています。
また、デザインコードも作り、ブランドの世界観を守る運用をしています。

Q. プロジェクトの成果を教えてください。
「いちごの庭プロジェクト」は、1年目は“日本一高いビル”として知られる「あべのハルカス」で開催しました。
すると様々なメディアに取り上げられ、土日、平日ともに予約で満席という反響を呼んだのです。
また、この新しい事業により、参加者に「今度は農園にも行ってみよう」と良いイメージを付与することができ、農園でのいちご狩りなどの既存事業とも相乗効果を生み出しています。
いちごの味にこだわり続け、出張でも本物の味を提供できるおさぜん農園様だからこその結果だと思います。

こうしたプロジェクトの成功により、5分の1に激減した売り上げは、コロナ前の2倍以上に増加させることができました。
そして2年目のシーズンは、開催先を拡大。「T-SITE」のようなおしゃれなスポットや、公園、住宅展示場など様々な場所で開催しました。
これらの開催先の方からは、「フロア一面にいちごの香りが広がって幸せです」という喜びの声もいただいています。
ほかにも、小さなお子様連れのお母様、いちごが大好きなお子様、車いすで参加された高齢の方まで、様々な方から感動の声をいただきました。
また、おさぜん農園様の社員の方々も、普段の農園の仕事では見ることができない反応に触れることで、「今まで以上に仕事に誇りが持てる」とモチベーション向上につながっています。

あべのハルカス

プロジェクトの輪を世界へ

Q. 最後に、同プロジェクトの今後の展望について教えてください。
おさぜん農園様がずっと掲げている使命は、一部を通じて、農業の魅力を社会全体に示していく、ということ。
そして「自分もやってみたい」という人を増やすことです。
その輪を広げるために、いちご農家を目指す人にノウハウを惜しみなく伝授する開業支援も行っています。
この「いちごの庭プロジェクト」は今後も、いちご、さらには農業の魅力をたくさんの人に体感していただく機会として、広めていこうと思っています。
それを実現するためのアイデアとして、各家庭の庭への展開を考えています。
さらに、協力農家さんを巻き込んでの地域拡大もすでに進行中です。
この終わりなく続くチェック柄を、京都から日本全国へ、さらには世界に広げ、いちごと農業の魅力を伝えていければと思います。

いちごの庭プロジェクト

※掲載の記事は2023年7月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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