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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >かに物語 Vol.1

普段の食卓においしいカニ料理を。気仙沼生まれの「かに物語」 前編

かに物語 Vol.1

【プロフィール】

株式会社カネダイ
水産食品部・直販事業長 熊谷 公男氏

1995年株式会社カネダイ入社。
営業、経営企画を経て現在は水産食品部にて直販部門の「かに物語」を担当。

聞き手:平野史恵(株式会社イズアソシエイツ クリエイティブディレクター)


古くから気仙沼の水産業を支えてきたカネダイ

聞き手

御社の事業内容についてお聞かせください。


熊谷

株式会社カネダイは宮城県気仙沼市に本社を置き、漁船経営を中心に水産食品加工や廻船問屋、石油・灯油・プロパンガスの卸を営んでいる会社です。創業は昭和17年、設立昭和30年で、水産業では地元でも有数の老舗企業です。
漁船経営はインド洋でマグロを漁獲する第一漁吉丸、ナミビア沖でDeep Sea Red Crab(オオエンコウガニ、マルズワイガニ、以下まるずわいがに)を漁獲するカタミラ号(当初は第五漁吉丸という名で、現在はナミビアとの合弁船)、震災で現在復興を目指している定置網 1ヶ統を所有しています。
水産食品加工は気仙沼に4工場、中国山東省烟台市に独資の烟台福宝食品有限公司(1999年設立)を所有し、気仙沼で水揚げされる前浜の鮮魚出荷や加工品、カベキ・カタミラ号が漁獲するまるずわいがに、海外から原料を仕入れしたズワイガニ、タラバガニ、甘エビ、ボタンエビをむき身加工しています。しかし、2011年の東日本大震災で気仙沼の工場は全て被災。再建がなかなか進んでおりませんでしたが、ようやく今年新工場が竣工し、再開したところです。


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南アフリカ沖で希少なまるずわいがにを漁獲

聞き手

まるずわいがにというのはどのようなカニなのでしょうか?


熊谷

甲が赤いのが特徴(若いうちだけ。大きくなると黒くなっていく)で、深海500~800ⅿに生息し、エサも豊富であまり動くことがないため、比較的浅瀬に生息する一般的なカニより、非常に身入りがよく、甘み旨みも抜群です。加熱しても味が残ることから、幅広い料理に使用されています。さらに、栄養価が高く、イソロイシンなど体で作ることのできない必須アミノ酸やプロリンなど旨みに優れたアミノ酸が高い数値を示しています。
主にスペインとボストンでは高級食材として広く消費されています。日本では、ほとんど獲れず、伊豆半島など一部の地域で偶然漁師の網に入る程度です。現在まるずわいがにを漁獲している日本の会社は国内2社のみですが、もう1社は缶詰原料としてのみ出荷しているため、むき身販売はカネダイが国内唯一です。


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聞き手

まるずわいがにを獲り始めたのはいつ頃からなのでしょうか?


熊谷

40年くらい前からでしょうか。現在の社長が若かりし頃、世界中の海からおいしいものを日本に届けたい、と探したのがきっかけです。最初はエビを獲っていたのですがそのうち獲れなくなり、まるずわいがに移行していったそうです。まるずわいがには南大西洋のナミビア沖で獲れるのですが、船の上でボイルしてすぐに冷凍します。この時間がたった1時間です。そのため、一度も解凍せず日本にもってきたまるずわいがにはとても新鮮で、甘みや旨みが十分あるのです。


聞き手

中国に加工工場をお持ちのようですが、工場についてもお話しいただけますか?


熊谷

はい。今から25年くらい前に、中国の中国山東省烟台市に進出し、1999年に独資の工場を建てました。当時としては日本の地方企業が中国に独資工場を持つことはかなり珍しかったと思います。宿舎も完備しており、内陸部の若い人たちがたくさん働きに来ていました。その頃は1,000人くらい働いていたのですが、現在はだいぶ少なくなり、400~500人くらいになっています。最近では一人っ子政策や高度成長化が進み、なかなか人が集まらないため、烟台市内の主婦層のアルバイトも多くなりました。
よくカニ料理を食べると、身を取るのに真剣になって会話がなくなりますが、冷凍のまま身を取れば簡単に取れます。ここではこういった食品加工を行っています。震災前の話ですが、中国の食品偽装問題が騒がれている中で、うちでは毎年15人くらいを日本に呼び3年間の研修を受けさせました。日本でしっかりと研修した工員は、中国に戻ってリーダーとして工場を管理しますので、日本から工場見学に訪れたお客さまも驚くくらいしっかりしていますよ。当社も新工場ができ、今年からまた研修制度を復活させました。


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気仙沼ならではのものを。
まるずわいがにをブランドにした「かに物語」

聞き手

まるずわいがに自体は歴史のあるものなのですね。そんな中、「かに物語」をはじめたきっかけを教えてください。


熊谷

カネダイの社長は気仙沼の漁業協同組合の組合長もしていましたし、従業員も150名くらいおり、地元では割と大きな企業でした。気仙沼の工場では三陸沖で獲れたさんまやかつおなどの食品加工を行っておりましたが、競合も多く価格競争が厳しい状況です。さらに2000年頃からデフレが続いて、人件費や維持費が高い気仙沼の工場が、経営の足かせになっていたのです。
ただ、会社全体としての売上は伸びており、特に中国の工場で加工しているまるずわいがにを含めた商材は、他社では扱っていないものであったり、中国という加工地の優位性で、価格決定権を持っているため、こちらはしっかり利益が取れていました。
こうした中、価格競争に負けないために何か付加価値のある商品や、気仙沼ならではのオンリーワン商品を作らなくてはならない、ということで2010年9月にプロジェクトを立ち上げました。当時カネダイの取引先はBtoB企業がほとんどでした。そこでBtoC向けの直販部隊を作り、新しい市場開拓を目指したのです。


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聞き手

直販プロジェクトは順調に伸びていったのでしょうか?


熊谷

最初はカニのむき身を販売しました。一般的にカニの売れる時期は10月から年末にかけてです。自分たちでチラシを作り広告を出したり、ECサイトを立ち上げるなどし、販売を始めました。しかし、結果は思ったほど売れませんでした。何が悪かったのか、みんなで検討しました。近年はインターネットの普及で、お客さまは商品を購入する前にサイトで価格を比較するのが当たり前になっています。味はうちのほうがずっとおいしくてもお客さまには伝わらない。どうしても、価格の安いものに流れてしまいます。この価格競争に勝つために考えたのが「ブランド化」でした。 ブランドを作るなら、やっぱりうちの一番の強みであるまるずわいがにだろう、ということになったのです。まるずわいがににはカネダイの歴史があります。そこで「かに物語」というネーミングに決まりました。


後編へ続く(11月27日掲載)

※掲載の記事は2018年6月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。