一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >長田敏希氏
【プロフィール】
株式会社ビスポーク
代表取締役CEO/ブランドコンサルタント・クリエイティブディレクター
長田敏希氏
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会2級資格取得者
広告代理店を退社後、チームビルディング、ブランディングを核に多角的ソリューション提案を行なうコンサルティング企業の株式会社ビスポークを設立。世界三大広告賞のカンヌライオンズ、The One Showを始め、D&AD、NY ADC、iF デザイン賞、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞など国内外の受賞多数。ブランディング事例コンテストは2018年度に「能登輪島米物語」で準大賞、2019年度に「株式会社鈴ノ屋のブランディング」で優秀賞を受賞。
聞き手:一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター 能藤
聞き手
長田さんが取り組まれた、“きなこ棒”を作った駄菓子屋「鈴ノ屋」のブランディングですが、どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
長田
鈴ノ屋は平成23年に設立された、ご夫婦で経営している駄菓子屋です。新しい駄菓子屋ですが、オーナーの小林鈴子さんの実家がきなこ棒を作った元祖の会社です。屋号は変わりましたが三代目にあたります。ただ、今はきなこ棒も100円均一の店など競合他社が参入しており、顧客が鈴ノ屋の商品を識別できないという課題がありました。そこで、「きなこ棒といえば鈴ノ屋、駄菓子屋といえば鈴ノ屋」と言われるようなブランドを作りたいとご相談を受け、ブランディングに着手することになりました。
聞き手
まずどのようなことに着手されたのでしょうか?
長田
まずは理念の掘り下げを行ないました。「そもそもなぜこの事業を始めたのか」という経営者の想いを言語化し、初代の方がどのような想いで事業を始めたのか、ルーツを掘り下げていきました。たとえば、私も聞いて驚いたのですが、初代のオーナーは紙芝居屋からきなこ棒をスタートしているんです。紙芝居屋で水あめを一緒に売っていて、時代が進み、水あめだと寂しいのできなこをまぶすようになった。それがきなこ棒のスタートだったんです。
聞き手
なぜ理念の掘り下げが必要だったのでしょうか。
長田
きなこ棒は差別化が難しいコモディティ商品ですので、ブランドのストーリーで差別化を行なう必要があります。共創型のブランドづくりを行なうためにも、チームで新たな価値を発見することが目的でした。チームブランディング、つまりいろんなステークホルダーの方と話し合いながらチームでブランドを作っていくのが効果的だと考えたわけです。今回の場合は、大手流通の方や問屋さん、メーカーさん、そして僕らのような第三者が入り、チームとして議論を重ねたことがポイントだと思います。
聞き手
ブランドのビジョンやミッション、バリューについても教えてください。
長田
ビジョンは「どういう形で社会にブランドを伝えていくか、貢献していくか」という観点で考え、「からだに良い素材の駄菓子で、元気でまっすぐな笑顔を育てる」と決めました。さまざまな関係者へインタビューを繰り返してわかったことですが、駄菓子にはいろいろな添加物が入っているイメージがあり、お母さん方が子供に与えづらい状態になっているんです。流通関係の方に聞いてみると「駄菓子は売れないカテゴリーになっている」という意見もありました。そうした中で「からだに良い駄菓子」というポジショニングを作ることで、新しい価値が生まれるのではないかと考えたわけです。
聞き手
ビジョンを達成するためのミッションはどう策定されたのでしょうか?
長田
ミッションは「駄菓子のおいしさと文化を伝える“駄菓子の匠”」としました。駄菓子には、こだわって作っているというイメージがあまりないかもしれませんが、鈴ノ屋は温度帯なども気にしながら、原材料にすごくこだわっています。百貨店のお菓子と比較しても遜色ないほどのこだわりで作っているので、“匠”というポジションを目指していこうと決めました。
聞き手
そうしたビジョンやミッションを果たすためのバリューは?
※掲載の記事は2020年4月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。