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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 鈴木 孝尚氏

サブウェイには“ファン重視”が
機能する土壌があった
SNS中心の戦略で好調キープへ

日本サブウェイ合同会社鈴木 孝尚

Profileプロフィール

日本サブウェイ合同会社
共同代表兼マーケティング本部長

1995年にトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社入社。営業を経てオーストラリア留学後、プロダクトマネージメント部所属。2004年に日本KFCホールディングス株式会社に入社。経営企画室やマーケティング部で部門のテコ入れ、 BPR 、コスト削減、事業部サポートなどを手掛ける。2018年に日本サブウェイ合同会社に入社。CMOとしてマーケティング、広報、商品開発、カスタマーサービスを担当。2021年10月から現職。

ヘルシーでバラエティ豊かなサンドイッチを武器に、ユニークで強いポジションを確立しているサブウェイ。現在は360度アプローチの導入や外部プロの積極活用など、さまざまな変革を推進。広告メディアからアーンドメディア(SNS)中心の戦略に舵を切るなど、“ファン化”の強化にも力を入れています。サブウェイが取り組むマーケティングやブランディングとはどのようなものなのか。日本サブウェイ合同会社で共同代表兼マーケティング本部長を務める鈴木孝尚氏にお話を伺いました。

SUBWAY

「わかりやすさ」重視にコミュニケーション改善

Q. 本日はサブウェイのブランディング、マーケティングについての手法や考え方などをお伺いできればと思います。まずは理解を深めるため、鈴木さんがサブウェイに入社されるまでのご経歴を教えてください。
婦人肌着のトリンプ・インターナショナル・ジャパンが社会人人生のスタートです。当時の経営者だった吉越浩一郎さんのもとで、営業として猛烈に働いていました。ただ、本当は購買部門で働きたかったので、頑張れば購買部に行けると聞いて頑張って結果を出しました。ですが、営業本部長から、「お前は俺の後釜になるんだ」と言われました。それで、次の日に「会社を辞める」と言いました(笑)。そのとき、「辞めたら何をするんだ」と聞かれたので「留学してきます」と言ったところ、会社は休んでいいから留学して来い、その代わり帰って来いよ、と。それでオーストラリアに留学して、マーケティングに出会ったんです。帰国後はプロダクトマネージメント部に所属し、話題にもなった「天使のブラ」「恋するブラ」などに携わっていました。経営者としての吉越さんは凄かったし、トリンプ時代はすごく楽しかったですね。ただ、大きな戦略を考えるのは吉越さんなどのトップマネージメントなので、自分はその考えを具現化するチームの一員として最高になるしかないなと思っていました。そんなときに、ヘッドハンターの方からケンタッキーの経営企画室で募集があると声をかけられ、ケンタッキーに転職しました。そこでは経営企画室で30億円規模のコスト削減プロジェクトをまわしたり、KFCのマーケティングをやったりしました。その後、建て直し目的で傘下のピザハットを担当したのですが、黒字化と同時に事業譲渡の対象になったんです。それで私は投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドのもとに行き、ピザハットを2年ぐらい運営しました。そこでも成果は残せたものの、徐々にフランチャイジー運営国のCMOであることに限界を感じ始めていました。アメリカでは成功すれば出世しますが、日本は出世に限りがありますからね、そんなときヘッドハンターの方から、これからの可能性がある会社だと教えられ、サブウェイに来ました。
Q. では、サブウェイのマーケティング、ブランディングについてお伺いしたいと思います。そもそも、マーケティング、ブランディングについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか?
まず、基本的な考え方として、経営戦略を重んじています。そのうえで、サブウェイはマーケティングが効果的な市場で戦っているのでマーケティングの手段を多用している、という考え方ですね。外食市場でインパクトを出せるのがマーケティングだと考えています。また、ブランディングが効く市場でもあるので、こちらも有効な手段として重んじています。特に、累積効果とお客様にとっての判断プロセスの短縮化という点ではブランディングは欠かせないと思います。私がよく言うのは、「ブランディングは鳥の巣を作るのと同じ」ということ。つまり、鳥の巣が無数の小枝からできているように、ブランディングもサービス、店舗の見た目、中で働いている人、取り扱っている商品のすべてで作り上げるものなので、ブランディング、イコール商いではないかと思っています。
