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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 小林 聖也氏

ブランディングで「オリジナル手提げ袋」という
価値を創出

ブランディングプランナー小林 聖也

Profileプロフィール

ブランディングプランナー

長野高専卒業後、システムインテグレーターとして、大規模インフラ構築チームに在籍し、大手企業のバックアップシステム構築、導入および運用の統括を担当。より消費者と近い仕事を求め、趣味でもあったグラフィック・ウェブデザインを学び、ウェブデザイナーに転身。
長野県内を主としたデザイン案件に携わり、現在はブランディングプランナーとして、より戦術的なデザインのためのブランド戦略構築を強みとし、様々な企業のブランディングをファシリテートしている。
また、2016年度より清泉女学院短期大学の外部講師として、より実践的なブランディングを学生らにも伝えている。2019年度ブランディング事例コンテストで奨励賞を受賞 。

聞き手:一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 岩本俊幸
話し手: 小林 聖也 氏

長野県で昭和21年から紙製品の卸販売を行っている老舗「水島紙店」。デジタル化の影響などにより紙業界は衰退しつつある現状の中、オリジナルの「手提げ袋」に着目。「手提屋」という事業ブランドで独自の価値を創出し、注目を集めています。ブランディングを担当したブランディングプランナー小林聖也氏に、「手提屋」ブランドについてお話を伺いました。

独自スキルを活かしメーカー依存から脱却

Q. オリジナルの手提げ袋を制作する「手提屋」の事例で、2019年度の「ブランディング事例コンテスト」では奨励賞を受賞されました。ブランディングに取り組んだ背景を教えてください。
今回対象となった「水島紙店」は、昭和21年から紙製品の卸販売を行っている老舗店です。紙業界は今、ICT化・デジタル化の発展や消費構造の変化で衰退しつつあり、さらに流通の中で卸売業の位置づけも難しくなってきているのが現状。ただ一方、環境汚染の観点から脱プラスチックへの取り組みが世界規模で盛んになっており、ビニール袋から紙袋へ変更する企業も増えています。そこで、長野県には紙袋を専門に制作する企業がなかったので、その役割を担いたい、と本事業がスタートしました。
そこには、メーカーに依存するのではなく、「独自のスキルで価値を創り出し、直接エンドユーザーとつながりたい」という水島紙店さんの思いがありました。
Q. ブランディングは、どのような形で進めていったのでしょうか。
私がファシリテーターとなり、水島紙店の営業メンバーを中心とした6名とともに、ワークを重ねていきました。会場は水島紙店本社の事務所を使い、1回3時間ほどのワークを月1回のペースで実施し、3C分析やSTPマーケティング、ペルソナ、ブランド・アイデンティティ、刺激設定、目標設定……など、ブランド・マネージャー認定協会の提唱する「8ステップ」をベースに分析を行いました。
Q. 分析を進める中で、どのような変化や発見がありましたか?
初日の会議室には不安に満ちた重たい空気が流れていましたが(笑)、メンバー全員で意見を交わし合う機会を頻繁に設け、3C分析で自社を見つめ直していくうちに、メンバー間に希望が見えてきた実感がありました。紙の知識が豊富なベテラン社員と、この事業のために新たに加入した専属デザイナーの組み合わせという、自分たちの持つ強みを認識することで、「価値あることができるかもしれない」という思いが生まれ始めたのだと思います。
Q. なるほど。
そして3C分析の結果、「紙とデザインのプロフェッショナルと対面で作るオリジナル手提げ袋」という市場機会が発見できました。そのうえで、ペルソナは「長野市善光寺近くの老舗懐石料理屋」としました。信州の四季を感じられる食事と徹底されたおもてなしでゲストの心を癒す「おもてなしのプロフェッショナル」で、お持ち帰りのお土産やお弁当を提供していますが、現在は既製の手提げ袋にロゴのラベルを貼るに留まっており、オリジナルを作りたい思いはあるが実行できずにいる……という設定です。
Q. ブランド・アイデンティティを「皆さまと歩む Visionと笑顔がつながる手提げ袋」としていますが、ここに込められた意図は?
「皆さまと歩む」は、「寄り添い、ともに創る姿勢」と「創り出した手提げ袋が歩む」というメッセージを込めており、「歩む」には「何度も使われる」という意味があります。
「Vision」は夢や思い、「笑顔」はお客様の笑顔、そして「つながる」は「店とお客様」や「人と人」「店と地域」「地域と地域」などを意味しています。
ブランド・アイデンティティ
Q. 「つながる」の一語にいろいろな関係性を含んでいるんですね。

