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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 末宗 千登世氏

廃棄する布から新たな価値を創造
「恩返し」の思いから誕生した
「ZANPUP」のブランディングとは?

株式会社Raymaka末宗 千登世

Profileプロフィール

株式会社Raymaka 代表取締役

京都府生まれ。
20年以上、アパレル販売の店長を経験。
2005年「世界押し花絵芸術祭in広島」実行委員会事務局担当。
3万人を動員し成功させる。
同年ハートウォーミング・カンパニーを設立。
2019年、株式会社Raymaka設立。
2023年度ブランディング事例コンテストでは「『ZANPUP/ザンプアップ』のブランディング」でSDGs審査員特別賞を受賞。

アパレルの製造工程などで出る残反・残布。上質な生地で製品化できるものが多いのにもかかわらず、廃棄されている現状があります。
そこで株式会社Raymakaでは、廃棄される布のアップサイクルを着想。
ブランド「ZANPUP」を立ち上げました。
「ZANPUP」のブランディングとはどのようなものなのか、同社代表取締役の末宗千登世氏にお話を伺いました。

「業界への恩返し」が動機に

Q. 本日は、2023年度のブランディング事例コンテストでSDGs審査員特別賞を受賞した「『ZANPUP/ザンプアップ』のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
はじめに今回のブランディングの背景について教えてください。

まず残反・残布とは何かをご説明します。
洋服や布製品を製造する際は、生地を生産して縫製工場で製品にします。
そのときに裁断した端布が「残布」で、製品量産時などに余った生地や生地販売店で売れ残った生地が「残反」です。
実は、生産メーカーや縫製工場の生地は有名ブランドが発注した生地なので、大変上質なものが多いんです。

残反の現状

私がそのような残反・残布の存在を知ったのは約10年前でした。
当時、クライアントから「毎年増え続ける残反を活用できないか」とご相談をいただいたことがあったのですが、古い残反・残布で「汚い」「ボロボロ」のイメージが強く、活用には至りませんでした。
ですが近年、アパレルの過剰製造問題や日本の製造業の衰退など山積する課題を前に「なんとかお世話になった業界に恩返しできないか」と考えるようになり、関係先の会社へ見に行くと、目の前で廃棄されている生地は、上質なものばかりでした。
「これは活かすしかない」と考え、各所へ相談したところ賛同をいただくことができ、2022年3月に「ZANPUP」を立ち上げました。

PEST分析で重要なキーワードを発見

Q. 「ZANPUP」の取り組みについて教えてください。

「ZANPUP」の取り組みは、廃棄される布を価値あるものに蘇らせ、環境に配慮した資産として活用していくことです。
主な事業は2つで、1つは「残反・残布の新しい価値を生む」ことを目的とした製品開発販売。
もう1つは「残反・残布の循環サイクルを作る」ことを目的にした生地の販売です。
流れとしては、残反・残布を排出先から買い取り、製品の企画、製造、市場流通をそれぞれ得意な仲間を集めてチームで行い、共感するユーザーを巻き込み、競争の仕組みを作り出していきます。
そのためにはブランディングが重要と考え、協会のメソッドを活用して製品ブランディングに取り掛かりました。

Q. 具体的には、どのようにブランディングを進めていったのでしょうか。

まず考えたのは、何を作るかです。
通常は何を作るかを決めて、デザイン、生地の製造や買い付けを行いますが、残反の活用では、すでにある生地から何が作れるかを企画し、デザイン、製造します。
ただ、残反は反の長さが10メートル程度しか残らないものが多く、洋服なら3着程度しか製造することができません。
そのような中でPEST分析を行った結果、「旅行の回復」「インバウンド需要の急回復」「円安」「SDGs環境破壊の取り組みでモッタイナイの価値の向上」などのキーワードを発見しました。
「ZANPUP」の第1弾製品にはバッグを考えていましたので、このキーワードを見て「いける」と感じました。

