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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >北原 友氏 Vol.1

「想い」があるからうまくいく。ブランディングから始める店舗設計 前編

北原 友氏 Vol.1

【プロフィール】

株式会社イマージ 代表取締役社長

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ミドルトレーナー

1984年長野県生まれ。
日本大学で建築を学び、卒業後インディーズバンドのドラムを担当し、東名阪ツアー、全国ツアーを経験。
その後、一級建築士事務所(株)イマージに入社。
建築事業に加え、自社経営の飲食店5店舗、物販店3店舗、フィットネスジム、ホットヨガスタジオのブランド・マネージャーを務める。
2012年宅地建物取引主任者の資格を取得し、現在は新規店舗のブランディング~土地探し~デザイン~建築工事~サイン・グラフィックと、トータルで行うイマージの繁盛店づくりを「ブランド」という切り口からサポートしている。


今回は2016年ブランディング事例コンテストで大賞に選ばれた株式会社イマージの北原さんに、受賞事例の「地元墓石店のリブランディング」を中心に、店舗設計におけるブランディングについてお聞きしました。

聞き手:平野史恵(株式会社イズ・アソシエイツ クリエイティブディレクター)


バンドマンからブランド・マネージャーへ。地元を元気にしたいという想い。

聞き手

はじめに北原さんのご経歴を教えてください。


北原

大学時代は都内の大学で建築を学びました。しかし卒業後目指したのは音楽です。スカ系のバンドのドラムとして、全国をまわったりCDを出したりと本気で音楽に取り組んでいたんですが、2年やって「これでは稼げないな」と。そこで千葉で就職したのですが、やっぱり地元の茅野に戻りたいという気持ちが強くなり、実家に戻ることにしました。株式会社イマージは建築デザイナーである父が立ち上げた店舗設計をメインに立ち上げた会社です。現在は市内に飲食店や物販店、スポーツクラブなども運営しています。入社した当時は飲食店が1店舗で、ちょうど2店目の喫茶店を立ち上げるところでした。そこで1年間はその喫茶店で働いていました。


聞き手

その後どういったきっかけでブランディングと関わるようになったんですか?


北原

長野にある高級旅館の「しんゆ」さんから、ブランド・マネージャー認定協会のことを伺いました。すでにブランディングで実績を出していた「しんゆ」さんから強く勧められ、講座を受講することにしたんです。それから本格的にブランディングを行うようになって5年。今では社内にブランド戦略室も立ち上げ、自社の店舗のブランディングから、クライアントの支援まで行っています。


聞き手

設計事務所で飲食店や物販を運営する企業というのは珍しいですね。


北原

父が地元の茅野市が大好きで、会社もずっと「元気な街をつくりたい」というコンセプトでやってきました。街の活性化のためのさまざまなイベントを行ったりもしていたんです。日本全国地方都市はどこでも一緒だと思いますが、ロードサイドに大型店が立ち並び、駅前がどんどんさびれていきました。10年くらい前それまで営業していた駅ビルが撤退し、それを市役所が買い上げて店舗を誘致していたのですが、そこも経営がうまくいかず撤退。そこで市役所の方から声を掛けられたのがきっかけです。父もずっと店舗設計をやってきて、店舗運営にも興味があったようです。現在は飲食店5店舗、物販6店舗にフィットネスクラブとヨガスタジオを運営しています。


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石材店「石栁北原」のリブランディング

聞き手

それでは、今回大賞を受賞した「地元墓石店のリブランディング」についてお話をお聞かせください。まずどのような経緯からこの案件に関わることになったのでしょうか?


