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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 徐 誠敏氏(後編)

戦略的インターナルブランディングを
“普遍的な8段階のプロセス”から捉える
「ブランド創発型企業」を構築するためには?(後編) 

名古屋経済大学徐 誠敏

Profileプロフィール

名古屋経済大学 経営学部 准教授

1994年、韓国にてソロアルバムを発売し、歌手デビュー(各種ラジオ番組に出演)。
日韓の企業の現場経験やインタビュー、理論構築などをベースに、戦略的なインターナルブランディングやマーケティング、需要探索型イノベーションなどを研究。
中小企業のブランド戦略にも知見がある。
5現主義(現場・現物・現実+原則・原理)に重点を置きつつ、理論と実践を両立することに注力している。
名古屋経済大学経営学部での担当科目は「商品と流通の経営学」「消費者商品論」「マーケティング論」「マーケティング特論(中小企業のブランディング論)」 「地域産業論」「らしさを生み出すブランドづくりを企業と共に考える」体験型プロジェクトなど。
最近は、中小企業の経営者・実務家との戦略的ブランディング(インターナルブランディングとエクスターナルブランディングの同時実現)に関する講座・交流会を行っている。

現在注目を集めているインターナルブランディング。
このほど書籍ブランド弱者の戦略 インターナルブランディングの理論と実践を出版された名古屋経済大学経営学部の徐誠敏准教授は、書籍の中で、戦略的インターナルブランディングには普遍的な8段階のプロセスがあると説明しています。
前編に引き続き、徐准教授に企業変革とインターナルブランディングについてお話を伺いました。

ブランド弱者の戦略:
インターナル・ブランディングの理論と実践

(ミネルヴァ書房)

企業変革には8段階のプロセスがある

Q. 前編に引き続き、徐先生にインターナルブランディングについてお話をお伺いできればと思います。
徐先生は『ブランド弱者の戦略 インターナルブランディングの理論と実践』の中で企業変革の重要性について書かれていますが、改めてなぜ企業変革が重要なのか、教えてください。

「脱皮できない蛇は滅びる」という言葉があります。
外部環境に合わせて自身を成長、進化させることの重要さを表した言葉ですが、これは組織にも当てはまります。
企業組織は、外部環境の変化に適合しない古い考え方や価値観に固執しすぎると、成長欲求が止まって最終的には市場から淘汰されてしまうため、常に外部環境や価値観の変化に対応できる体質づくりに取り組まなければなりません。
従来の組織ルーチンや組織能力から新たな変化や価値を創出する企業変革を推進することで、新陳代謝が活性化し、さらなる進化を遂げることができるわけです。

今日は市場環境がかつてないスピードで変化しており、企業も絶えず組織を変革する戦略的な取り組みを実行していかなければなりません。
つまり、企業変革は成長のための必要不可欠な活動と言えるのですが、これを阻む要因も存在します。
たとえば、官僚主義的な縦割り組織による社内コミュニケーション、トップのリーダーシップ不足による理念定着率の低さ、そしてこれらが原因で起こる社員のエンゲージメントの欠如やモチベーションの低下など。

企業はこうした阻害要因を解決しなければなりませんし、同時に、全社員の意識改革や、創発的な学びの場のマネジメントの実現、自社独自のブランド・ビジョンの浸透・体現・実践を可能にする企業変革を実行することが必要です。

Q. 企業変革を達成するための戦略的なインターナルブランディングは、どのようなプロセスで実行すればいいのでしょうか。

一つの考え方として、企業変革論の世界的権威であるジョン・コッター氏が提唱した「企業変革における8段階のプロセス」の視点から捉えた普遍的プロセスを紹介します(図‐1参照)

普遍的な8段階のプロセスの1つめは、「現状分析と成長機会を促す危機意識の向上」です。
危機意識の向上は、戦略的インターナルブランディングを促す最初の段階では最も重要な推進力と言えるでしょう。
ただ、社員の多くが現状に満足していては組織全体が硬直化してしまい、企業変革の必要性を感じることはできません。
すると危機意識も浸透しないため、戦略的インターナルブランディングを組織的に進めることは難しくなってしまうわけです。

