一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >阪本 啓一氏 Vol.3
聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸
【阪本氏のプロフィール】
大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。建材部門に19年勤務後、2000年4月に独立。
渡米し、ニューヨークでコンサルティング会社「Palmtree Inc.」を設立。
2006年、世界にJOY(喜び)とWOW(感動)を広め、浸透させたいという理念のもと、
「株式会社JOYWOW」を創業、現在同社取締役会長。
主な著訳書として、『共感企業~ビジネス2.0のビジョン』(日本経済新聞出版社)、
『もっと早く受けてみたかった「ブランド」の授業』(PHP研究所)、
『気づいた人はうまくいく!』(日本経済新聞出版社)などがある。
聞き手
では次に、以前サインを頂戴した阪本先生のご著書『つまりこういうことだ! ブランドの授業』について、2、3お伺いします。出版は、いまから6年前の2004年で、文庫版になったのは一昨年ですよね?
阪本
一昨年の年末です。
聞き手
売れ続けていますね。
阪本
お陰さまで。
聞き手
具体的にどんな反響がありますか?
阪本
出版当初は、コンサルティングの依頼とかがありました。非常に面白かった案件があるのですが、さすがにちょっと言えないので控えます。ちょっとお話できるとするならば、大手広告代理店さんがプレゼンに勝つためにコンサルティングを依頼してきたという(笑)。
聞き手
そんな依頼が。それはすごいなぁ。で、結果は?
阪本
もちろん見事勝ちました。勝てた要因は、創業者が、社長の座を息子に渡しつつも院政を敷いている。社長自身も自信がない。また、社内の古株との人間関係もいまひとつできていない。そういうことが見えてきました。プレゼンテーションというのは意思決定者に対して読み取ることがまず第一ですから、キーマンの気に入るプレゼンをした。これは、ブランドは関係ないですね(笑)。
聞き手
言ってしまえば、IQよりEQ的なところですね?
阪本
そうなのかもしれないですね。
聞き手
察する力、素晴らしいですね。他にはどんな活動を?
阪本
あとはブランドにまつわる勉強会とかですね。そういう反響が結構あって、各地で講演なんかも行ないました。
聞き手
ものすごい反響ですね。さて、この本を書かれてからもう6年経ちますが、いまだったらここももっと書きたかったなとか、そういうところはありますか?
阪本
原則としては変わりません。変わらないけれど、書き足すとすれば、ブランドのプロモーションの部分にもう少し。WEBマーケティングの使いようや、新しい手段などですね。例えばツイッターとか、そういうものを加えることができるかなと思います。
聞き手
その他には?
阪本
あとは、キャッチコピーの重要性がまた復活してきているから、その辺りも書き加えたいですね。というのも、ツイッターって本質はキャッチコピーなのです。だって、140文字以内でしょう。それから、クックパッド。あれなどで証明されているけれども、キャッチコピーは13文字以内だそうです。13文字以内でないとクリックされない。だから、ツイッターのような媒体で、短い言葉で「おっ」と思わせてクリックに導くと。
聞き手
なるほど。
阪本
ツイッターといえば、Bitlyってご存知ですか?
聞き手
いいえ…。
阪本
ツイッターのクリック数が全部出てくるサイトなんです。そうすると検証できる。ツイッターでついぶやいたすぐ後に、Bitlyの更新をクリックするんです。そうすると、瞬時に何人がクリックしたかという数字が出てきます。
聞き手
これ、もしかして知らないのは我々ぐらいですか。皆さん、もう知っていることですか。
阪本
いや、これはあまり知らないと思います。
聞き手
早速使ってみます。履歴というか、検証できるのがいいですね。
阪本
検証ができます。そうすると、自分のキャッチコピーが効いたのか効かなかったのか、はっきりします。
聞き手
いまだったら、そういう具体的なところを入れるかなということですか。
阪本
はい。
聞き手
ところで阪本先生は、よく「ビジネス2.0」とおっしゃいますが、「ビジネス2.0」という意味が分からない方に伝える場合、どのように伝えていらっしゃいますか?
