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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 徐 誠敏氏(前編)

インターナルブランディングは
“社員ブランディング”である
「ブランド創発型企業」を構築するためには?(前編)

名古屋経済大学徐 誠敏

Profileプロフィール

名古屋経済大学 経営学部 准教授

1994年、韓国にてソロアルバムを発売し、歌手デビュー(各種ラジオ番組に出演)。
日韓の企業の現場経験やインタビュー、理論構築などをベースに、戦略的なインターナルブランディングやマーケティング、需要探索型イノベーションなどを研究。
中小企業のブランド戦略にも知見がある。
5現主義(現場・現物・現実+原則・原理)に重点を置きつつ、理論と実践を両立することに注力している。
名古屋経済大学経営学部での担当科目は「商品と流通の経営学」「消費者商品論」「マーケティング論」「マーケティング特論(中小企業のブランディング論)」 「地域産業論」「らしさを生み出すブランドづくりを企業と共に考える」体験型プロジェクトなど。
最近は、中小企業の経営者・実務家との戦略的ブランディング(インターナルブランディングとエクスターナルブランディングの同時実現)に関する講座・交流会を行っている。

近年、社員に向けたインターナルブランディングの重要性が高まっていると言われています。
企業のブランド理念やブランド・ビジョンを体現するのは人。
名古屋経済大学経営学部の徐誠敏准教授は「インターナルブランディング活動はステークホルダー向けのエクスターナルブランディングより重要である」と語ります。
強い企業になるためのインターナルブランディングとはどのようなものなのか。
このほど書籍ブランド弱者の戦略 インターナルブランディングの理論と実践を出版された徐准教授に、インターナルブランディングについてお話を伺いました。

ブランド弱者の戦略:
インターナル・ブランディングの理論と実践

(ミネルヴァ書房)

なぜインターナルブランディングが重要なのか

Q. 本日は6月に書籍ブランド弱者の戦略 インターナルブランディングの理論と実践を出版された徐先生に、本書の内容をもとにインターナルブランディングについてお伺いできればと思います。
まず、そもそもなぜインターナルブランディングが重要なのか、教えてください。

そもそも、ブランド・プロミスの実現を目指す企業の究極の目的は「市場変化に強く信頼性のあるブランド」を創ることにあります。
企業はそれを実現するために、自社独自のブランド理念とブランド・ビジョンの意味が共感を得られるように全社員に働きかける必要がありますし、部門横断的なコミュニケーション活動も行わなければなりません。
それにより、社員が自社のブランド理念とブランド・ビジョンの意味を学び、外部のステークホルダーに体現できるようになるわけです。
そうした戦略的な取り組みを実践する「ブランド創発型企業」を構築するためには、全社員がインターナルブランディングに取り組むことが必要不可欠なのです。

実際、強いブランドを持つ企業は、インターナルブランディングに全社的かつ戦略的に取り組むことで好循環プロセスを生み出しています(図-1参照)
具体的には、まず「自社ブランドとは何か、それが目指すものは何か」について、全社員に常に意識してもらえるように働きかけます。
次に、社員の帰属意識を向上させ、仕事に対するモチベーションも高められるように仕掛けます。
そして、同時に部門横断的な連携やコミュニケーション活動を通して顧客満足をもたらす知識やノウハウを共有させ、ブランド理念とブランド・ビジョンが持つ意味を自発的に体現できるように促します。

こうした段階を経て、顧客が常に感動し、共感するような価値を持続的に提供できるようになるわけです。
さらに、顧客の心の中に自社ブランド・ネームやロゴ、組織文化など、好ましい自社ブランドの資産的価値が向上することによってポジティブなイメージが蓄積され、企業と製品に対する顧客のブランド・ロイヤルティも高まります。

Q. 近年はインターナルブランディングの重要性が高まっていますが、そこにはどのような事情があるのでしょうか。
背景には、6つの変化要因が挙げられます。
まず1つめは、企業の相次ぐ不祥事による、自社ブランドに対する顧客の不信感と社員のモチベーションの低下。
2つめは、本来あるべき自社独自の創業の精神や理念、哲学に対する理解不足、倫理教育不足による社員の倫理観やモラルの欠如。
3つめは、「会社・労働環境」「職場の人間関係」「賃金報酬制度」といった職場環境に対する不満と、社内コミュニケーション不足による離職率の増加。
4つめは、労働人口の減少による人材不足と、自社のブランド理念やブランド・ビジョンに共感してくれる人材確保が困難であること。
5つめは、各部門が組織全体を考えず自己部門だけ優先するような閉鎖的な組織文化がもたらす「サイロ型の縦割り組織構造」による情報共有と連携の不足。
最後が、SDGsを盛り込んだ自社ブランド理念とブランド・ビジョンの社内浸透への社会的な需要とその重要性の増加です。
こうした社会の変化がインターナルブランディングの重要性を高めていると考えられます。

