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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >北原 友氏 Vol.2

「想い」があるからうまくいく。ブランディングから始める店舗設計 後編

北原 友氏 Vol.2

【プロフィール】

株式会社イマージ 取締役
ブランド戦略室 室長

1984年長野県生まれ。
日本大学で建築を学び、卒業後インディーズバンドのドラムを担当し、東名阪ツアー、全国ツアーを経験。
その後、一級建築士事務所(株)イマージに入社。
建築事業に加え、自社経営の飲食店5店舗、物販店3店舗、フィットネスジム、ホットヨガスタジオのブランド・マネージャーを務める。
2012年宅地建物取引主任者の資格を取得し、現在は新規店舗のブランディング~土地探し~デザイン~建築工事~サイン・グラフィックと、トータルで行うイマージの繁盛店づくりを「ブランド」という切り口からサポートしている。


今回は2016年ブランディング事例コンテストで大賞に選ばれた株式会社イマージの北原さんに、受賞事例の「地元墓石店のリブランディング」を中心に、店舗設計におけるブランディングについてお聞きしました。

聞き手:平野史恵(株式会社イズ・アソシエイツ クリエイティブディレクター)


ブランド要素・ブランド体験で「心に寄り添う」を表現

平野

ブランド・アイデンティティができたら、それに合わせてブランド要素を見直していったわけですね。


北原

石栁北原さんは創業135年の老舗石材店です。その歴史の重みと社長の想いを表現したかった。そこでいろいろなフォントを探したのですが、社長の直筆文字がとてもイメージにあっていたんです。それと家紋をシンボルマークとして組み合わせてロゴを作りました。キャッチコピーは、ブランド・アイデンティティをお客さまが聞いてもしっくりする言葉に置き換えて「想いを大切にする」にしました。また、キャラクターは5代目社長である栁太郎さんを起用。職人らしさを出して作務衣姿にし、石を手作業で掘る写真を採用したのです。


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平野

そこでいよいよイマージさんの得意な店舗設計ですね。こだわった点はどんなところでしょう?


北原

石栁北原さんの店舗は諏訪神社のすぐ近く。参拝に訪れた人が必ず通る場所にあります。そのため、諏訪神社の雰囲気ともマッチするよう入り口には家紋をあしらった大きな暖簾をかけ、作業場も外から職人が働いているところがよく見えるように大きな窓を取り付けました。さらにそれまで墓石のサンプルは雨ざらしでただ置いてあるだけのような状態だったのを、屋根をつけた展示スペースに展示。せっかく1基1基想いを込めて作っているものですからね。
推奨事項・禁止事項については、本来なら細かく設定するのですが、すでにこの段階でみんなのイメージが共有できたのであえて禁止事項だけにしました。


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平野

それが安売りの一切禁止、セールス・売り込みの一切禁止なのですね。競合が安売りで、ぐいぐい営業する中、あえて全く反対の路線を採ったのでしょうか。


北原

はい。これまでは墓石は高価な買い物なので、どうしても他社と相見積になっていました。そうなると価格競争に陥ってしまう。それよりも自分たちのブランドを守ることを優先させようと決めたのです。ブランド・アイデンティティは「心に寄り添う」です。ですので、大切な人が亡くなって意気消沈しているお客さまには、DMなど決して送ってはいけないんです。


平野

ブランド体験のシナリオはどんなものだったのでしょうか。


北原

石栁北原さんには店の奥にとても立派な日本庭園があったんです。そこで、意気消沈した様子で墓石を探しに来た木村さんに、女性陣がお出迎えし、日本庭園を眺めながらお茶やお菓子をいただいてもらう。そしてゆっくりと故人との思い出を伺いながら、ふと工場を見ると作務衣姿の一級技能士が黙々と墓石を作っている。そうして少しずつ木村さんの心が開かれたところで「故人の方に、どのようなお墓を作ってあげましょうか?」と聞いてあげるんです。


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売上額3,600万円から5,000万円に!