阪本
ビジネスの目的と伝えています。ビジネスの目的を、お金儲けだけというのを1.0とするならば、みなさん創業の志をお持ちのはずですから、それを忘れないようにしようというのが2.0です。創業の時は、「新しい世界を見たい」とか、「世の中にこの靴を広めたい」とか、「うちの子供が苦労したから、もう少し医療制度を何とかしたい」とか、そういうきっかけを誰でも持っているはずです。
聞き手
そうですね。
阪本
そしてそれがうまくいきます。うまくいくということは、具体的にいうとお金が入ってくることです。創業というのは、実はお金を払うことです。経営というのはお金を払い続けることです。家賃にしても、社員の給料にしても、入ってくるより先に払わなければいけない。だから、経営というのはお金を払うことです。そのバランスを、いつか払うお金より、入ってくるお金のほうを増やしたいよね、と。そういう思いで商売を始めますが、それが早いか遅いかで、ようやく入ってくるお金が増えて、少しは内部留保ができるようになった時、人間はどうするか。10万円残ったら、今度は100万円欲しいと思います。100万円になったら、1,000万円欲しいと思います。これは人間の性です。これはこれで僕は否定しませんが、それを目的にしてしまうと終わりがないという話です。
聞き手
原点に戻ろうみたいな話ですか。
阪本
そういうことです。2.0というと、進化形みたいに見えるかもしれないので、実は0.0と言ったほうがいいかもしれない。要は、商いは原点に戻りましょうという話です。
聞き手
明らかに1.0の傾向に警鐘を鳴らさないといけないということですよね?
阪本
事実、一昨年の金融破綻から、もうそうなっているでしょう。そういう会社は会社として存在できなくなってきていると思うので、みんな大きくギアチェンジをしないといけない。経営者も社員も仕事をしていてハッピーでないでしょう。
聞き手
この2.0の考え方について、啓蒙みたいなものが広がっている感じはされますか?
阪本
広がっていると感じますね。現実に、例えばある洋服屋さんですが、そこの社長は勉強もしたし、社内ミーティングも明け方までかかってでもやったし、経営計画も立てた。全部やったと。だけど、結果的に倒産寸前になってしまった。全然楽しくない状態ですよね?それで1回開き直ったんです。もうアホになろうと開き直ったら、もう大躍進されたんです。つまり、「俺は何のためにこの商売をやっているんだろう」ということを見直したのです。社員のみんなも楽しくないじゃん、と。
聞き手
痛烈に胸が痛くなってきました。そういう状態に陥ってないかなとフッと思って。
阪本
だけど経営者ってそんなものです。会社のことを思い、社員のことを思う。
聞き手
それでドカーンと?
阪本
はい、ドカーンとV字回復です。先ほど言いましたように、みんなが笑っているかどうか。みんなの熱意が生まれるかどうか。これは恐怖政治からは生まれないのです。賢いヤツより明るいヤツの方が商売に向いているのです。
聞き手
そうですよね。絶対に楽しいところに惹かれますもん。これがまさに「JOY」ですね?
阪本
そうです。JOYWOWもなぜお陰さまでうまくいっているかというと、楽しくやっているからです。JOYWOW定期ミーティングを月に1回やっていますが、来ないやつもいるし(笑)。
聞き手
自由なんですね。
阪本
無理に呼んでも、良い意見が出るわけがないからいいんです。
聞き手
最後にちょっと大雑把な質問になってしまいますが、阪本先生は、今後ブランディングはどうあるべきだとお考えですか?
阪本
ブランディングというのは、儲けの源泉です。だから絶対に必要なものです。ゴルフをする時でも、テニスをする時でも、スポーツをする時に、最初にきちっと型を覚えるでしょう?これと同じで、いくらこれから楽しくやろうとか言っても、その前にしっかりブランディングを立てているから、会社の先があるわけです。ですから、ネーミングとかロゴとか価格とか、基礎的なものは不可欠で、なければ成り立ちません。
聞き手
楽しむのはいいけれど、やみくもに楽しむなということですね。
阪本
基本が分かっていながらやらないと。ただ、音楽をみんなでやりましょう、ジャムセッションをアドリブでやりましょうと言っても、基本ができていないヤツがいたら、音楽にならないでしょ。やっぱりギターがある程度弾けないとダメじゃないですか。だって、プロとしてお金をいただくわけだから。だったら基本的な型はきちっと押さえよう。応用はいいけれど、基礎のない応用はありえないわけです。ブランドというのは、きちんとした基礎です。音楽で言うと楽譜のようなものです。
聞き手
最後に聞いておいてよかったです。単純に楽しめばいいんだって伝わってしまうものではないということですね。
阪本
そうです。
聞き手
本日は、大変勉強になるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
※掲載の記事は2014年11月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。