マーケティングのことだけを話されている方もいますが、会社はすべての事業の話があって、その中でマーケティングが一定の役割を負っているので、マーケティングが良ければよし、という考えはありません。たとえば、ピザハット時代に私が判断したのは、広告予算のカットでした。当時、年間予算の大幅な削減を2年連続で実行しましたが、黒字化にはそれが必要だったからです。経営戦略にマーケティングをフィットさせないといけないと思っています。
Q. 入社してから見えたサブウェイブランドの課題や、改善、リブランディングまでの流れをお聞かせください。
3年前に入社したときから、サブウェイはグローバルでノウハウもあり、スケールメリットもあり、ポジショニングも悪くなかった。売上は中規模だけどエッジが立っていて、ユニークでポジショニングもはっきりしている。組織体も安定化しつつある体制です。ただ、サブウェイ本社が行ってきたベストプラクティスを日本では活用できていなかったので、探せばできることはまだあるのではないか? と思っていました。
また、ポジショニングが強いのだから、知恵で抜けていけるのではないか?とも考えました。入社後に決めたのは「限られたリソースで勝つ」ということ。周りを見れば、それを実行している企業はたくさんあります。我々にもできないわけはない。では、どうやって勝つか? そこはデジタルを使おう、と言っていました。それまではTV広告やチラシ、ウェブ広告、SNSなどいろいろ展開していましたが、分散するからもうやめよう、と。これからはデジタルマーケティングを強化し、360度アプローチで統合していくと決めました。それが、私がマーケティング本部長に就任してから1ヶ月後ぐらいのことでした。
Q. デジタルマーケティングを強化すると決めた背景は?
サブウェイのペルソナは、「マイペース型“こだわリーマン”」と「時短メリハリOL」、そして主婦層です。つまり、都会的なイメージです。デジタルリテラシーが高く、SNSが非常に身近な人達というのが共通のペルソナ。SNSが効きやすいターゲットを初めから持っていたわけです。だから、マスメディアよりもデジタルメディアに振っていこうと。そもそも、私たちは大手のファーストフードチェーンに比べて規模が小さかったので、弱者の戦略を取るべきだと思ったんです。つまり、大きい人たちが入りたがらないところに行く。そこでアーンドメディア(SNS)に振ろうと考えました。
Q. インターナルブランディングについても教えてください。コミュニケーションの改善について具体的に実施したことは?
一例を挙げると、「わかりやすい」に変えました。たとえば、キャンペーン企画の説明に、漫画を採用したこともそのひとつです。今まではキャンペーンの際、情報が整理されてなく、「このキャンペーンはつまり何なのか?」ということが伝わりにくいという問題がありました。そこで、漫画を使ってすべてのアルバイトの方にわかりやすくしました。やりたいことはいろいろ言いたくなるものですが、それを整理しました。漫画の中に入れるトピックスは、1つか2つです。ファーストフードの場合、1つか2つだけやることを決めたら、あとは「頑張ろう」で進めていくものと思っています。それを研ぎ澄ませるために漫画を導入したのです。
漫画の制作は漫画家の卵に依頼しています。4ページしかないので、企画者が4ページにまとめないといけないのがポイントですね。漫画だと、2つのトピックスで4ページが埋まる。だから、おのずと私たちに情報の取捨選択が迫られるわけです。
また、社員への取り組みとしては、週に1回出していた社内報も変えました。それまでバラバラだった情報をひとつにまとめたんです。すべての連絡をそこに集約し、全部の情報を載せる。全体の売上の動きや今週のトピックスなど、それを見ればいいように作り変えました。半年ぐらいかけてすべてやり直しました。今はインターナルの会議でも、全員でその社内報を見て確認する、という形にしています。経営トップの意思も含め、すべてのフロントラインまで情報が流れるように、会議のやり方から何から変えて直しました。社内報にはアルバイトの方が読んでサインする枠もあり、営業が店舗を巡回するときに、ちゃんとサインされているか確認もしています。情報の流れを整える、ということには気を遣いましたね。
Q. かなり粘り強く改革を促している印象を持ちました。やはり粘り強さが大事なのでしょうか。
そうですね。粘ることは大切です。大事なのは徹底度。相手もこちらのことを、「どうせすぐにやめるだろう」と思って見ているので、我慢してじっくりと最後までやりきる。それはマーケティングということではなく、ビジネスの習慣として重んじています。そういう意味では、吉越さんがすごく重んじていたのがデッドライン。必ず期日にチェックするというシンプルなことですが、この習慣を私も重んじているので、実行に対してはすごくうるさいです(笑)。たとえばアーンドメディアに移るときも、みんな最初は「本当ですか?」と言うんですが、私が毎週、「あれ、どうなったの?」と聞く。1カ月ぐらいそれをしていると、だんだんみんな動いていくようになるんです。
それと、意思決定は非常に速くしています。たとえば「aとbどっちですか?」というときも、私はほぼその場で決めますし、メールでの依頼も即答します。そうしていると、周りもこのやり方しかないんだ、とわかるんですよね。

