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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 八幡 清信氏/針谷 誠児氏

男子校のイメージを刷新して30年ぶりの定員超えを実現
広告・デジタル戦略を駆使した
正則学園のブランディングとは?

株式会社OICHOC/株式会社HARIYA 八幡 清信 針谷 誠児

Profileプロフィール

八幡 清信
株式会社OICHOC
代表取締役/ブランドディレクター
セツモードセミナー美術科出身。
26歳でデザイン会社「OICHOC」設立。
2010年に法人化し代表取締役就任。
経営者の「おもい」に寄り添うブランドデザインを目指す。
社会貢献活動として「南三陸ねぎ応援プロジェクト」を創設し、2018年のブランディング事例コンテストで大賞を受賞。
「理容室OTOKO DESIGNのブランディング」で2022年のブランディング事例コンテスト大賞受賞。
「私立男子高校のブランディング」で2023年のブランディング事例コンテスト大賞、最優秀賞を受賞。

針谷 誠児
株式会社HARIYA
代表取締役/ブランディングデザイナー
デザイン会社とコンサルティング会社の2社でキャリアを積み、戦略とアウトプットの両方の必要性を実感。
「デザインと経営をつなぐ」をコンセプトにした株式会社HARIYAを設立。
経営者と働く人の想いを巻き込みながら、企業のアイデンティティを言語化しデザイン表現まで一貫したブランドの構築を行う。
2023年のブランディング事例コンテスト「私立男子高校のブランディング」で大賞、最優秀賞を受賞。
「稲庭うどん小川」で 地方創生審査員特別賞を受賞。

学校数、生徒数の大幅な減少など困難な状況に立たされている私立男子校。
こうした中、東京・神田の正則学園高等学校では学校のイメージアップを目指してブランディングに着手。
男子校のイメージを一新する数々の取り組みを実施し、生徒数が30年ぶりに定員超えを果たすなど目覚ましい成果を生み出しました。
正則学園のブランディングとはどのようなものなのか、ブランディングを担当した株式会社OICHOCの八幡清信代表取締役、株式会社HARIYAの針谷誠児代表取締役にお話を伺いました。

イメージ低下でブランディングチームが発足

Q. 本日は、2023年のブランディング事例コンテストで大賞と最優秀賞を獲得した「私立男子高校のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず、今回のブランディングの背景について教えてください。
八幡:はじめに男子校の現状について説明すると、学校数は40年前と比べて1/4にまで激減して共学化が進んでいる状況です。
高校の生徒数は、30年で200万人も減少しました。
正則学園もまた、受験生の過半数が滑り止め候補として出願しており、約30年間定員割れが続くなど、苦境に立たされていました。
そこで、信頼を取り戻してより魅力的な学校に生まれ変わるために、新校長のもとでブランディングチームが発足されたわけです。
男子校の魅力を活かし、通いたくなる学校イメージを確立して定員に達する生徒数を獲得することをゴールに設定し、ブランディングに取り組んでいきました。

ブランディングで「安堵できる環境」を表現

Q. ブランディングはどのように進めていったのでしょうか。

針谷正則学園には、「厳しい、汚い、怖い」といったイメージや体育会系のイメージが強く、男子校ならではの心理的なハードルが高いことへの不安を感じているなどの課題がありました。
ただ一方、正則学園ならではの魅力もありました。
それは、いじめを許さない校風や男子だけの気楽な学校生活など、受験生の不安な気持ちに寄り添える安心な環境です。

そこで、市場機会は「異性を気にせず、男子同士でのびのび過ごしながら、自分のやりたいことにチャレンジでき、進路の可能性が広がる学校」とし、ペルソナは「友達づくりが苦手で、勉強や学校生活に不安を抱えている隠れ不登校の男子受験生」に設定しました。
実はここには、今の中学生の10人に1人が学校に行きたくないと感じている「隠れ不登校」である……という社会問題に着目し、新たな選択肢と可能性を提供する意図も込められています。

ペルソナ

これらのことを踏まえ、ブランド・アイデンティティは「安堵できる環境で、友と共に成長し、個性を伸ばせる男子校」と決めました。そしてタグラインは、「繋がる『&』から伝わる『安堵』へ」とし、「&」を強調した「&SEISOKUGAKUEN」というロゴマークを設計。
また個性を伸ばせる環境を伝えるため、「いつか花咲く君たちへ。咲く場所はここにある。」というキャッチコピーも作成しました。

