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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 高木 純氏

“広域連合”の特徴を活かしたブランディングを実現
継続性の問題を解消した“超合理的”な観光サイト
「#まつもトコトコ」とは?

株式会社コムデザインラボ高木 純

Profileプロフィール

株式会社コムデザインラボ 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者

2010年10月に「コムデザインラボ」を開業、2014年10月に「株式会社コムデザインラボ」として法人化。
ショップブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマークやキャラクター、印刷物やホームページなど、すべて自社完結でトータルデザインする“合わせ技一本のデザイン事務所”として全国にクライアントを持つ。
2022年度ブランディング事例コンテストでは「信州松本エリアの観光プロモーション事業のブランディング」で地方創生審査員特別賞を受賞。

東京から約2時間半でアクセスできる、気軽な小旅行に向いた信州・松本エリア。
ただ、同エリアは観光資源に乏しいうえ、行政担当者が人事異動で変わってしまうため観光PRの取り組みが継続しづらいという課題がありました。
そこで、同エリアの8つの市村で構成される行政団体「松本広域連合」では、プラットフォームとなるウェブサイト「#まつもトコトコ」を構築。
シンボルキャラクターが人気を博すなど話題を集め、継続性の問題も解消するなど成果を生み出しています。
ブランディングを担当したコムデザインラボの高木純氏にお話を伺いました。

3C分析で見えてきた魅力と弱点

Q. 本日は、ブランディング事例コンテスト2022で地方創生審査員特別賞を受賞した「信州松本エリアの観光プロモーション事業のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず、今回のブランディングの経緯について教えてください。
「信州松本エリアの観光プロモーション事業のブランディング」は、長野県松本市を中心に8つの市村で構成される行政団体「松本広域連合」が取り組んだブランディングです。
同エリアでは、核となる観光スポットが存在しないため、どのように魅力を打ち出すべきかわからないなどの課題を抱えていました。
そんな中、「ブランドデザインの力で、出会ったオーナーの『モッタイナイ』をなくすこと」というミッションで活動しているコムデザインラボに行政の担当者様が興味を持ってくださったことがきっかけで、今回のプロジェクトがスタートしました。
Q. プロジェクトはどのように進めていったのでしょうか。

舞台となる信州松本エリアは、山々に囲まれ、程良い自然、田舎を感じられる場所が点在している地域です。
プロジェクトでは、まず3C分析を行い、同エリアの魅力が東京、名古屋から約2時間半でアクセスできる点に注目しました。
その一方、同エリアには魅力度ランキング上位の都道府県に匹敵するほどの観光資源がないうえに、魅力的な場所は点在しており、まとまりがないという弱点もわかりました。
また、ターゲットとなる旅行者は気軽に旅行にいけないライトユーザー層ですが、旅慣れしていない人にとって旅行の準備や下調べは苦労のタネであることを鑑み、旅のハードルを下げることに着目しました。

コムデザインラボ3C分析

Q. ブランディングを進める中で、見えてきた課題があれば教えてください。
行政がブランディングを行ううえで、課題は2つありました。
1つは、ブランディングが継続しにくい「3年任期の壁」です。
担当者は3年前後で人事異動になることもあり、プロジェクト自体も数年単位で終わるってしまい、継続したものにならないケースが多いのです。
2つ目の課題は、今回は各市村ではなく「広域連合」が主体のプロジェクトのため、観光コンテンツに直接介入ができないということです。
そもそも、市村ごとに独自の観光サイトを持っているため、たとえば「松本市をPRしよう」と思っても、PR自体はすでに松本市が実施済みなわけですね。

“超合理的”で気楽なウェブサイト

Q. そうした状況を踏まえたうえで、具体的にはどのようなブランディングを実施したのでしょうか。
先ほどお話ししたような分析を踏まえ、「都心から気軽に行ける田舎と「ITを使った手軽な観光プラットフォームを掛け合わせることで、「このエリア独自の、どこよりも敷居の低い小旅行を提案できるのではと仮説を立てました。
そこで信州松本エリアの魅力を「思い立ったら気軽に行ける、程良い日本の田舎」と定め、プロジェクト全体のブランド・アイデンティティは「1クリック・1トリップ小旅行ナビゲート」と決めました。

