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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >山崎 浩人氏 Vol.1

「ブランド=経営理念」と考える – 前編

山崎 浩人氏 Vol.1 ネオ・アット・オグルヴィ株式会社チーフ マーケティング プロデューサー

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【山崎 浩人氏氏のプロフィール】

ネオ・アット・オグルヴィ株式会社チーフ マーケティング プロデューサー

1964年生まれ。

明治大学商学部卒業。広告会社、コールセンター事業者、モバイルキャリアレップCEO、クロスメディア事業者CEOなどを経て現職。

2012年、日本自動車メーカー8社の共同プロジェクトである「Drive Heart」キャンペーン成功の功績によって、日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会主催、第10回Webクリエーション・アウォードで、「Web人 of the year」を受賞。

マス広告・コールセンター・モバイル・クロスメディアなどの幅広いマーケティング事業を経験し、現在は「マーケティング3.0」の具現策「マーケティング3.1」と「マーケティング4O」(One Earth、One Vision、One Network、Optimization)概念を提唱している。


東日本大震災での価値観の変転

岩本

本日は、数々のクライアントを手がけてきたネオ・アット・オグルヴィの山崎さんに、“ブランディングの現在”をお聞きしたいと思います。まずは、現職のマーケティング プロデューサーに至る経緯をお聞かせください。


山崎

キャリアの前半はプラットフォーム側にいました。広告で言えばマスメディア、それからコールセンター、携帯キャリア、クロスメディア。いまは立場が変わって、マーケットインの側にいます。自分としては、違和感のない自然な流れでした。


岩本

ブランディングを自分の仕事だと意識したきっかけはなんでしょうか。


山崎

はっきり意識したのは最近ですが、振り返ってみると、ずっと以前からかもしれません。日本のクライアントに、新しいマーケティングへどんどんチャレンジしてほしかったんです。日本のブランドをなんとかしたいとずっと思っていました。ただし、ブランド支援をするんだと強く意識するようになったのは、オグルヴィ・アンド・メイザー(O&M)でブランドの価値/意義をより深く見直すようになったところに、東日本大震災があってからです。


岩本

それも自然な流れだったのでしょうか。


山崎

ぼんやりと以前から思ってはいたけれど、なかなか確信を持って行動できてはいなかったのだと思います。そもそも企業は社会に貢献するべきもののはずでしょう。CSRという取り込みは、わざわざ宣言することではなく、本業で実施すべきことです。そういういろいろな疑問が、3.11で顕在化したんです。


岩本

具体的には、3.11がどのような影響を与えたと山崎さんは考えていますか。


山崎

あれだけの大震災ですから、人々の価値観はかなり変わったはずです。そのような社会で、「自分になにができるのか」と自問自答しました。また、これからの価値観は次の3つが重要になっていくと考えました。1つ目は機能的価値、2つ目は情緒的価値、そして3つ目は投資的価値です。



岩本

機能的価値や情緒的価値は、ブランド論などでたびたび見聞きしますが、投資的価値は山崎さんのオリジナルでしょうか。


山崎

そうです。消費者インサイトでは3.11によって、さらに根本的なもの、本物を求めるようになったのではないでしょうか。将来のために本当にそれが必要なのかどうかと考えるように。それが投資的価値です。もちろん機能的価値でも、より本質を問うようになっていますし、情緒的価値では例えば「震災直後にプロ野球を開催すべきかどうか」でみなさんが悩んだように、それまでの基準では測れなくなったと考えています。いままでは無意識に消費していた人々が、自分にとって「本当に大事なもの」を求めるようになりました。その「本当に大事なもの」とはなんだろうか、そんな「本当に大事なもの」を日本の企業は提供できるのだろうか、と思ったわけです。


岩本

東日本大震災は、日本企業の姿勢を変えさせる出来事だったのですね。


山崎

そうです。未曾有の災害ですからクライアントや広告業界も含め、日本の企業全体が変わると思っていました。しかし残念ながら、結局まったく変わっていません。そこで自分でやるしかないと決心したんです。


岩本

日本の企業はなぜ変わらないのでしょうか。


山崎

はっきりとはしていませんが、高度経済成長という20~30年続けてきた成功体験があるので、そのやり方から抜け出せないのではないでしょうか。もちろん、変わらなきゃいけないと考えている人たちも大勢います。ところが変わる必要がないと考えている人の方が圧倒的に多いんです。変革意識のある人たちが、そんな圧倒的多数を動かすまでには至っていないというのが現状だと思います。


ブランドとは一体なにか

岩本

投資的価値は、3.11以降に至った考えでしょうか。


山崎

東日本大震災がきっかけでした。目先ではなく、中長期的に物事を見る必要性が生まれたからです。そういう観点で見てみると、日本の企業は長期的なブランド価値訴求ではなく、短期的な販売促進ばかりしているように見えます。Interbrandが発表しているグローバル・ブランドランキングでは、長年トップを維持していたコカ・コーラをアップルが抜いた事で話題になっていました。日本が誇る大企業でも、10位以内に1企業しか入っていません。なぜ日本の耐久財を中心とした大企業が消費財企業にブランド力で負けるのか、非常に興味深いと思いませんか。



岩本

日本企業がブランド力を付けるにはどうしたらよいのでしょうか。


山崎

ブランド価値の再構築が必要だと考えています。もちろん、各企業なりに懸命に行っていると自負しているでしょうけど、まだ足りないと思います。O&Mはグローバルで共有するフィロソフィー、プラットフォームを持っているのですが、まずは真っ白な状態でお話しをするために、私は、スタート時点で市場調査や業界の現状の分析などをお話せず、「いま世界の課題はなにか」というところから話すことがよくあります。すべてを再構築する必要があるので、ゼロから考えなければなりません。市場調査の話をしない理由は別にもあります。現代では、競合は同業他社とは限らないからです。異業種他社が突然、登場してその業界を席巻するようなイノベーションが、昔よりも増えていますから。


岩本

市場調査の話をしないとなると、導入はどんな内容なのでしょうか。


山崎

海外ブランドの動画などをお見せします。特に上位の人たちが「うちのTVCMと違う」と言います。それに気づいてもらいたんです。何度でも見たい動画、感動する動画が海外にはたくさんあります。日本で評価されているTVCMやブランドと明らかに違います。なぜ海外では、そういうものが制作されているのか。そして、どうして日本では流れていないのか。国内のTVCMしか見ていない人は、それでいいと思っています。初めて海外のものを見て、違いに気づくのです。そこで、世の中の変化や新しい世代の価値観についてお話しします。



岩本

ブランド支援しているのは、どのような企業が多いのですか。


山崎

様々な業界のトップクラスの企業が多いです。業界トップの企業に変革を起こすことで日本全体にインパクトを生み出したいと考えています。依頼される課題の根本は、企業の持続的革新と成長を達成するにはどうしたらよいか、ということに集約できるでしょう。


岩本

そのためにはブランディングが必要だということですね。


山崎

そうです。同じ商品を買ったとしても、そのブランドを知っているかどうかで違いが出るんです。逆に言えば、そこに違いを出せるものがブランド、あるいはブランド力だということです。例えば、ブランドを知っていると味の印象が違います。安心を与えることができたり、自信が生まれたりとか……。ブランドは、本質とか理念から情緒的に想起されるものです。消費者の立場で簡単に言うと、「なんだか好き」ということですね。クライアント側では、どう思ってもらいたいとかありますが、消費者側からすると、なんとなく、ということでしょう。ブランドとは理念そのものです。企業では、一番上位の考えだと思っています。


後篇へ続く