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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 津村 元英氏

重要なのは“考え方”のベクトルを合わせること
二度の変革期を経て「中小企業の企画部を代行する」
企業へと成長

シュンビン株式会社津村 元英

Profileプロフィール

シュンビン株式会社 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会スタンダードトレーナー

1966年、京都府生まれ。2001年、二代目である父の急逝を受けて、代表取締役社長に就任。
社長就任後、創業以来柱としてきた一升びんの洗浄・販売事業からパッケージデザインや商品開発といった新たな領域へ進出。
さらに2012年から「中小企業の企画部を代行する」というビジョンを掲げ、ブランディング・クリエイティブも手掛けている。

「中小企業の企画部を代行する」という独自のビジネスモデルで確固たる地位を築いているシュンビン。
代表取締役社長の津村元英氏は、父親の経営する一升びん洗浄販売業に若くして入社し、斜陽化していた事業を大きな業態変換で成長企業へと生まれ変わらせ、今年6月にはTOKYO PRO Market への上場も果たしました。
どのような戦略的思考によって新たなビジネスモデルを構築し、上場を実現させたのか、津村社長にお話を伺いました。

津村社長

社長就任後に会社存亡の危機に

Q. 本日は、「中小企業の企画部を代行する」というミッションを掲げてブランディングやブランド成長支援などのサービスを提供しているシュンビンの歴史やビジネスモデル、上場の背景などについてお話を伺えればと思います。
はじめに、シュンビンのこれまでの歴史について教えてください。

当社は1919年に、京都市伏見区で和樽を製造する企業として祖父が創業しました。
それ以前は、祖先が和歌山で材木商を営んでいたそうです。
その後、日本酒を入れる容器が和樽から一升瓶に変化する中で、当社も酒屋から瓶を回収、洗浄し、それを伏見の酒造メーカーに納める事業に変化していきました。
私が生まれたのは1966年。
祖父にとっては待望の跡継ぎなので大事にされましたが、同時にプレッシャーもあり、幼少期から経営やお酒、容器などに対して強く意識が向いていました。
ただ、素直に後継ぎになったわけではなく反発もあり、高校3年生まで後を継ぐか決めかねていたんですが、あるきっかけで後を継ぐ気になり、大学卒業後に営業や管理の仕事などを経験した後、27歳で京都に戻ってシュンビンの前身となる京都容器工業に入社したんです。

入社した当時は、売り上げがピーク時の3分の1にまで落ち込んでいました。
ダメになっていく焦りはありましたが何も手立ては打てないまま。
さらに、父が急逝し、私が入社8年目の35歳の時に社長に就任したのですが、当時は日本酒の容器が一升瓶から紙パックに移行していく時期で、2~3年で売り上げが半分になってしまうという悲惨な状況だったんです。
つまり社長就任後、すぐに会社存亡の危機に立たされたわけです。

Q. 会社存亡の危機をどのように乗り越えていったのでしょうか。

社員は高齢者の方が多くてリスクを冒してもチャレンジしたいと思っていたのは自分一人だけという状況でした。
でも、とにかく何か動いてみなければいけないので、伏見エリア以外のお客様を開拓するため、全国を飛び込み営業で回りました。
そして3カ月ほど続ける中で、「自分たちでデザインした瓶を売ったら、差別化できて、クライアントも喜ぶんじゃないか」とピンときたのです。
そこで自分たちでデザインするための準備期間を1年程度設け、デザインした瓶を作って全国1000社以上の酒蔵に飛び込み営業しました。
また、当時は九州の焼酎ブームが起きていたので、九州でパッケージのデザインや印刷を手掛けている会社とアライアンスを組み、瓶のラベルを作ってもらうこともできました。
そこからようやく事業も順調に上向くようになった、という形ですね。

焼酎ブームは2007年ごろに終わってしまいましたが、そのときには次に何がトレンドになるか、市場がわかっていました。
おそらく「スパークリング」と「梅酒を中心としたリキュール」がくるだろうと見当がついており、どちらもデザインにウェイトが置かれるだろうな、と思っていました。
また、九州以外のエリアに出ていかないとだめだと考えていたので、九州の会社とのアライアンスは解消し、2007年に自社でパッケージデザインのデザイナーを採用したんです。
2年目には新たに2人のデザイナーを採用しました。
そこから、酒瓶だけでなく、商品の箱や包装までトータルパッケージで提案するようになったんです。
当時、瓶とパッケージをトータルで提案できる会社は国内では当社だけで、それができることが一番の強みでもありました。