「手提げ袋のプロ」をわかりやすいブランド名で表現

Q. その後のブランディングについても教えてください。
ブランド・プロミスは、まずお客様への約束として、「納期を守る、満足できる、想いをかたちにする」。次に同僚への約束として「協力し合う、情報共有、信頼し合う」。そしてパートナー企業への約束として「対等な姿勢、尊重し合う、密なコミュニケーション」と決めました。
さらに、事業ブランド名を「手提げ屋(てさげや)」として、ロゴやコーポレートカラーなどのVI(ビジュアル・アイデンティティ)や事業紹介パンフレット、ホームページを制作。社内向けには「クレド」「対応マニュアル」を配布し、内外ともに一貫したブランディングを意識しました。
Q. ブランド名「手提屋」に込められた思いは何でしょう?
「手提げ袋のプロフェッショナル」であることを、わかりやすく表現したんです。奇を衒わないことで、水島紙店としての歴史を含め、ブランドの信用を高めると考えました。シンプルな名称ですが、実はまだ使用されていなかったんです。
Q. ロゴやコーポレートカラーはどのように決まったのでしょうか。
まずロゴは、活版印刷による紙面でのインクのにじみを再現した書体を選びました。柔らかく、アナログなレトロ感が特徴です。コーポレートカラーは、鮮やかな紫みのある青。軽やかでエネルギーにあふれた色で、我々の思いの象徴である「地域を活性化していく」様を表現しています。
Q. 公式サイトも、同業他社とは一線を画したシンプルでスマートなデザインです。
ペルソナが商品を手に入れたイメージをメインビジュアルに採用しました。MVも、「信州でお土産を買った女性が手提げ袋とともに旅をする」というストーリーがあるんです。社内向けに「クレド」を配布したのは、みんなで決めたブランド・アイデンティティやプロミスを常に心がけるようにするため。対応マニュアルは一貫した電話応対を実現するために配布しました。
Q. そのほか、ブランディングで取り組まれたことは?
認知のためのPR活動として、「手提げ袋ワークショップ」を企画し、地域の方々に手提げ袋の魅力や必要性を広める活動を開催したんです。
メンバーはみな、もともと「ワークショップ」という言葉すら知らなかったのですが、自分たちでイチから内容を考え、集客し、無事開催することができました。たとえば、年長メンバーのために手提屋ロゴをプリントした法被を用意するなど、一丸となってワークショップを盛り上げるツールを準備したり、参加者が作った紙袋にお土産を入れるブースを用意したり、紙屋にちなんで講師のエプロンを紙で制作したり……創業以来、自社イベントの開催機会がなかったので、これが初のイベント開催となったのですが、結果的には大成功で多くの歓声や感動にあふれたイベントとなり、メンバーの自信になったと思います。

このほか、事業成果をあげるためにブランディングミーティングも開催しています。セールスファネルをもとにPDCAをまわしながら、ファシリテーターを社内メンバーにして毎月開催するもので、最終的な自走を目指しています。私はオブザーバーとして参加し、ブランディング視点での助言を行うに留めています。
Q. ミーティングはどのような考え方で行われているのでしょうか?
毎回、冒頭でアイスブレイクを必ず実施し、意見を出しやすい空気づくりを心がけています。また、グランドルールの確認を毎回行うことで、ルールを守っていないメンバーには周りから自然と指摘が入るような雰囲気も生まれました。さらに横文字の利用頻度を意識的に低くすることで、スムーズに理解しながら前進できるよう心がけています。