広告メディアからSNSへ
“ファン化”強化で費用対効果が劇的に改善

Q. 不調からの脱却として、ほかにもさまざまな変革に着手されています。具体的にその内容を教えてください。
まず、縦割り組織から脱却し、360度アプローチのワンチーム思考を導入しました。また、自前主義をやめ、徹底的にプロにお願いする形に移行しました。そして、テレビやチラシ中心だった広告メディアから先ほどお話ししたようにアーンドメディア(SNS)に振りました。要するに、大きいものが勝つとは限らないアーンドに踏み切ったんです。すごく知恵が影響する領域なので、私たちにはぴったりだなと考えていました。
360度アプローチの導入は、ひとつの目標を共有してワンメッセージにすることが狙いです。シンプルにすることが大事で、シンプルになるまで考え切らないといけない。基本はワンメッセージだと思っているので、本当に何を自分で重んじているのかを言えないといけません。
360度アプローチを導入
外部プロの積極活用については、サブウェイの管轄を小さくして、責任代理店の日宣をトップに、たくさんのいろんな協力会社がぶら下がる体制にしました。また、CCIさんには相談役的な立場として、たとえばどちらの方向に行くべきかなどのアドバイスをもらったりしています。
ワンチーム制なので、共有・意思決定は定例会議で決定し、その情報はすべてオープンにしています。だから全員、知らないことはないと思います。日宣のスタッフには月火木とサブウェイに出向してもらい、すべての情報を持って帰ってもらっています。私たちからのブリーフは基本ゼロ。隠す必要もないと思っているので、全部オープンにしていますね。商品開発の会議にも出ますし、オペレーション、購買、カントリーディレクター、マーケティングが出る月曜日の営業・マーケ・購買会議にも出てもらっています。
ワンチームでファン・マーケティングを推進
Q. そのように全部オープンにできている要因は何でしょうか?
よく、情報が漏れたらどうするんだと言われますが、起きもしないことでずっと悩んでいるぐらいなら、とりあえず起きてから考えればいい。サブウェイはすごく小さいので、動けなかったら終わりです。だから早く動くこと、スピードを上げて余計なコミュニケーションコストを抑えることが大事です。また、同じ情報を持っていると、ほぼ同じ意思決定になると思うんです。意見が割れるのは、持っている情報が違うせいですよね。だから前提条件を出席者全員でなるべく合わせています。それでも意思決定が違ったら討議しますが、ほぼずれはないですね。そして、私がよく言っているのは「プロアクティブ(事前)に動く」ということ。リアクティブ(事後)でいるとめちゃくちゃ怒ります、情報も発言する自由も与えているのに、何を止まっているんだ、と。だからみんな、ささっと自分から動きますね。サブウェイは母体が小さいですが、私は「小さいイコール、フラット」だと思っています。大企業の場合、ステークホルダーが大勢いて、情報が漏れたらどうするんだ、責任は取れるのか、となりますが、サブウェイは組織が小さい。これはチャンスだと思い、スピードをさらに出せるように組織を作り替えたのです。
また、面白いのは、ベンダーの人たちがサブウェイの名前を使ってもいいことです。たとえばCCIは今、我々がやっていることを“サブウェイモデル”という形でビジネスにしようとしています。日宣もサブウェイで実績があります、とピッチなどで言っています。SNSを運用している子担当者も、サブウェイで私がこれをやりました、と言えるようになる。サブウェイの実績がみんなのためになる。私としてもそれでプラットフォームがさらに賑わえばいいと思っています。
Q. 広告メディアからアーンドメディア中心に舵を切っています。改めて、その背景と構造を教えてください。
