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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >日本赤十字社 Vol.3

日本赤十字社が、「もっとクロス!計画」でブランディングに乗り出した – 第三話

日本赤十字社 Vol.3 同社企画広報室 広報主幹 畑 厚彦氏 同社 企画広報室 佐藤 理恵子氏

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸


日本赤十字社が、「もっとクロス!計画」でブランディングに乗り出した(後篇)

聞き手

佐藤さんは広報をご担当されて長いのですか?


佐藤

民間企業で長年広報を担当し、日赤にはこの4月から、広報の専任担当として転職してまいりました。


聞き手

外部から入られて、どんな印象を持たれましたか?


佐藤

日赤はたくさんのことをやっているけれども、何をやっているのかよく分からないという個人的な感想を持って入社しました。
今は、こんなにたくさんの社会的な事業をやっているのに、それを訴求しないのはもったいないという気持ちを強く持っています。


次のステップは各事業のブランディング

聞き手

佐藤さんは実際にはどのような活動をしているのですか?


佐藤

全国の各支部や日赤病院の広報担当者への広報指導を行っています。たとえば広報誌やリリースの添削、メディア対応のアドバイスなどです。今までは、全国の支部や日赤病院の広報担当者もセミナーは受けたものの、実際の現場に落としこんだときにどうすればいいか分からないときに相談する人がいなかったんです。私の仕事は、その受け皿としての活動が中心です。



聞き手

内部のベクトルを1つにするという点で、海外との差はなくなったと思いますか?


日赤は、9つのNGOが集まったような組織、いわば、それぞれが独立してNGOになってもおかしくないような組織なので、海外の赤十字と比較するのは難しいですね。


聞き手

海外に似たような組織形態はないのですか?


これだけ幅広い活動をしている組織は海外ではないと思います。たとえば、全世界189の赤十字のうち、病院を持っているのは50もありません。血液センターがあるのは40ほどです。多くの赤十字は、災害や紛争の救援活動、地域の健康促進が中心です。


聞き手

なるほど。日赤は活動領域が広いから、なおさらインナーブランディングが必要だったのですね。一連の意識改革の途中に3・11が起こりましたが。


震災を受けて、2011年、12年に(赤十字の活動が)あれだけの露出があったので、認知度が急角度で上がりました。そうすると、年間広報で仕掛けている効果がどれくらいの数字で出ているのか読み取れないという弊害も起こりました。
現在、社費としての収入は落ちていますが、年間広報をやらなければもっと落ちたのか、やったからなだらかに落ちたのか、見極められないですね。


聞き手

今、「もっとクロス!」はどの段階にきているのでしょうか?



発信基盤ができたという段階ですね。広報の質も上がってきており、取材件数も増えています。その意味で「発信力」はできてきているだろうと。もちろん、十分じゃないところはありますけどね。
ただ、「もっとクロス!」の本来の目的である「地域ともっとクロスする」にまだ踏み込んでいない。地域と私たちがクロスする部分は何かといえば、結局それは事業です。事業を通じてクロスするわけだから、今やっている事業が本当に地域や社会に歓迎され、受け入れられ、認められているのか。価値があると思われているのか。まさに事業のブランディングが本当にできているのかということです。


聞き手

ああ、なるほど。


自分たちが本当にいいと思ってやっていることが、受ける側はそれを最上のものと思ってくれているのか。NGOやNPOも増え、いろいろなサービスを行っています。
そんな今だからこそ、きちんと地域をマーケティングして、事業のブランディングを行っていかなくてはなりません。ようやく発信まではできるようになったわけですから、接点がキチンとしていないともったいない。本来の企業価値を理解してもらうには、もう1ステップ進んでいかないと難しいというところにきています。


聞き手

具体的に何か計画していることは?


まずは、一般の人たちに私たちの事業がどういうふうに受け止められているのか再調査することにしています。前の調査は赤十字に対する意識調査でしたが、今回はもう少し踏み込んで、赤十字の事業に対する意識調査を行う予定です。
その結果を受けて、人々のニーズに合った事業のあり方を見直し、事業のやり方を修正する。あるいは分かりにくいネーミングを親しみやすいものに変えていく。
また、私たちに求められていても私たち自身が応えていなかったような事業領域があるとすれば、新しい事業を開拓することも必要でしょう。
今あるものを変容する、見かけを変えるだけでなく、場合によってはまったく新しいことを始めるということも必要なのではないかと思います。


聞き手

今までインナーブランディングをやられてきたわけですが、今度は各事業のブランディングに乗り出すのですね。


それが次のステップです。


聞き手

非常に計画的かつ順調にきているように思えますね。


ただ、それだけの時間を要しています。ここにくるまで5、6年かかっていますから。
しかし、担当者は変わっても、組織として迷わずに続けてきたことが成果として出てきたということでしょうね。


聞き手

ブランディングが仕組みとして組織の中に体系化されているような気がします。人が変わっても継続できるような仕組みがあれば強いですね。
今の知識を持ってスタート時点に戻れたら、やはり同じことをやりますか?


6年前に戻れたら、今からやろうとしている事業ブランディングにもっと早く着手したいですね。まあ、1つ1つ着実に積み上げてきたから、そう言えるのかもしれませんが。


聞き手

この5、6年で皆さんのマインドは相当変わってきたのでしょうね。


それははっきり変わったと言えますね。実施を予定している内部の意識調査でも定量的に結果が出ると思います。ただ、事業ブランディングは、それぞれの事業に踏み込んでいきますから、前回以上に啓発が必要かもしれません。


聞き手

実際にはどのような課題があるとお考えですか?


現場で活動しているところは、人数が少ないし、ずっとそれで活動してきたわけで、社費(寄付)を出していただく個人や企業もある程度決まっています。事業や活動の展開パターンが出来上がっている中で、事業のやり方を修正したり、新しいものを入れ込んでいこうとするのは、やはり抵抗があるかもしれません。



聞き手

「もっとクロス!」の踏み込み方とは違うアプローチが必要ですね。


支部や施設がこれだけ盛り上がっているから、私たちもやらなければまずいぞと燃えるわけで、現場が無関心だったら、意識改革も業務改革も停滞してしまいます。


聞き手

なるほど、セミナーで現場の担当者に火を付けたことで、改革の意識が全社的に広がったということでしょうね。今日はありがとうございました。


※掲載の記事は2016年5月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。