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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー > 高木 純氏

漁業町の大漁の象徴である“旗”をキーワードに
プロジェクト推進 地域貢献を意識した
「清家巧貴税理士事務所」のブランディングとは?

株式会社コムデザインラボ高木 純

Profileプロフィール

株式会社コムデザインラボ 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者

2010年10月に「コムデザインラボ」を開業、2014年10月に「株式会社コムデザインラボ」として法人化。
ショップブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマークやキャラクター、印刷物やホームページなど、すべて自社完結でトータルデザインする“合わせ技一本のデザイン事務所”として全国にクライアントを持つ。
2022年度ブランディング事例コンテストでは「信州松本エリアの観光プロモーション事業のブランディング」で地方創生審査員特別賞を受賞。
2023年度ブランディング事例コンテストでは「地方の税理士事務所のブランディング」で中小企業庁長官賞を受賞。

あえて人口減少している生まれ故郷での活動にこだわり、地域活性化に強い意識を持つ税理士事務所「清家巧貴税理士事務所」。
コワーキングスペースを合体させたオフィスを新築するなど税理士の枠を超えた取り組みを行い、同業者が連日視察に訪れるなど注目を集めています。
「清家巧貴税理士事務所」のブランディングとはどのようなものなのか、担当した株式会社コムデザインラボの高木純代表取締役にお話を伺いました。

ブランディングを通して故郷へ貢献

Q. 本日は、2023年度のブランディング事例コンテストで中小企業庁長官賞を受賞した「地方の税理士事務所のブランディング」について、お話をお伺いできればと思います。
まず今回のブランディングの背景について教えてください。

はじめにロケーションについて説明すると、「清家巧貴税理士事務所」は大分県の南東にある人口約6万6000人の漁業の町・佐伯市にあります。
なぜこうした説明をしたかというと、今回のブランディングが町の課題ととても密接に関わっているからなんです。
佐伯市の人口は年間1000人ほど減少し続けており、地元を離れて東京や福岡で税理士として活躍していた清家さんは、自分が育った小学校、中学校が廃校になる経験をして生きた証がなくなったと感じ、近い将来、同じことが全国の地方で起きるのではと危機感を抱いたそうです。
そんな故郷の現実を見つつ清家さんは2011年に佐伯市に戻ってご夫婦で開業し、弊社とは4年後の2015年にご相談をいただいてブランディングに取り組むことになりました。

毎年1000人ずつ人口が減少している佐伯市

ブランディングに取り組むことを決めたきっかけは3つあります。
1つ目は、田舎では都心での就職を望む若者の採用が非常に困難であること。
2つ目は、税理士という仕事が非常に差別化しにくいこと。
そして最後は、活動の拠点を生まれ故郷の佐伯市に選んだことです。
つまり、清家さんには、自分たちのブランディングを通して活力を失った故郷へ地域貢献したい、という思いがあったんです。
言い換えると、この3つがブランディングに取り組むうえで求められたことでもあります。

徹底的なヒアリングと分析から4つの要素にフォーカス

Q. ブランディングはどのように進めていったのでしょうか。

今回のプロジェクトは、一貫して“旗”というキーワードでブランドを成立させているのが特徴です。
まず、実際に佐伯市に何度か足を運び、佐伯市の状況などを体感しながらヒアリングをしました。
地方の現状を目の当たりにしながら、3C分析などでビジョンを明確にしながら、ブランド・アイデンティティの原型となる言葉として『財務で企業の成長を引っ張る船頭役』を言語化し、早い段階から共有しました。
提案した複数案のロゴデザインと併せて検討を進め現在のブランド・アイデンティティに決まったのですが、ブランド構築にあたって弊社では4つの要素にフォーカスしました。

1つ目は、もともと掲げていた「GROW TOGETHER!」に隠された本当の意味です。
これは「清家巧貴税理士事務所」が独立当初から掲げていたコピーですが、掘り下げていくうちに、顧問企業のことだけではなく「佐伯の活性化」を意味していることがわかりました。
2つ目は、尊敬する漁師だったお父様の存在です。
清家さんが佐伯市の離島・大入島で生まれ、漁師の父のもとで育ったユニークな税理士であることをフォーカスしてみました。
3つ目は、生まれ故郷である佐伯市への強い思いです。佐伯は漁業の町なので、地域産業の象徴である「大漁旗」にその思いを乗せました。
そして最後は、会計業務の枠を超えた多角的なサービス内容です。
地域の中小企業をサポートするために多角的な支援を行っている税理士、という特徴に着目したわけですね。

