一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >高木純氏
【プロフィール】
株式会社コムデザインラボ
代表取締役 高木純氏
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者
2010年10月に「コムデザインラボ」を開業、2014年10月に「株式会社コムデザインラボ」として法人化。ショップブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマークやキャラクター、印刷物やホームページなど、すべて自社完結でトータルデザインする”合わせ技一本のデザイン事務所”として全国にクライアントを持つ。2017年2月に「JCD 中部支部デザインアワード 2016」受賞。2018年度ブランディング事例コンテストで優秀賞受賞。2019年度のブランディング事例コンテストでは「リゾートインヤマイチ」の事例で地方創生審査員特別賞を受賞。
聞き手:一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 ディレクター 能藤
聞き手
「リゾートインヤマイチ」のブランディングは、どのようなことを目的に始めたのでしょうか。
高木
「リゾートインヤマイチ」は、スキー客向けのリゾートホテルが密集した長野県小谷村で一番初めに創業した宿と聞いています。ただ、そもそもスキー客をメインターゲットとした宿泊業は冬の時期がピークで、次いで夏のグリーンシーズンを繁忙期としています。年間で見ると、季節による客室稼働率の変動が大きな課題でした。また、近年では若者のスキー離れなどにより、小谷村を訪れる観光客の数も右肩下がりだったんです。そこで、宿への集客を目的としてリブランディングをスタートしました。
聞き手
どのようなコンセプトで着手されたのでしょうか?
高木
我々が着目したのは、オーナーが宿泊業と並行して農業も営んでいたことです。本人たちにとっては、農作業は「何十年と取り組んできた当たり前のこと」だったのですが、外部の私たちから見れば、まずホテルオーナーが農業を兼業していることが驚きでした。たとえばこんなエピソードをお聞きしました。県外に引っ越した親類は、小谷村に帰省する度に農作業を手伝ってくれたみたいなのですが、その際「都会で働くのとは違った、心地よい労働なんだよね」と言っていたそうです。実は農作業は、その土地でしか経験できないことなんです。そんな生の声を元に、農業体験を「非日常」のイベントとした「体験型宿泊」を商品化することを着想しました。つまり、今までのスキー客とは違うアプローチで、季節に依存しない魅力を生み出そうと考えたわけです。定めたブランド・アイデンティティは「“自分たちの当たり前”が個性になる宿」でした。
聞き手
当事者には当たり前だった農作業が、実は大きな商品価値を持っていたわけですね。
高木
はい。しかも、ただの農業体験ではなく、参加者は自分で収穫した自家製野菜をその日のうちにディナーとして調理してもらうことも可能です。今までも、オーナー家族で育てた野菜をレストランで提供されていたのですが、コンセプトとサービスを掘り下げることにより、より伝わるように仕掛けました。自家製野菜が提供されるだけでもすごいのに、さらにそこに『宿泊者も一緒に収穫できる』要素が加わることで、宿としての魅力も再構築したわけですね。
聞き手
農業と掛け合わせることで、魅力的な宿泊サービスも実現したということですね。
高木
そうですね。さらに、“スマートフォン依存”という現代の課題にも着目し、「デジタルデトックス」という、田舎でしか体感できない過ごし方も積極的に提案しています。既に農業体験や民泊というサービスは全国を見渡すといくつも存在するのですが、そのほとんどは、がっちり丸一日田舎生活をしなきゃいけない。つまり、旅行に求められる『楽しさ』という意識が少なく、本格的すぎて体験のハードルが高すぎるんですね。リゾートインヤマイチが提供するプランでは、非日常体験として農業にも触れられて、さらにホテルサービスでおもてなしも受けられる『ほど良さ』を意識しています。他では真似できない唯一無二の形ではないかと思います。
聞き手
具体的なブランディングの手法についてもお伺いできればと思います。具体的にはどのようなことに着手されたのでしょうか?
※掲載の記事は2020年6月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。