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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >かに物語 Vol.2

普段の食卓においしいカニ料理を。気仙沼生まれの「かに物語」 後編

かに物語 Vol.2

【プロフィール】

株式会社カネダイ
水産食品部・直販事業長 熊谷 公男氏

1995年株式会社カネダイ入社。
営業、経営企画を経て現在は水産食品部にて直販部門の「かに物語」を担当。

聞き手:平野史恵(株式会社イズアソシエイツ クリエイティブディレクター)


東日本大震災により工場がすべて被災

平野

そうしてこれから、という時に東日本大震災に遭ったのですね。震災のときはみなさん、社内にいらっしゃったのですか?


熊谷

震災の2、3日前にも津波があって、その時は「2メートルの津波が来る」という警報が鳴ったのですが、結局20センチくらいのものでした。これまでも警報よりも実際の津波が小さいことがよくありましたから、震災の時「6メートルの津波が来る」と伝えられても「そんなバカな。きっと60センチくらいなんじゃないか」と、誰も信じていませんでした。ですから、すぐに帰って来られるだろうと、みんな軽装で避難したのです。
ただ、以前から防災訓練を行っており、車では避難しないように言われていたので、それで助かりましたね。


平野

震災ではすべての工場が被災されたとか。


熊谷

はい。すべて流されてダメになりました。そのとき、国の復興政策で、雇用を守って会社が傾くより、一旦従業員を解雇して、国がその従業員たちの雇用を支援すると提案されたのです。そこで社長が従業員に丁寧に説明して国の政策を活用してもらいました。
7月頃になると会社も少しずつ前向きにこれからどうしていこう、ということになり、すでに取り掛かり始めていた直販部隊を復活させることになったのです。このとき、震災後最初の仮設商店街が気仙沼(復興屋台村 気仙沼横丁)にできることになって、1か所だけ空きがありました。
そこで始めたのが、まるずわいがにの販売とレストランです。店舗なら実際に食べてもらえるので、「かに物語」を広めるのにちょうど良いと考えたのです。


Kasetsu-Store

F2層をターゲットに「日常的に、明るく楽しく食べてもらう」カニ料理

平野

レストランのメニューを見ると、カニというとかに酢で食べるのが一般的ですが、かに物語のメニューは洋風なのですね。


熊谷

「かに物語」のブランドを固めるときに設定したターゲットは、35歳から49歳までのF2層です。カニというと日本海の荒波や音楽なら演歌をイメージしますが、「かに物語」が目指すのは「日常的に、明るく楽しく食べてもらう」こと。
まるずわいがにが獲れるアフリカのナミビア沖は、波も穏やかできれいな青い海です。ですから、和食よりも洋食。溶かしバターでカニを食べたり、スープやカレーといった惣菜を提供しています。このとき、いろいろとアドバイスをしてくれたのが、私の妻です。ターゲットに合わせてベンチマークしたのが、オフィスで働く女性に人気の都内スープ専門店です。ここで出される「ビスク」をイメージしてレシピ開発を行いました。
しかし、復興屋台村で働くのはアルバイトの人達です。そこで誰でも簡単に提供できるようにと、妻が毎朝ビスクを作ってレストランに運びました。


平野

奥様が毎日作っていたのですか?それは大変ですね。


熊谷

2012年に倉庫を改造して工場を建てたので、その後はそちらで作るようになっています。
しかし工場で作る以上は商業ベースに乗せなくてはなりません。そこでパックに入れて冷凍し、全国販売することになりました。最初は地方の百貨店で販売していたのですが、「気仙沼のカニです」と販売しているのに、気仙沼と言えば、ふかひれ、かつお、まぐろ、他のイメージがあり、なかなか売れません。
そこで気仙沼市では昔から馴染みのある、まるずわいがにを気仙沼市の地域資源に申請し、2013年には認定され、国のお墨付きを頂いた後は販売に勢いがつきました。(仙台の牛タンが地域資源と同じ意味合いです)


Kesennuma-kani

平野

販売促進やPR活動などはどのようにされたのでしょうか?


