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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 山田 祥氏

インターナルブランディングで「歴史の違う7つの会社」
が1つに ブランド・ビジョンを浸透させた
オルバヘルスケアHDのプロジェクトとは?

株式会社アイディーエイ山田 祥

Profileプロフィール

株式会社アイディーエイ代表取締役
ブランド・マネージャー認定協会2級資格者

1995年新卒で株式会社アイディーエイに入社し、岡山を中心に営業活動を行う。
2008年に同社取締役に就任、2010年に代表取締役に就任。
以降、CI発表・理念ビジョンの整理、働き方改革、自社インナーブランディングなどに取り組む。
2022年度のブランディング事例コンテストでは「オルバヘルスケアホールディングス(HD)のブランディング」で優秀賞を受賞。

医療器材や介護用品など事業の異なる7社を展開しているオルバヘルスケアHD
M&Aで事業を拡大する中で、社風が異なる会社を1つのグループとして束ね、同時に社員のモチベーションを向上させるという課題がありました。
そこでアイディーエイでは、7つの会社でグループとしてのビジョンを共有し、グループ全体の文化を作ることを目的としたインターナルブランディングを実施。
社員のモチベーション向上や業績の伸長など、大きな成果を生み出しています。
ブランディングの内容について、アイディーエイ代表取締役の山田祥氏にお話を伺いました。

変革チームのメンバーで危機感を共有

Q. 本日はブランディング事例コンテスト2022で優秀賞を受賞した、「オルバヘルスケアHDのブランディング」についてお話をお伺いできればと思います。
まずは、今回のブランディングの背景について教えてください。
「オルバヘルスケアHDのブランディング」は、歴史の違う7つの会社が1つになったインターナルブランディングの事例です。
今回のクライアント様であるオルバヘルスケアHDは、地域の医療と介護を支える社員1600名を超える上場企業です。
全国に展開しており、医療機器の専門商社、医療物流管理、介護用品のレンタルなど、事業の異なる7社で構成されています。

そんなオルバヘルスケアHDがなぜインターナルブランディングに取り組むことになったのか。
まずプロジェクトの背景についてお話ししますと、1つ目は「社員のやりがい、モチベーションの向上」です。
気の抜けない医療・介護現場では、社員の方は日々のプレッシャーで、時に自分の存在価値を見失うことがあります。
そのために、社員のやりがい、モチベーションの向上に取り組む必要がありました。
そして2つ目は「グループの一体感の醸成」です。
M&Aによる事業拡大を進める中で、歴史や社風が異なるそれぞれの会社をグループとして束ねる難しさを感じていたわけです。

そこで、こうした課題を解決するために、グループとしてのビジョンを掲げて共有し、グループ全体の文化を作ることを目的としたインターナルブランディングを実施しました。
それぞれ別の理念がある「各会社の集まり」を1つの「グループ」にして、社員の方が「グループの一員としての各会社」と感じるような意識改革を目指したのです。
Q. プロジェクトをスタートしてまず着手したことを教えてください。

まずは各社から幹部の方を召集し、変革チームを結成しました。
最初のミーティングを行ったのは、コロナ感染拡大前の2020年1月。
まずは先ほどの2つの背景について、変革チームのメンバーと今回の目標を決めました。
オルバグループのグループ理念である社員憲章を用いて共有することによって「3年後には一人ひとりがグループ理念を軸に判断し、生き生きと働いている状態を目指す」という目標です。
社員憲章では、「事業のあり方」「組織のあり方」「メンバーのあり方」という項目ごとに、グループに所属する社員のあるべき姿を示していたんです。

社員憲章

そこからのプロジェクトの流れは、ブランド・マネージャー認定協会のインターナルブランディング講座のテキストにある「8つの企業変革プロセス」に基づいて段階的に進めていきました。
大枠でいうと、「変革準備」をして、次に「調査・分析」、そして「ブランド・ビジョンの作成」「浸透活動」を行い、「実践事例の共有」「定期チェック」を経て「定着」……という流れです。

具体的には、まずは社内外の調査を行い、次に外部環境や内部環境の分析を行いました
これにより、先ほどの2つの課題が明確になりました。
次に、変革チームのメンバーが前島洋平社長にヒアリングを行い、細かいニュアンスのすり合わせをしました。
グループ理念に込めた意味や熱量を共有し、各社独自のカルチャーとグループ理念をすり合わせることで、理念浸透への土台を作ることができました。
今回のプロジェクトでは、変革チームのメンバーが同じテーブルで危機感を共有し、グループとして1つになるメリットを描けたことが成功のポイントの1つだと考えています。

