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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >都外川 八恵氏 Vol.1

色とブランドの関係性について – 前編

都外川 八恵氏 Vol.1 カラーコーディネーター&スタイリスト

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【都外川 八恵氏のプロフィール】

開発型貿易商社にて新規自社開発ブランドの企画や広報を担当。

その後、カラー専門のデザインスクール(DICカラーデザインスクール)に転職。

カラーの講師として一般の生徒を教える立場となり、スクール運営にも携わる。

その後、カラー専門のデザイン会社(DICカラーデザイン株式会社)にて

色の調査や企画&提案、色に関するコラム執筆や教材開発、また各種企業向け

セミナー講師や、韓国や中国などアジアを中心とした海外での

色に関する人材育成などを経験。

独立後はトータルコーディネートの理論化に注力し、

日本ファッションスタイリスト協会の「スタイリングマップ」メソッドや、

スタイリング業界初の「ファッションスタイリング検定」を構築し、広く

百貨店コンシェルジュやブランド店員様向けにファッションスタイリングの

レッスンや、カラーやファッションに関する企画や本の執筆に力を入れている。


色は世界のコミュニケーションツール

聞き手

都外川さんが色を追求することになった経緯からお聞きします。


都外川

もともといろいろなものをコーディネートするのが大好きだったのですが、子供のころから海外の異文化にとても興味があったんです。
それで、語学系の大学に進学して商社に就職したのですが、語学では帰国子女の人たちにまったくかなわなくて挫折しかかっていたんです。
そんなとき、電車の中でふと「色彩検定」の中吊り広告に目がとまり、色って感覚とか感性の世界のものだと思っていたのですが、そのとき「へえ、色が検定で測れるのか」とすごく興味を持ったんです。
で、カラーコーディネートの学校に通い始めました。
そこで、今まで空気のようにしか感じていなかった色がさまざまな意味を持つことを学んで、そういえば色のない世界って無いよなと気づいたんです。
色は業種、業界、性別、国境など全てを越えるものだと気づいて、世界を広げるコミュニケーションツールは英語だと思っていたけれども、それが「色」だと開眼したんです。
ですから、私にとっての色はコミュニケーションツールであり、第2外国語のような感覚です。


聞き手

色彩検定というものを知ったときに、これは自分にとって意味のあるものだと感じられたわけですよね。
それ以前に、色に関して原体験というものはなかったのですか。


都外川

小さいころから洋服のコーディネートに関して「それとそれは合わないんじゃない?」とか母親からよくアドバイスされていましたし、自分自身も部屋の中を模様替えしたりするのが大好きでした。
学生時代にはフラワーアレンジメントとかインテリアコーディネートの体験レッスンに積極的に参加していましたね。


聞き手

都外川さんは現在、企業のコンサルタントをやられたり、一般の方々のコーディネートもされています。
それを生業にされたのはどういうプロセスがあったのですか。


都外川

最初は週末起業のような感じで、商社に勤めながら、カラーコーディネートの活動をしていたのですがDIC(旧大日本インキ化学工業)が新たに一般向けに開講したDICカラーデザインスクールの第一期生に入ったことで運営や講師をお手伝いさせていただくようになりました。
その後、スクール自体はいろいろな事情があり閉校してしまったのですが、2000年4月に設立されたDICカラーデザイン(株)に転職し、そこで色に関する企画・調査・提案・人材育成・マーケティング等の仕事に就きました。


聞き手

独立されたのは?


