一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >小池 玲子氏 Vol.5
聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸
【小池氏のプロフィール】
東京芸術大学工芸科VD卒業
J.Wトンプソンに入社 同社取締役。制作担当副社長
FCB(フットコーンベルディング)制作担当副社長
PUBLICISジャパン制作担当副社長を歴任後
外資系広告代理店で培ったブランディングのノウハウを
日本の会社にも広める事を目的としクリエイテブハウスR-3を設立。
主な仕事
ダイヤモンドを日本の習慣に定着させた「エンゲージメントキャンペーン」
「スイートテンダイヤモンド」
プレミアムアイスクリームのポジショニングで成功したハーゲンダッツ
水を買って飲む習慣を作った、Vittel,Contrex Perrier
日本では認知度ゼロであった,UBSのブランドイメージ確立等、
航空会社から食料品、化粧品の分野迄広くブランドの構築に関わってきた。
聞き手
お忙しいところ、ありがとうございます。
今日は小池先生の考えるブランドのイメージや役割とは何なのか、
またそこにセンスがどう関わるのか、
そんな切り口でお話を伺いたいと思っています。
さっそくですが、現在ブランドに求められているものは何でしょうか?
小池
ブランドに求められるものは「社会的な価値」と「技術的な価値」、
そして「情緒的な価値」の3つがあります。
その中でも今、一番求められているのは「情緒的な価値」ですね。
「持っていることの喜び」とか、「人から見られて嬉しい」とか。
そんな情緒的な満足感を与えることでしょう。
聞き手
小池先生の実績の中で、それを最も象徴しているモノはなんですか?
小池
ダイヤモンドですね。
あれは完全に「情緒的な価値」しかないもので、昔アメリカの小説家が、
『ダイヤには乗ることもできないし、住むこともできない』と言ったこともありました。
しかし、なぜそれに女性が熱狂するかというと、
「愛の象徴」という「情緒的な価値」があるからなわけです。
聞き手
ダイヤを機能的な価値だけで見れば、
単なる光る石ころで、何よりも硬いというところしかない。
そこに、どう情緒的な価値をつけていったか……ということですね。
聞き手
話は変わりますが、ブランド・マネージャーの役割は、何でしょう?
小池
水先案内人ですね。
ブランドに対する危険やチャンスを察知して対応すること。
そしてブランドをどう育成して、永続させていくかを考えることだと思います。
聞き手
ブランド・マネージメントでは、センスが必要とされているのでしょうか?
小池
今、ブランドを持っている人たちも、買う人たちも非常に多様化しています。
そこに対応していくためには、学校で教えられたものに自分のセンスを加えていかないと、
すぐワンパターンに陥ってしまいます。
たとえば小麦粉とアンコで何を作ると言われたとき、
「たい焼き」「どら焼き」「人形焼」「高級な和菓子」と、
安いものから高いものまでバリエーションあるわけです。
でも、自分は「たい焼き」しか作りませんと言っていたら、それで終わりです。
「小麦粉」と「アンコ」を学校で習ったら、
いろいろなものが世の中にあることをと勉強して、応用していくことです。
お客さまの問題はなんなのか、何がチャンスなのかを考え、
それぞれにあった方法で対応していかないと、すぐ行き詰まってしまうでしょう。
聞き手
経験の蓄積みたいなものもあるでしょうし、 それを積極的に探しにいく気持ちをセンスと言っているわけですね。
小池
センスというものは意識していないと、すぐ鈍ってしまいます。
私が受け持っている「9SENSE講座」でも、
自分のセンスを育てるフレームを提供しています。
聞き手
小池先生がセンスを重視される理由は、何ですか?