そうした状態を回避するためには、様々な手段を用いて、組織内の危機意識を高めることが必要です。(表-1)
そして危機意識を高めるためには、適切な市場情報を俯瞰的に分析し、社員に対して「見える化」することが何よりも重要です。
なぜなら、危機的状況がはっきりと視覚的に存在していないと、現状に満足したままですから。

プロセスの2つめは、「自社ブランド推進プロジェクト・チームの構築・強化」です。
プロジェクト・チームは、外部のブランディングの専門家を入れ、組織内の次世代経営幹部、各部門のリーダー候補などで部門横断的に結成することが理想的です。
特に中小企業の場合は、経営トップや経営幹部をはじめ、多くの社員のブランディングに対する認識が低く、専門知識やスキル、ノウハウも蓄積されていませんから、なおさらその必要性は高い。

ではどのようにプロジェクト・チームを作るかですが、まず、経営トップの強力なリーダーシップと、積極的な支援・関与は必要不可欠です。
これがなければ、十分な効果を発揮することは難しいでしょう。
なぜなら、社員の危機意識の醸成をはじめ、明確な自社独自のブランド・ビジョンの策定と啓蒙活動、確固たるブランド・ポジショニングの確保が実現できないからなんです。

また、プロジェクト・チームは、作るだけでは十分とは言えません。
まずは、チーム・メンバーをまとめ上げるリーダーシップを発揮する社員が必要です。
さらに、その社員を中心として、自社ブランドの構築や競争力を向上させるための問題点と市場機会を見つけ出す認識を他の社員にも共有させることが不可欠ですし、コミュニケーションを通じて相互の信頼関係を深めさせることも重要です。

Q. プロジェクト・チームを作るうえで注意すべきポイントがあれば教えてください。

まずは、変化を生み出す困難さと重要性を決して軽視しないこと。
これができていないと、企業変革は必ず失敗します。
また、インターナルブランディングの経験とチームワークが不足している場合も失敗につながります。
そのため、もしもチーム内にインターナルブランディングの知識や経験があり、リーダーシップを発揮できる適任者が見当たらなければ、外部のブランディングの専門家を迎え入れることも検討すべきでしょう。

なぜ独自のブランド・ビジョンが必要か

普遍的な8段階プロセスの3つめは、「確固たる自社独自のブランド・ビジョンの策定」です。
戦略的インターナルブランディングを進めるうえで、なぜ独自のブランド・ビジョンが重要なのでしょうか。
その理由は、明確なブランド・ビジョンがない企業は、社員に対して目指す方向性を示すことができないからです。
ゆえに、プロジェクト・チームはステークホルダーに対して、将来全社レベルで進むべき方向性を明確に伝達する必要があり、社員にも中長期的視点からブランド価値や存在意義であるブランド・ビジョンをわかりやすく伝えなければなりません。
特に、インターナルブランディングを実行する主体である社員がビジョンを理解できないまま計画や方針を立ててしまうと、一貫性のある変革ができない恐れもあります。

では、戦略的インターナルブランディングを推進するにあたって、戦略的ブランド・ビジョンが果たす役割とはどのようなものなのか。主に、3つの重要な役割があります。

1つめは、戦略的インターナルブランディングの目指す方向や方針を明確に示すこと。
2つめは、各部門で働く社員が、自社ブランドへの理解を深めると同時に、正しい方向を目指して一貫した行動ができるように促すこと。
そして3つめが、多くの社員が参画する場においても、迅速かつ効率的に、各部門の社員が独自のブランド・ビジョンに沿った行動をまとめ上げること。
このような役割からも、戦略的インターナルブランディングを推進するためにブランド・ビジョンを明確に示すことがいかに重要か、わかると思います。
なお、優れたブランド・ビジョンには、① 目に見えやすいこと ②実現が待望できること ③実現可能性があること ④明確な方向性を示すこと ⑤柔軟性があること ⑥わかりやすく伝えることができることの6つの特徴があることも、覚えておいてほしいポイントですね (表-2)

