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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >伊藤 恵理子氏 Vol.1

営業職からブランド・マネージャーへ – 前編

伊藤 恵理子氏 Vol.1 フロンディア株式会社 代表

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【伊藤 恵理子氏のプロフィール】

大学卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)で営業職を経験したのち、個人向け金融商品のマーケティングを担当。

当時、花王(株)より転職してきて偶然自分の上司となったマーケティング・マネージャーの下でマーケティングの基本を学び、マーケティングに目覚める。

2年間の米国留学後、消費財メーカーのサンスター(株)でOra2(オーラツー)等、複数の製品のブランド・マネージャーを担当し、中長期ブランド戦略立案、ブランドのリニューアル、新製品・改良品の導入等を牽引し、同社の売上アップに貢献する。

その後、格安航空会社(LCC)エアアジア・ジャパン(現バニラ・エア)に移り、営業/マーケティング部長として日本のLCC事業立ち上げに携わる。

2014年5月にかねてより切望していた、既存のやり方にとらわれない新しいサービスの立ち上げとマーケティングを行うことを目指し、フロンディア(株)を設立して独立(http://www.frondia.co.jp)。



マーケティングとの出会い

聞き手

初めに、伊藤さんのこれまでの経歴をお願いします。


伊藤

大学の法学部を卒業して、入ったのが銀行の営業職でした。若いうちからお客さんの最前線で仕事をしたかったので、あえて営業職を選びました。5?6年経って、東京の本部に呼ばれて、異動から数か月後に、元大手化学メーカーのマーケティング・マネージャーが入社し、私の上司になったのです。このことで、私の人生が変わりました。当時の銀行業界は、マーケティングの「マ」の字も知らなかったので、異業種からの転職者を積極的に採用していました。その方が入ってきて、驚いたことが二つあります。一つが、“顧客の視点で考える”ことです。当たり前のようにも思えますが、それまでの銀行は、顧客目線で考えたことがなかったんです。もう一つは、数字です。この方は、どんな時でも必ず「データで話せ」とおっしゃっていました。その方自身も、必ず何かしらのデータを持っていて、資料や会議での発言も数字で語るんです。データに基づくので、すごく説得力があるんですね。この二つのことは、とても強く植え付けられていて、今もそれを守ろうとしています。私は、その方の下で調査の仕方やブランドの作り方、マーケティングプランの作り方などを、ひとつひとつ学びました。特にブランドの構築は印象的でした。形のないサービスである金融商品を視覚化させるためにロゴやネーミングなど、様々な工夫によりブランドを形作っていったのです。でも、当時はとにかくついていくのが精一杯な中、マーケティング施策のプロセスを全部OJTで学んだという感じでしたが、マーケティングは面白いと思うようになりました。消費者の気持ちや考え方を知り、そしてそれに対して提案をして喜んでいただけます。営業では1対1ですが、マーケティングでは、1対多でできる点がすごいな、と。



留学、そして消費財メーカーへ

聞き手

銀行を退職されてから、留学をしたわけですね。


伊藤

アメリカのイリノイ大学のビジネススクールに、MBA取得のため2年弱留学していました。MBAを取ろうと思った理由は、主に二つあります。一つは、4年間くらい、本部でOJTでマーケティングを学ばせてもらい、スキルはついていましたが、今一度アカデミックに全体を通して学んでみたいと思うようになったからです。もう一つは、銀行にいて、会社という組織を動かすことの難しさやすごさを感じ、経営を学びたいと考えたからです。実はマーケティングの分野で、スキルアップをしたいと考え、転職活動をしていました。しかし、全く相手にされません。金融関係から抜けられず、切り替え期間を置くという意味での留学でもありました。そして、卒業をきっかけに、いくつかオファーをいただきました。「アメリカのビジネススクールを卒業」ということで、グローバルという箔がつき、選択肢も広がったように感じます。


聞き手

その後サンスターに就職されましたが、それを決めた理由は?


伊藤

当時、外資系からのオファーもあったのですが、外資系は本部の決めたことをローカルに落とすことが多いので、自分たちの企画を海外に持っていける日本企業に行きたいと考えていました。サンスターは、海外戦略に力を入れていたので。
サンスターで、最初に取り組んだのが、研究は進んでいたのですが、なかなか商品化が進まずにいた、とある食品ブランドの新シリーズでした。そこで、ビジネスプランを作り、プロジェクトチームにリーダーをサポートする形で参加しました。その後組織変更があり、オーラルケアの事業部のマーケティング部に配属されたんです。そこで複数のブランドを担当しました。


ブランドを守り育てることの難しさ

聞き手

ブランド・マネージャーとして、まずは何を手掛けたのでしょうか?


伊藤

最初に手掛けたのは、ある老舗ブランドのリニューアルです。かつては大変な人気商品でしたが、数年前に行ったブランドリニューアルが上手くいかず、売り上げが大幅に落ちていました。その理由は、複数ありますが、一つの理由としては全然違うブランドにしてしまったことです。ブランド的に言うと、ブランドのコアバリューを変えてしまったんですね。消費者からするとそのブランドはなくなったと思われてしまいます。企業の戦略ありきでリニューアルした結果、顧客を置き去りにしてしまったイメージです。
再リニューアルで何をやったかというと、簡単に言うと元に戻したんです。多くのファンがついていた商品だったので、ネーミングやブランドのポジショニングも戻し、もう一度出し直しました。結果、売り上げは少し戻りましたが、昔と同じくらいまでに売り上げることができません。これが、ブランドを守り育てることの難しさですね。私の計算では、ブランドを元に戻せば、元のファンが戻ってくれるだろうと考えていたのですが、全員は戻ってきませんでした。このことは、大きな教訓となりました。一度離れてしまったファンは、そう簡単には戻らない。一度失った信頼は、余程のことをしないと戻らないと、身に染みて感じたのです。



聞き手

ブランドを守り育てることが大切、ということでしょうか?


伊藤

そのとおりです。ブランドは、資産運用と非常によく似ていると思います。長年コツコツと積み上げていくと利息がついて大きく育っていきますが、たった一つの投資の失敗により貯金を全て食い尽くして負債をかかえることになってしまうこともあります。失くしたものは、なかなか戻りません。もう一度、同じ年月をかけてブランド価値を積み上げていかねばならないし、もしかするとマイナスからのスタートになって、その倍かかるかもしれません。それくらい、ブランドを守り育てることは大切です。


聞き手

逆に、ブランド戦略が上手くいくポイントは何でしょうか?


伊藤

ブランドには、いろいろな要素があります。その中でもキーとなる要素があって。重要な要素を判別して、戦略的に使っていくことが大切です。ある時、とあるブランドの広告をキー要素であるキャラクターを使わずに打ったことがあります。すると、そのブランドの広告であると、誰にもわかってもらえず、史上最悪の認知度でした。ブランド再認の重要性を体験しました。
また、浸透しているキー要素を使うと、費用対効果もすごく良い。前回の反省を活かして次の広告ではキャラクターを使って、しかし変えるところはかなり変えていったら、少ししか広告を打たなくても、効果はかなり上がりました。ですから、ブランドを育てるためには、少しコストがかかっても、ブランドを再認させるものがどこなのかを押さえないと駄目だということです。冷静に考えると当たり前のことですが、現場にいるとわからなくなってしまいます。


後篇へ続く

※掲載の記事は2017年7月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。