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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >藤原 かおり氏 Vol.2

『フルグラ』がチャレンジするカルビーの朝食革命 – 後編

藤原 かおり氏 Vol.2 カルビー株式会社マーケティング本部 フルグラ事業部・事業部長

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【藤原 かおり氏のプロフィール】

大学卒業後、旭硝子株式会社に入社。 新規カテゴリーのビジネスデベロップメントの職に従事した後、外資系広告代理店、国内広告代理店にて、ストラテジックプランナーを務める。その後、外資系食品メーカーにて、飲料ブランドのブランドマネージャーを担当。2011年にカルビー株式会社に新商品のブランドマネージャーとして入社、2012年より、フルグラのマーケティングを担当、2014年4月より、現職(マーケティング本部フルグラ事業部・事業部長)に就く。



グラノーラブームの兆し

岩本

フルグラのリニューアル戦略を2012年からスタートするにあたり、1年に2回のフェーズを設定してPRすることにしたそうですね。フェーズ1では、何をはじめられたのですか。


藤原

弊社カルビーでは、シニア女性と子供をもつお母さん世代をターゲットにして、『フルグラ』のマーケティングをスタートさせました。まず、シリアルのネガティブなイメージを払しょくするために、「グラノーラ族は増殖しています」「ブームの兆しがきている」という文脈でPRをしたのです。次に、シニア女性向けにはヨーグルトを使って、「かむヨーグルト」という提案をしました。隠れ栄養失調の方には、「ヨーグルトに『フルグラ』を加えて食べると栄養価が上がり健康に良い」というPRをしていったのです。さらにお母さん世代に向けて、「お食事ホットケーキ」を提案しました。これは、子供が好んで食べるパンケーキと一緒に『フルグラ』を食べることでフルーツの甘みでおいしくなり、しかも身体に良い食事になるというPRです。店頭での試食販売を実施し、PRしている情報を店頭でも積極的に伝えていきました。


岩本

ターゲットに「自分にも当てはまる」と感じてもらい、試してみようという認識をさせたのですね。しかも、ブームの兆しがある、と感じさせることに成功された。


藤原

そうなんです。しかし実際は、『フルグラ』のブームをつくれるかどうか不安でした。当時、東京の目黒に1店舗だけグラノーラの専門店がありました。そこで、「グラノーラの専門店ができるほど、ブームの兆しが来ている」というファクトに注目して、プレスリリースに載せたんです。BtoBでは経済紙、BtoCではターゲットとしていたシニア女性やお母さん世代たちが読んでいるメディアに、たくさん載せていただいたことで、弊社の営業に、各社のバイヤーからの注文が殺到しました。そして、一部の人だけが食べている「特殊なシリアル」というイメージから、グラノーラがメインの『フルグラ』はアレンジして食べることができる、という新しいイメージを生み出しました。もともとのマーケティング手法が、ご飯やパンの代わりにシリアルを食べてほしい、という非常に押し付けがましい手法でした。ですから、『フルグラ』をヨーグルトに加えてもらうなど、とにかく副食でも良いので、一度試してもらう、食卓にプラスしてもらうことを目指したことが成功のポイントだと思っています。


岩本

フェーズ2では、何をされたのですか。


藤原

『フルグラ』のレシピ本を発売しました。そして、レシピ本が出るほど『フルグラ』の人気が出ていることを、情報番組などに取り上げていただきました。こうしたPRが成功して、2012年は63億円の売上を達成しています。


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岩本

レシピ本ということは、BtoCですね。では、BtoBに向けての施策はどうされたのですか。


藤原

次の2013年春のフェーズ3で、BtoB向けに「No.1宣言」を行いました。弊社のトップが記者発表を行い、「カルビーはスナックだけではなく、『フルグラ』という素晴らしい商品にも力を入れていきます」と宣言しています。これは、流通の方にカルビーが『フルグラ』に本気であることを印象づけるためです。それと同時に、『フルグラ』のパッケージにも「No.1」という文字をデザインで入れました。その結果、メディアに取り上げられることで、既存の主要チャネルであるスーパー以外の流通(ドラッグストアなど)からも引き合いが多く来て、販路拡大に成功しました。また、週販もアップしています。フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と実施していき、だんだんと上昇気流に乗ることができました。


