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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 高木 純氏

“ブランドゼロ”状態から認知獲得へ
三重苦を乗り越えて需要拡大を実現した
“へべす”のブランディングとは?

株式会社コムデザインラボ高木 純

Profileプロフィール

株式会社コムデザインラボ 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者

2010年10月に「コムデザインラボ」を開業、2014年10月に「株式会社コムデザインラボ」として法人化。
ショップブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマークやキャラクター、印刷物やホームページなど、すべて自社完結でトータルデザインする“合わせ技一本のデザイン事務所”として全国にクライアントを持つ。
ブランディング事例コンテストは2022年度「信州松本エリアの観光プロモーション事業のブランディング」で地方創生審査員特別賞、2023年度「地方の税理士事務所のブランディング」で中小企業庁長官賞を受賞。
2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」では「柑橘『へべす』のブランディング」で大賞・BRAND MANAGEMENT OF THE YEAR・農商工連携審査員特別賞を受賞。

宮崎県日向市原産の柑橘、へべす。
生産量の少なさから“幻の柑橘”とも呼ばれていますが、全国的な知名度がなく、販売期間も短いため生産農家が少ないという課題を抱えていました。
そこで日向の「へべす大使第1号」の川橋さんとコムデザインラボは、2019年から民間の立場でへべすのブランディングに着手。
様々な施策を打ち出し、へべすの需要拡大に貢献しています。
実際どのようなブランディングを行ったのか、コムデザインラボ代表取締役の高木純氏にお話を伺いました。

かぼす・へべす・すだち比較

ブランディングで“三重苦”解決へ

Q. 本日は、2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」で大賞を受賞した「柑橘『へべす』のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず、今回のブランディングの経緯について教えてください。

「柑橘『へべす』のブランディング」は、人生のほとんどを「へべす」と共に歩んできた女性が、全く知名度のないブランドゼロの状態から会社を立ち上げ、へべすの認知獲得に取り組んだプロジェクトです。
まず、へべすについて簡単にご紹介すると、宮崎県日向市原産の柑橘で、生産量の少なさから“幻の柑橘”と呼ばれており、果汁が豊富で種も少ないのが特徴です。
全国にはあまり流通しないのですが、日向市では日常的に販売されています。

ブランディングは、2011年から「日向のへべす大使第1号」「みやざき大使」を歴任し、行政のPRに取り組まれるなど大のへべす好きである川橋田香子さんからご相談をいただいてスタートしました。
川橋さんは、結婚を機に宮崎から本州に移住した際にへべすの認知度が低い現実に直面し、個人でへべすのレシピを開発するなど試行錯誤していたんです。
そんな中で2019年ごろにご相談をいただき、ブランディングに取り組み始めたという経緯です。

川橋田香子さん

Q. ブランディングはどのように進めていったのか教えてください。

へべすには、3つの課題がありました。
1つは、販売シーズンが短く、行政がプロモーションする期間が旬である夏に限定されること。
2つ目は、知名度がなく、販売戦略が見つからないため生産農家が少ないこと。
そして3つ目は、食卓では焼き魚の脇に添えられるだけ、というような地味なイメージが定着していることです。
つまりPRできる時期の短さ、売れないことによる生産農家の少なさ、地味で目立たないイメージ、という三重苦です。
ブランディングでは、そこを解決することが求められました。

へべす3つの課題

そこで、打開策発見のため、まずはへべすについて深掘りしました。
なぜ、へべすはこれまで流通してこなかったのか?
それは、そもそも地元では「へべすは買うものではない」という認識があったからです。
日向市には、嫁を嫁がせる時にへべすの苗木を持たせる風習があり、各家庭の庭先にはへべすの木が植えてあったそうです。
つまり、日向市ではへべすは「買うもの」ではなく「家に植えてあるもの」という認識だったんですね。
そこで、この「流通しなかったへべすの歴史的背景」をブランディングのヒントにしました。

“加工品”の開発に注力

Q. ブランド・アイデンティティやブランド要素はどのように決めたのか、教えてください。

まず、へべすの地味なイメージを打破すべく、日照時間が長い宮崎のイメージから、ブランド・アイデンティティは「晴れやかな柑橘」としました。
ブランド名は、川橋さんが「みやざき大使」「日向のへべす大使」を兼任していることから、宮崎県と日向市のどちらにもご協力いただけるように、「ひむかの国宮崎」と「日向(ひゅうが)市」の両方の意味を持たせた「日向(ひむか)へべす」と命令しました。
名称に地域名を組み合わせることで、地域性とプレミア感、一貫性も演出しています。
ロゴは、柑橘の場合は丸い形が多いのですが、婚礼の風習から連想する「箱入り娘」の世界観と、箱に入った贈答用としてのへべすのイメージを重ねて、「箱入り」を表現する四角いデザインを採用しました。
さらに、「日向へべす」のブランド誕生と同時に、へべすの総合代理店であるへべすブランドカンパニー「株式会社K&Co.」を立ち上げました。
これまで行政に依存してきたへべすのPR・販売を担う、日本初・唯一の会社です。