平野

そうしてリニューアルオープンの日を迎えたわけですが、結果はどのようなものだったのでしょうか。


北原

オープンイベントの2日間で墓石5基の受注となりました。当時、年間受注件数が20件前後だったわけですから、かなりの売上です。4月にリニューアルオープンしたのですが、年内の予約も一杯になって、その年の年間売上額も3,600万から5,000万に伸びました。


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平野

広告などはどうしたのでしょうか?


北原

オープン時に新聞広告をしただけです。その後は特に何もしていないのに雑誌の取材も入るようになったんです。それに、皆さんの表情がどんどん変わっていくのがよくわかりましたね。今回のブランディングは、特に新しいものを生み出したわけではありません。ただ今あるもの、自分たちが見逃しているものを削って削って、残ったコアコンセプトが自分たちのあるべき姿だとわかった、ということ。そして磨き続けて尖らせたことで、自分たちが何なのかに気付くことができたのだと思います。


繁盛店を作るためにトータルで支援する

平野

建築設計の仕事では、ブランディングまで行うというのは珍しいように思えるのですが、よくあることなのでしょうか?


北原

一般的にはあまりないと思いますよ。ただ、イマージが目指すものは「繁盛店をつくること」。そのために、店舗設計のお話を頂いたときに、このお店はブランディングが必要だな、と感じたらクライアントとともにブランディングをしていくようにしています。景気の良かったころは、店舗でも目新しかったり、オシャレなものを作ればそれだけで人が来ました。でも今は店舗を運営する側も予算も少なく、消費者も形だけのものには流されない時代になっています。そのため、しっかり自社の強みや弱みを理解したうえで、ターゲットを明確にし、ブランド・アイデンティティを固めていく必要があります。店舗設計はブランド要素の一つにしかすぎません。お客さまのお店が繁盛店になってもらうために、ブランド・アイデンティティから一気通貫して、店舗設計、広告、アフターフォロー、メンテナンス、フェアの相談までトータルで請け負うようにしています。


平野

他にはどのような案件に関わったのでしょうか?


北原

以前地元の信用金庫から、地元の大きな寿司屋の経営がうまくいかなくなり、これを再生させてほしいと声がかかったんです。この店舗は地元で一番の老舗で、店舗面積もかなり大型。なのに平均単価は一人12,000円から15,000円くらいで、会社の社長や役員さんたちが行くような高級寿司店です。でも息子さんに話を聞いてみると、「うちの寿司はおいしいから、幅広い世代に食べてもらいたいんだ」と言う。そこでターゲットを設定し直し、ブランド・アイデンティティも変更し店舗をリニューアルしたところ、今では売上も120%アップで推移しているようです。


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大切なのは働いている人たちの中に「想い」があること

平野

クライアントのブランディングをしていて、難しいなということはありますか?


北原

ブランディングも形だけ、テクニックだけでやってしまうと、小手先だけのものになってしまい続かない。大切なのは、働いている人たちの「想い」があることです。どうやったら儲かるか?だけ考えて企業理念がないような会社では、うまくいきませんね。ブランディングが成功する案件というのは、もともとその事業をやっている人たちの中に「誰のためにどうしたい」という想いがちゃんとあるところだけです。想いはあるのにそれをどうすればいいのかわからない、従業員同士で共有できていない、といったところに私が入ることで、整理して想いを引き出しているんです。


平野

最近地方都市では、郊外のロードサイドに大型店が立ち並び、駅前がどんどんさびれていく傾向にありますが、茅野市はどうなのでしょうか?


北原

茅野市も人口5万人の地方都市で、状況としては同じです。私も社長もこの町が大好きで、この町を元気にしたいと思って仕事をしています。以前茅野駅の駅ビルの経営がうまくいかなくなりテナントの撤退が相次ぎ、次に入るテナントが見つからない状況がありました。そこでイマージが飲食店や物販店を出店し、それぞれにコンセプトを決めて個性を出しながら営業を行っています。もちろん、土日はみんな郊外の大型店に行ってしまうので、真っ向から勝負してもかないません。でも、「自分たちがどうしたい」という想いがあって、強みを生かしてきちんとコンセプトを打ち出せていれば、ちゃんと人は来てくれます。 これからも、地元で売り上げが上がらず困っている店舗があったら、「イマージに相談してみよう」と思われる企業になっていきたいと思います。


平野

ありがとうございました。