PEST分析

ペルソナは「45歳クリエイターでこだわりを持つ人」と決めました。
残反・残布は同じ生地の在庫がないため大量生産には向かず、製造単価がどうしても上がってしまうので、すべて限定品での展開とし、価格に関係なく評価してもらえる年齢層にしたわけです。
ペルソナは、仕事用のバッグや旅行バッグは機能ばかりが重視され、自分にぴったりな個性的なバッグがない……という不満を抱えていること、日本の文化を大事にしてファッションに取り入れていることなど、具体的なストーリーも立てました。

ペルソナ

そして、バッグを製品に想定したポジショニングマップを作成し、他社との差別化ポイントや自社独自の強みなどを把握し、競合に勝てる商品になる可能性を感じることができました。

ポジショニングマップ

Q. ブランド・アイデンティティを決めた背景について教えてください。

ブランド・アイデンティティは、本当に悩みました。
ペルソナの心情の何を具体的に表現すればいいのか……ただ、そこで思い出したエピソードがありました。

「ZANPUP」を立ち上げた当初、廃棄される布でトートバックを試作し、障害者施設で活用していただいたことがあったんです。
そのとき、施設の先生が子どもたちに「このバッグは廃棄されるもので作ったんです」と説明し、「これを自分のオリジナルバックにしてください」と、絵の具や絵を用意してワークショップを開催されました。
このとき先生は、ある自閉症の男の子には難しいだろうと思っていたのですが、その子は一目散に好きなキャラクターの絵を描いたそうです。
その子が夢中になって自分を表現してくれることは滅多になかったためとても感動した、と先生はお話ししてくれました。

そのことがあってから、ペルソナの心情も同じで、「モッタイナイ」という感情は潜在的なクリエイティビティを掻き立て、新しい布の価値を創造するのでは……と考え、ブランド・アイデンティティは「モッタイナイが夢中にする、未来創布」と決まりました。

ブランド・アイデンティティ

こうした取り組みを経て、製品化したのが広島県福山市の金襴メーカーの残反と牛革を使用した3WAYバックパック「KINRAN」です。
残反を使用するメリットは、多数の柄が展開できることなので、それを活かすためにラインアップは自分好みのテキスタイルを選べるように17種類を展開しました。
すべて数点しかない限定品で、価格は5万8000円から6万8000円。
マーケットは、限定品の価値を展開できるハイブブランドからラグジュアリーの市場と決めました。

ZANPUP マーケット選択

ペルソナから想定以上の反応を獲得

Q. 「ZANPUP」のブランド体験や反響について教えてください。

主に自社ECサイトで展開し、ほかには自社ショールーム、百貨店、小売店でも販売しています。
ファーストリリースとして、昨年9月に日本最大の見本市「東京インターナショナル・ギフトショー」で初めてお披露目しました。
このときに想定していたペルソナから多くの反応があり、ブランディングで世界観を作っていくことの大事さを実感しました。
今は阪急阪神百貨店での展開をはじめ、呉服生地メーカー、アメリカ資本のセレクトショップ、海外展開のお話などを多数いただいています。

ZANPUP ブランド体験

Q. 今後の展開について教えてください。

2023年から商品のリリースを行い、現在、現在、「KINRAN」シリーズ、「セミオーダーワークシャツ」、大学とのコラボ「紙布プロジェクト」の3つを柱に展開しています。
「KINRAN」シリーズは今年3月に京都展示会に出展し1店舗の常設店舗がスタート、本年秋に高島屋でPOPUPの開催が決定、同時期に台湾での販売会を開催を予定。
セミオーダーシャツは発売前から受注をいただき順調に進んでいます。
まずは地元での受注会を6月頃から開始します。
紙布プロジェクトは広島地元でのお取り扱い店舗が順調に増え、東京銀座の広島ブランドショップTAUに常設で商品展開が始まりました。
商品売上実績はこれからなのですが、本年は500万~1000万見込める推移をしています。
その他、他プロジェクトやコンサル業務もブランド展開したことにより依頼が増え、会社の体制や人員増を考える時期に来ています。

今後は、日本のテキスタイルサステナブルプロダクトを世界で展開して日本のものづくりへの認知を向上させ、日本国内のものづくり文化を継承していきたいと思っています。

※掲載の記事は2024年5月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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