北原

商業界から発行された「お店の売上を倍増したいならお金をかけずにアイデアで勝負する!」を新聞社が取り上げてくれたんです。その記事を見た5代目社長の北原さんから、イマージでコンサルもやっているなら相談したいとご連絡をいただきました。石栁北原は、信州諏訪にある諏訪大社の隣に位置し、1880年創業の石材店です。会長、会長夫人、5代目社長、社長夫人、従業員の5人で事業を行っていました。近年売上が減少し、それを取り戻したいと大手コンサル会社に依頼し、いろいろやってみたものの結果が出ていない状況。話を伺ってみると、コンサル内容も別の地域でやってうまくいったことをただ真似するように指示されたり、きれいなだけの会社案内を作ってみたり、といったように、少しも石栁北原の課題やニーズを捉えていない状況でした。しかも、コンサルと言っても月に1回来る程度です。


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聞き手

それでは結果が出ないのも当たり前ですね。


北原

最初は店舗の改装ということで話をいただいたのですが、その前に会社としての方向性を固めた方がいいと思い、チーム(北原さん家族)によるリブランディングを提案しました。進め方は協会の型どおり一つひとつやっていきました。最初に3C分析で自社の強みと弱み、競合の強みと弱みを出していきました。その中で自社の強みとして出てきたのが「創業135年」「一級技能士の資格を持つ高い加工技術」「職人による手作り」「オーダーメイド」「工房の横にある日本庭園」です。一方弱みは「価格が高い」「大量生産ができない」「営業力がない」などが挙げられました。


3C分析から市場機会の仮説を立てる

聞き手

従業員にとって3C分析やSTPなどマーケティング用語は初めて聞く言葉だと思いますが、特に問題なく進められたのでしょうか?


北原

普段から仕事については家族で話し合っていることもあり、協会の型を使うことでそれぞれの頭の中にあることがうまく整理できたようです。特に競合分析においての気づきが面白かったですね。最初に直接競合として挙げたのが「○○石材」といった、自社と同じような地元の企業です。ここはどこも苦戦しています。一方間接競合として挙げた「葬儀社・セレモニーホール」「仏壇店」「農協」といったところが、墓石をセットにして販売し売上を伸ばしていたんです。ここの強みは営業力もあってとにかく安いこと。例えば、地元の新聞のお悔やみ欄に記事が掲載されると、そこにDMやチラシを送って営業をかけていくんです。しかしそうやって売上が上がるからと言って、「私たちはそれはやりたくない」とみんなの意見が一致しました。


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聞き手

確かに、大切な人が亡くなって悲しい気持ちでいるときに「今なら葬儀と墓石がセットで○○○円!」っていうのは、気持ちを逆なでするようなものですね。


北原

そうなんです。こうした話をするうちに、自分たちに抜けていたのが「顧客視点」だと気づいたんです。これまでは「石のことならなんでもやります。どんなデザインでもお任せください」という方向性でした。でも顧客にとって一番大切なことは「信頼できる墓石屋」であること。ですから自分たちは「創業135年の実績を持ち、一級技能士が丁寧に対応する地域で一番信頼できる墓石屋さんを目指す」と決めました。信頼できる墓石屋としての認知が上がれば、ゆくゆくは墓石以外の仕事にも広がるだろうと。


ペルソナを設定して想いを伝える

聞き手

そこで市場を細分化しながらターゲティングを行い、作り上げたのがこのペルソナですね。


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北原

木村太郎さん56歳。年収600万のサラリーマンです。 墓石を買おうとする人には2パターンあって、これから必要になるからといって計画的に買うパターンと、突然必要になって買うパターン。石栁北原さんのこれまでの購入履歴を見ると突然必要になるパターンが多かった。そこでこのペルソナも親が突然亡くなり、急に墓石が必要になったと想定しました。その彼がどのような墓石店でどんな墓石を買いたいのか、チームで徹底的に話し合ってもらいました。どんな墓石店か、については「信頼できる」「心を込めてくれる」「親しみやすい」といったキーワードが、どんな墓石が欲しいかについては「故人を思い出せる」「故人と話ができる」といったキーワードが出てきました。親が突然亡くなった木村太郎さんは、とても悲しくて寂しい気持ちでいっぱいです。そんな彼に石栁北原としてできることは?という問いかけに会長夫人が言った言葉があります。「きっとこの方は寂しいのよ。故人との思い出話をとことん聞いてあげたいわ」


聞き手

そこでブランド・アイデンティティとして顧客にどう思われたいかを言葉にしたのが「心に寄り添う墓石店」なんですね。


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北原

はい。ですから辛くて寂しい想いをしているペルソナに、間接競合のようなDMやチラシはしてはいけない、とみんなの想いがその言葉により共有できたんです。


後篇へ続く

※掲載の記事は2018年3月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。