岩本

ここまで実施したことで、目標の売上である100億円に達したのでしょうか。


藤原

あと少しで達成するところだったんです。そこで最後のひと押しとして、2013年の秋に、ライフスタイルの訴求を行いました。フェーズ1では「かむヨーグルト」や「お食事ホットケーキ」などのメニューを提案しましたが、今度はそれをやってみたいと消費者に思ってもらうために、「噛む足し」というテーマを提案しています。「噛む足し」とは、『フルグラ』によって噛む食感を加えることで、自分なりに食事をアレンジすることです。当時はマグカップでモノを食べる、というトレンドが来ていました。それを話題化して、情報番組で取り上げていただきました。実は、これまでシリアルは秋冬には売れていなかったのです。しかしテレビに取り上げてもらうことで、アレンジした『フルグラ』をマグカップで食べるというイメージをつくることができました。その結果、シリアルは秋冬には売れないという常識を覆すことに成功し、通年で売れるようになりました。それによって30億円の売上だった商品が、2年で100億円の売上を達成しています。また2014年には、市場シェア1位を獲得したんです。ずっとシリアルは「やめたらどうか」と言われ続けていた事業だったので、これは歴史的な瞬間だったと思っています。さらに2015年は220億円を達成しそうな勢いです。


1000億円の朝食事業を確立する

岩本

2年で目標の売上を達成されたのですね。前篇のはじめの方で「1000億円の朝食事業を確立する」というお話をされていましたが、今後のことについて教えていただけますか。


藤原

おそらく500億円の売上までは、『フルグラ』の事業で達成できるのではないかと考えています。しかし残りの500億円のために、新しいアプローチが必要でしょう。『フルグラ』のコンセプトワードは「朝食革命」です。朝食のスタイルを変えてもらう価値のあるブランドであることを、今後もしっかりと世の中に伝えていきたいと思っています。まず、おいしいということは当然として、弊社の特徴である「食感」を伝えていきます。次に「時短」です。3つ目として「健康」について伝えていこうとしています。『フルグラ』よりもおいしい食べ物は、時間をかければいくらでもつくれると思います。しかし短時間で準備できて、おいしく健康に良い食べ物は『フルグラ』以外はなかなかないでしょう。朝食の時間にフォーカスしているのは、この3つの価値をもった食事が他にはないからです。たとえば、洋食はパンを焼くだけなら簡単ですが、パン以外に卵焼きやサラダを用意するとなると、7分ほどかかります。和食は、お味噌汁や卵焼きなどを用意すると、20分ほどかかってしまいます。一方で、『フルグラ』は1分ほどで準備ができます。このように改めて準備する時間を数字で示せば、『フルグラ』のメリットを納得していただけるのではないでしょうか。次に、健康の部分については、食物繊維と食塩過多対策の2つの価値を伝えていきたいと考えています。若年の女性に食物繊維の摂取が足りていない方が多いのですが、『フルグラ』は1食で4.5gの食物繊維を摂取できるので、『フルグラ』1食で不足分を補えます。さらに、もう1つの訴求ポイントである「減塩」は、私たちがこだわっている部分です。日本人は世界有数の塩分過多国民らしく、女性の場合は1日の塩分の目安が7gなのに対して、平均で9.4gも摂っているそうです。『フルグラ』の1食の塩分は0.4gですので、朝食をフルグラに変えるだけで、塩分を減らすことができるんです。このような健康面での価値をしっかりと伝えていきたいと考えています。



岩本

新しいアプローチについては、どのようなことを考えていますか。


藤原

現在、1000億円の朝食事業を目指すための商品販売を、トライアルではじめているところです。その1つは『フルグラヨーグルト』という商品で、九州エリアにあるセブンイレブンの各店舗でテスト販売しています。もう1つは、『フルグラ 黒豆きなこ味』という新商品を拡げる試みです。2015年11月に浅草の神社で、「朝食茶屋」というイベントを開催しました。これは、『フルグラ 黒豆きなこ味』に豆乳ヨーグルトをかけて、和食の朝食として食べてもらうことを目指しました。こういったあらゆる試みを、今後も続けていきたいと考えています。