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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 城戸 康彰氏

ブランド・ビジョンを浸透させるカギは
ブランド・マネージャーの“普段のマネジメント”にある
企業を健全な状態にする“組織変革”とは?

産業能率大学城戸 康彰

Profileプロフィール

産業能率大学 名誉教授

慶應義塾大学商学研究科博士課程修了。
専門は、組織内の人間行動論。
知識やサービス等の人間の自立性をベースとした組織行動論を主テーマとしている。
経営行動科学学会顧問、人材育成学会常任理事を務める。

企業にとって売り上げを伸ばし成長していくために何より重要なのが、そこで働く“人”
人と組織の問題は、いつの時代も不変の悩みです。
これまで長年にわたって組織の中における人の行動について研究してきた産業能率大学の城戸康彰名誉教授に、組織変革について、さらにブランド・ビジョンを浸透させるポイントなどについてお話を伺いました。

“組織変革”はなぜ必要か

Q. 本日は城戸教授が長年にわたって研究されてきた組織についての知見を基に 「持続的競争優位性の形成と組織変革」について、ブランド・ビジョンとの関係なども含めてお話をお伺いできればと思います。
まずは理解を深めるため、城戸教授のご経歴から教えてください。
大学卒業後はそのまま大学院に行きました。
もともと大学では経済学を専攻していたのですが、経済学には数式できっちり割り切れるような理論というイメージがあり、綺麗すぎると思っていたんです。
そうした中であるとき「マネジメント」という言葉と出合い、どこか怪しげというか、経済学の数式で割り切れる綺麗さとは違うものがあるように感じられたんです。
そういった経緯で、マネジメントや経営に関心を持つようになりました。
Q. 産業能率大学(以下 産能大学)にはどういった形で関与するようになったのでしょうか。
産能大学は、職場としては私にとって3番目の大学です。
博士課程を終え、最初は金沢の私立大学に行き、次に名古屋の私立大学に約4年在籍していました。
そのときに産能大学から「非常勤で教えてくれないか」と声がかかったんです。
当時、産能大学は神奈川県にキャンパスがあったのですが、もともと東京出身なので名古屋にいるよりいいかな、と思い、その後「専任で」という話になって1988年に正式に産能大学に籍を置くことになりました。
産能大学での私の専門は「組織行動論」というものです。
組織行動論にはそもそも博士課程から取り組んでおり、当時は日本人の会社への帰属意識について研究していました。
どうすれば帰属意識を高められるか、定量的なデータを使って分析することが研究のスタートだったんです。
Q. 「組織行動論」とは具体的にはどのような分野を指すのでしょうか。
組織の中における人間行動です。
たとえば、心理学というのは一般的な人間の行動が対象ですよね。
でも組織行動論は、「人が組織に所属したときにどう行動するか」がテーマになります。
わかりやすい例で言いますと、リーダーシップやモチベーション論。
あるいは集団理論、要するに「チームワークをどうするか」などが組織行動論のメインテーマになるわけです。
この場合、企業だけを対象とするのではなく、官庁や病院なども該当します。

ちなみに研究のスタートだった帰属意識についてもう少し説明しますと、これは専門用語では組織コミットメントと言います。

つまり、組織の中にいる社員がどれだけ一生懸命、組織や仕事に取り組んでいるかということが「コミットメント」で、モラール・サーベイ(従業員意識調査)や組織の風土診断で測定されます。
Q. 先生のシラバスにある「組織変革論」というものは、組織行動論の中ではどういった位置付けになるのでしょうか。
また、その内容について教えてください。
一般的に組織行動論のテキストには、「組織開発」「組織の変革」という章があります。
つまり「組織変革論」もその一つということですね。
私があえて組織変革論とした理由ですが、1970年ごろに「オーガニゼーション・ディベロップメント(組織開発)」、いわゆるODをアメリカから輸入し日本に普及させたのが産能大学と思っているんです。
そのころ私は在籍していませんが、産能大学はそうした組織開発についての研究や指導を昔から行っていたわけですね。
これを私流に捉えて、組織開発というより、「変える」という意味で「組織変革」としました。
産能大学の流れを引き継いだ授業科目といえます。

では、組織変革がなぜ必要なのか?