ペルソナの話でも少し触れましたが、サブウェイにはファン重視が機能しやすい土壌があったので、口コミが非常に効くことはわかっていました。そこでSNSを中心に、ファン化に真剣に取り組もうと考えました。そのためには、コメントに返信するアクティブサポートと企画のコンビネーションでファンとの接触機会を増やすことが大事だと思いました。
ただ、ファン化のうえでの障壁もあり、組織的な悪循環が存在していたんです。SNSの運用は片手間に行われることが多く、運用体制も適当なので、結果が出にくく、高コスト体質になってしまう。すると費用対効果が悪くなり、社内では「SNSなんか遊びでしょ」と言われてしまう。それでなおのこと片手間になる……という悪循環があったのですが、我々の場合は片手間ではなく、重要施策だと決めました。といっても「中の人」をプロにすると高コストなので、インターン生を中心にしました。企画立案も「中の人」が行います。クリエイティブは、以前はやたらとレベルが高い企画をしていましたが、それもインターン生がスマホで作るぐらいのそこそこのレベルの企画に変更。炎上リスクは、炎上してから考えようと決めました。その代わり、以前はたまにしかしていなかったアクティブサポートを毎日、1日平均50件返答するなど、徹底的に時間を投下するように変えました。その結果、SNSでのファン化が重要施策になり、適した運用体制ができて、費用対効果が良くなり、SNSでの活動が社内外から評価される……という好循環が回り始めるようになりました。今は「話せる公式」を目指して活動を強化しているところです。
悪循環を好循環へ
Q. インターン生はどれくらいの人数で回しているのでしょうか?
運用体制の中にインターン生は30人ぐらいいます。発想が良くて、任せてみるとすごく伸びていきました。広告ゼロでツイッターのトレンド入りしたこともありました。美大生や映像系の専門学生といったクリエイティブ系のインターン生もいて、クリエイティブ領域で活躍してくれています。積極的にコラボ企画を作ってきたインターン生もいました。その際のコラボの交渉もインターン生自身が行っています。そうしたインターン生の活躍を見て、プロも刺激を受けて面白い企画を出してくれます。SNSの領域は私にはわからない部分も多いのですが、でもわからないのは私の勉強不足のせいなので、「いいよ、なんでも」と言うようにしています(笑)。自分にはわからないものに対して、「それ、どういう意味?」と聞いていること自体が、組織にとっては悪。だから「やっていいですか?」と言われたら「いいよ、やってみな」と。そうしたら、本当にできてしまった(笑)。
そうしたさまざまな取り組みの結果、ツイッターのフォロワー数が激増しました。成功事例もかなり出ており、最近では「中の人」が呼びかけると、フォロワーのレスポンスが良いですね。クリエイティブや企画を作るうえでも、たとえばフォロワーが100万人多かったら結果は全然違うものになりますから、露出あたりの費用対効果が劇的に改善されました。SNS経路の認知度も上がってきていますね。
企画力UPの例
Q. 今後の展望を教えてください。
現在の売り上げ状況を見ると、2020年対比で130%ぐらいと好調なので、今後もファン化を重視した施策を続け、好調をキープしたいと思っています。ただ、個人的にはケンタッキーなどでテレビCMを何十本も作ってきたので、久々に懐かしいマスメディアもやってみたいなとも考えています(笑)。私がよく言うたとえですが、元は空軍だったのに、次は戦車に乗ってくれと言われ、その次はナイフを渡されてジャングルに落とされてゲリラ戦をやっている、という感じです。こだわりは何もありません。ただ、ファンに対する取り組みは、これからも継続してできたらいいなと考えています。サブウェイはファンベースが効きやすいブランドなので、そこをもう少し推し進めてみようと思っています。

※掲載の記事は2021年12月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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