理念を言語化してDNAを表現!
組織がひとつになる調剤薬局の
インターナルブランディングとは?

株式会社バウンディングパルス海野 康弘氏
Profileプロフィール
株式会社バウンディングパルス 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 マスタートレーナー/プラクティショナー
人材コンサルティング会社で営業・コンサルタントとして大手通信事業グループ、大手メーカーなどで様々な課題解決に従事。
通販系広告代理店では、クライアント専任体制でマーケティング戦略やコミュニケーションデザインなど、クライアント企業の事業成長のための計画づくりと実行までのプロデュース業務を担当。
さらに戦略系コンサルティング会社で九州地場大手メーカー、インフラ企業の事業戦略~実行支援、組織の活性化、人材育成に至る一連の問題解決に従事する。
“すべての働く人たちが心躍る仕事を”を信条にバウンディングパルス設立。
企業理念の言語化と浸透、事業ブランドの開発、ブランディングに関する研修やセミナー、組織と採用分野の伴走型支援を通じて、中小企業の経営者の懐刀として活動中。
2024年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでは「調剤薬局のインターナルブランディング」でインターナルブランディング賞を受賞。
調剤薬局を柱に様々な事業を展開している福神グループ。
ブランディング前は、各事業部が感じているグループの強みが一致していないという課題を抱えていたため、ブランド推進委員会を発足し、強みを明確化して浸透させる取り組みに着手。
勉強会や理念の言語化などを進め、ブランド・エンゲージメント診断では全体スコアが上昇傾向にあるという成果を生んでいます。
ブランディングを担当したバウンディングパルス代表取締役の海野康弘氏にお話を伺いました。
強みを周知・浸透させる「ブランド推進委員会」発足
本日は、2024年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」でインターナルブランディング賞を受賞した「調剤薬局のインターナルブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まずは今回のブランディングの背景について教えてください。
クライアントの「福神グループ」様は地元福岡の地域密着企業で、調剤薬局や福祉施設をはじめ在宅医療、薬局併設のカフェ、オリジナル商品の開発、クリニック開業支援など幅広く事業を展開されています。
ただ、医薬事業部、福祉事業部、サポート事業部などの各事業部でいろいろな方針が掲げられていましたが、各事業部やスタッフが感じている「福神グループの強み」が一致しておらず、取り組みが同じ方向を向いたひとつの大きな力にはならずに分散してしまっている、という課題を抱えていたのです。
そこで、グループ全体での強みや存在意義を明確にして改めてスタッフに伝える必要性があると考え、「ブランド推進委員会」を発足されました。
経営陣がプロジェクトオーナーで、医薬、福祉、サポートの各事業部から管理者、中堅クラスの方々を人選した総勢20名ほどのチームです。
委員会名は「ブランド・ドライビング・フォース」、略して「BDF」として、ロゴマークも作りました。
福神のDNA”をミッションで表現
このプロジェクトでは、大きく3つのことに取り組みました。
1つめは、ブランディングの知識を習得するための「勉強会」で、7カ月かけて行いました。
2つめは「グループ全体の理念の言語化」で、ここでは10カ月かけて取り組んでいます。
そして3つめが「各事業部のブランド・アイデンティティづくり」で、ここでは5カ月を費やしました。
途中でブランド・エンゲージメント診断を実施したり、進捗状況を研修の場で共有したり、といった活動もしています。
「勉強会」は月に1回の頻度で、4時間かけて実施しました。
付箋を使ったワークやグループ別での話し合い、経営陣との対話など、様々なアプローチと角度からブランディングについて学び、自社について見つめていきました。
そして「グループ全体の理念の言語化」「各事業部のブランド・アイデンティティづくり」では、グループ全体の理念の言語化を「コーポレートブランド」、各事業部のブランド・アイデンティティの策定を「事業ブランド」と位置付け、取り組みにしました。
「理念の言語化」では、[ミッション][ビジョン][バリュー][スピリット] という分け方で言語化を進めました。
[ミッション] は「時代に挑み、生きるをつなぐ。」
理念の言語化で大切なことは、他社には言えないその会社らしさ、DNAが入っていることだと思います。