シュンビン パッケージデザイン

第二変革期で「中小企業の企画部を代行する会社」へ

Q. 瓶をデザインして売る事業から、「中小企業の企画部を代行する」事業へとシフトされていった経緯を教えてください。

当社には変革期が二度あります。
第一の変革は、瓶の洗浄から商品企画やパッケージデザインまで担当するようになったこと。
そして2012年からの第二変革期が、「中小企業の企画部を代行する会社」への移行です。
なぜ「中小企業の企画部を代行する」というミッションを抱いたかというと、かつて自分たちがデザインした瓶をどうやって届けようか悩んでいたときに、頼れる会社がなかったということが影響しています。
たとえば当時、印刷会社やコンサル会社などいろいろな企業に声を掛けたのですが、親身になって具体的なアドバイスをしてくれたり、相談に乗ってくれたりする会社はありませんでした。
それで結局は自分たちでやるしかなかったのですが、やっぱり失敗も多かったんです。
そうした経験から、「それなら我々自身が困っている中小企業を支援する会社になればいいのでは」と考え、それが「中小企業の企画部を代行する」事業のきっかけになりました。
そこで、まずは途中の目標として「トータルパッケージの会社になる」ことを決めました。
それが2011年にはある程度達成できたので、いよいよ「中小企業の企画を代行する」事業をスタートさせたわけです。

ただ、順調に進んだわけではありませんでした。
第二変革期では、社員も総論としては賛成だったのですが、私にも具体的なイメージがあるわけではなかったので失敗も多く、徐々に社員の心が離れていくのを感じていました。
それでも少しずつ上向いていったのですが、新事業のために採用した社員と以前からの社員の間で摩擦も起き始めていて。
それぞれを納得させる言葉が見当たらなかったので、「俺は命をかけているんだ」などと情緒的な言葉を使い、その覚悟で引っ張るしかありませんでした。
そうした忍耐の時期もありましたが、4、5年かけて2016年ごろにはなんとか今の形にできました。

シュンビン社員

“考え方”のベクトルを合わせることが重要

Q. ブランディングやブランド・マネージャー認定協会との関わりについてお聞かせください。
どのような経緯で協会の講座を受講してトレーナーとなられたのでしょうか。

まず、ブランディングを取り入れた理由についてご説明すると、当社はそれまでは商品企画やパッケージの会社だったので、請け負う仕事はいわば「企画もの」で、売り上げに対する刺激にはなりますが、本当にクライアントのためになっているのか疑問もあったんです。
そんな中、どうすればクライアントの売り上げが上がるのかを考えていたときに、売り上げが減っていない商品を発見したんです。
企画ものは必ず売り上げが減る、という認識があったのですが、売り上げがずっと上がっているものがあり、それはクライアントがブランディングをしている商品だったんです。
そのときに「ブランディングというのは、効果があるんだ」と気が付き、勉強したいと思ったのです。

また当時、当社では商品企画の担当者は商品企画だけを担当し、Web制作の担当者はWebだけ、建築デザインの担当者は建築だけ、とそれぞれが異なるクライアントと仕事をしている状況でした。
ですが我々がブランディングを担当すれば、ブランディングは一貫性が大事なので、クライアントにトータルで提案できます。
実際に、それ以降はクライアントに対して、ブランディングの考え方をベースに一貫して取り組むことを強く求められるようになりました。

そして私が協会の講座を受講したのは、おそらく自分でも何かそうしたものを求めていたからだと思います。
協会の書籍『社員をホンキにさせるブランド構築法』を読んで、「この理論は我が社にすごく合っているし、実践できるんじゃないか」と思いました。
そこで社員にも受講を勧めたのですが、中小企業には無理ではないかという反応が多かったので、それならまずは自分が行ってみようと考えたのです。
一昨年まではほかの社員にも勧めて何人かに受講してもらったのですが、これからの社会では社員が自主的に勉強することが大事だと思うので、今は資格の取得を会社が補助する形に変えています。
特に、ブランド・マネージャー認定協会の講座を受講する際は手厚く補助すると伝えています。
受講した社員たちからは「社長がやっていることが自分の中で整理できた」という声がすごく多いですね。