Q. そうした背景を踏まえ、企業にとってインターナルブランディングが最も必要とされ、最大の効果を発揮するタイミングとは?
これには4つのケースが考えられます。
1つめは、不祥事などから企業を再生させようとする場合。
2つめは、経営トップが交代することで社風を刷新したい場合や、創業周年事業としてブランド強化を図りたい場合です。
3つめは、急激な市場変化に社員の意識が追いつけていない場合。
そして4つめが、業務改革や新たな情報システムがなかなか現場に定着しない場合です。
こうした場合にインターナルブランディングを実践して最大の効果を生み出し、強い企業文化を構築するために必要不可欠な条件が4つあります。
1つはブランド・ブックの効果を過信しないことであり、2つめは社員全員参加を第一に考えること。
3つめは半年や1年という短期間でできるとは考えないこと。
4つめは、社員のインターナルブランディング活動への自主的な意欲を引き出せるように共感する仲間を増やしていくことです。
こうした条件を欠かさずに満たすことが、インターナルブランディングの最大の効果を生み出すことにつながるのです。

インターナルブランディングは「社員ブランディング」である

Q. インターナルブランディングで成果を生み出すために、企業が目標を設定するうえでのポイントを教えてください。

まずは、企業がインターナルブランディングを通して、社員行動の指針となる自社独自のブランド理念やブランド・ビジョンの社内浸透プログラムを構築し、それが定着するように促すことです(図-2参照)
同時に、社員の要求に応じて彼らが生き生きと働ける組織文化と自社のより強いコーポレート・ブランドの構築や強化も促進します。

さらに、自社ブランドへの意見や情報、知識、ノウハウを社員間で共有できるような啓蒙活動も支援します。
それにより、社員の意欲や責務、満足度が向上し、コーポレートブランドに対する社員のコミットメントも向上、結果、顧客満足やコーポレートブランドバリューが向上する……という目標も達成されるわけです。

ブラント価値に対する最終的な意思決定権を持つのは顧客ですが、ものを作るのも、売れ続ける仕組みを生み出すのも、良さを伝えるのも、すべて社員。外部ステークホルダーに対して自社ブランドの価値を体現し、伝えているのは社員であることを考えると、企業にとってインターナルブランディング活動はステークホルダー向けのエクスターナルブランディングより重要であると言えると思います。

Q. インターナルブランディングを実践するうえで、具体的にはどのようなことから始めればいいのでしょうか。

インターナルブランディング活動に取り組む理想的な一連のプロセスをご紹介します(図-3参照)
まず、先ほどもお話ししたように、企業はインターナルブランディングを通して、ブランド理念とブランド・ビジョンを全社員に明確に理解・認識させ、そこから強い刺激や共感を得させると共に、それらを創造的に学び取らせるように働きかけることです。
また、そうした理念やビジョンを社員の家族にも浸透させ、家族が自社に対して愛着心を持ち、支持するように仕掛けることも必要です。

繰り返しになりますが、インターナルブランディングには「自社ブランドに対するポジティブな態度を全社員に確立させる」「自社ブランドの価値に対する全社員の知識を向上させる」、そして「自社独自のブランド理念とブランド・ビジョンを体現し伝えるためのコミュニケーション能力を高めることで、外部の多様なステークホルダーの期待価値を最大化させる」という目的があります。
こうした目的を実現することで、企業はブランド価値を創造でき、結果として顧客にもブランド価値が伝わってブランドへの忠誠心や愛着心が強まり、知人にブランドの価値を推奨するような「熱狂的支持者」を生み出すことができると考えられます。

このような成果を生み出すためにも、企業はインターナルブランディングを通じて、自社のブランド・ビジョンに対する社員の3つのマインドの変化を引き起こさなければなりません。
その変化とは、表面的に「知る」段階から概念的に「信じる」段階への変化と、そこから自発的に「体現する」段階への変化です。
このような点から、インターナルブランディングとは「社員ブランディング」であるとも言えるのです。

社員は4タイプに分けられる

Q. 企業がインターナルブランディングを行ううえでのポイントは?

社員をタイプ分けして戦略的な人事評価と人材育成マネジメントをすることです。
社員は4つのタイプに分けることができます(図-4参照)