これらの4つの要素を兼ね備えたブランディングに取り組み、決定したブランド・アイデンティティが「旗振り役として先頭に立ち、企業を導く存在へ」です。
ロゴマークは「大漁旗」「旗振り役」を表現したもので、清家の「S」と佐伯の「S」をっ表現しながら、風にたなびく旗をデザインしました。
さらに、所員たちのセルフイメージを「旗振り役」とし、大漁旗のようにクライアントの繁栄を願ったり、迷ったクライアントに旗を立てて導いたりする存在を目指すように決めました。

大漁旗・旗振り役を表現したロゴマーク

Q. インターナルブランディング、エクスターナルブランディングについて教えてください。

まずインターナルブランディングは、「清家巧貴税理士事務所」のユニークなクレドの活用法をお話ししたいと思います。
クレドは、「日々成長」「徹底した報連相」などスタッフで意見を出し合って決めた21項目で構成されており、クレドカードは増刷を繰り返してすでに1000枚以上を発行しています。
「清家巧貴税理士事務所」では、このカードをスタッフ間のインターナルブランディングで活用するに留まらず社外へブランドを伝えるツールとして活用しているのが特徴で、開催したセミナーや就職説明会では参加者全員にお渡ししており、自分達のセルフイメージを確認する貴重なきっかけになっています。
また、クレドを大きなパネルにしてオフィスのエントランスに掲示していますが、これは自分たちのブランドを内部だけでなく外部へも浸透させることを意図しています。

21項目で構成されたクレド

エクスターナルブランディングでは、8年かけて多岐にわたる取り組みを支援してきました。
その一つが、二度にわたってオフィス設計に参加させていただいたことです。
昨年末には、ブランド要素をちりばめた新築のオフィスが完成しました。

また、昨年は地域とさらなる関係性を築くため、コワーキングスペース・レンタルオフィスの新ブランド「トランキーロ」を立ち上げました。

トランキーロ

このブランドのプロジェクトとして、税理士事務所のオフィスと新事業のコワーキングオフィスを合体させた施設「saiki FLAGS」を竣工させています。
「集まる場所がない」という地元の声に応えた、佐伯市でも珍しい大型のコワーキングスペースで、ビジネスマン、学生、ワーキングママなどが集まる場所となっています。
外には遊具も用意して、子育て世代のセカンドオフィスとしても活用できるようになっているのもポイントですね。

佐伯市でも珍しいコワーキングスペース

また、取り組みとしてユニークなのは、高校生向けに施設を無料開放する企画もあり、地域の学生が地元の中小企業を知ることができるマッチング的な活動を行っていること。
税理士本来の仕事とは異なりますが、これも佐伯市の活性化を狙った取り組みの一つです。

ブランディングで頼りにされるポジションを獲得

Q. ブランディングの成果について教えてください。

まず課題だった採用ですが、私が携わった頃に当初4人だった所員は、ブランディングを経て現在は20 人にまで増えました。
新卒では税理士事務所としては珍しく教育学部の方が入所するなど、佐伯市出身の学生に企業の魅力が伝わっているのかなと思います。
また、一貫性のある広告的なツールを展開したことで認知度がアップし、多くの地元企業から会計以外も頼りにされるポジションを獲得できたと考えています。
こうした取り組みは士業の専門誌「月刊プロパートナー」でも特集され、「田舎で伸びる士業事務所のつくりかた」と大きく掲載されました。
税理士事務所とコワーキングオフィスを組み合わせた施設は国内でも非常に稀な事例であることから、全国からコンサルタントや士業の方が連日視察に訪れています。

Q. 今後の展望を教えてください。

今年は一連のブランディングの数々を全国に発信できるよう、ホームページをリニューアルしました!。
さらに、チームとしての連帯感を生むユニフォームも企画しています。
8年間伴走してブランディングを手掛けてきた中で、改めて思ったことは「地域で一番の税理士事務所を目指しているわけではない」ということ。
今回のブランディングは、コーポレートブランディングでありながら、地方創生につなげるためのブランディングと言っても過言ではありません。
これからも、同じような地方のロールモデルになれるように「佐伯を発信できるブランド」を目指していきたいと思います。

※掲載の記事は2024年4月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。

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