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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >阪本 啓一氏 Vol.4

インナーブランディングとは何か ~儲かっている会社がやっている3つのこと~ – 後編

阪本 啓一氏 Vol.4 株式会社JOYWOW 取締役会長 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 アドバイザー

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【阪本氏のプロフィール】

大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。

建材部門に19年勤務後、2000年4月に独立。

渡米し、ニューヨークでコンサルティング会社「Palmtree Inc.」を設立。

2006年、世界にJOY(喜び)とWOW(感動)を広め、浸透させたいという理念のもと、

「株式会社JOYWOW」を創業、現在同社取締役会長。

主な著訳書として、『共感企業~ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)、

『もっと早く受けてみたかった「ブランド」の授業』(PHP研究所)、

『気づいた人はうまくいく!』(日本経済新聞出版社)、

『「たった1人」を確実に振り向かせると、100万人に届く。』(日本実業出版社)などがある。


シェアする仕組みをみんなでつくる

聞き手

インナーブランディングのポイントの三つ目「シェアする仕組みをつくる」についてお話いただけますか。


阪本

目に見えて手にとって触ることのできるものを用意します。
例えば、シェアする場を年に数回はホテルを借り切ってやったり、彰状とメダルを用意したり、観念的なものではなく物理的な目に見えるもので具現化する。
楽天で出産祝いのギフト商品を売っているココレカ(http://www.rakuten.co.jp/cocoleca/)は、女性社員11人の会社ですが、みんな近隣の主婦です。
お客さまにハッピーを提供すると同時に、社員をハッピーにするという人本位経営を実践しており、社内で使える「ココレカ」札を発行しています。
助けてもらった人は助けてくれた人に「ココレカ」を渡します。
もちろん、通貨を循環させるためには、進んで助けてもらうことが必要です。
そうやって、どんどん通貨が善循環します。
お互いが助け合い感謝し合う風土づくりの仕組みです。
要は目に見える何かを用意することです。


聞き手

感謝の見える化ですね。
さきほど出てきたロジックツリーで「なぜならば」と言語化したものを、今度は見える化するわけですね。


阪本

出産祝いのビジネスは、人生の喜びを祝うお手伝いをする仕事です。
この会社の商品は、子どもの名前と生まれた時の身長を刺しゅうしたバスタオルですが、もらったお母さんはそれを使うたびに子どもの成長を確かめうれしく思う。
単なるバスタオル屋ではなく、喜びを提供する会社です。
今はバスタオルを売っているけれども、将来は何を提供しているか分からない。
でも、喜びを売ることだけは変わらないという会社です。


聞き手

それを社内に浸透させるために、助け合うという企業文化を根付かせようとしているのですね。


阪本

鹿児島で芝生を販売している株式会社ハヤシ(http://hayashi-green.jp/)は、40周年の記念式典のために、社員が手作りの映像を作り、社名をかたどった芝生を社員全員で徹夜で作って披露しました。
みんなで何かを形にするという作業は心が一つになりやすいんです。
一夜で完成させるという無理難題を与えた社長の狙いは、社員の気持ちを一つにすることにあったのだと思います。


聞き手

その会社は、社員が一つになることをいつぐらいからやられているのでしょうか。


阪本

現在の社長は二代目です。
二代目になって、経済環境の変化からゴルフ市場が縮小していき、ゴルフ場との取引だけでは将来の展望が開けないと、多角化を図りました。
多角化は一人のスーパーマンではやっていけません。
社員が一体化する必要があります。
そこで40周年の式典に向けた社内プロジェクトをいくつも立ち上げ、それぞれに責任を与えて完成という目標に導いたわけです。


聞き手

二代目社長の最初の役割は、社員に自覚と自信を持たせて、ベクトルを一つにするだったことのですね。


阪本

実務はナンバー2に任せて、社員を一体化させて次の経営戦略を練るのが社長である彼の仕事です。


聞き手

社員に任せることがなかなかできない社長は多いですよね。


阪本

業績が悪い会社ほど、社長が忙しそうにあちこち電話している姿をよく見かけます。
社員に任せられず、全部自分でやらないと気がすまない。


聞き手

耳の痛い社長は多いでしょうね。



小さなことの徹底が企業文化を育てる

聞き手

インナーブランディングで一番難しい部分とは何でしょうか。


阪本

たぶん、みんなが手応えを感じているかどうかでしょうね。
それによって、テンションが上がったり、やらされ感を感じてしまったりします。
要は、現場の社員に、仕事に対して感謝する素直な気持ちがあるかどうかなんです。