理由は二つで、一つは基本的にビジネス環境は変化しているので、それに合わせて中も変わっていかないと生き残れないからです。
20世紀前半は比較的安定していたかもしれませんが、20世紀後半からマーケティングだ、戦略論だと出てきた。
つまり市場を開拓していかないといけない、戦略論が必要だ、というわけです。
環境が変わっていくので、当然それに合わせて変わらなければいけない、という考え方ですね。

もう一つの理由は、組織内部には安定志向があるからです。
環境は変わっていきますが、組織内には本来安定性や継続性を重視する傾向があります。
仕事の良いやり方ができると、再現性を高めることがなされます。
再現性を高めることで高い生産性が維持されるからです。
それを継続しようとする力が生まれてきます。
このような組織に内在化している安定志向を打破していくことが大変難しく、組織変革論が求められる理由の一つはここにあると思います。

組織変革とブランド・ビジョン

Q. 今回のお話の本題に入りたいと思います。
組織変革の体系とプロセスについて、詳しく教えてください。
組織開発については、そもそも「どう変えたらいいか」という変える手法やモデルはあるのですが実践志向で、理論的な体系を作る動きがあまりない領域なんです。
それでいいのだろうかという気持ちがあり、組織変革論も体系立てて捉えていくことが大事ではと考え、私なりに作ってみたのです。

図-1にあるように、組織変革とは、たとえばコミュニケーションが悪いなど、どこかに問題が生じていると、これを健全な状態に変えていく活動を指します。
ただ、どうしても組織には安定化志向が働きますし、硬直化が起きています。
中にいる人は不安や抵抗を感じ、逆戻りが起きやすいので、これを変え望ましい健全な状態に移行することは非常に難しい。
だからこそ組織変革論というものが重要なんです。

まず大事なのは、「変えよう」という“引き金”が引かれること(図-2参照)
だめになる組織の場合、この引き金が引かれないことがあるんです。
だめだけどどうしてだろう、と言っているだけの経営者が多いんですね。
そうではなく、「業績が低下した、これは一大事だ、改善しなければならない」という気持ちが強く起きて行動しようとすれば、それは「引き金が引かれた」ということなんです。

そうした結果、まずは「何を変えるのか」と変革の対象を考えることになります。
何が業績悪化の原因なのか分析し、その原因を取り除こうと考えるはずです。
次に、「どのような方法で変えるのか」という変革の方法を考えるわけです。
そして最後に、それを「どのような順序で変えるのか」です。
つまり変革のプロセスですね。
これが組織変革の体系とプロセスです。

Q. 城戸先生は変革の性格によっていくつかのタイプに分類でき、変革のタイプによって変革の方法が異なる、というお話をされています。
これについて具体的に教えてください。
変革の引き金はおおまかに二つに分けることができると思います。
一つは、図-3で言うと、「業績の低下」がそれにあたります。
業績が悪いから変えなければいけない。
これを「反応型」と言うのですが、要するに放置できないので変えましょう、ということですね。

たとえば業績が低下したならば、まずは戦略や経営者を変える。
そして新しい経営者が自分の考えで変革をスタートするわけです。

その一方、もう一つの引き金は(図-3)の点線下の部分の「予防的対応」です。
業績が悪いというわけではなく、事前に手だてをして、強い組織作りをしようという変革ですね。
これは、業界横並びではなく、「優れた独自のものを作ろう」ということなんです。
例を挙げればトヨタやNTTデータのような企業です。
業績が悪いわけではなく、強い組織にしようとして変革活動をしているんですね。
実は日本の会社でこうした例は極めて少なく、一つ目のケースが多いんです。

ブランド・ビジョンとの関係で言えば、「予防的対応」の中に「変革のレディネス」という言葉があります。
この「変革のレディネス」とは何かと言うと、たとえば社員が自分の仕事の中で変えなければいけないことや部門の課題を発見して、それを自ら解決していくことを指します。
要するに、変化にどんどん飛び込んで、新しいビジネスを作っていける状態にあることが、変化に対しての準備状態、つまり「レディネス」です。
自立的な社員を作ったり、課題探求型の社員を作ったりすることは、「変革のレディネス作り」ということになります。

