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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 徳永 美保氏

環境分析、3C分析とテストマーケティングで
物流ニーズを洗い出し
“総合物流企業”としてのポジション確立へ

   徳永 美保

Profileプロフィール

一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー

広告代理店でセールスプロモーションを担当したのち、愛知県名古屋市の地元メーカーにて広報職に携わる。
その後、広告プロモーションのプランナーとして企業や大学、専門学校のプロモーションを手掛け、2020年からはブランド・マネージャーのトレーナー資格取得を機にブランディングに携わる。
2022年度ブランディング事例コンテストで「高末株式会社のブランディング」で優秀賞を受賞。

混載便事業など3つの事業を柱とする高末株式会社。
同社では、ドライバー不足やコロナ禍によるEC需要の増加など課題が山積している物流業界の状況を鑑み、関東・関西・東海エリアにおける総合物流企業としてのポジション確立を目指してブランディングに着手。
3C分析やテストマーケティングなどを実施し、ニーズを洗い出すことで問い合わせ件数増加などの成果を上げています。
高末の取り組みとはどのようなものなのか、ブランディングを担当した德永美保氏にお話を伺いました。

“3つのポイント”でブランディングを推進

Q. 本日は、ブランディング事例コンテスト2022で優秀賞を受賞した「高末株式会社のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まずは今回のブランディングの経緯を教えてください。

「高末株式会社のブランディング」は、物流企業の事業基盤強化と売上拡大に取り組んだ事例です。
クライアントの高末様は名古屋市の熱田区に本社を構え、「進化を続ける人間集団」という経営理念のもと、2022年に創業120周年を迎えた企業です。
同社では、独自の運行システムで複数荷主の荷物を混載して輸配送する「混載便事業(タカスエロット便)」や、部品を調達し構内で手作業による「組立」と目視による「検査」を行って納品する「組立・検査(構内業務)事業」、小売店向けのピッキング・仕分け・輸配送を行う「小売店向け事業」の3つの事業を柱としていますが、物流業界にはドライバー不足や労働時間規制、コロナ禍によるEC需要の増加、サプライチェーンの混乱、コスト削減など様々な問題が山積しており、事業基盤をさらに強化する必要がありました。
そこで、価格競争に巻き込まれない高付加価値サービスの提供と、地元の東海エリアのみならず、関東・関西エリアでも総合物流企業としてのポジションを確立することを目的にブランディングに取り組むことになったわけです。

物流業界の問題について

Q. ブランディングを進めるうえで意識していたポイントを教えてください。

進め方には、3つのポイントがありました。
1つ目は、「混載便事業」が他の2つの事業の輸配送にも関わることから、まずは混載便事業から取り組んだということ。
2つ目は、各事業が営業・運送・構内・システム……と各部門によって成り立っているため、部門ごとのリーダーをメンバーとするプロジェクトを立ち上げて「チームビルディング」で推進したこと。
そして3つ目は、デスクリサーチや取引先へのヒアリングに加えて判断材料になること、他事業のブランド構築にも情報のフィードバックができることなどを考慮し、「混載便事業」のリスティング広告をテストマーケティング的に実施したことです。
ブランディングでは、こうしたポイントを踏まえて取り組んでいきました。

進め方

Q. 具体的には、どのようなことに着手されたのでしょうか。

先ほどお話ししたように、最初は「混載便事業」のブランド構築から着手しました。
協会のブランド構築の8つのステップにもとづき、環境分析から3C分析を行い、「自社便を減らしたい」「今まで運んでいた路線便に断られて運べる会社を探している」「異形物を運ぶにはチャーターするしかなくコストが高い」「車両の手配が面倒」などの顧客が抱えている不満や不安の声を抽出しました。
また、高末様では「混載による幹線便」が集荷や配送も行う独自の運行システムを構築しており効率良く運行ができるため、時間やコストの削減が可能で、異形物や積みにくい荷物にも対応でき、さらに多品種少量の荷物や繁閑差にも対応できるなど、顧客のニーズに対して高品質かつコストを抑えて運べることが強みです。

次に市場機会についてですが、まず、変わった形状の物を運ぶには専用の便を貸し切ってチャーター便で運ぶ必要があるためコスト効率が悪く、競合が運びたがらないことから、高末様なら高品質でコストを抑えて運ぶことができるので市場機会があるのでは、と仮説を立てました。
さらに、EC需要の増加で全体のトラック台数が減少しているため、チャーター便は頼みにくいと思われることから、さらにニーズが発生するのではないかという仮説も立て、ブランディングを進めていきました。

混載便事業の3C分析

Q. ブランディングを進める中で直面した課題は?

自動車や精密機械などの特殊な物以外はほとんどの輸送に対応できてしまうため、幅が広すぎて対象となる業界がなかなか絞り込めない、ということです。
ただ、物流担当者のニーズや抱えている課題自体は変わらないと考え、ペルソナを具体的に設定し、どういった不満やニーズがあるのかを徹底的に洗い出し、自社の事業領域、サービス、提供できる価値を明確にして、見込み客のほうから探してもらえるようにテストマーケティング的にリスティング広告を実施したんです。
ここでは、実際に広告を始める際に、かなりの数の単語を決めています。
たとえば「運ぶモノ・種類軸」「運べる量軸」「運ぶ方法軸」「価格軸」「エリア軸」「サービス軸」などで検索キーワードを設定し、どの検索ニーズが多いのかを探りました。