まずタイプ1は、企業が求める理想的なコア社員。
スキルとマインドが高く、ブランド・ビジョンを徹底的に体現しつつ、業績アップに貢献している社員ですね。
企業はインターナルブランディングを実践することで、こうした目指すべき方向性を明確に認識しており、自社ブランドに対して高い忠誠心も持ち合わせている社員の集団を継続的に創出していかなければなりません。
そしてタイプ2は、スキルは高いもののブランド・ロイヤルティや心の面でマンネリに陥っている社員。
タイプ3は、企業に対するブランド・ロイヤルティや情熱は高いもののスキルが足りていない社員で、最後のタイプ4はスキルもマインドもお粗末な、企業にとってはマイナスと言える社員です。

企業がタイプ1の次に高く評価すべきなのはタイプ3で、彼らに対してはブランド・ビジョンを共感していることを奨励しつつ、業績を上げられるようにスキルアップできる機会を与える必要があるでしょう。
タイプ2の社員に対しては、タイプ3の社員より評価を低く設定し、自社のブランド・ビジョンに一貫した行動を促すように働きかけなければなりません。
なぜかというと、時間が経過してもタイプ2の社員の行動に好ましい変化が伴わない場合、タイプ4の社員に転落する可能性があるからです。
そのため企業側としては、タイプ2、4の社員が自社のブランド・ビジョンについて明確に理解できるように、タイプ1の社員の知識やノウハウ、スキルを共有させる場を作ることが大事ですね。

「ブランド創発型企業」を目指すために

Q. 企業の発展プロセスにおいて、インターナルブランディングの内容も変える必要があるのでしょうか。

企業の発展プロセスは創業期成長期成熟期、そして転換期4段階に分類でき、それぞれの段階でブランド・ビジョンを組織内に浸透させるための戦略的ツールは異なります(図-5参照)。

まず「創業期」では、創業者などの経営トップがリーダーシップを発揮し、ブランド・ビジョンを全社員に浸透させて生産性を高めることが必要です。
次に「成長期」では、ブランド・ビジョンを全社員により浸透させるための様々な仕組みが求められます。
たとえば社内浸透プロセスの構築や、社員の満足度を高めるための職場環境作り、様々なインセンティブ制度、コア社員に対する教育投資などが一例です。
また、「成熟期」は、企業文化を中心に、企業の創業精神や哲学、ミッション、サブカルチャーなどを全社員に浸透させる段階。
最後に「転換期」では、企業の持続的な成長を阻害する様々な要因を把握し、取り除くための組織改革を実現できる強力なリーダーシップが要求されます。

ただ、これらはあくまでも一例で、企業はそのときどきの状況や環境によって、こうした浸透ツールをバランス良く活用することも大事です。

Q. そのようなプロセスを踏まえ、企業がインターナルブランディングを実行するうえで欠かせないこととは?

コーポレートブランドの基盤を作り、コーポレートブランド体質を構築していくプログラムを組織内に体系的に設けることです。一例として、4つの段階と8つのタスクが挙げられます(図-6参照)

第1段階は「奨励」で、これはブランドによる意識改革の土壌づくりですね。
ここに関わるタスクは「推進体制・計画の構築」「ブランディングへの意識醸成」です。
第2段階は「教育」で、タスクは「ブランド行動指針の規定」「ブランド戦略の啓発」となります。
第3段階は「実践」で、タスクは「部門・個人ごとの目標設定」「活動の支援・広報」
そして最後の第4段階が「評価」で、タスクは「活動の測定と評価」「貢献部門への報奨」が挙げられます。

そして、効率的なインターナルブランディングを目に見える形で行うには、「企業理念からつくる」「全社員を巻き込む」「ミラー効果」の3つの鉄則が何よりも重要です。
「ミラー効果」とは、ブランド・ビジョンを社内に浸透させる専門組織を発足させ、外部ステークホルダーにブランド・ビジョンを体現、自社ブランドの価値と評価を向上させ、結果的にそれが社員のモチベーション向上にもつながる効果のことで、こうした専門組織の取り組みが定性的に評価されると、次なる行動へとつながるわけですね。

繰り返しになりますが、インターナルブランディングの究極の目的は、社員のブランド価値に対する知識や態度、価値を伝えるための能力を高め、それによって外部のステークホルダーの期待価値を向上させることにあるのです。

Q. 「ブランド創発型企業」を目指すために、ほかにも必要なポイントがあれば教えてください。

独自のブランド理念とブランド・ビジョンを組織全体で共感、共有、浸透させるための「自社ブランド推進プロジェクト」「社内ブランド・サイト」を構築することが重要です(図-7参照)
同時に、現状を認識する/危機感や納得感を醸成する/方法を理解する/阻害要因を除去する/行動・実践する……という心理的変化過程を用いた戦略的なインターナルブランディングも並行して行うことが大事だと思います。    

次号へ続く

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