初のワークショップでメンバーの主体性が向上

Q. こうしたブランディングによって、どのような成果が得られたのでしょうか?
まずわかりやすい成果としては、紹介からの受注獲得です。実は、当初からウェブ検索での受注は見込みが少ないだろうと考えており、紹介などでのローカルな集客を想定していたんです。そこで、メディア露出やワークショップの開催などでの情報発信に力を注ぎました。その結果、現在は紹介、メディア露出からの問い合わせや受注が100%です。初回接点での信用度が高いので、失注割合がとても低いのが特徴ですね。
Q. なるほど。インターナルブランディングの成果についてはいかがですか?
これまで、営業は個々の担当企業とのやりとりが主であったため、社内での協議や検討が少なく、組織として団結力を高める機会があまりなかったんです。ですが、このブランディングを通して互いを知り、共通のブランド・アイデンティティを掲げたことで、協調性や主体性が生まれたと感じています。

同じく社内的な効果としては、ワークショップを自主開催したことでメンバーの主体性が向上しました。PRのための活動としてスタートした手提げ袋ワークショップでは、すべてメンバーたちが内容を検討し、集客し、当日の運営を行っています。これまでは自主的にイベントを開催する機会がなかったので、今回の開催を機に、メンバーの主体性やチームの団結力が育成されたと思います。
Q. プラスチックではなく紙という「手提屋」の事業は、SDGsの観点からも注目を集めています。
そうですね。環境破壊を及ぼしているプラスチック製品の廃止や紙袋の需要拡大などから、「手提屋」の取り組みがSDGsの提唱に即した事業として、メディアからの取材が殺到しました。また、教育団体などでの講演の依頼も多く来ています。

私たちの生活から排出されて、適切に処理されずに海に流れ出しているプラスチックは、2050年には海にいる魚の量よりも多くなるとも言われています。これは本当に恐ろしいことです。このブランドの誕生が、たとえ些細であっても、未来の地球を助けることにつながると信じています。
Q. 今後の課題を教えてください。
まずはターゲットの拡大です。現在は小売業・飲食をペルソナとしていますが、その分母のみでは収益性が高くありません。「手提屋」の取り組みは信州という地域でこそ優位性のある事業だと考えており、この地域におけるさらなるターゲットの拡大は必要だと感じています。
Q. 商品などのソフト面についてはいかがでしょうか。
商品バリエーションの追加を検討しています。現在はフルオーダーのみの商品しかありませんので、フロントとなる買いやすい商品の開発が必要です。そのためのコストをどこで削減するか、検討しているところです。

また、ニーズの創出も不可欠です。オリジナル手提げ袋のニーズ自体は、まだ多くはありません。3C分析でも「オリジナルの手提げ袋はなくても良い」「ポリのほうが安いから……」という声が少なくないことはわかっていました。だからこそ、ブランディングやSDGs・環境問題対策という、手提げ袋による効果を伝える責任を担う立場として、ワークショップや講演、情報発信などを通して情報を伝え、より多くのニーズの創出を実現させたいと考えています。

また、新型コロナウイルスの流行によって、手提屋の拠点となる長野県の飲食店らも大きな打撃を受けました。そんな中、私たち手提屋にできることはないかと考え、店舗様に無料でテイクアウト用の紙袋を配布しました。この取り組みは、地元のフリーペーパーとのコラボレーションで、50店舗1500枚ほどの配布に至りました。些細なことではありましたが、私たち手提屋としての役目を改めて実感できた機会でもありました。

また、今後の取り組みとしては、コロナ禍で失われかねない街への思いを紙袋でシェアしようと新規プロジェクトを準備中です。こちらの動向は、ホームページなどでお知らせしていきます。
Q. 今後の展望についても教えてください。
長野の伝統素材である和紙などの価値を伝えるPRや、企業PRのための手段として手提げ袋を活用してもらえるように、ワークショップの定期開催や、他企業・団体とのコラボレーションなどを積極的に開催していきたいと思っています。コロナの最中であっても皆さんがんばって企業を存続させようと努力しておられます。
紙袋のご相談を通じてたくさんのお客様から勇気をいただいています。
ブランディング、手提げ屋を通じて社会と一体となって歩んでいる実感しますし、 活動が広がって、「信州は紙袋が素敵!」と言われる県にしたいですね。

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