一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >大川 朝子氏 Vol.2
聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸
【大川 朝子氏のプロフィール】
株式会社昭文社 ことりっぷ事業部ブランド推進グループ
(株)昭文社へ入社後、ガイドブック編集、広報・プロモーション担当を経て、2014年よりことりっぷ事業部。『ことりっぷ』のブランディング全般を担当し、『ことりっぷ』のプロモーションおよび自治体・企業とのコラボレーションを企画する他、「地域観光アドバイザー」として地域に入り、地域の魅力を発見するとともに観光活性化をサポートも。
聞き手
大川さんのこれまでの経歴を教えてください。
大川
昭文社には編集者として入社、『まっぷるマガジン』などの旅行ガイド編集、広報などを経て今に至ります。期間的には広報セクションが一番長いですね。
広報業務に関しては、当初広報専門の部署がなかったこともありかつ担当が私一人だったため、手探りで広報体制を整えていきました。取材対応にとどまらず、記者クラブの入会からマスコミとの関係作りまで1から行い、取材に呼び込んだりもする“攻め”の広報にしていきました。その効果もあってその間、ヒット商品もいくつか生まれました。その後、現在の部署で3年ほど経ちます。異動したときはちょうど、季刊誌『ことりっぷマガジン』の創刊準備期で、前業務を生かして創刊プロモーションを行なったり「ことりっぷ」のプロモーション全体を行いました。その後プロモーションやイベントをやりながら、自治体、企業とのコラボレーション企画も担当しています。
聞き手
『ことりっぷ』のコラボレーションとは?
大川
『ことりっぷ』の発売後、『ことりっぷ』で旅することが20~30代の女性でじわじわと定着している現象をご覧になった自治体や企業から、誘致や販促のために「ことりっぷ」を使いたい、コラボレーションしたい、とオファーが続々と来るように。地域の魅力を伝えたい、女性に訪れてほしい、という課題をもった地域に『ことりっぷ』と読者はぴったりだったのです。発売から半年後にはお話がきたのですが、おかげさまで今も続いています。タイアップによる本の出版ほか、自治体が配布する小冊子を編集して提供しています。紹介するお店や宿は、あくまでことりっぷ編集部独自の目線によるセレクトを徹底しています。
企業とのコラボは、例えば旅先でも便利で日常でもおしゃれなセイコーさんの腕時計「ルキア」、金沢・沖縄などの主な旅行先のご当地味を盛り込んだエースコックさんによるスープの商品開発、昨年は「アフタヌーンティー×ことりっぷ」の旅行グッズを展開、商品企画から編集部が携わり、プロモーションもお手伝いしています。
本の出版だけではない「ブランドビジネス」が生まれ、そこで『ことりっぷ』ではどんなものがご提供できるのか、常にブランド、認知力向上も意識しながらブランドビジネスを推進しています。
聞き手
ブランド推進グループに配属されてから、どのようなスキルが身につきましたか。
大川
仕事では新しいことの連続です。例えば、『ことりっぷ』とコラボした音楽を作る話も出ましたし、さまざまな企業やオファーとコラボしていくためには、アイディア力、そして来たら返すようなフットワークや瞬発力も欠かせません。スピード感や判断力も必要です。この3年で仕事の“筋力”がついたと自負しています(笑)。
しかし、本当に一人の力では何もできないことも実感しています。広報時代はひとりでも活動できたのですが、現在はアイディア、デザインなどは編集者である同僚達との協力が欠かせません。常に新しいことの連続なので、上司や他部署と相談しながら動いています。
聞き手
現在のお仕事において、これまでの経歴が活きているなと思うことは何ですか?
大川
そうですね、編集も広報の仕事もすべて活きていると実感しています。実は上司にそのことでお礼を言ったこともあるんですよ。例えば『ことりっぷ』の販促物を作る際、ラフを書いたり記事を書くこともあります。これらは編集の仕事で学んだことですし、いろいろなプロモーションを行う際、積極的に行動に移してまわりを巻き込みながら進める力は、広報担当の時に培われたものです。
また、同僚も私も旅行が好きで休みにはよく出かけています。いわゆる観光地ではないところほど宝物が残っていて、自分で見つける楽しさがあります。個人的には、そのような地域を盛り上げたいと思っているのですが、こういう考えが『ことりっぷ』の企画にも生かされているかなと思っています。プライベートで旅行に行っても、「ここはどうしたら盛り上がるだろうか」「地域の今の財産や資源は何だろう」と考えたことをノートにメモするようにしたり。すべて活用できるわけではありませんが、何か企画やアドバイスするときに役立つ場合もあります。
聞き手
さまざまなオファーが来る中、ブランドを守り育てるために「これは必ず守っていこう」と決めたコンセプトや、意識されていることはありますか?
大川
「かわいい」「おしゃれ」「心地いい」…など、『ことりっぷ』を形容する言葉はたくさんありますが、その核はやっぱり“旅”です。それぞれの旅に寄り添い、『ことりっぷ』を愛読してくれる読者を決して裏切らないこと、これはどんなオファーがあったとしても大切に守っていることです。
聞き手
ブランドをマネジメントする中で、ご苦労されていることはありますか。
大川
ブランディングと収益とのバランスですね。当たり前ですが売上・収益を考えなくてはなりません。ブランドコンセプトの維持と売上とのバランスを保つことは難しいですね。どこで折り合いをつけるかはいつも悩みどころです。
聞き手
ブランドを推進するほど、商品をたくさん作ったり、ターゲット層を広げたりすることにつながります。しかし拡販しすぎると、さまざまな顧客が入ってくるので、それによってブランドが壊れる可能性もありますよね。
大川
そうなんです。組むべきかどうか、悩むことがよくあります。「コラボしたら売上が上がるかもしれないけれども、今までの読者の方を裏切るのではないか」と考えてしまったり。その点でも上司や同僚、営業部門との話し合いは欠かせません。
聞き手
『ことりっぷ』の考える、今後の展望を教えてください。
大川
私たちは『ことりっぷ』を通して、地域やそこに関わる観光業のポテンシャルを高めることを目指しています。女性読者を呼び込みたい地域もたくさんありますし、最近では「移住」も注目されているので、そうした地域の力になりたいですね。
さらには、アプリを活用したり、イベントに『ことりっぷ』読者を誘致してリアルな体験をしてもらったりしながら、読者の方とのコミュニティを作ろうと取り組んでいます。まだ大きなところまではいっていませんが、少しずつ育てていければと思っています。
聞き手
ありがとうございました。
※掲載の記事は2018年1月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。