8つの企業変革プロセス

浸透活動の構造を構築

Q. プロジェクトでは、ほかにどのような具体的な取り組みを実施されたのでしょうか。

グループ全体が向かう指針を明文化するため、「つなぐ、人と未来。」というタグラインと、ブランド・ビジョンを策定しました。
プロジェクト開始から1年後の2021年1月には全社員に向けてキックオフを行い、その際に社員憲章とブランド・ステートメントを記したクレドカードを全社員に配布していつでも見られるようにし、ビジョンの共有と理解を促しました。

そこからは浸透活動です。
浸透活動は、グループ全体で連携して行う、いわばトップダウン的に活動するものと、各社独自のやり方で最後まで浸透させるボトムアップ的な活動という、大きく2つの構造で行っています。

まず、グループ全体で連携して行った例としては、ブランド・ビジョンを可視化し、動画やツールで展開しました。
そして、新人研修や管理者研修ではグループ理念をテーマにした講義を行うほか、選抜された社員が浸透活動の成果を発表する機会も作り、優秀な取り組みは表彰して全社員に共有するようにしています。

次に、各社独自の取り組み例について。
まず、グループ理念を3択クイズ形式にして触れる機会を作ったほか、クレドを使用したチーム会議では、毎日の行動と照らし合わせてミーティングをするようにしました。
また、評価制度にグループ理念を組み入れ、社員憲章に沿った行動を評価する仕組みを作り、一人ひとりの働く環境に合わせた理念の周知徹底を行いました。
こうした浸透活動の構造を構築したことが2つ目の成功のポイントだと考えています。

プロジェクトで仕事のモチベーションに変化

Q. 今回のプロジェクトの成果を教えてください。

まず、社内アンケートの結果で見ると、「社員憲章との距離感の変化」を計測したアンケートでは、「この1年で社員憲章を参考に意思決定したことがありましたか?」という質問に対し、「よくあった」「たまにあった」の合計が浸透活動前は44パーセントでしたが、活動後は69パーセントと25ポイントアップし、263名も増えていました。
この結果から、グループ理念を基に意思決定する機会が大きく増えていることが明らかになっていると思います。

また、社員のモチベーションについても、「仕事をし続けることに魅力を感じますか?」という質問に対し、浸透活動前は「とても感じる」「感じる」の合計が31パーセントでしたが、活動後は36パーセント、5ポイントアップという結果になりました。
増加は5パーセントにすぎませんが、人数にすると78名もの心を動かすことができたわけです。

このように、数字で見ると、社員憲章がぐっと身近なものになり、その考えを基に意思決定する機会が増えているうえ、仕事に対するモチベーションにも変化が表れていることが分かると思います。

社員のモチベーションに関する調査

今回のプロジェクトでは、グループ理念をテーマにした4コマ漫画も作成し、社内報に掲載しました。
漫画のストーリーは変革メンバーが考えたもので、社員の方々からは親しみやすいと好評をいただいており、グループ理念の浸透に一役買っていると思います。
この社内報は社員のご自宅にも郵送するようにしているため、今回のインターナルブランディングの取り組みは、ご家族との話題にも上がるものに発展していると言えるでしょう。

また、ビジョンを定着させるために発表会や表彰式を開催したことにより、各所で生まれた成功事例が次なる成功へと波紋のように広がり、グループシナジーが生まれています。
さらに、新卒採用説明会ではブランド・ビジョンに沿った説明を行ったほか、新入社員には前島社長がブランド・ビジョン教育を施すなどしたことで、ビジョンに沿った人材の採用に成功するといった成果も生まれています。

4コマ漫画

Q. 売り上げ・利益への寄与などの効果についても教えてください。
このプロジェクトをスタートしてから、売り上げも好調です。
連結売上高は、プロジェクト開始時が978億円で2年後は1,079億円と伸長しました。
コロナ禍で医療・介護業界は大変な状況に置かれていますが、オルバヘルスケアHDではこのインターナルブランディングで新たなコミュニケーションが生まれ、連帯感が高まったことが成果の一因になっています。
こうした2年間のプロジェクトの成果について、前島社長からは「取引先であるジョンソン・エンド・ジョンソン様のように、我が社がクレドを使い、理念共有し、事業推進できるようになったことが感慨深い」というお話をいただいております。
Q. 今後の課題と展望について教えてください。
2020年1月からプロジェクトをスタートして、少しずつグループとしての企業文化の土台を築くことができました。
これまでに起こした変化を止めず、前進させ続けることが重要です。
そのためには、次世代のリーダーの育成が1つの課題と言えるでしょう。
そして現在、これまでの成果を踏まえて「ビジョン2030」が発表されましたので、これからも新たな100年へ向けて活動を続けていきたいと思います。

※掲載の記事は2023年5月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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