ロゴ

Q. ブランド体験について、教えてください。

針谷まず、「安堵できる」ブランド体験を実現するためには「男子校イコール男らしく育てる場所」という思い込みを外す必要があると考えました。
「実は今の男子って、もっと多様なのでは?」と気づいたわけです。
そこで男子の多様性を高めるために、正則学園だからこそできることは何かと考え、その結果、学校イメージは体育会系から文科系にフォーカスし、教育方針は規律や学力よりも多様性を尊重するなど、ブランド体験を明確に差別化しました。
「男らしく」ではなく、「自分らしく」を大事にしたのです。

こうした方針に沿って、広告戦略は多様性の象徴として「花を生ける男子」をメインに据えて展開しました。
まず、花いけ男子部を筆頭に、オタ芸やeスポーツなど、文化部にフォーカスしたキービジュアルを制作したほか、男子とは縁遠い花を学校案内の表紙にするなど、これまでの男子校イメージを大きく変えるものを作りました。
学校案内では、「友達作りに教科書はいらない」など、学校に対する固いイメージを覆した、コミュニケーションに不安を抱える生徒に寄り添ったメッセージを発信し、さらに、より生徒理解を深めるための企画として、卒業生と教員が立場を逆転して本音で語り合う特別授業も実施して、生徒に寄り添った「安堵できる環境」を表現することに注力しました。
QRコードを活用した屋外広告も作り、リアルとデジタルをつなぐ試みにも着手しています。

花いけ男子部

Q. デジタルブランディングはどのような取り組みを行ったのでしょうか。

八幡コロナ禍で不安を抱えている受験生の目線に立ってオンライン情報を充実させるため、まずはウェブサイトをリニューアルしました。
メッセージ性の強いキャッチコピーを散りばめて男子校の魅力を訴求したほか、実在する部活や在校生、先生が出演する学校紹介動画も作成しています。
これは、人気ガールズバンドの「Hump Back」とタイアップしたもので、文科系クラブの生徒が生き生きと躍動する姿を描いたミュージックビデオ風の作りになっているのが特徴です。

さらに、この学校紹介動画を編集した30秒のCMも作り、新宿の駅ビルのデジタルサイネージで放映したんです。
そしてこの新宿の屋外サイネージから流れるCMとYoutubeのオンライン動画を連動させる仕組みも構築し、通行人の興味を喚起しつつ動画の閲覧数アップを狙いました。

こうした施策が奏功して、ウェブサイトのPV数は25万アップし、学校説明会の申し込みページPV数はなんと10倍に跳ね上がったんです。
学校紹介動画の閲覧数は2年間で1万2000回を記録しました。
また、男子高校生の多様性を表現したマンダムと正則学園のコラボ授業「身だしなみ講座」も実施したところ大反響を呼び、Youtubeで127万回も再生され、これには正則学園を称賛する2700を超えるコメントがつきました。

WEBサイト

入学者数142%アップで30年ぶりに快挙達成

Q. ブランディングの成果と今後の展望を教えてください。

八幡まず説明会・個別相談会の参加者数は、2020年の400人から2021年は800人と、200%アップ。
肝心の入学者数は、2020年の190人から2023年は270人と142%もアップし、250人の定員超えとなり、約30年ぶりに快挙を達成しました。
さらに第一志望者数は、3年間で168%アップ。
売上高は2億700万アップし、全教員の昇給にもつながりました。
しかも入学者数、第一志望者数、売上高は年々増加しているんです。
保護者からも、「レベルの高い学校に通えたとしても、ここまで熱心にご指導くださる先生方にはきっと出会えないと思います。 生きてきた中で、初めて本人らしい姿があります」「中学校時代は、ほとんど口もきかず、『は?』『別に?』しか発しなかった息子が、今では家に帰るなり着替えもせず、友達のこと、先生のこと、部活のこと、これでもかというぐらいに喋りまくっています」などの声が寄せられました。

針谷今後の展望としては、不安を抱えた生徒を1人でも多く受け入れられる体制を整えることが大事。
正則学園の魅力に惹かれた志望者が1人でも多く入学できるように、教室の新設、拡大を計画しています。
また、自分の行きたい進路を目指したい生徒のために、特進クラスを充実させていくことも検討しているほか、先生一人ひとりの個性を発信するコンテンツも計画中です。
正則学園が生徒一人ひとりの可能性を埋もれさせない姿勢を示すことで、教育業界に良い影響を与えていければと考えています。

※掲載の記事は2023年12月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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