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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >水野 与志朗氏 Vol.1

ブランド・コンサルタントからみたブランド・マネージメントの世界 – 前編

水野 与志朗氏 Vol.1 一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 評議員 ビーエムウィン・ブランディングオフィス代表

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【水野氏のプロフィール】

ブランド・コンサルタント。

学習院大学経済学部卒業後、味の素ゼネラルフーヅ(株)、

マキシアム・ジャパン(株)、ハーシージャパン(株)で

ブランドマネージャー、マーケティングマネージャー、

マーケティングダイレクターを務め、2002年より現職。

主な著書に『ブランド・マネージャー』(経済界)、

『THE BRAND BIBLE』(総合法令)、

『ブランド戦略実践講座』(日本実業出版社)、

『戦略的パブリシティ』(インデックス・コミュニケーションズ)がある。


独立するきっかけは出版

聞き手

水野さんが今の会社を設立されたのは今から9年前ですね。


水野

はい、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)、マキシアムジャパン、ハーシージャパンを経て、2002年に独立しました。


聞き手

会社員時代からコンサルタントを目指されていたのですか?


水野

そもそもコンサルタントになろうとは思っていなかったんです。20世紀最後の2000年の正月に、今年で20世紀も終わるから、自分がこれまでやってきたことを本にしてみようと思い立ったんです。じゃあ、どういう本を書こうかといろいろ考えたのですが、それまで私はずっとブランディングに関わってきましたから、ブランド・マーネジャーやマーケティング担当者の業務を分かりやすく本にまとめてみようと思ったのです。それが『ブランド・マネージャー―たった一人のBMで会社がよみがえる』(経済界)という本です。



聞き手

それが独立のきっかけとなる処女作だったのですね。


水野

ええ。書くことを思い立ったときには、まさか本当に本になるなんて思っていなかったのですが・・・。それでも1年ぐらいかけてコツコツと書き続けていました。


聞き手

目的は出版することではなかった?


水野

本になればいいなあぐらいの気持ちでした。サラリーマンですから、当然、日々の時間は仕事に費やされますし、残業もあったので、夜11時以降に帰宅して、家族が寝静まった時間にパソコン(PC)を立ち上げて原稿を書くのが日課でした。週末には、幼い子供を公園で遊ばせながら、その横でPCを打っていましたね。


聞き手

そうして書き上げたのが『ブランド・マネージャー―たった一人のBMで会社がよみがえる』。


水野

ええ。で、書き上がったので、せっかくだからと出版社に原稿を持ち込んだんです。


聞き手

企画ではなくて、書いた原稿そのものをいきなり持ち込んだのですか?


水野

ええ(笑)。まあ、駄目だろうなと思っていたんですが、意外にも出版してくれるということで実現したんです。


聞き手

いきなり出版社に持ち込んで一発目で?


水野

ええ、一発目の出版社で当たりました(笑)。


読者からの依頼で始まったブランド・コンサルティングという仕事

聞き手

コンサルタントになられたのはどういうきっかけだったのですか?


水野

本が出た後、読んでくれた読者の方々、つまり、企業の中でブランドの仕事をされている人たちからコンサルティングの依頼が来るようになったんです。ですから、本を出したことによって、必然的にブランド・コンサルタントという仕事が始まってしまったわけです。


聞き手

当時は会社員ですからイントラプレナー(企業内起業家)ですね。あ、これ言ってはまずいですか(笑)。


水野

いえ、HPでもきちんと書いていますから大丈夫です(笑)。当時、私自身、コンサルタントにものすごく悪いイメージを持っていました。それこそ会社員時代に、社長が連れてきた某コンサルタント会社のコンサルティングを受けたことがあるのですが、大して成果が出なかったんですね。コンサルが入ったのはいいけど、会社自体が変わるようなことはなかった。しかし、コンサル料として2カ月で2500万円も支払っていたんです。


聞き手

コンサルティング資料とか膨大で・・・?