では、どのようにそれを行うかですが、もし彼らがブランド・ビジョンをよく理解していれば、自分から変えなければいけないことを探して、ビジョンに沿うものを選んで作っていくことができるでしょう。
ビジョンが判断の基準になりますから、自分で考えて、それに合うことをしようと行動すれば、ビジョンを実現することになりますよね。
ですからビジョンを浸透させていく、ブランディングしていく、ということは、レディネス作りと等しい、と言えるのではないかと思います。

“成功の罠”に陥らないためには?

Q. 城戸先生は、組織が衰退する過程には「成功の罠」と呼ばれる共通のパターンがあるとお話しされています。
「成功の罠」について、また、このパターンに陥らない予防策があれば教えてください。
図-4「衰退のメカニズム」と言って、組織の中にはこのように衰退に向うメカニズムがあるということなんです。
怖いのが、「成功が失敗の元になる」ということ。
成功も長く続くと、「成功シンドローム」に陥りがちです。
「我々は絶対大丈夫だ」という妄信です。
そして徐々に、たとえば手続きだとか、そういう内部のことを大事にするようになり、内向きになってしまうんです。

さらに、いろいろな規則をたくさん作って複雑になります。
保守主義に陥ってしまい、新たなことを学ぼうとはしなくなっていきます。

その結果、何が起きるか。
顧客重視と言いつつ、中だけを見ていますから、顧客の動向などは見なくなります。
また、内部が複雑になっていきますから、コストが増えます。
スピードも鈍り、違うこと、新しいことをしようという気持ちが薄れていきます。
それでも環境に変化がなければいいのですが、他社が新しい何かを打ち出し環境の均衡が破られると、業績の低下が起きてしまいます。

そして先ほど、組織変革の体系の所で、業績の低下があると変革の引き金が引かれると言いましたが、この衰退のメカニズムではその引き金が引かれないんです。
なぜかというと、今までのやり方が通用しないことを認めないから。
「我々は大丈夫だ」と思っていて、業績悪化は一時的な問題だろうと現状を肯定する。
一生懸命ロジックを作って、自分たちを守る。
そうすると、デススパイラル、つまり死のスパイラルに入っていく。
同じことを繰り返すので、最後は消滅に至ります。

予防策は、一番は経営者が変わることですね。
たとえば21世紀になってからの日立、ソニーがそう。
主流からではなくて、傍流から経営者が生まれています。
そして変えていった。
そういう意味では、最も簡単なのは主流ではなく、傍流から経営者を登用すること。
そういう自浄能力が働くと、衰退は回避されます。

一番いけないのは、過去からの前例踏襲主義です。
思考をしなくなってしまう。
これは明らかに病的症状ですから、そうならないように持っていく必要があります。
たとえばビジョン経営というのは、そうした形の取り組みになるんじゃないかなと思います。
NTTデータなどの例を授業で使っていますが、これはビジョン経営の例なんです。
会社の目指す方向について真剣にビジョンを作り、それを浸透させていった。
そうした例の一つですね。

ブランド・ビジョンを浸透させるために必要なことは?

Q. ブランド・ビジョンとの関係についてのお話を聞かせてください。
ブランド・ビジョンが持続的競争優位性の形成に影響を与えるとしたら、それはどういう理由からなのでしょうか。
まず「持続的競争優位性」とは何かということですが、わかりやすいところでは、他社にはない独自の競争力が築かれていることといえます。