では、福神らしさ、DNAとは何か? と考えると、1つは「医療ビル、医療モールへの出店」です。
今ではよく見かける形ですが、福岡では先駆けだったのです。
次に「福祉事業への進出」。
福神グループでは、介護保険制度が施行された後、いちはやく有料老人ホームを設立されていますが、そこには人のためになること、社会に必要なことならば初めてのことでも挑戦する、という福神のDNAがあると考えました。
つまりミッションの「時代に挑み、」という部分は、他社に先駆けて取り組んだり、社会課題の解決にチャレンジしたりという福神のDNAを表しているわけです。
また、「生きるをつなぐ。」は、利用者の日々の暮らしや健康をサポートすること、ご本人だけでなくご家族や後の世代までつながっていくことを意味しています。
[ビジョン]は、ミッションに取り組み続けていった結果としての目指す未来として、「Life is beautiful 彩りある日々を、ともに。」と設定しました。
「Life is beautiful」には、「人にはそれぞれ様々なことがあるけれど、人生は素晴らしい」という思いを込めています。
そして「彩りある日々を、ともに。」は、様々なことがある人生にずっと寄り添う、という企業姿勢を表現しているのです。
また、[バリュー]は「想いに応える先見力」「垣根を越える連帯力」「地域を支える密着力」としたほか、行動指針となる[スピリット] は、出だしを「美しさとは、」で統一した7つの表現を設定しました。
そしてさらに、グループ全体の理念を表す言葉として「みらいい志向。」というスローガンも作りました。
なお、もともとの企業理念はそのまま残し、「福神フィロソフィー」という形でまとめています。
ブランド・マネージャー認定協会のインターナルブランディング講座にあるステップを活用して、「理解、納得、体現」の3つに時間軸を掛け合わせて検討しました。
そこからやるべきことを整理し、新しい取り組みとして「みらいいスタイル」というブランドブックと「みらいいバトン」という社内報を作成。理念をまとめたクレドカードも全社員に配布しました。
さらに、ウェブサイトも全部で6つあるうちの1つを改定するなどリニューアルを進めています。
また、ミッションとビジョン、事業内容を紹介する企業動画も制作しました。
活動内容をレポートで発信して“本気度”を伝えた
ブランド・マネージャー認定協会の「ブランド構築のステップ」に基づき、ブランド・アイデンティティまでを各チームで作り、以降は管理者研修でブランド体験まで検討する、という形を採用しました。
一例を挙げると、薬剤師の新卒採用では「変化は、進化だ。挑戦は、成長だ。」というブランド・アイデンティティをそのまま採用スローガンとして活用し、それをベースに採用パンフレットをリニューアルしたほか、説明会の採用イベントブースもリニューアルしています。
このように今回の取り組みが進んだ要因は、3つあると考えています。
まず1つめは、BDFの活動内容を毎回レポートで発信していたこと。
これによってだんだん会社の本気度が伝わっていきました。
2つめは、ブランディングを行うにあたって最初にブランディングの知識や事例を学んだこと。
スタッフのリテラシーが向上して問題意識が醸成され、活動の機運が高まっていきました。
そして3つめは、活動の全体像をロードマップで示したこと。
これによって、今は何をやっているのか、次にどこを目指して進んでいくのかが明確になったと思います。
社内大学「みらいい大学」を創設
ブランディングに取り組んだことで、BDFメンバーからは「自分たちで考えたから納得感があるものができた」「これからはメンバーが伝道師となって伝えていく」という声が挙がっています。
また、2022年11月と2024年10月に実施したブランド・エンゲージメント診断では全体スコアが上昇傾向にあるなどの結果も出ており、弱みを改善しつつ強みはキープできていると考えています。
今後の取り組みとしては、BDFは第1世代から第2世代、第3世代〜と続いていく予定です。
また並行して社内報「みらいいバトン」の発刊、ブランドブック「「みらいいスタイル」の作成をBDFメンバーが主体となって進めていきます。
そして社内大学となる「みらいい大学」の創設や35周年行事の企画などが挙げられます。
特に社内大学は、人材育成の仕組みをバージョンアップさせるエポックメイキングな取り組みになるのではないかと思っています。
※掲載の記事は2025年6月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。
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