熊谷

われわれは商品に関しては自信を持っていますが、販売促進の仕方や商品の見せ方などは素人です。そんなとき出会ったのがPRコンサルタントの編田さんという方でした。
毎年8月に開かれる麻布十番納涼まつりに出店した際、たまたま出会ったのが編田さんでした。話をしてみると彼女は、PRコンサルの他にもデザインやWeb制作、イベントなどさまざまなネットワークを持っていて、「こんなことをやりたいのだけど」というと、いろいろとチームを組んで協力をしてくれるようになりました。
おかげでF2層をターゲットとしたパンフレットやパッケージのデザイン、ECサイトの立ち上げなどイメージ通りのものができ上がりました。


平野

白をベースに赤とゴールドを組み合わせて、とてもおしゃれでかわいいデザインですね。これを決めるのは大変でしたか?


Kanimonogatari-Logo

熊谷

まずは社内に浸透させるために、イメージに合うような雑誌を持ち寄り、従業員を集めてワークショップを行いました。
店舗のPOPなどは売り場の担当者が作っているのですが、コンセプトからずれないように、できたものを編田さんに確認してもらい、バランスを調整してもらっています。商品のパンフレットだけでなく、カニを使ったレシピ集も作成し、アレンジ方法なども紹介しています。催事場などでは見た目を重視し、まずは足を止めてもらうことを意識しています。時間のある方にはビスクの試食をしてもらいながら、上手な解凍方法のお話などをし、最後に次回の催事の告知をするという流れを作っています。
おもしろいのは、3世代で来店されると、おばあ様はカニのむき身を見て、奥様は子どもと一緒に惣菜を見ているんです。ですから百貨店でも新宿と日本橋では、売れる商品の割合が異なるんですよ。


平野

「かに物語」の狙ったターゲットが正しかった、ということですね。


Kani-monogatari

もっと多くの人に「かに物語」を届けたい

平野

現在の「かに物語」の売上規模と内訳を教えてください。


熊谷

現在ようやく売上が1億円まできました。
そのうち、ECサイト、店舗、催事がそれぞれ2割、残りの4割が卸になります。卸先は百貨店やギフトカタログ、駅、生協といったところやホテルやレストランへの業務用もあります。その中で売上のシェアが高いのがテレビ通販の「ショップチャンネル」です。ここでは1回の放送で、送料込みで約5,000~6,000円の商品を、1,000セット以上販売してしまいます。ただカニのむき身などは以前から販売しているのでよく売れるのですが、「かに物語」の惣菜はまだ知名度も低く、訴求力も弱い。
そこでバイヤーさんと考えたのが、有名なシェフとのコラボレーションです。お願いしたのは、復興屋台村に最初にボランティアで参加してくれた奥田政行シェフでした。奥田シェフは山形県の人気イタリア料理店「アルケッチァーノ」のオーナーシェフです。彼の協力により、新しい商品開発も行っています。


ShopChannel

平野

最後に、今後の展望についてお聞かせください。


熊谷

もともとカネダイは、みんながマグロを獲っている時代にカニを獲りに行ったり、いち早く中国に独資の工場を建てたりしています。
社長を筆頭に新しいことにチャレンジする気風が社内にはありますね。ですから、もっともっといろんなアイデアを出して、「かに物語」を広めていきたいと思っています。私個人としてはレストラン事業を増やして、東京にも進出したいと考えています。ただ、その前に卸やECサイトなどで販売を伸ばしていかなくてはいけません。卸の場合、私たちが行ってその商品を説明できるわけではないので、パッケージの情報がとても重要です。そこでパッケージも見直し、料理の写真を入れるなどして、お客様が手にとってわかりやすいものに改良しています。また、商品の幅を広げるため冷凍ものだけでなく、常温保存できる商品の開発を進めています。


平野

ありがとうございました。これからも気仙沼の復興のためにも「かに物語」を全国に広めていってください。