小池
昔は会社が社員を育ててくれましたが、今は教育をしなくなりました。
そうすると、たとえば会社に入って、ひとつのタバコのブランドの仕事ばかりしていたら、
とても狭い範囲でしか考えられなくなるわけです。
だから「9SENSE講座」で伝えたいのは、
もっと自分の目や心を広げていかないと長続きしないということ。
手とか足とか、行動力を使って、自分を大きく、人間力を強くするのが大切だということです。
小池
『COACH』が日本に上陸した時、私は広告担当をしていました。
そのときの『COACH』の商品ラインは、最高に良い革を使った重厚なものでした。
ところが日本では、重いとか、地味だとか言われて売れませんでした。
そこでどんどん商品ラインを広げていって、今はアパレル的になりましたね。
それを見た時、ピエールカルダンだ……と思いました。
ピエールカルダンも、お茶のポットまで作っていましたから。
消費者は流行には乗りたい、でもみんなが持っているものは持ちたくない……
と考えますから、本当にマルチ展開にモノを売ることができないと駄目だと思います。
ブランド・マネージャーは広く世界や消費者の動向を知り、
人間観察力や判断力に長けていないといけません。
聞き手
一言で言うと、センスとは?
小池
その人の人間性そのものであり、人間力と言えるでしょう。
アインシュタインは、
『物理学をいくら勉強してもつまらない。結局成功するのは直感だ』
と言ったそうです。
この直感というのはセンスですね。
聞き手
「9SENSE講座」で教えておられる「9つのセンス」について、教えていただけますか?
小池
脳の中の「理論のセンス」と「想像のセンス」。「左脳」と「右脳」。
そして「目」によるビジュアル。
「耳」は音を聞いて情報をピックアップし、「鼻」は匂いを嗅いで方向性をつかみます。
「口」は一番大切なコミュニケーションのセンス。
同じプレゼンテーションをしても、
みんなに拍手される人とつまらないと思われる人がいますね。
いかに伝えるかというところもセンスです。
さらに人との交流術。あいつと友だちになりたいなと思わせるセンス。
足は行動力という、行動のセンス。
ちょっと遠くへ行ってみよう、違う世界の人と話してみよう……というセンスもあります。
そんな人間のセンス、人間力というものを9つに整理したものです。
聞き手
この講座で、みんなに持ち帰ってもらいたいものは何ですか?
小池
考えるキッカケです。
ブランド・マネージャーは、テレビを見ていても、
常になんで自分はこれに引っかかったのだろう、なぜだろう……という疑問を持ちます。
これを何も考えずに流してしまうかどうか。
その蓄積によって、差ができるのです。
講座に参加したことをきっかけに、
自分は交友関係が狭いな……と思ってくれてもいいし、
いろんなものを見ていないなとか、行動半径が狭いなと思ってもいいでしょう。
何かのキッカケになってほしいですね。
何かしらアンテナを張っていないと、生きていることになりません。
聞き手
たくさん本を読む人もいますが、単に読めばいいということではないということですね?
小池
脚本家の山田太一さんは、1冊の本を何回も読むそうです。
なかなか本を「なぜだろう?」という疑問を持ちながら読まないですよね。
1回目は筋を追って素通りで、2回目にようやく引っかかってきます。
本には考えるための題材がたくさん入っていますが、それをどう捉え、活用するか。
講座の受講生の方たちにも、読んだ本は心の中に落とし込まないとダメだよ、
流れていってしまいますよ……とお伝えしています。
聞き手
最後に、読者に伝えたいことはありますか?
小池
自分をもっと大きくしたかったら、「9SENSE講座」に来てください。
「答え」を与える講座でも「やり方」を教える講座でもなくて、
もっとやっていかないとダメだとか、
自分は何をしていかないとダメかを考えるキッカケになると思います。
聞き手
成果は、自分次第ということですね。
小池
「教える講座じゃない」というと、皆さん驚かれますが、
人生は思った以上に長いものです。
だから自分自身が「種切れ」にならないようにしないといけません。
さまざまな顧客に対応していくためには、どう自分に栄養を与えたらよいか、
それをわかって欲しいと思います。
聞き手
単発的に何か新しい知識を得るということではなく、
これから何十年と生きていくための「考えるキッカケ」ということですね。
本日はありがとうございました。
※掲載の記事は2016年8月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。