新版 社員をホンキにさせるブランド構築法

新版 社員をホンキにさせるブランド構築法

実際、ブランディングをするようになってから、仕事のやり方も変わってきたと感じています。
たとえば当時は、依頼を受けてから1カ月半でクライアントへ納品していましたが、現在は6カ月以上掛けています。
当然、客単価も上がりました。
クライアントの命運がかかっている仕事を受けているので、たとえばデザイナーならデザインのクオリティをもっと上げなければ、と社員へかかるプレッシャーは大きいですが、同時にやりがいも感じられます。
社員みんながキャリアアップしようと思うようになるなど、ブランディングに取り組み始めたことがターニングポイントになった気がします。

Q. 社員教育で気を付けているポイントを教えてください。

ビジョンを示して中長期的な方向性を社員とすり合わせ、次に実現しようとしている構想や将来的な構想などを明かし、それが社員の人生にとってどのような意味があるのか……という話を常にしています。
そしてそれとは別に、考え方のベクトルを合わせることも重視しています。
私は、合わせるベクトルは2つあると思っていて、たとえばミッション、ビジョンは“方向性”のベクトル。
一方“バリュー”は考え方のベクトルだと思うんです。
考え方のベクトルを合わせることは非常に大事だと思います。

考え方のベクトルを合わせれば、社員は自由に行動できるので、最近は経営会議でも私は具体的なことはほとんど言いません。
考え方のベクトルを合わせていれば、「自分ならこういう方法はとらないけれど、それもありだね」と許容できますから。
今は、私はブランディングの仕事でも20%程度しか関わっていませんが、それを可能にしているのは「考え方を合わせている」からだと考えています。

シュンビン ミーティング風景

上場は「全社員の幸福」を考えたため

Q. シュンビンは今年6月にTOKYO PRO Marketへ上場しました。
上場の背景についてお聞かせください。

2009年ごろに父から引き継いだ仕事がゼロになった一方、私が始めた仕事は売り上げが上がり続けていたので、もう売り上げは下がらないだろうと前を向く余裕ができました。
そうすると、改めて「なぜ中小企業の企画部を代行するのか」という問いに対する答えが欲しくなったんです。
そこで問いに対する答えを探すため、様々な経営者の本を読み、京セラ創業者の稲盛和夫さんの塾で1年間勉強し、自分の中で答えを見つけました。
それが社員やクライアント、世の中のために行動しようという思いで、それは「仕事」というより「人生」の答えのようなものでした。
それに気付いて、今までのことは決して間違っていなかったと思えたんです。

稲盛さんの塾ではミッション、ビジョン、フィロソフィーが大事だと教えられていたので、15年前の当時から仕事にもそれらを導入し始めました。
企業理念で「全社員の物心両面の幸福を追求すると共に、事業を通じて世の中に貢献する」と謳っているように、そのころから「中小企業の企画部を代行する」のも全社員のため、と言えるようになったんです。
そして、「全社員の幸福」や当社の将来を考えてみると、相続という形はあまり適していない気がしました。
極論を言えば、会社は相続するか上場するか、どちらかしかないと思っていたので、それなら将来的には上場したい、という思いが自然と出てきて。
それで10年以上前から「上場したい」と口にするようになり、今年本当に上場することになったのです。

私としては、命がけで取り組んできた会社なので我が子のような感覚なんです。
あと8年で社長を辞めようと思っていますが、子供を困らせたくない、自立してほしいという感情と一緒で、会社が困るようなことは絶対にしたくない。
社長は自分ですが、それはたまたまそういう環境に置かれたのが自分だったからで、シュンビンの文化やミッション、ビジョン、バリューがあれば、別に自分が経営しなくてもいいのかなと思っています。
むしろ「ここまで苦労してやってきたんだ」という執着から離れたほうがうまくいくのではないか、と。
そうした考えもあり、社員のために上場したほうがいいのではないかと思ったんです。