都外川

2009年にそこを辞めて、現在までフリーで活動しています。


聞き手

なぜ独立されたのですか。


都外川

大好きなファッションやコーディネートというものを、色と同等の大きな主軸(幹)にしたかったのと、結婚や出産があったので(笑)。



聞き手

ブランドはマーケティングの一部でもあるのですが、マーケティング担当者との仕事もいろいろあったと思いますが。


都外川

例えば、オリジナルCIカラーを持つグローバル企業には、全世界統一の色でいくのか、あるいはよりCIを知ってもらったり気に入ってもらったりするために、その地域ごとに若干色を変えていった方がいいのかという依頼を受けたことがあります。
ほかには、ブランドカラーを「なんとなくこんな色」と感覚的に打ち出しているけれども、本当にそれでいいのか検証してほしいといった依頼を受けました。


聞き手

前者は色と地域に何か関係性があるということでしょうか。


都外川

やはり、地域ごとに宗教、歴史、風土が違いますから、打ち出す色も変わります。
例えば、マクドナルドも地域ごとに微妙に色使いを変えていますよね。
やはり、五感に訴えるものは地域によって差があります。


聞き手

地域によってメニューを変えるのは分かりますが、色もそうなんですか?


都外川

共通したテーマカラーはありますが、例えば、配色による見せ方などはいろいあります。


聞き手

それはどういう観点から落とし込んで決めていくのですか。


都外川

人は小さいときから親しんだもの、見慣れたものは心地良く感じやすいと言われています。
つまり、違和感なくなじみやすいのです。
例えば、日本だと全体的にグレイッシュな落ち着いたトーンが多いんです。
もともと草木染めや柿渋染めといった自然界の四季折々の色料から採って染めたものが多いので、日本人はビビッドな色には慣れていないのです。
ですから、ビビッドな色は派手に感じたり、浮いて感じたりします。
でも、赤道直下の国なんかに見られる色はすごくビビッドですよね。


聞き手

なるほど。例えば、時代の変遷やその時代の社会背景とか、時代性と色の関係はどうですか。


都外川

日本流行色協会(JAFCA)が研究していますが、時代背景、人の気持ち、人が好む色はリンクしています。
例えば、成長している時代、潤っている時代は明るく華やかな色が出てきますし、ちょっと自粛モードだったり、景気が良くない時には暗いトーンの色が出てきます。


聞き手

JAFCAが毎年発表している流行色は、時代背景が色濃く反映されているのですね。


都外川

JAFCAは未来の色も予測しています。
トレンドカラーは実シーズンの2年前には決まっています。
世界各国の同じような機関が年に一度集まる「インターカラー」という国際流行色委員会があるのですが、各国の色に関する情報を持ち寄って話し合います。
例えば、今の時代はこうだから、2年後はこういう時代になっているだろう、それに伴い人の気持ちはこうなっているだろうという分析を基に、キーワード、素材感、色などを発表し合って、世界的なトレンドはこうなるという未来予測をまとめるのです。


聞き手

色を判断する基準として、人の気持ちはとても大事だということですね。


都外川

すごく大事です。


聞き手

人の気持ちや人の好みの調査軸となるのはどういうものですか。


都外川

まず調査の目的や対象によってキーワードの選定をします。
例えば、学びたい学校を選ぶときにその基準はたくさんありますよね。
講師陣がいいとか、授業料がどうかとか、駅から近いとか。そのときに、おいしいとかまずいといったキーワードは絶対に出てきません。


聞き手

なるほど。その目的に応じたキーワードを表出して、それに対して調査をかけていくのですね。
さきほどのマクドナルドの色が地域によって微妙に変えられているのは、地域のマーケティングを綿密にやった結果なのですね。



都外川

かなりやっていると思います。
マクドナルドのように誰もが知っているようなブランドを確立しているメガブランドの場合には、色を遊ぶことも可能になります。
色を変えてもブランドイメージが崩れることはないからです。
ただ、そこまでブランドが確立されていない新しい企業がそれをやってしまうと一貫性がなくなってしまいます。


聞き手

そうすると色を決めるときに、自分たちの会社を世の中にどう思ってもらいたいかを前提にマーケティングしなければなりませんね。


都外川

そうですね。企業によっては同じ赤といってもものすごいこだわりがありますから、その色料の調合は企業秘密ですね。


聞き手

これまでのプロジェクトで、色に関してこういう決め方をすると非常にうまくいったという具体的なケースはありますか。


都外川

上手な会社でよく言われるのが「色で売る」ということ。


聞き手

具体的にはどんな会社ですか。


都外川

例えば、日産マーチはその典型です。
毎年、新色を出してきて、色のネーミングにもこだわりがあるのですが、そこにストーリーや夢を持たせています。
その色によって生活シーンのイメージが膨らんでくるような戦略が非常に上手ですね。


