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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 坪田 有希子氏

ブランディングで「赤酢といえば九重雜賀」の
イメージを構築 新商品開発やサイト刷新で
売り上げが倍に

有限会社TTDESIGN坪田 有希子

Profileプロフィール

有限会社TTDESIGN 取締役副社長
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー

嵯峨美術短期大学卒業。
グラフィックデザイナー・イラストレーターを経て、クリエイティブ・ディレクター・ブランド・マネージャーとして活動。
2002年創業の有限会社TTDESIGN立ち上げメンバー。
創業時2名だった会社の規模拡大、東京進出や関連会社の立ち上げにも携わる。
人材雇用、マネジメント、チームビルディング、財務管理など、経営も学ぶ中でクリエイティブと経営、2つのマインドを身に付ける。
中小企業経営者、デザイナーとしての視点を活かし、企業価値向上のためのブランディングサポートを行う。
2022年度ブランディング事例コンテストでは「株式会社九重雜賀のブランディング」で農商工連携審査員特別賞を受賞。

日本酒と赤酢を醸す、和歌山の蔵元・九重雜賀。
BtoB中心に展開していた同社では、国内での日本酒販売に伸び悩み、さらにコロナ禍も重なって売り上げが低迷していたことから、日本酒と同じ敷地で醸している「赤酢」に着目したブランディングを実施。
売り上げが取り組み前の2倍にまで増加するなどの成果を生みました。
ブランディングを担当した有限会社TTDESIGN取締役副社長の坪田有希子氏にお話を伺いました。

蔵元の強みを生かせる「赤酢」に着目

Q. 本日は、ブランディング事例コンテスト2022で農商工連携審査員特別賞を受賞した「株式会社九重雜賀のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まずは今回のブランディングの経緯について教えてください。

クライアントの九重雜賀様は、お酒と赤酢を醸す和歌山県の蔵元です。
日本酒・赤酢でBtoBを中心に展開されていましたが、主力商品の日本酒の販売が伸び悩んでおり、かつコロナ禍も重なって売り上げが低迷していたため「日本酒のBtoC販路を開拓したい」とご相談をいただきました。
ただ、いろいろとお話を伺っていくと、国内の日本酒市場は縮小傾向にあり、さらにBtoC市場にはブランド力のある蔵元が多く存在しているため新しく日本酒でエッジの立ったブランドを構築することは難易度が高いとわかりました。
そこで、「赤酢」でのブランディングを提案したのです。

なぜ赤酢なのかというと、そもそも赤酢は製造している蔵が少ないうえ、我々が調べたところ、日本酒と赤酢を同じ敷地で醸している蔵は全国で九重雜賀のみだったからです。
九重雜賀では、赤酢は日本酒を醸した際にできる酒粕のみで作っているため、使用する酒粕の質をコントロールできるという利点がありました。
実際にそうした利点を生かして、山田錦の純米大吟醸の酒粕のみを使用した「雑賀 吟醸赤酢」という商品も製造されていたんです。
ただ、ブランディング以前は国内外の高級寿司店や料理家が主な顧客で、一般消費者への認知は低い状況にありました。
そこで、「自社醸造酒の酒粕で作る赤酢」という強みを最大限に生かし、ブランド力の強化や一般消費者への認知、企業全体の売り上げアップを目的にブランディングに取り組んだわけです。

赤酢のブランディング提案

新商品開発でイメージ定着へ

Q. ブランディングは、どのようなことから着手されたのでしょうか。

まずは社長をはじめ、経営陣と事業部の各担当がプロジェクトメンバーとなり、じっくり時間をかけてステートメントを作成しました。
そして、複数あった日本酒と食酢・赤酢のブランドの事業階層を整理したうえで、ブランドごとに定義を設けて名称を統一。
さらに農林水産省の定義がない「赤酢」を九重雜賀としてどのように定義し、消費者にアピールしていくのかについて、自社の定義を設けて意思統一を図りました。

ブランド構築ステップでは、顧客ニーズを知るため、利用者のヒアリングも実施し、丁寧に情報収集を行っていきました。
特に3C分析にはじっくりと時間をかけ、みなさまの意見や情報を引き出して作り上げることを意識しました。
この3C分析の結果、市場機会は「雑賀の赤酢を取り入れた食卓で、人生を豊かにしたい」「健康志向・本物志向で、家族に安全・安心でおいしく、本格的な家庭料理を食べさせたい人を満足させる赤酢」と決まったのです。

