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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 杉村 純子氏

弁理士はブランド要素の決定に大きく貢献できる
ブランド戦略における知的財産権の重要性とは?

日本弁理士会杉村 純子

Profileプロフィール

日本弁理士会会長

早稲田大学理工学部卒業。
平成元年弁理士登録、プロメテ国際特許事務所代表。
平成23年度日本弁理士会副会長をはじめ、内閣府知的財産推進戦略本部委員や産業構造審議会委員等の公職を歴任し、令和3年4月より現職。
令和3年、知財功労賞 経済産業大臣表彰受賞。

ブランド構築を進めるうえで、知的財産権の重要性を理解することは大事なポイントのひとつ。
ただ、まだその認識が進んでいない中小企業も多く存在しています。
ブランド戦略における知的財産権の重要性とは、何か。
また、弁理士を介することでブランディングを行う際にどのようなメリットがあるのか。

近年、中小企業やベンチャー、スタートアップの知的財産の支援に注力しているという日本弁理士会の杉村純子会長にお話を伺いました。

o日本弁理士会ロゴ

弁理士は知的財産に関する専門家

Q. 本日は、中小企業における知的財産の重要性や、ブランド構築を進めるうえでの弁理士を介する重要性などについてお話をお伺いできればと思います。
まずは杉村会長のご経歴について教えていただけますでしょうか。
大学卒業後、研究職に就いた際に特許についての理解が深まり、弁理士が魅力的な仕事だと感じ、弁理士になりました。
弁理士になって以降は、出願の権利化業務やブランディングとも関係ある商標、そして訴訟など、さまざまな仕事を手掛け、知財の裁判官を技術的にサポートする調査官として東京地方裁判所で勤務したこともありました。
現在は裁判所の知的財産に関する専門委員や知的財産の調停委員、内閣府の知的財産推進戦略本部の委員、経済産業省や特許庁の産業構造審議会における不正競争防止小委員会の委員なども務めております。
また早稲田大学ビジネススクールで講師もしており、日本弁理士会では、令和3年4月から会長職を務めています。
Q. 日本弁理士会とはどのような団体なのでしょうか?
日本弁理士会は、知的財産に関する国家資格である弁理士の唯一の法人として設立され、すべての弁理士が加入を義務付けられています。
当会は各地域に9つの支部としての地域会を設置しており、その地域の中で各県委員会を設置し、地元密着型で中小企業支援やスタートアップ支援に力を入れているところです。
当会の主な役割は、弁理士に対する指導監督や連絡業務などで、タイムリーな研修を通じて会員の能力向上を図っているほか、ブランディングも含めた知的財産制度の研究や普及啓発活動、相談業務などを行っています。
昨年からは関東、関西、東海地方で弁理士の紹介制度も開始しており、今後は他の地域にも広げたいと考えているところです。

知的財産制度の研究と普及

Q. そもそも弁理士とは、どのようなものを扱う専門家なのでしょうか。
一言で言うと、知的財産に関する専門家という位置付けです。
ただ、知的財産と言っても、たとえば新しい技術・アイデアの発明や、物品・建築物から画像のデザインといった意匠、絵画や文章・音楽といった創作的表現である著作物まで、非常に幅広いのが実情です。
さらに、ブランディングとの関係で言うと、他人の商品・サービスと区別するためのマークである商標についての権利取得や、活用に関するアドバイスなども、弁理士の業務範囲に含まれています。
また、農林水産物に関しては、知的財産の保護を含めた海外での権利取得業務があります。
海外での権利取得やアドバイスについては特許、意匠、商標についても同様です。
そして、標準化の業務や不正競争行為に関する業務、コンサルティング業務など、知的財産と言われる範疇のものについて広く扱っているのが弁理士であると言えます。
現在は全国に1万1744人(令和4年12月21日時点)の弁理士がおり、近年はほぼ横ばいですが少しずつ増加傾向にありますね。

弁理士とは

ブランド構築を進めるうえで弁理士を介するメリットとは?

