一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > ブランディング事例 > 能登輪島米物語(石川県)
輪島市 × 輪島の農家9社でつくる「地域ブランド」
2018年度ブランディング事例コンテスト 準大賞受賞
「お米を生活者に直接売りたい」という輪島のお米農家さん9社が手を携えて2014年にスタートしたプロジェクト。
当初は市の事業で、地元のデザイナーにパッケージデザインだけをしてもらったものの、商品の売れ行きは芳しくなく、流通からの返品率も3割を超えている状況でした。
当時、輪島市に地域おこし協力隊の制度を使って勤務を始めた、山本亮さんがこのプロジェクトを引き継ぎ担当。プロジェクトの不調に頭を抱える輪島市を助けたいと、策を練ります。
まず山本さんが危機感を感じたのは、プロジェクトに生産者さんの想いが反映されていないことでした。市のプロジェクトとはいえ、そこに生産者が主体的に関わる重要性を強く感じた山本さんは、母校の東京農業大学で教鞭をとる長田敏希さんに相談。チームビルディングを含めたブランド構築を依頼することとなります。
生産者が最も誇りをもつ味の良さだけでは差別化にはなりづらいと感じた長田さんは、米の食べ比べを生産者を巻き込んで行うことで、自分たちの立ち位置や一般のお客さんの感覚を理解してもらうことから始めました。
どのお米も特色があって美味しい。そうであるならば、味の優劣ではなく、食べ合わせるおかずによって選び分けたり、輪島の観光資源と組み合わせることで相乗効果を生み出すことが有効なのではないか、そう仮説を立ててプロジェクトは生産者さんを巻き込みながら加速していきます。
9種類のお米に9種類のパッケージデザイン。
それぞれ、能登輪島が誇る自然や祭りごとの風景を描き、生産者さんの似顔絵とおすすめのおかずも描きました。お米とおかず、食を通して輪島を旅し、魅力を感じ取ってもらいたい。そんな想いが込められた商品が誕生しました。
リリース直後からマスメディアの取材が入り、名旅館と名高い「加賀屋」のギフト商材にも選ばれるなど、高い注目と評価を集めています。また旧商品では返品率が3割を超えていたものが現在はほぼ返品なし。人気の高さをうかがわせます。
役所任せではない、生産者と一体化してブランディングを行った意義深さ、自商品のみならず地域全体の相互創生を目指して取り組まれた点、生産者の想い・コンセプト・パッケージデザインに至るまでの一貫性などが評価され、2018年度の準大賞に選ばれました。