一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >都外川 八恵氏 Vol.2
聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸
【都外川 八恵氏のプロフィール】
開発型貿易商社にて新規自社開発ブランドの企画や広報を担当。
その後、カラー専門のデザインスクール(DICカラーデザインスクール)に転職。
カラーの講師として一般の生徒を教える立場となり、スクール運営にも携わる。
その後、カラー専門のデザイン会社(DICカラーデザイン株式会社)にて
色の調査や企画&提案、色に関するコラム執筆や教材開発、また各種企業向け
セミナー講師や、韓国や中国などアジアを中心とした海外での
色に関する人材育成などを経験。
独立後はトータルコーディネートの理論化に注力し、
日本ファッションスタイリスト協会の「スタイリングマップ」メソッドや、
スタイリング業界初の「ファッションスタイリング検定」を構築し、広く
百貨店コンシェルジュやブランド店員様向けにファッションスタイリングの
レッスンや、カラーやファッションに関する企画や本の執筆に力を入れている。
聞き手
色彩検定を受ける人はどういう職種の人が多いのですか?
都外川
本当に「いろいろ」ですね。色が無い世界は無いだけに、さまざまな業種の方々が受けています。
聞き手
色を知ることによって役に立つことはどんなことですか。
都外川
例えば、プロのデザイナーでしたら、ご自身の感性を武器にしていると思います。
でも、それだけではお客さまが納得しないときに、「これこれこうだから、こうなんです」と言うためのロジックを身に付けられます。
聞き手
理論武装ですね。
都外川
今はそれが求められていると思います。
例えば、洋服の販売でも、「これ今すごく人気なんです」「流行っているんです」というセールストークは何の売り文句にもならなくて、「これこれこうだから、そちらではなくてこちらの方がお客さまにぴったりですよ」とお客さまが納得する理由が求められていると思います。
聞き手
すごく素朴な質問なのですが、そもそも信号の赤がストップで、黄色が注意、青が進めというのはどういう意味を持つのですか。
都外川
赤、だいだい、黄色などの暖色系は進出色と呼ばれ、実際に飛び出して見えます。飛び出して見えるということは、情報の認知経路の速度がものすごく速いわけです。
それに対して、ブルーなどの寒色系は後退色と呼ばれ、引っ込んで見える。
ですから、認知経路の速度が若干遅い。
なので、危険を知らせたり、注意を喚起したいときは暖色系を用います。
セールなんかの打ち出しも暖色系を多用しますね。
ブルー系の打ち出しはあまり見たことがありません。
注意を喚起させたり気分を盛り上げたりするときには暖色系が有効ですね。
聞き手
プロミスの黒と黄色の配色もかなり目立ちますね。
都外川
黄色はすごく明るさを感じさせます。
黒は言うまでもなく一番暗い色です。
そうすると明暗のコントラストがくっきり出ます。
明度差が大きければ大きいほど、視認性、可読性、明視性がめちゃめちゃ高くなるんです。
しかも黄色は暖色系ですから非常にキャッチーな感じになります。
でも、黄色と黒の配色に気持ちが落ち着くという人はあまりいないと思います(笑)
聞き手
まず人の気持ちがすごく大事で、なおかつそれがどのくらいのスピードで認識されるかということ。
そのほかにブランドと色を結びつけるポイントは何かありますか。
都外川
さきほどお話ししましたが、夢やストーリーは重要な要素です。
ティファニーブルーはすごく有名な例ですね。
ティファニーブルーはティファニーブランドのイメージを強く印象付ける象徴色です。
その色を見ただけでティファニーを連想します。
ティファニーが持つ女性の幸せ、夢、愛情、結婚などを一つの世界観として形作る色がティファニーブルーなんです。
聞き手
コカ・コーラレッドにも逸話があるそうですね。
都外川