Q. ブランド戦略における知的財産権の重要性について教えてください。
ブランド構築を進めるにあたって弁理士を介するメリットとは、どのようなことがありますか?
ブランド戦略に関して弁理士を介するメリットとしては、ひとつは、企業らしさを体現して伝えるためのブランドマーク、商標、製品のデザインといったブランド要素を設計・決定するうえで大きく貢献できるのでは、と考えています。
ブランド要素を知的財産権で保護することが大切なのはご存知の通りですが、そもそもブランド要素を決定する前に、候補となる各要素について、他人の知的財産権を侵害していないかどうかをしっかり調査することが必要です
せっかくすてきなマークやネーミング、デザインを設計しても、他人の知的財産権を侵害するものであれば使うことができなくなりますし、損害賠償や差止請求等の対象にもなってしまいます。
ですから、ブランド要素が他人の知的財産権を侵害していないか、そしてどのようにブランドを知的財産で保護していくかは、最近の裁判の動向を鑑みる必要があり、専門性の高い判断が求められると思います。

また、最近ではひとつの知的財産権だけではなく、複数の知的財産権によって多面的にブランド要素や企業を保護する“知財ミックス”が注目されていますが、これについても、どのような組み合わせが良いのか、そもそも組み合わせる必要があるのか、どのような優先順位がよいのか等……という判断をする際に弁理士が貢献できるのではないかと思います。

実は、知的財産という分野は、法改正が頻繁に行われているのが現状です。
たとえば、昔は商標権では保護が難しかったブランドのサウンドロゴ(音)やカラーなどが新しいタイプの商標として商標法の保護の対象に加わりました。
意匠では、店舗の内装、建築物、画像デザインなども意匠法の保護対象に加わっています。
このような法改正や、それに関する訴訟の動向などといった最新の知識についても、弁理士は日頃からウォッチしており得意とするところですので、そういう面でも企業に貢献できるのではないでしょうか。

他には、ブランディングで3C分析を行う際にも貢献できると思います。
自社と競合他社の強みや特徴を比較検討するうえでは、知的財産についてどのような権利を保有しているのか、という調査・分析が重要になることが多いですから。
また、M&Aによる事業やブランドの統廃合が活発に行われている昨今では、デューデリジェンスにおける知財価値評価等も重要になっていますので、こうした際にも弁理士が貢献できると思います。

さらに、ブランドを維持していくうえでも貢献できるのではと考えています。
ブランディングはブランドを構築して終わりではなく、そのブランドを維持、拡張するための継続的な取り組みが重要です。
ただ、長年ブランドを使用していると、登録している商標と実際に使用している商標がいつの間にか少しずつ変わってきてしまっている……ということがありますよね。
そのため、どのようにブランドを維持し、どのように変革していくのか、という部分でも、その時々の法改正等にも合わせて適切なアドバイスができるのではないか、と考えています。

3C分析

Q. 知的財産権やブランドの重要性について、中小企業の方々はどのように認識されているのか、杉村会長の印象を教えてください。
現在は当会でも、デザインやブランドの重要性についてセミナーなどを開催しており、多くの中小企業の方々と接しています。
そこでの印象をお話ししますと、ブランドの重要性については、中小企業のみなさまも漠然と認識はされていますが、「大企業の話」という感覚で、自身ではあまり身近に感じていないという印象です。
個人の商店や小さい企業の場合、自分たちのどこをブランド化できるのかわからない、と考えている方が多いのではないでしょうか。

ブランディングに関しては、自分たち固有の“らしさ”を広めていくこと、そしてそれが顧客との間に長期的な信頼関係を結ぶための大きな絆の要素になる、ということを認識していただくべく、私たち弁理士は中小企業を応援するために活動をしているところです。
各地域で成功事例ができれば、だいぶ認識も変わるのではないでしょうか。
そういう意味では、ブランド・マネージャー認定協会が開催されている公開シンポジウムは全国レベルでのシンポジウムであって素晴らしい試みであり、ブランディングの重要性を日本に広めていくための大きなイベントであると認識しております。