ブランド・アイデンティティ

また、販売シーズンが短いためプロモーション期間が短命である問題や、知名度が低く生産農家が少ない問題を解決するため、加工品の開発に注力しました。
「ハレの日」に選ばれるギフト商品を充実させることで、旬に限らず1年中へべすを店頭に並べられると考え、戦略の軸に据えたわけです。
旬の時期に売れなくても加工品の材料として使えるため、生産農家はへべすを計画的かつ安定的に収穫できます。
この戦略により、近年は新規参入する就農企業が増加しており、県や市は、宮崎全体での生産体制を強化すると宣言しました。

さらに、派手なマンゴーやメロンの影に隠れて目立たない存在だった“地味なイメージ”については、日向市の婚礼の風習をヒントに「ハレの日」に選ばれる柑橘、という世界観を構築することで解決。
婚礼やお祝い事で選ばれる贈答用ブランドとして付加価値づけし、他の食材とのペアリングにより、ただの脇役からなくてはならない希少な存在として認知されることを目指しました。

ハレの日に相応しいブランド

Q. コミュニケーション戦略について教えてください。

「毎日が展示会・物産展のようなマルシェ戦略」を立案しました。
売り場には、へべす大使である川橋さんが自ら立ち、魅力をダイレクトに伝えたのです。
この戦略で、今では客単価1万円を超えることもあるなど熱狂的なへべすファンが定着しました。

また、看板商品である「黄金へべす鯖寿司」の少し変わったアイデアも企画しました。
それが、品質保持期限の短い鯖寿司を直接お送りするのではなく、相手が好きなタイミングで取り寄せできる日本初の鯖寿司専用の商品券「サバチケ」です。
日持ちしない鯖寿司の流通問題を「サバチケ」のアイデアで解決するというユニークな手法は、メディアにも取り上げられました。
「黄金へべす鯖寿司」は、相場の4倍以上の価格設定にもかかわらず、販売すれば完売という状況が続いています。
さらに、へべすのお菓子「ハレの日 ダックワーズ」は、高級車レクサスのオーナーズラウンジから直接オファーを受けて、ラウンジ限定のお茶菓子としてセレクトされました。

オリジナル商品の実現

サバチケ

ハレの日 ダックワーズ

ブランディングでへべすの需要が拡大

Q. ブランディングの成果について教えてください。

総合代理店としてへべすの売り方のお手本を示したことで、需要が拡大しました。
へべすの生産を始める就農企業も増え、県もバックアップを表明しています。
加工品メインの販売戦略によって、へべすを年中店頭で見ることも実現しました。
傷物も加工品の材料として使用するので、フードロス問題も解決しています。
また、これまでは売り物にならなかった完熟した黄色いへべすには「黄金へべす」として付加価値を付けることで、農家が安心して育成できるようになりました。
さらに、国内屈指の人気マルシェ「東別院暮らしの朝市」では、原産地でもない名古屋のマルシェであるにもかかわらず、へべすを取り扱う出店者が9組もいるのです。
へべすを自社の商品に取り入れると付加価値が付くと認識され、この5年間でお惣菜、ケーキ、ドリンクなど、様々な形でへべすが使われるようになっています。

売り方のお手本

フードロス問題解決

黄金へべす

マルシェ

Q. 現在の課題と今後の展望について教えてください。

約5年間の活動で気づいたのは、「地方の人は自分たちの身近なものの魅力に気づきにくい」ということでした。
そして数億円単位でプロモーションしても知名度があがらない根本的な要因は、予算の問題ではなく、どうPRするか、というブランディングの問題だと考えています。
自由度の高い民間主導で実績を作り、お手本として行政に還元する流れを作ることで官民一体となったブランド戦略が組めれば、今後、より大きなインパクトを残せるのではと思います。

へべすの売り方については、今後は生産農家や観光分野と連携した一貫したネットワークを構築することを計画しています。
また、マルシェ展開の成功によって実店舗のオファーが絶えないこともあり、今春には日本初のへべす専門店のオープンも予定しています。

※掲載の記事は2025年1月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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