Q. 戦略的インターナルブランディングを通して全社員が独自のブランド・ビジョンへの理解を深めたあとにすべきこと、注意すべきことについて教えてください。

多くの社員から共感が得られたブランド・ビジョンを共有することで、企業は戦略的インターナルブランディングを行う際に積極的な行動を喚起することができます
さらにそこからインターナルブランディングを加速させるためには、組織内で行われるコミュニケーションが何よりも重要です。
つまり、ブランド・ビジョンを浸透させるための社内コミュニケーション・ツールを体系的、組織的に構築することで、インターナルブランディングを効果的に推進することができるのです。

ただ、ブランド・ビジョンを浸透させるための社内コミュニケーションには、陥りやすい落とし穴が3つあります。
まず1つめのパターンは、プロジェクト・チームが作ったブランド・ビジョンが、「短期間で組織内に浸透した」という判断を急いでしまうこと。
数回の説明会や文書を配信しただけでビジョンが社員に伝わっていると思い込んではいけません。
そして2つめは、経営トップが十分な時間を割いてブランド・ビジョンを説明しても、社員はほとんど理解できていない、というパターン。
最後の3つめは、経営幹部の誰かが新しいブランド・ビジョンに反する不適切な行動を取ってしまうことです。
これらのパターンに陥ってしまうと、社員の変革へのモチベーションは低下します。

普遍的な8段階のプロセスの4つめは、「ブランド・ビジョンを浸透させるための社内コミュニケーションの実行」です。
まずは、社内報のあり方などを根本的に改革することです。
たとえば、経営トップや幹部がステークホルダーに対してブランド・ビジョンを自主的、創造的に体現した生の声を盛り込んだ記事を掲載するなどですね。
彼らがリーダーシップを発揮して、ブランドの資産的価値の向上やブランド・ポジショニングの確保に貢献している……ということが理解できる内容が理想的です。

次に、従来の形式的な役員会議を、様々な意見や情報の交換が積極的に行われる場に変えることも必要
そのためには、たとえば従来の幹部中心の研修会を最小限に抑えつつ、同時に各部門のミドル・マネージャーや現場の社員たちが抱える課題を解決し、新しいブランド・ビジョンの確立と浸透を軸にした研修を増やす、などのことをするべきでしょう。

そして何より重要なことは、ブランド・ビジョンを幹部が自ら、コミュニケーション・ツールを用いて率先して一貫した言葉と行動で示すことです。
そうした幹部の行動こそが、最も説得力を持つ強力な社内コミュニケーション・ツールとなるのです。
ブランド・ビジョンを浸透させるための具体的なポイントしては、「簡潔でわかりやすい表現」「比喩、たとえ、実例」を心がけること、くり返し伝えることなどを意識してほしいと思います(表-3)

権限移譲を行ううえで取り除くべき要因とは?

普遍的な8段階のプロセスの5つめは、「十分な権限移譲とブランド・ビジョンの自発的な体現」です。
企業は、独自のブランド・ビジョンに対する社員のマインドの変化を喚起しなければなりません。
特に、全社員がブランド・ビジョンから強い刺激を受け、主体的に体現できるように働きかけることが重要です。
そのように組織構造や企業文化を中長期的視点で構築、強化することが「ブランド創発型企業」の実現につながります。
そして、それを可能にする最大の原動力は、社員に十分な権限移譲を行うこと
なぜなら、社員に権限を与えなければインターナルブランディングを達成するための意欲が低下してしまうなど、多くの障害が生じてしまうからです。

ただ、社員への十分な権限移譲を行ううえでは、考えられる4つの阻害要因を取り除かなければなりません

まず考えられる第一の要因は、「組織の構造的な問題」です。
経営資源の配分と権限移譲が制限されている構造では、顧客のニーズを的確に捉えた新製品を素早く提供することが極めて困難になります。

次に第二の要因は、「社員の能力不足による行動の制約」が挙げられます。
中小企業が戦略的インターナルブランディングを推進する場合、社員の専門知識はもちろんのこと、スキル、ノウハウも不足しています。
これを解決するためには、問題に対処するための社内研修やトレーニング、適切な形式と量を伴った講座を考える必要があるでしょう。