ペルソナは、3年前に子供が独立して今は夫婦2人暮らしをしている55歳の女性です。
このペルソナに届けたい価値は「創業当時から受け継ぐ酢酸菌と雑賀の木桶だけに存在する菌が生み出す唯一無二の味わい」や「上質な素材・丁寧な伝統製法でおいしく体に優しい安心感」「赤酢の原材料である、酒粕の元となる日本酒から醸す一貫づくり」「大切な人に勧めたくなる信頼感」などと決めて明文化し、ブランド・アイデンティティは「上質な素材・丁寧な製法を守り、100年後も使い続けられる商品で人生を豊かにしたい」と決まりました。
さらに、そこからタグラインを「まっとうな酢、まっとうな酒、時をこえる」と決めました。

ペルソナに届けたい価値

Q. ブランド要素やブランド体験の設計は、具体的にどのようなことをされたのか教えてください。

まず、ロゴマークをリニューアルしました。
ロゴマークは、雑賀衆のシンボルである「八咫烏」を中心に据えたほか、海外展開を踏まえ、社名はどの国の人でも正しく読めるようにローマ字表記を採用しました。
さらに創業年を加え、歴史ある蔵であることをアピールしています。

ロゴマークリニューアル

また、ホームページやECサイトについても、以前のサイトでは企業の思いや取り組み、商品それぞれの特徴についての情報が乏しく、こだわりや独自性が伝わりにくいという課題があったため、これらを改善すべくリニューアルしました。
また、商品紹介ページでは製品情報だけに留まらず、赤酢に合う料理や日本酒のお勧めの飲み方なども紹介するようにしています。

ホームページECサイトリニューアル

このほか、ブランド体験としては、蔵の見学や試飲会の開催、DEAN&DELUCAと九重雜賀のコラボイベントとなる「お酢の老舗九重雜賀に教わるおもてなし料理ワークショップ」などを実施しました。

さらに、新商品開発にも取り組みました。
「赤酢といえば九重雜賀」というイメージを構築するため、市場にほとんどなかった赤酢のすし酢として、2021年3月に「雑賀 吟醸赤酢のすし酢」を発売しています。
これはベースの「雑賀 吟醸赤酢」に塩とてんさい糖を加えたもので、手軽に高級すし店の寿司飯を再現できる商品として成城石井や紀伊國屋などで販売し、2021年の調味料選手権で入賞するなどの実績も出しています。

新商品開発

ブランディングで売り上げが2倍に

Q. ブランディングの成果を教えてください。
まず赤酢事業では、ブランディング前と比較すると、業務用商品を含めた全体の売り上げは2.07倍に増加しました。
また、ホームページやECサイトは、リニューアルから約1年後に注文総数、売り上げともに約2倍、リピーター率は10パーセントから37パーセントにまで増加しています。
また、数値以外の効果として、お酒とお酢の製造部門がお互いの仕事を理解するようになり、部門の垣根を越えてより良くしていくための意見が活発に出るようになりました。
そしてエンドユーザーの顔が見えるようになり、ペルソナのライフスタイルを想定した顧客視点の商品作りができるようになったことも大きな成果だと思います。
また、BtoBの営業の際にも、ブランディング以前は商品の機能説明をするだけでしたが、ブランディング後は顧客にとっての価値をアピールするようになり、その結果新しい取引につながった……という効果も生み出しています。

ホームページECサイトリニューアルの効果

Q. 今後の展望を教えてください。

赤酢を皮切りに、それぞれの事業でブランド・イメージを確立していければと思っています。
赤酢では「赤酢といえば九重雜賀」のブランド・イメージを確立し、リキュール・ノンアルコールでは地元食材で作るこだわりのブランド・イメージを、日本酒では和歌山産の山田錦を使用した高級地酒のブランド・イメージを……と、それぞれの事業でブランド・イメージを確立し、相乗効果で九重雜賀のブランド力がアップすることを目指しています。

九重雑賀のブランド力アップ

同時に、海外向けのブランディングにも取り組んでいこうと考えています。
海外、特にアメリカでは寿司のニーズが多様化しており、本格的な赤酢寿司を提供する高級店が増えていますし、コロナ禍以降は自宅で寿司を作る人も増えています。
また、オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーなどのキーワードがトレンドになっており、小麦粉の代わりにお米を使ったファストフードも増えているんです。
そこで、海外のニーズに幅広く対応するため、コーシャ認証、ヴィーガン認証、ハラール認証の取得を進めています。
宗教、食文化の垣根を越えて、世界中のみなさまの「おいしい」に貢献するというミッションを軸に、ブランディングに取り組んでいきたいと思っています。

今後の展望

※掲載の記事は2023年9月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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