ブランドのネーミングやデザインなどの知的財産権による保護について認識されている中小企業は、特に地方ではまだ多くはないのではないかと思います。
一方で、たとえば私どもが全国で実施している無料相談会の中で、ブランドや商標に関して中小企業や個人の方が相談に来るケースは、5年前と比べると増えています。
そういう意味では、認識度はだんだん上がってきているのではないかと思います。
中小企業の場合、売り出したブランドの商品等に係る商標や意匠が他人の知的財産権を侵害していることが判明して途中で諦めざるを得ないとなると、経営戦略自体を変えなければいけません。
中小企業にとってブランドの一つひとつが非常に重要なので、知的財産権について認識することの重要性は高いと思います。
Q. 日本弁理士会で、ブランド戦略を研究している活動はどのようなものがあるのでしょうか。
今年は特に、中小企業やベンチャー、スタートアップの知的財産の支援に非常に力を入れております。
たとえば弁理士会の本部と各支部である地域会の弁理士が連携する中小企業知財経営推進本部というものを立ち上げて、中小企業庁や日本商工会議所とも連携をしながら地方の中小企業やスタートアップの知財支援をおこなっているところです。
先ほど申し上げましたように、当会では弁理士を無償で紹介する弁理士紹介制度も構築しておりますし、有用な知的財産に関して弁理士がサポートし、弁理士会が費用を支出する出願等の支援制度も、従来は特許や意匠だけが対象でしたが、昨年からブランドの重要性を考慮して商標に対しても出願等の支援制度の対象としています。

また、当会にはたくさんの委員会があり、その中で商標委員会ではブランド戦略の検討もしています。
また、普及活動という意味では広報センターが中心となり、ブランドの重要性の啓発活動をしています。
さらに当会内のブランドに関連する委員会が一堂に集まり、デザインブランド戦略実行プロジェクトチームというものを立ち上げました。
このように、今は精力的にブランド戦略についての研究や啓発活動に努めているところです。
特に、日本弁理士会の知的財産経営センターとではブランド戦略の重要性に鑑み、先ほど申し上げた関連委員会と一体となって、地方の中小企業やスタートアップに対してブランドの重要性について地方でのセミナーを展開しています。
ブランドをどう経営資源として生かすか、専門の委員会が横断的に集まって、さまざまな地域でセミナー活動をしています。
Q. ブランド戦略の重要性を周知する活動が活発化している背景を教えてください。
知的財産と言うと、どうしても技術・そして特許というものが注目されてきた経緯がありますが、ただ、商品を海外で販売することなどを考えますと、ブランドの価値というものの重要性が重みを増してきています。
たとえば、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で、eコマースを活用した海外市場への展開を考える中小企業もかなり増えてきたと感じていますが、その際に他の商品との差別化を考えるうえでも、ブランドの価値の重要性がますます高まってきているのではないかと感じています。

さらなる成長のために中長期的な伴走支援を

Q. 11月に開催した当協会主催の第10回公開シンポジウムには、多数の弁理士の方にもご参加いただきました。
シンポジウムの内容についてご感想をお聞かせください。
先日の公開シンポジウムには、当会からも多数の弁理士が参加させていただきました。
公開シンポジウムでは、長崎教授のブランドの再構築に関する示唆に富んだ基調講演をはじめ、多数のブランディング事例の発表があり、田中先生をはじめとする専門家の方々のトークセッションもあり、非常に有意義な会であったと聞いています。
特に事例コンテストで日本弁理士会会長賞を受賞されましたOICHOCの八幡清信様がみなさまの投票で大賞に選ばれたことは非常に喜ばしく感じています。
このような大きなシンポジウムは、日本の中小企業や個人商店の方々に対してブランドの重要性を啓発する活動のひとつだと考えていますので、改めて敬意を表します。
ぜひ今後も続けていただきたいですし、当会としてもご協力申し上げたいと思っています。