シュンビン社員ミーティング風景

パートナー制度導入でより高レベルの取り組みへ

Q. パートナー制度の導入についてお聞かせください。

「ビジネスエコシステム」という言葉がありますよね。
クライアントなど複数の企業がパートナーとして集結する、お互いに共存を深める関係を構築していく考え方で、これからの時代はそうした形がいいのではと思っています。
シュンビンではアメーバ経営を取り入れてすべての部門を独立採算にしており、お互いがお互いをリスペクトし、一緒に協力して取り組むということを社内でも実践しているので、これを社外も含めてできないかと考えたのが導入したきっかけですね。
「中小企業の企画部を代行する」のも、今は当社だけで実現できていますが、当社以外のノウハウを持ったパートナーと一緒に取り組むことでもっとレベルの高いことができるのではないか、とずっと考えていたんです。

具体的には、大きく分けて2つの体系があります。
1つは、集客のためのパートナー。たとえば金融機関や大手のコンサル会社などが対象です。
もう1つは、クリエイティブのパートナーです。
ガラス瓶やパッケージをトータルでデザインできる企業はおそらく国内で当社だけだと思いますし、ブランディングを理解しながら伝統的な建物を扱える建築デザインができる企業もあまりないと思うので、パートナーにとってはそうした機能が使えればもっとビジネスが膨らむかもしれないメリットがあるのではないでしょうか。
組むことで、お互いにビジネスが膨らむ可能性があるわけです。
当社は商品企画発祥のブランディング会社なので、たとえばPR会社やSNS運用の会社など、一緒にうまくやっていけるパートナーとは一緒にやったほうがいいのかなと思います。

Q. ブランド・マネージャー認定協会の資格者がパートナー制度へ参加するなら、どのような人材が向いているとお考えでしょうか。

3つありまして、1つは我々のミッションなどに共感していただける方。
具体的に言うと「中小企業を助けたい」という方ですね。
2つ目は、機能がはっきりしていること。
たとえば当社が、瓶とパッケージの商品企画ができます、Web制作ができます、建築デザインができます、といっているように。
アメーバ経営は機能ごとに分かれているので、「なんでもできます」だと困るわけですね。
加えて、我々と得意分野がバッティングしていないことが大事です。
そして3つ目は、はっきりした強みがあるけれどそれを活かす実践の場がない人がいいのかな、と。
つまり経験がない方ですね。
なぜかというと、まず仕事前に当社のワークショップに入ってもらうのですが、すでに実績がある方が相手ですと、低価格でワークショップに入ってください、とはやはり言いづらいので。これからの可能性がある方がいいのかなと。

Q. 最後に、津村社長とシュンビンの今後の目標やチャレンジをお聞かせください。

シュンビンでは、2022年に「イノベーションを共に創る」という新しいビジョンを立てました。
これは社員やクライアント、パートナー会社とも協力しながら、リスクを負ってでも社会的問題を解決するイノベーションを提供していこう、という意図が込められています。
たとえば日本の文化を発展させる地域創生の仕事などですね。
当社は京都にある会社なので、伝統産業のクライアントがすごく多いのです。
あとはまだ具体的には言えませんが、ある業界にブランディングを広めようと考えています。
これが実現したら、おそらくビッグプロジェクトになるでしょう。

また、インナーブランディングも重要です。
当社では社員を大切にしていますが、最近の日本の会社ではそうした関係性が薄くなってきているように感じているので、クライアントの社員との関係性などをミッション、ビジョン、バリューによってインナーブランディングしたり、オフィスのリニューアルをしたり。
当社の職場が展示室のような機能も持っているので、我々の会社に来ていただいて、「こういう会社を作りたい」と思ってもらい、クライアントの社員にも幸せになってほしいですね。

あとは、今は“社内ベンチャー制度”のような制度を作ろうと計画中です。
社内外で、これから起業して社会の問題を解決したいという方と、リスクを負ってでも一緒に仕事をしたいなと思っているんです。
上場してパブリックな会社になったので、シュンビンを使って世のため、人のために尽くせればいいかな、と。
我々に関わるすべての人が喜びや楽しみを見出せて、幸せになっていただければ。
私は、社長はあと8年と決めているので、この8年以内になんとかそうした計画を実現できればうれしいですね。

シュンビン社屋

※掲載の記事は2024年12月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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