水野

それはもう5cmぐらいありましたよ(笑)。そういうこともあり、私自身がコンサルに対してすごく不信感を抱いていましたから、コンサルタントになろうなんて思ってもいませんでした。だけど、本を出したことで必然的にコンサルタントの仕事の依頼が来るようになった。もう襟を正す思いですよね。ただ、高額なフィー(報酬)だけ請求して役に立たないコンサルタントには、絶対になりたくないと思っていましたね。


聞き手

反面教師を見ていたわけですからね。


水野

「提案だけして終わり」という机上のコンサルタントではなく、その提案をどうやって社内なり現場なりに落とし込んでいくかという「現場志向のコンサルタント」を目指しました。自分では「ピッチコンサルティング」と勝手に呼んでいるのですが。要は、現場で実際にやって見せる。あるいは、実際に皆の意見をまとめて社内の求心力を高めていきながら結果に出していく。そういうコンサルティングのスタイルを始めるようになります。


聞き手

ブランディングの領域にそういうコンサルティングは今までなかったですよね。


水野

そうですね。ブランディングの領域においては新しい試みだったのではないでしょうか。


聞き手

独立された2002年といえば、「ブランド・マネージャー」という言葉自体もまだ浸透していなかった頃ですよね。そこにコンサルティングの声が掛かるということは、潜在的にそういうニーズがあったということですね。そうしたニーズはブランドに携わっている人がほとんどですよね。


水野

そうですね。現在のクライアントもそうですが、当時のクライアントも大手消費材メーカーがほとんどでした。大企業ですから、ブランド・マネージャーというポジションもありましたし、ブランディングの重要性もよく理解されていました。ですから、必然的にクライアントも大手企業に絞られていました。独立して個人でコンサルタントをされる方は、中小企業をクライアントに狙うことが多いのですが、私の場合は最初から大手メーカーが多かった。それは今も変わりませんが、もちろん、中小企業のコンサルティングもやっています。



聞き手

大手企業と中小企業のコンサルティングで違うところはありますか?


水野

実際のコンサルティングとしてはほとんど違いはないと思います。というのは、作る製品やそれを作る人、業務内容や組織が違っても、ブランディングのターゲットは消費者のマインドなのです。ですから、どんな製品を誰が扱っていても、ブランディングのアプローチとしてはそれほど変わりはありません。ただ、プロジェクトを組んでやっていく上ではいくつか違いはあります。


聞き手

どういうところが違うのですか?


水野

例えば中小企業だと、ブランドを管理するブランド・マネージャーがいません。


聞き手

なるほど。それこそ社長が兼任していたり・・・。


水野

そうですね。社長自身と一緒にやっている仕事も実際にあります。あるいは、シニアマネージャーとか事業部長クラスと一緒につくり上げていくことになります。つまり、中小企業の場合は、経営者やそれに近い人がコミットしながらやっているわけです。


聞き手

組織に対するアプローチの仕方が違うだけで、コンサルティングの中身は変わらないということですね。


水野

そうですね。戦略の立て方だとか物の考え方だとかは変わりないですね。市場データがあるとかないとかは、実際にはあまり関係ないのです。もちろんあった方がいいのですが、ないからといって仕事ができないというわけではありません。基本的にその会社の中でそのブランドに携わっている人たちの頭の中に基本的な情報が入っている。私の仕事は、そういう現場の人たちの頭の中に入っていることをうまく引き出して形にすることなのです。


聞き手

ブランディングに関するブランド・マネージャーの共通の悩みというのはありますか?


水野

8~9年この仕事を続けていますが、最近増えているのは商品開発の仕事ですね。例えば、食品スーパーに行けば同じような商品が溢れていて、何が差別化なのかよく分からなくなっています。そこでどういう価値が求められるのかといった課題ですね。


聞き手

そうした商品開発の中で、水野さんが最初に行うことは何ですか?


水野

商品開発に関しては、今、市場はどうなっているのかを実際に見に行きます。顧客接点である販売の現場を見に行くわけです。食品スーパーの売場を見に行って現状をつぶさに観察する。例えば、歯ブラシのコーナーでは200アイテムくらい並んでいますが、「この中で差別化はあり得るのか?」という感覚を大事にしています。


聞き手

そのときはクライアントの担当者も一緒ですか?


水野

それもありますけど、基本的には自分たちのチームで行動します。


聞き手

次にどうされるのですか?


水野

市場データがあれば見せてもらいます。


聞き手

ああ、なるほど。マーケットデータはまず売場を見てから、その後に見る。


水野

そうです。まず自分の視点をしっかり持って、それから市場データを見る。市場データもリサーチャーが分析したインサイトの部分はあまりよく読みません。それよりも、事実として挙がってくる数字とか消費者の実際の言葉とか、そういうファクト(事実)だけを拾います。自分のインサイトとデータ上のファクトをつなぎ合わせて、戦略仮説を作っていくのです。


後篇へ続く

※掲載の記事は2015年3月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。