このように細かくチューニングした結果、特殊車両部品や穀類など、想定していなかった業種のお客様からもお問い合わせをいただくことができたんです。
そして、意外にも「チャーター便」という、今使っている便そのものの単語で検索して問い合わせをしている、という事実も明らかになりました。
このような事実は、「チャーター便」以外の方法をそもそも顧客が知らないという仮説の裏付けとなりました。
そこで、混載便事業のブランド・アイデンティティは「『運べない』『見える化できない』の物流課題をパワフルに解決。安定した物流サービスを提供します」と決めました。
このブランド・アイデンティティは、高末様のサービスが独自の運行システムによって品質良く運べ、運行状況も見える化できるものであることを表しています。

また、ウェブサイトのランディングページでは、ペルソナである物流担当者の不満を代弁するようなコピーを配置しました。
また、運送会社を変えることによって、品質が悪くなるのはないかという不安を払拭して、安心して他社から乗り換えてもらえるように、高品質な輸配送を低コストで実現できるエビデンスとして「独自の運行システムの説明」や「実績」、「お客様の声」などを多く提示し、ペルソナの不安を払拭する構成を意識しました。
さらに、営業担当者によって差が出ないように、ベテランから新人まで営業力を平準化できる営業ツールも作成し、営業担当者が提供価値を明確に伝えることができる環境を整えました。

タカスエ ランディングページ

Q. 「混載便事業」以外の事業のブランディングについても教えてください。

「組立・検査事業」でも同じようにブランド構築ステップにもとづき、環境分析、3C分析を実施しました。
その結果、顧客が「コスト削減したいけれど仕入れ価格の見直し、ラインの変更・見直し以外に何を改善したらいいのかわからない」ことや「納品先との距離が遠いので、近くで組み立て加工をして無駄な輸送コストを削減したい」という不満を抱えていることや、自社の強みが「手作業による丁寧で高品質な組立や検査を行うことができ、以降の工程を自社で一貫して請け負うことができ、納期を短縮できる」ことであるとわかりました。

そこで、新しく拠点を作ったり、拠点を引っ越ししたりする場合に、どうしても自動化できないものを持っているメーカーやサプライヤーに市場機会があるのではないか……と仮説を立て、ブランド・アイデンティティは「メーカー品質の組立・検査技術、拠点構築・運行ノウハウで流通経路を短縮し、サプライチェーンの改善に貢献する」と決めました。
ここでは、複雑な流通過程をスリム化することでサプライチェーンの改善に貢献できる、という高末様の特徴を表しています。

このような過程を経て、ブランド体験の設計では、物流会社でも品質に問題なく、安心してもらえることを伝えられるように、高い品質であることを保証できるようにすべきではという議論を行いました。
たとえばブランドムービーでは、物流担当者の方は、工場内の整理整頓された様子やラインの状態で品質の高さがお分かりいただけるので、工場内の様子や丁寧な加工、目視による検査などが伝わるように意識しています。
また、インターナルブランディングでは、品質の維持向上や独自の検査基準の構築に着手しました。
品質の維持向上では、以前は部品や拠点ごとにマニュアルが存在していましたが、事業部全体で品質の維持・向上に取り組むためにマニュアルの見直し、整備を始めました。
そして独自の検査基準については、これまではメーカー品質と同等の品質で提供できるものの、メーカーではないので「メーカー品質」と訴求できない問題がありましたが、独自の検査基準を設けることによって、顧客に安心してもらえるのではないかということで、検査基準の整備と構築に取り組んでいます。

ブランディングで問い合わせ件数が増加

Q. ブランディングに取り組んだ結果、どのような成果が得られたのでしょうか?

まず、お問い合わせの件数がアップしました。
また、混載便事業へのお問い合わせをきっかけに、相乗効果で「組立・検査事業」も含んだ内容のお問い合わせをいただくなどの成果も得られています。
さらに、各部署がお互いに何をすれば良いのか、改善すべき点は何かを、部署の垣根を越えて建設的に話し合いができる風土も形成されました。

「混載便事業」のブランド・アイデンティティ

Q. 最後に今後の課題、展望を教えてください。

現在は、最後に残った取り組みとして「小売店向け事業」のブランド構築を行っています。
今後は、3つの事業に横串を刺すような施策を展開することで、総合物流企業としての認知を高めていければと考えています。
また、3つの事業全体でブランド体験・顧客体験を設計し、MAツールを活用したインサイドセールスも強化していく予定です。
私自身、コロナ禍になり、モノが届くのは当たり前ではないということを痛感しながらのスタートになり、高末様の事業の社会的価値の重要性を改めて認識しました。
人々の豊かな暮らしを支えるインフラとして物流があるという意識を持ちながら、事業のブランディングを行い、各事業統合的にブランディングに取り組んでければと思います。

今後の課題

※掲載の記事は2023年10月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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