一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > ブランディング事例 >若鶴酒造株式会社(富山)
富山から世界へ 地域を巻き込むブランド戦略
2025年度BRAND MANAGEMENT AWARD 地域創生審査員特別賞


「富山から世界へ 地域を巻き込むブランド戦略」は、北陸最古のウイスキー蒸留所がスモーキーという独自性を核にブランドを確立した事例です。1862年創業の若鶴酒造の5代目社長は、55年前に蒸留されたウイスキーに衝撃を受け、北陸唯一の蒸留所を未来につなぐ“繋ぎ手”となることを決意。ただ、ブーム終焉後の需要減への懸念や、新規参入が急増したことによる差別化、ブランド認知度などの課題があり、社内でも社長が描くビジョンに現場がついてこれないなどの課題がありました。加えて、市場の急成長でジャパニーズウイスキー全体の価値が低下するという業界的な課題や、伝統工芸の衰退で町の魅力が薄れつつあるという地域の課題もありました。
そこで市場機会を検討し、「スモーキーという希少な個性と富山・三郎丸の地域性を融合させれば、国内外のプレミアム層に選ばれる唯一無二のブランドを確立できるのではないか」と仮説を構築。「社内浸透と一体感」「地域との共生」「長く愛されるブランドの確立」を目指しました。まずは社長と社員とともにブランド・アイデンティティを策定。プロセスを共に歩むことでトップと現場のギャップを埋めました。ブランド・アイデンティティは「地域に拠って、世界に立つ。」とし、ロゴマークも刷新。三郎丸ならではのパッケージも作成しました。商品は「スモーキーさの徹底追求」を国内外でアピール。また、五感で楽しむ蒸留所の実現や、富山の技や素材が調和した空間でのワークショップ体験など、「モノ」から「コト」提供へシフト。蒸留所の垣根を越えてボトラーズ事業を立ち上げ、樽再生事業もスタートしました。
ブランディングの結果、社員のブランド理解度や愛着心がアップし、社員数も大幅に増加。「スモーキーなウイスキーといえば三郎丸」というポジションの確立にも成功し、ウイスキーの売り上げは2019年比で約6倍、輸出額は約8倍、販路は35カ国と拡大。ボトラーズとして10か所以上のパートナーシップを組むなどジャパニーズウイスキー文化の持続可能化に貢献し、高岡銅器など地方伝統産業の再生のきっかけにもなったほか、観光による地域の関係人口の増加にも貢献しました。




