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Q. シンポジウムにご参加いただいたうえで、改めて、ブランド構築を進めるにあたって弁理士を介すべき重要性についてのお考えを教えてください。
まず、そもそもブランド構築を進めるにあたってはブランド・マネジメントが重要だと考えております。
ブランド・マネジメントとは、企業や個人の商店が、消費者からどのように思われるか、その固有の“らしさ”を設計・規定して、あらゆる活動を通してそのイメージを具現化、実体化していく活動だと思います。
そして、顧客と企業の間で長期的な信頼関係を築くことが重要であり、それが企業にとって中長期的な利益の源泉となると考えられます。
そのため、最初のブランド設計の段階から中長期的なフォローアップが必要だと考えています。

シンポジウムでは、素晴らしいブランディング事例を発表いただきましたが、これらのブランディングを認識された企業が、今後もブランディングを活用してさらに成長していくために、そしてeコマース等も活用してグローバルな商取引がブランドを活用しながらできるように、企業の方々に対して中長期的な伴走支援が必要ではないかと思っています。
ブランドも含めた無形資産を基にベンチャーキャピタルからの投資や銀行・信金等の融資を呼び込み、さらに企業が成長できるように、我々としても知的財産であるブランドの正当な評価に貢献する必要があると感じました。

シンポジウムでは全国からいろいろな応募があり、多数の事例が紹介されましたが、今後は弁理士が各企業が成長していただけるように、日本の中小企業、個人の商店等をブランドで盛り上げていきたいと感じています。

特に地方の中小企業の方や個人の商店の方は、知的財産と言ってもあまり馴染みがありません。
それよりも「まず自分たちの事業をブランド化しよう」という考えのほうが馴染みがあり、身近に感じていただけるようです。
知的財産を活用して企業や個人商店が発展していくためにも、まずはブランディングで日本の中小企業や個人の商店を元気にしていこう、という活動は、有効かつ重要ではないかと考えております。

ブランドは知的財産を最も身近に感じられる手段

Q. 日本弁理士会の今後の活動方針の中で、ブランド戦略に力を入れる部分があれば教えてください。
中小企業、ベンチャー、スタートアップは、イノベーションを起こすという意味でも中核的な役割を担っていると思っています。
私たちとしても、知的財産の側面からこれらの活動を更に支援していきたいと考えてます。
特に、本年度は「スタートアップ知財支援元年」を宣言して、スタートアップを支援しています。
また、「JPAA知財サポートデスク」を設置して、各種の相談や様々なご質問等にも対応させていただいております。

ブランドは、これまで知的財産に接していない方々にとって、最もそれを身近に感じられる手段ですし、企業にはそこを足がかりに発展してもらいたいと考えています。
特に今年は、地方でのブランディングの重要性についてのセミナーを複数開催しており、多数の個人商店の方々、中小企業の方々にご参加をいただいていますので、ブランディングに関する興味が高まってきていると感じているところです。
弁理士会としても、ワンストップで中小企業を支えていく活動については、必要に応じて中小企業診断協会、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会などとも連携をしつつ、これからももっと力を入れていきたいと思っております。

JPAA知財サポートデスク

Q. 最後に、今後のブランド・マネージャー認定協会との連携について、どのようなことが考えられるのかお考えをお持ちであれば教えてください。
ブランディングという点において、ブランド・マネージャー認定協会と当会は親和性が高い活動をしていると思いますので、貴協会のシンポジウムに対する協力は惜しみませんし、それ以外でも情報や意見を交換する場を持つなどして、さまざまな形で連携していきたいと考えてます。
また、当会においてもブランド・マネージャー認定協会の方にいろいろご協力いただき、セミナーなどを開催させていただいておりますので、そのような形を今後も継続させていただければと願っています。

※掲載の記事は2023年1月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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