聞き手

もともとそれがある人を採用するということですか。
それとも、それが育つような環境にするのですか。


阪本

そういう人が育つ組織環境をつくるべきだと思います。


聞き手

それはどのようなステップを踏めばいいのでしょう。


阪本

何かしてもらったら「ありがとう」と言うとか、会話するときは必ず目を見て話すとか、メールをもらったらすぐに返信するとか小さな事柄から始めて、それを徹底することですね。
全員で体を動かして社内や会社の周辺をきれいにするクレンリネス(清掃)なんかはいいと思いますね。


聞き手

感謝とか思いやりの気持ちをまず社内で培うということですね。


阪本

立派なことを言って、「やろうぜ」と言ってもまずやりません。
まず、靴を脱いだらきちんとそろえるとか、ほんとに小さなことをトップから始める。
部下の育成は、小さな行動をやらせることから始めます。


聞き手

ある種、躾みたいなものですね。
それがビジネスマナーやモラルにつながっていきます。


阪本

何かしてもらったら「ありがとう」の一言。
言う方も言われた方も気持ちがいいものです。
それはお客さまや社員同士だけでなく、社外の取引先とのコミュニケーションでも同じです。
それを上から行動で示していく。
社員はトップの背中を見て育ちます。


聞き手

それを企業の根底に敷き詰めた上にブランディングしていかないと、ブランドそのものが脆弱なものになってしまいますね。
阪本さんはインナーブランディングのあるべき姿をどのようにとらえていますか。


阪本

社内と社外の壁、社員とお客さまの壁がなくて、ウソ偽りがない状態を作り上げるということ。
お客さまは、社員の言葉や行動から、ウソを敏感に察知します。
それには、社員が本心からブランドアイデンティティを理解し、実行に移すような仕組みが必要です。
北海道の「六花亭」というお菓子屋さんは、お客さまの子どもたちが書いた詩を詩集にして50年以上も発行しています。
同社には、子どもが小銭を握り締めて 買いに来れる店でなければダメだという信念があります。
そういう自社の世界観を発信するマーケティングツールとして詩集を発行しているのです。
それはインナーブランディングにもつながっていて、社内のみんなにうちはこういう世界観で商売しているということを浸透させる効果もあるのです。


聞き手

お客さまのために作っているのだけれでも、それの存在そのものが社員の意識を一つにしているのですね。


阪本

だからこそお客さまに、「あの会社は建て前とかよそいきの顔ではなく、本当に子どもたちの未来を大切にしている会社だよね」と思ってもらえる。


聞き手

長野の美容室「りんごの木」は、社員がお客さまのことを思って書いた社内向けのレポートをたまたま読んだお客さまがものすごく共感してくれたという話を聞きました。


阪本

社内とお客さまの垣根をなくすという実例ですね。
そういう会社はリクルート費用がかかりません。
会社にウソ偽りがないから、アルバイトで入った人が社員になりたがるんです。
最近の若者は、お金よりも誠実さや真摯さに価値を求めている人が多いですからね。



ブランドの機軸がブレてはいけない

聞き手

インナーブランディングというテーマで阪本さんが強調したいことは何でしょうか。


阪本

企業は時代によって変わる生き物ですから、常に見直してほしいですね。
今、時代の変化が激しいですから、半年に一度ぐらいは、みんなで自分たちが提供している価値とは何かを話し合ってみる。
つまり、半年に一度、「この会社をつぶすにはどうすればいいか」と考えてみる(笑)。


聞き手

ブランドアイデンティティも見直すべきでしょうか。


阪本

ブランドアイデンティティは変える必要はありませんが、それを形にする商品やサービス、そしその伝え方は変えるべきでしょうね。
特に伝え方は、インターネットに親和性のない見込み客に対しては、チラシのようなアナログなメディアでもいいでしょう。
しかし、スマートフォンがこれだけ普及しているのですから、いずれ変えなければならなくなるでしょう。
ただ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は発信するメディアだと勘違いしている人が多いようですが、SNSは対話のメディアです。
もし活用するなら、相手の心に届くようなコミュニケーションが必要になります。
あるいは、それを読んだ人がほかの人に伝えたくなるような情報しか「感染」(伝播)していきしません。


聞き手

時代が変わっても変えてはいけないものとは何ですか。


阪本

ブランドの機軸はブレてはいけないですね。
福井の永平寺御用達の「米五のみそ」は創業天保2年で江戸時代から続いている味噌メーカーですが、商品の魂となる機軸は絶対にブレさせません。
ただ、伝え方は新しいことにチャレンジしています。
ネット通販やフェイスブック取り組んだのも一番早かったですね。


聞き手

100年永続する企業は、そうしたブレない機軸を持ち、時代の変化にうまく対応するイノベーションを繰り返していますね。
今日は、インナーブランディングのポイントを分かりやすく解説していただきまして、ありがとうございました。


※掲載の記事は2015年11月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。