一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >高木純氏
【プロフィール】
株式会社コムデザインラボ代表取締役
高木 純氏
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者
大同工業大学(現 大同大学)を卒業後、株式会社バウハウス丸栄・ブランディング事務所などを経て、個人事業に着手。2014年に「株式会社コムデザインラボ」として法人化し、ショップブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマーク、ホームページなどすべて自社完結でトータルデザインするデザイン事務所として活動する。『唯一無二の世界観づくり』にこだわり、“ブランドデザインの力で、出会ったオーナーの『モッタイナイ』をなくすこと”がミッション。「スマートフィット100」でブランディング事例コンテスト2018の優秀賞を受賞。
株式会社コムデザインラボ
聞き手:一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 森永
聞き手
「スマートフィット100」のブランディングに取り組むことになったきっかけを教えてください。
高木
私がブランディングに携わったのは約1年半前です。当時、「スマートフィット100」は4店舗まで店舗数を増やしていましたが、ブランディングは自社で取り組んでおり、明確なブランドルールがなかったので、統一感もありませんでした。広告も、外国人モデルを起用した「よくあるよね」というベタなデザインだったんです。ですが、同社では今後の全国への出店、フランチャイズ展開に備えてさらなるステップアップを意識していました。そこで改めてブランディングに取り組むことになり、私がその役割を担うことになったんです。
聞き手
「スマートフィット100」のブランディングはどのような取り組みなのでしょうか。
高木
「フィットネスを身近に感じてもらい、健康寿命向上に貢献しよう」というのがブランドの掲げるテーマです。1日ワンコインからという業界最安値を打ち出している由来も、全てはその思いから来ています。ブランディングをするにあたって3C分析をし、改めて思ったのですが、ジムに行く人は、みんなが「シックスパックでマッチョになりたい」という思いを抱いているわけではありません。そこで、初めてジムに通う人への敷居を思いっきり下げた「気軽に、身近に行けるジム」というコンセプトを再整理しました。
聞き手
ブランド・アイデンティティがそこで定まったわけですね。
高木
はい。「フィットネスを身近に」というブランド・アイデンティティを定めてからは、カジュアルで気軽に健康を手に入れられる業態として、店舗デザイン・広告・インターナルの教育にいたるまで、さわやかなイメージを大切に、一貫性を意識しました。まずは日本発の24時間ジムのブランドとして浸透させるために、イメージの統一を図ることに着手したんです。
聞き手
具体的にはどのようなことをされたのでしょう。
高木
たとえばデザインでは、ブランド要素の「色」を軸として、カラーマネジメントをすごく意識しています。従来、フィットネス業界は強い印象を持つレッドやイエロー、ゴールドなどの色を使用しがちでしたが、「スマートフィット100」ではブランドカラーをさわやかなブルーに設定し、マシンの色や内装をこの色で整えました。また、ハンディング(ビラまき)を積極的に取り入れているアクティブな会社なので、チラシと同じブランドカラーの販促用のTシャツも作りました。そうして高級路線のジムとは一線を画す、さわやかでカジュアルな印象を受ける店舗に統一していったんです。
聞き手
統一感を何より重視されたのですね。
高木
はい。また、ロゴも改めました。会員間での通称だった「スマ100」という呼び名をフューチャーし、「スマ100ブルー」をメインカラーに使用した身近に感じてもらうロゴを作りました。ロゴパターンは、正式名称の入った基本形のほか、キャッチーに覚えてもらう販促用、身につけて恥ずかしくないスタイリッシュな会員用……と一貫性を保ちながら用途に合わせた3パターンを予め用意しています。販促用のロゴマークには「スマ100」という名称を取り込み、親近感を与えることを意識しています。
聞き手
広告も外国人モデルを使わないなど、独自性を打ち出していますね。
高木
現在、フィットネスジムの広告というと、イメージ写真には必ずといっていいほど外国人モデルが使われています。「スマートフィット100」では『身近に』という部分で明確に差別化を図るため、非日常を感じるような写真素材での PRは一切行わないというブランドルールを確立しているんです。
聞き手
デザイン以外では、どのような取り組みをされたのでしょうか。
高木
社内的な部分についていうと、企業の理念や信条を記したクレドカードを作成しました。これを各スタッフがネームプレートの中に入れることで、よりブランド・アイデンティティを浸透させることができるかなと。
聞き手
インターナル・ブランディングを徹底したわけですね。
高木
そうですね。24時間ジムでは、「ノースタッフアワー」と呼ばれる、スタッフがいない時間がどうしても出てきてしまいます。また、もともとは機械が並んでいて「自由に使ってください」という無機質な業態なので、「スマ100」ではスタッフがいる時間は、徹底した声掛けを実践するようにしたんです。ジムに来たことのない人がコアターゲットなので、マシンの使い方なども丁寧に説明してあげます。スタッフをより身近に感じてもらうための取り組みですね。これは、ジム経営の命題である「退会率」の低下を実現したひとつの要因だと思います。
聞き手
今回のブランディングでは、どのような想いを大事にされたのでしょう?
高木
「誰より、自分たち自身が『スマートフィット100』のファンだ」ということです。よく、「ブランディング=ファン作り」といわれますが、やっぱり実際にブランディングに取り組んでいる、ブランドを作っている自分たち自身が、実は一番のファンだ、ということがなにより大事なんじゃないかなと思います。私を含め携わっているスタッフも「近くにあったら行きたいな」ということを一番の基準に、ブランディングに取り組んでいます。
聞き手
「スマートフィット100」のブランディングの成果を教えてください。
高木
まず店舗数は、ブランディング前の4店舗から19年4月の時点で20店舗を超え、確実に増えています。また、認知度アップとともに新店舗の事前予約ではすぐに数百人会員が集まる状況です。それに伴ってスタッフ数も増えているので、インターナルブランディングも効果的に機能しているといえるのではないでしょうか。まだまだ店舗数は同業他社には及ばない状況ですが、メディアにも取り上げられるようになり、これからさらなる成長が期待できます。店舗数もさらに増えていくでしょう。
聞き手
では、現在の課題は?
高木
現在の段階では、店舗数のさらなる拡大はもちろん、まずは47都道府県への出店などでしょうか。飛躍的に成長するための準備を整えることが、現状の課題だと思います。
聞き手
最後に、今後の展開について教えてください。
高木
やはり、「日本発の24時間フィットネス」としてナンバーワンのポジションを確立することです。日本の健康寿命向上のため、ブランド・アイデンティティの「フィットネスを身近に」をより浸透させ、ジムに行ったことがない人が「通うならスマ100」と真っ先にブランド再生できる(思い出してもらえる)状況を作れるように、日本全国に店舗を増やせるようにしていきたいですね。
※掲載の記事は2019年7月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。