問題は、それをどう構築していくかです。
そのためには、たとえば5年先どういう企業になっているのか、そういう長い視点で行動しないと未来は作れません。
強い競争力というものは3年、5年かけて作るもので、そうすれば他社が真似できない、持続的な競争力になるはずです。
この将来のありたい姿を描いたものがブランド・ビジョンといえます。
ブランド・ビジョン実現のために皆が努力する。
それを1年、2年、3年と続け、ビジョンの指し示すところをしっかりと追求していけば、それが他社にはない独自の競争力を形成することになります。
そういう意味で、社員がしっかりとエネルギーを集中する方向性を提示していかなければいけないと思います。
Q. ブランド・ビジョンを組織全体に浸透させるポイントについても教えてください。
実はそれが一番難しい問題だと思います。
まずはしっかりとした良いビジョンが必要
社員にも考えが反映されるように社員参画型で作っていくことで、本物の、現実的なビジョンになるでしょう。
難しいのはそれを浸透させることで、50人や100人規模ならともかく、1000人、2000人規模に浸透させていくのは非常に難しいのです。

そもそもビジョンが浸透した状態とはどのような状態かというと、社員の一人ひとりが、会社が言うブランド・ビジョンや経営理念などを意識していなくてもそれに沿った行動ができている、ということ。
ビジョンが自然に身についていて、意識していなくても実践できている、つまり習慣化している状態です。
そのような状態にまで浸透させるには、いろいろな手段を講じなければいけません。
そしてそれは何年か必要となる、中長期的なプロジェクトになります。
ですから、トップ主導で「やるぞ」と宣言し、それが浸透しているか、トップが責任を持って関与する
まずそれが肝になると思います。
そのためにいろいろなイベントを実施することもあるでしょうし、最終的には人事の評価にも反映します。
この方針に沿った行動を取っていれば評価される、という仕組みが必要になると思います。

ただ、現場ではブランド・マネージャーがしっかりブランド・ビジョンを使ってマネジメントできていれば大丈夫です。
言い換えれば、ブランド・マネージャーが普段のマネジメントにおいてもそうしたことをベースにできているかどうかです。
それができていれば、自然と下の人たちは従います。
「このマネージャーも、あのマネージャーも同じことを言っている」となれば、自然にそれに従うようになります。
Q. 城戸先生の目から見て、日本企業でブランド・ビジョンがしっかり浸透しており組織変革を成し遂げ、成果を上げた事例はありますか?
NTTデータは明らかに業績が上がっていますね。
行動指針という行動のガイドラインを作って浸透させたんです。
それで社員一人ひとりがそういう行動がとれるようになり、業績が上がったわけですね。
要するに、「どれだけ本当に実践できるか」という話だと思います。 これが実は変革の難しいところなのですが。 「そこそこ変わった」ではだめなんです。 マネージャーの一部ではなく、全部がしっかり変わらないと、結局は元に戻ってしまうので。
Q. 数々の成功・失敗事例を見てきた中で明らかになった再現性があれば教えてください。
組織行動論で考えると、人間行動のパフォーマンスが何によって決まるかは三つの変数によります。
一つ目は能力、知識、スキルなどの集積
二つ目はモチベーション、つまりやる気がどれだけ強いかということですね。
そして三つ目が方向性です。
方向性がなぜ大事かというと、能力とモチベーションは数値化すれば0から100の間ですが、方向性はマイナス100からプラス100まであるからです。
違った方向性に行ってしまうことは組織にとって害になりますよね。
だからブランド・マネージャー論が必要になってくるんです。
このように、この三つの変数をどう整えるかということが大事ですね。
ただ、日本企業がこの三つの水準が高いかというと……みんな疲れているし、方向性も定まっていない。
すべて整っていないのが現実だと思います。
Q. ありがとうございます。
それでは、最後に読者へメッセージをいただければと思います。
今、組織の中で働いている人たちは元気がないと思うんです。
忙しいし、リモートワークで人との接触が減っており、組織全体に活気がない状態といえるでしょう。
そこで、「みんなでこれを目指そう」というビジョンを示し引っ張っていくのがブランド・マネージャーではないでしょうか。
ビジョンを通して社員に元気と活力を与えることで、会社が望む方向に進み、社員は仕事でやり遂げた喜びを感じ、エンゲージメントが高まっていく。
このようなリーダーシップを発揮できるブランド・マネージャーによって、それが実現するのではないかと思います。

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