聞き手

ストーリーに沿った色ということですね。


都外川

女性向けの車だと女性が好むスイーツやカクテルの名前だったり、可愛らしいフルーツの名前だったりと色の名前もそうですし、例えば、パンフレットやCMにもそういうストーリーを見せています。


聞き手

逆に色で失敗する例にはどういうものがありますか。


都外川

やはり、さっきの話に戻るのですが、まだできて間もない企業やブランドが色をとっかえひっかえするのは良くないですね。
例えば、素材が変われば色も変わりやすいじゃないですか。
そういう色の管理はとても大変だし、とても大事だと思います。


聞き手

きちんと一貫性を持たなければならないということですね。


都外川

うちはこういう会社なんです、こういう商品なんですというメッセージを送るために色の力を借りるわけですから、その色がブレてしまってはそのメッセージそのものがブレていってしまいます。


聞き手

色の力を借りる。なるほど。
ある程度メガブランドであれば、地域性によって多少は色を変えていいけれども、そうじゃない場合は、色を変えることによってブランドサインが起きにくくなるわけですね。
色の専門家の立場から、特にマーケッターやブランド・マネージャーに伝えたいこととしてどんなことがありますか。



都外川

色って、最後の最後に取って付けるもののように思っている方が多いのですが、色と質感と形はデザインの3要素なんですね。
そこに優劣はないと思うんです。
ただ、男性だとどうしても形でものごとを捉えたり認識したりすることが多いんです。
太古古来から、男性は狩りで獣を追いかけてきましたから、どうしても形を捉えるDNAがあるのかも知れません。
でも、狩りに出ない女性は木になっている木の実が赤く色づくさまを認識したりします。
ですから、女性には「色型」人間が多いように感じます。


聞き手

今の時代の消費に関していえば、女性の方がリードしていますし、家計も奥さんが握っています。
そうなるとマーケティング的には形ももちろん大事ですが、色という判定要素が強くなっているのかも知れませんね。


都外川

光が物体に反射して、それを目で捉えて色を識別します。
目から脳に情報が伝わり、もっと深いところの感情に行き着きます。
色はこの認知の経路がすごく速いと言われています。


聞き手

それって文字を認識するスピードと比べ物にならないんですよね。
文字を認識するのに2秒くらいかかるのに、色だとコンマ何秒という速さなんですね。
それは大脳で理解するという領域ではないのでしょうね。


都外川

そうですね。非常に直感的かつ感情を揺さぶります。
女性が洋服を買うときもそうですね。
まず目につくのは色なんですね。
あ、かわいいと思って近づいて手に取る。
その後に形を認識することが多いんです。


聞き手

ああ、なるほど。


都外川

面白いのは、光をどこからどう当てるかによって色の表情が違ってくるんです。
光の性質、角度によってさまざまな表情を見せます。
例えば、同じ色だと思っていても実際は光の加減でまったく違う色だったりします。
また、まったく同じ条件でも、見る人によって色の認識が違ってきます。


聞き手

それを理解した上で色を決定しなければならないということですね。



都外川

もし色が違うなと感じたら、なぜなのか理由を探る必要があるでしょうね。


聞き手

それが商品なら、パンフレットで見せる場合と実際の売り場で陳列する場合の色の差も、きちんと押さえておかなければならないですね。


都外川

本当にできるデザイナーはまず、売り場を見に行きます。
どういう店頭環境で売られるかというところまで見て、デザイン要素をどんどんインプットして、その商品が一番生きるデザインを引き出します。


後篇へ続く

※掲載の記事は2016年1月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。