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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >日本赤十字社 Vol.2

日本赤十字社が、「もっとクロス!計画」でブランディングに乗り出した – 第二話

日本赤十字社 Vol.2 同社企画広報室 広報主幹 畑 厚彦氏 同社 企画広報室 佐藤 理恵子氏

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸


日本赤十字社が、「もっとクロス!計画」でブランディングに乗り出した(前篇)

聞き手

2007年からスタートした「もっとクロス!」が、最初にやろうとしたことは、まさに組織内のブランディングだったのですね。


そうです。しかしあまりにもそのイメージが強すぎて、組織内に限った活動だと思われがちなのですが、本来の目標は、地域、社会、企業、世界とクロスするという壮大なものなのです。


職員を巻き込むポイントはセミナー研修

聞き手

「もっとクロス!」を企画するきっかけは何だったのですか?


きっかけは2005年ごろです。当時は、広報というものに社内の関心がまだまだ薄く、広報のことについて全体で議論されずに決まってしまうことも多くありました。
さらに、寄付で成り立っている日赤では、寄付金はできるだけ活動資金に回すという考え方が根強くありました。広報への予算はなかなか回ってこなかったのです。


聞き手

ああ、なるほど。


当時は、事業を重視する声が圧倒的でした。しかし一方で、組織内からは「社会の人たちは私たちのことをあまり理解していないのではないか」という危機感が出始めていたのです。その意識の高まりによって、戦略的な広報を行う必要性に、やっと舵取りをすることができました。
しかし、その手法に関して社内ではノウハウがありませんでしたから、外部機関の助けを得ながら進めていきました。



聞き手

しかし、巨大な組織ですから、簡単にはOKは出なかったのでは?


幸いにして、トップの近衞忠煇社長自身が同じ危機感を持っていたのです。


聞き手

なるほど、トップダウンだと話は早いですね。
本社の広報担当スタッフは何人でスタートしたのですか?


当時、4~5人でした。これだけの組織なのに少ないですよね(笑)。その人数で、赤十字新聞や社内報を作ったり、キャンペーンを企画したり、メディア対応をしたり、すべてを行っていました。今は11人に増えて、隔世の感がありますね。


聞き手

その本社の広報スタッフが、各地の広報担当者を育てるという仕組みなのですね。


各支部や病院には専任の広報担当者はいなくて、皆、違う仕事を兼ねながら広報の仕事をやっています。そういった方のサポートをしているというイメージですね。


聞き手

これまで一番苦労されたことは何ですか?


「もっとクロス!計画」といっても、当初はなかなか理解してもらえませんでした。「本社は何をやろうとしているの?」「何を考えているの?」といった斜に構えた空気だったようです。やろうとしていることが形に見えないので、皆、どう反応していいか分からなかったのだと思います。確かに、いきなりポスターが送られてきても、「何だ?」となりますよね(笑)。


聞き手

どの時点から、皆のベクトルが同じ方向を向いたのですか?


社長が先頭に立っていましたから、全国各地のトップクラスの人間が集まる会議などで、必ずこの話をしていました。「皆でやろう」と。社長自身がこの計画にコミットしていたことは非常に大きかったですね。


聞き手

「もっとクロス!大賞」でもかなり意識が変わったのではないですか?


あれは広報担当者のモチベーションを上げる意味で、非常に効果があったと思います。
ほかの支部や施設の良い事例を聞けば、自分たちも試してみようと思いますよね。イベント一つとっても、そのイベントでお客さんを呼ぶためにこう工夫したとか、資料はこういうふうに作ったとか、こういう部分が好評だったとか、リアルな事例が出てきます。そうした良い事例を真似る習慣が、「大賞」で一気に広がりました。
「今まで支部だけでやっていたイベントを、血液センターの職員の力、病院施設の力を借りて一緒に行うことで、今までできなかったことが実現できた」とか、ポジティブな発表が刺激になったようです。ほかの部署の話を聞くことで日赤の全体感が生まれてきたように感じます。



聞き手

この運動に皆を巻き込むポイントは、どこにあったと思いますか?


大賞もそうですが、セミナー研修は大きかったと思います。セミナーを3回か4回やるうちに、「自分たちは職場に戻って頑張るけれども、上司がそれを理解していないと前に進まない」という声が挙がってきたんです。そこから新たに、上司に当たる人たちを対象にしたマネジメントセミナーが生まれました。マネージャーに広報予算の重要性を分かってもらう研修です。


聞き手

上司を啓蒙したわけですね。


要は、広報担当者が普段やろうとしていることを理解してほしいということと、広報の予算を組み込んでほしいということです。


聞き手

セミナー研修を受ける職員はどれくらいいるのですか?


1回につき100人前後です。その規模で4~5年間続けてきました。


聞き手

何日間のセミナーですか?


1泊2日のセミナー研修で、2日間で完結する内容です。初日に「もっとクロス!」の趣旨や広報の重要性を解説して、2日目は実際にリリースなどの書き方を学ぶ実践編を行っています。


聞き手

最初から100人集まったのですか?


最初は強引に参加してもらって(笑)。でも、今は自主的に参加する人が増えています。東京と大阪の会場で開催していますが、今年は東京の参加希望者が多くなり、研修を追加で開催しました。それほど職員の意識は高まってきています。



聞き手

その変化はすごいですね。研修セミナーは年間何回開催しているのですか?


100人規模の基礎セミナー、70人規模のスキルアップセミナーをそれぞれ年2回、50人規模のマネジメントセミナーを、年1回開催しています。


聞き手

それを毎年開催しているわけですから、どんどん広がりますね。


直接の広報担当者ではないけれども、救護活動や地域医療など地域とつながっている人たちは自分たちの事業を広報していくことが必要なので、参加を促しています。


聞き手

人事異動がありますから、畑さんと佐藤さんもずっと広報というわけではないんですね。


いろいろな事業を経験しないと分からないことが多いですから、そのための人事異動は多いですね。もっとも、広報や専門スキルが必要な部署は、スキルが身に付かないうちに変わってしまうことも多く、異動も良しあしではありますが。
海外の赤十字社の多くは、広報部門に外部のPR会社やマーケティング会社、マネージメント会社から専門職を雇っています。


聞き手

日赤ではそういう雇用の仕方ではないんですね。


広報に異動してきた人が担当しています。


第三話へ続く

※掲載の記事は2016年5月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。