そして第三の要因は、「人事や情報システムの不整合による社員の行動の制約」が挙げられます。
つまり、マネジメント・システム自体が、インターナルブランディングを実行するための仕組み作りを重視していないわけですね。
特に官僚主義的な傾向がある人事部門は、チームのリーダーシップを阻む障害となりやすいので、企業はブランド・ビジョンに沿って社員を客観的に評価する人事システムを制度化することが重要です。

最後に第四の要因ですが、これは「企業変革に抵抗する経営幹部による社員の行動の阻害」が挙げられます。
社員には自発性を発揮できるように十分な権限を与えることが大事なのですが、経営幹部がインターナルブランディングにネガティブな考えを持っていると、変革を推進することは難しい。
初期の段階から、インターナルブランディングの必要性を幹部にも認識させることが必要だと言えるでしょう。

普遍的な8段階のプロセスの6つめは、「ブランド・ビジョンの体現化を促進するための短期的な成果の実現」です。
短期間で変革の成果が得られない場合、抵抗勢力が変革を妨げる可能性があります。
そのため、プロジェクト・チームは短期間で一定の成果を示す必要があります。
ではどのような成果かというと、1つは「チーム・メンバーが生み出した自社独自のブランド・ビジョンの妥当性をより確実なものとするための定量的な裏付け」であり、2つめは「自社独自のブランド・ビジョンの体現を促せるような、チーム・メンバーが目指すべき目標を示すこと」です。
この2つを示すことで、抵抗勢力の意識を変えることが容易になるわけです。
ただ、こうした成果は、「見える化」することや議論の余地がないほど具体性があることなどの条件を満たしている必要があることも忘れてはなりません。
また、このような短期的な成果には、自己犠牲が価値を生むことの証拠を示し、推進者の功績に報いる、ブランド・ビジョンや戦略を調整する機会を生むなど、様々な意義があることも覚えておきたいポイントです(表-4)

企業変革を定着させるためにすべきこと

普遍的な8段階のプロセスの7つめは、「ブランド・ビジョンの体現化による成果を活かしたさらなる変革の推進」です。

企業変革を推進する中では「重要な変革推進者の人事異動」「リーダーたちに蓄積される疲労」「不運な展開」などの阻害要因があります。
特に注目すべきは「変革推進者の人事異動」で、強いリーダーシップを持った推進者の人事異動はインターナルブランディングの推進を阻止する要因になりかねません。
これを防ぐためには、経営トップが強力なリーダーシップを発揮し、在任期間を長期化することが一つの対策として考えられます。

普遍的な8段階のプロセスの8つめは、「新しい実践の企業文化への定着」です。

企業変革を企業文化として制度的に根付かせるためには、新しいアプローチや行動様式、考え方などが業績改善にどれほど貢献したのか、それを社員に意図的にアピールしていくことが重要です。
そして、インターナルブランディングと業績改善の因果関係を正しく理解してもらうためには、やはり社内コミュニケーションが欠かせません。

具体的には、経営会議で時間を割いて、ブランド・ビジョンがどの程度浸透しているか、ブランド・ビジョンの体現と業績向上の相関関係はあるのか、などについて話し合うこと
もしくは、社内報でインターナルブランディングを推進したことでどのように売り上げやブランド価値が向上したのか、繰り返し報じることなども有効でしょう。

当然、先ほどもお話ししたように、プロジェクト・チームは目に見えるような成果を明確に示す必要があります。
ブランド・ビジョンの体現を通して形成された“新しい仕事の進め方”が効果的であり、従来の方法より優れていることを客観的なデータに基づいて周知し、それによって初めてインターナルブランディングの新しい実践が企業文化として定着するようになるのです。

そして、そうした新しい方法は、コミュニケーションの場を通して何度も議論されなければなりません。
特に、重要なステークホルダーに対しては、ブランド・ビジョンを体現することで高業績を上げている優れたリーダーとのコミュニケーションの場を設けることは極めて重要です。
なぜかと言うと、そうした場を通してブランド・ビジョンへの認識や体現するための新しい実践方法を、スキル、ノウハウが不足している社員へ伝えることができるから。
同時に、多くの社員も、その新しい方法が優れていることを改めて認識できる、というわけです。

以上のようなことが「企業変革における普遍的な8段階のプロセス」です。
インターナルブランディングを推進していくうえでは、こうした取り組みを意識することが大事だと思います。

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