もともとサンタクロースが着る服は赤に決まっていたわけではなかったのが、コカ・コーラ社がサンタクロースに赤い服を着せてコカ・コーラをおいしそうに飲んでいる広告を売り出したことから、サンタクロースの服は赤になったという・・・。
聞き手
色をブランド要素にした、まさに象徴的な話ですね。
聞き手
ブランド要素をいかにデザインの世界観に結び付けていくかに苦労するデザイナーの方は多いと聞きます。
本当にその色でイメージが伝わるかどうかが不安だというんです。
その世界観を色で表現する判断基準はどこに求めればいいのでしょうか。
都外川
客観的な見方は色彩検定など、その他色彩学の本で勉強できます。
例えば、10人いたら7人はこう見える、こう感じるといった色彩心理的なものですね。
当然、2~3割は違ってきますが、世界で7割は共通すると言われています。
聞き手
統計に近いものですか。
都外川
そうです。
例えば、青空の色を見てすごく嫌な気持ちになる人は少ないですよね。
人間は皆見慣れている青だし、どんな国に行っても青空の青はある程度共通の色ですから。
青は嗜好色の上位に必ず挙がってきます。
聞き手
ブランドを構成する一つの要素として、どの色を選別していくかということですが、そこでデザイナーが悩んだときに、もちろんプロに任せるという選択もありますが、どういうことに気を付ければ、ブランド再認からブランド再生まで起こせるのでしょうか。
つまり、ブランド認知につなげていくには何が必要なのでしょうか。
都外川
自分の色メガネはデザイナーの個性や世界観であり武器なので、それはそれで素晴らしいと思いますが、それをいったん外して客観的に見る視点というのは必要だと思います。
さきほど言いましたが、10人いたら7人に共通する感情があるので、それを知識として持っていることは仕事の武器になると思います。
聞き手
その全体像を知るために何を指針とすればいいですか。
都外川
それはこの本ですね(笑)
聞き手
ああ、都外川さんの『配色&カラーデザイン~プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック』(デザインラボ)ですね(笑)
都外川
デザイナーの人たちにはアーティスト気質の方が多いように感じます。
アートとデザインは違うと思いますから、色を左脳で客観視することは必要だと思います。
聞き手
色の捉え方も国によって違いますしね。
都外川
同じ赤でも日本と中国と韓国ではそれぞれ赤らしい赤が微妙に違います。
こんなに隣接している国なのにですよ。
あと国旗の色とその国々の色のイメージが割と連動します。
聞き手
それは国旗を作る前からその国の色のイメージがあったのか、それとも国旗を作ったからその色が国のイメージとなったのか、どちらでしょう。
都外川
国旗は国を象徴するものなので、国旗を作ったときに色についての議論が相当あったと思います。
そこで、その国々の風土や歴史が反映されたのだと思います。
日本の国旗の白地も日本の風土では、昔から白という色はとても身近ですよね。
例えば現代なら白壁。
これがヨーロッパだと白壁は異質なイメージになります。
聞き手
いろいろな着眼点を持つ意味で、都外川さんのこの本は役に立ちそうですね。
マーケッター、マーケティング寄りのデザイナー、ブランド・マネージャーに向けて何か最後に一言お願いします。
都外川
色は右脳と左脳のバランスです。
感性も理論化したり、理論も感性化したりという両輪があって初めて駆動するので、右脳が大きい人は左脳をもう少し大きくすると、両輪のバランスがとれてよりうまく回って前に進むことができます。
聞き手
左脳は科学的証明、理論ですね。
都外川
色彩学の分野です。右脳で捉えたものを、左脳でアウトプットすることも時には重要だと思います。
聞き手
右脳はどうやってインプットするのですか。
都外川
それぞれが美しいと思うものを、身近で意識的に感じたり聞いたり触れたりすることですね。
聞き手
なるほど、両脳をバランス良く保つのが大事ですね。
今日はどうもありがとうございました。
※掲載の記事は2016年1月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。