さらに、本当に必要な観光スポットや特産品の詳細情報は各市村がすでに持っているため、広域連合が担うべき価値はそこへ誘導するための情報が集約されたプラットフォームになるサイトを実現させることだと考え、作ったのが「#まつもトコトコ」です。
これは、ユーザーが直感的にクリックするだけで旅をナビゲートしてくれるうえに、リアルタイムでその時の気温や適した服装まで教えてくれるという、“超合理的”で気楽なウェブサイト。
つまり、広域連合という立場でしかできないことをブランディングで実現させることを目指したのです。

まつもトコトコ

Q. 「#まつもトコトコ」について、より具体的に教えてください。
まずトップページでは、出てきた写真をクリックするだけでユーザーへのお勧めエリアを紹介してくれる機能を実装しました。
また、このプロジェクトのために撮り下ろした写真をランダムに表示して直感的に観光スポットや特産品を紹介する仕組みも作ったほか、ユーザーの好みに合った目的を最短で表示してくれるボタンも実装。ネーミングやロゴは、カジュアルで気軽に旅行が楽しめるようなデザインを心掛けました。
さらに、8つの市村にちなんで、ナビゲーター役のキャラクター「はっち」もアイコン的な存在としてデザインしています。

このようなプラットフォームを基点として、同時に一貫性のあるメディアミックス展開も進めました。
8つの市村をつないだキャンペーン企画を実施したほか、「はっち」をデザインしたトートバッグなど、ノベルティグッズも作成。
さらに、観光案内所などに置かれるパンフレットや広報誌の表紙をジャックし、地元へのブランド浸透も狙いました。

ただ、プロジェクトはすべてが順調に進んでいったわけではありません。
ブランディングに取り組んで1年が過ぎたころ、新型コロナウイルスの影響で予定していた対面イベントはすべてキャンセルになり、緊急事態宣言もあって「旅行に来てくださいとは言えない、厳しい状況が続くことになったんです。

そこで考えたのが「ピボット」でした。
「ピボット」とは状況に応じて軸足を残しながら方向転換するという意味で、具体的には、観光スポットや特産品を紹介するだけではなく、その地域の「人の魅力」にフォーカスした、広い意味での地域プロモーションを実施することにしたのです。
その1つが、信州松本エリアにIターンで移住して活躍している経営者の対談コンテンツ。
そしてもう1つ、8つの市村の17歳にフォーカスした、写真家によるポートレイトコンテンツ「17 歳の肖像」も始めました。

つまり「#まつもトコトコ」という観光プラットフォームを使いながら、人にフォーカスしたコンテンツにシフトチェンジしたわけです。
こうした「ピボット」により、「もの、場所」という観光資源だけではなく、もっと包括的な地域の魅力を伝えるプロジェクトに成長させることができたと思います。

ピボット

プラットフォームにより継続性の問題を解消

Q. ブランディングの成果について教えてください。
まず、課題だった「3年任期の壁」による継続性の問題ですが、「#まつもトコトコ」というすべての情報が集約されたプラットフォームを作ったことにより、次の担当者へのバトンがつながりやすくなりました。
写真を「情報コンテンツ」と捉え、写真が増えるだけで情報が蓄積される仕組みにしたことで、たとえ担当者が人事異動で変わっても問題なく、年数が経つほど価値が高まっていくわけです。

また、ブランディングをスタートして現在4年目に入っていますが、すでに次の企画も進んでいます。
観光プロモーション用だった「はっち」も広域連合全体のシンボルとして認知され、現在では広く浸透しており、昨年9月にはLINEスタンプもリリースしました。
サイトは、正式に公開された2021年9月から1年間で累計12万人を超えるユーザーが閲覧。
プロジェクトで発信した観光コンテンツは、2022年11月時点で231カ所、撮り下ろした写真は1561枚を数え、14万人以上の方に地域の魅力を伝えることができています。
先ほどお話しした、コロナ禍で企画した「17 歳の肖像」についても全国から写真集取り寄せの問い合わせをいただくなど、単に旅行客を増やすことにとどまらないPR につながっていると実感しています。
Q. 今後の展望を教えてください。
今回、広域連合という独自のポジションの利点を活かし、行政という枠を少し超えたプロジェクトが実現したと思っていますが、これからは全国的にさらに知名度を高めるための施策も実施したいですね。
それは、単に観光という側面だけではなく、官民一体でエリアの魅力を最大化するような多くの人を巻き込んだ取り組みであるべき。
その実現のためにも、現在のプロジェクトでファンを獲得していきたいと考えています。
今回のプロジェクトを通して、行政におけるブランディングの可能性を今まで以上に実感しているところです。

写真コンテンツを軸にすることで担当者のバトンが繋がり継続性を実現

※掲載の記事は2023年8月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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