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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >株式会社モスフードサービス(モスバーガー) Vol.2

一貫した哲学が支えるモス・ブランドの広がり – 後編

株式会社モスフードサービス(モスバーガー) Vol.2

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【株式会社モスフードサービス(モスバーガー)のプロフィール】

1972年創業。

日本の食文化を生かしたハンバーガーを提供し、日本のハンバーガー業界でのシェアは、日本マクドナルドに次ぎ第2位。

素材を厳選し、注文を受けてから作る「アフターオーダー方式」など、スローフードの要素を取り入れているのが特徴である。

ファストフードではなく「ハンバーガーレストラン」と分類される場合もある。

その味の良さから人気があり、利用したい飲食店ランキングでも上位にランキングされている。

名前の由来:モスバーガーのMOSは、MはMountain(山のように気高く堂々と)OはOcean(海のように深く広い心で)SはSun(太陽のように燃え尽きることのない情熱を持って)という意味とされている。


「哲学」で乗り越えたデフレの荒波

聞き手

当協会ではブランドの「機能的価値」と「情緒的価値」の2つの価値があるというお話をしています。さらに最近では第3の価値とも呼ばれる「社会的価値」が非常に大切になっていると考えています。これらの3つの価値について、御社での取り組みをお聞かせいただけますか?


田村

1995年頃にデフレが進行して、価格破壊企業が大変な成長を遂げました。うちも非常に厳しい経営状況に追い込まれたのですが、櫻田は「うまいものを出して体に良い物を作っていくことが、自分たちのアイデンティティだ」と言い切りました。「バリューフォープライス」か「バリューフォークオリティ」なのかという分岐点で、私たちはバリューフォークオリティを選ぶと宣言したのです。
当時BSEの問題が起きたので、私たちはオーストラリアのタスマニア島で肉を仕入れ始めました。そこは牧草飼育でBSEの可能性が一番低いところだったのです。一方当時の外食企業は、一番安い肉を仕入れられるバイイングパワーを売りにしていました。つまり、その時々に応じて、他チェーンでは産地より価格を重視した仕入れをしていたということです。
さらに健康志向が強い日本人のニーズを満たすために、よりよい野菜を提供しようということを始めました。それぞれの店舗が近所の八百屋さんから野菜を仕入れていたのを止めて、協力農家で極力農薬や化学肥料に頼らない方法で栽培された野菜を、本部から供給するという仕組みを作ったのです。


聞き手

食の安全と価格競争の問題……相反する問題が続出して大変厳しい時代だったのではないでしょうか。


田村

そうです。3~4年は価格破壊企業の成長が続き、当社の株価も2000円前後あったのが900円台まで下がりました。アナリストやメディアの人たちにはモスは終わった、まったく時代と逆行したことをやっていると言われましたね。いい肉を使っていい野菜を使ったものですから、他社がディスカウントしているのに我々は値上げをしました。安心や安全のコストは必要なものだと考えたからです。



聞き手

今となっては当然のことですが、当時はまだ消費者の意識も高くはありませんでしたからね。それを無視した結果、様々な事件が起きてしまいました…。


田村

おっしゃるとおりです。2000年前後から食品メーカー、自動車メーカーの大きな不祥事が発覚し始めました。これは企業の無理な低価格競争の結果だったと思います。


聞き手

常に価値判断基準に哲学があった。信念をつら抜いた結果、短期的な落ち込みも乗り越えられたのですね。


自然な流れで生まれた「シニア雇用」

聞き手

ところで御社は、シニア雇用を非常に積極的にやられている印象があるのですが。


田村

実は会社として、何かをしているわけではありません。地域密着という意識を大事にしていますので、業態的に大人の方の利用が多かったこと。そして採用の際も大学生・高校生だけに限定していなかったので、自然に増えたということです。
50?70代の方にあちこちでお勤め頂いていますが、皆さん、生活に困っているわけではありません。私どものお店で働くことが世間との交流、活力源になっているようです。あちこちでパート、アルバイトの皆さんと直接話していますが、50?70代の方々は特に真剣に聞いてくれます。そして当社のマインドで働くことが、生き甲斐に繋がっているとおっしゃいます。


聞き手

自然な流れでの結果とは言え、それは大変な社会貢献ですね。地域のコミュニティ作りの役割も担っているように感じます。


田村

五反田のお店が話題になったのですが、偶然あるマスコミの方が「モスジーバー」と取り上げて広まりました。実際、高齢の方たちは台所の経験がありますし、人生経験を積まれているので人間関係の作り方がうまいです。さらに若い人に対して、教育的指導もできます。たとえば高校生のマナーを、同じ高校生のアルバイトが注意すると角が立ちますが、高齢の方がすると素直に聞いてくれます。



聞き手

世代を超えた交流も生まれるでしょうし、とてもいい環境になっていますね。


田村

当社らしい形だと思います。もともと当社は創業期から脱マニュアル。人間性や人柄の良さで、不利な立地の店舗にお客様に足を運んでもらわないといけませんでしたから。


さらに広がっていく「モスの哲学」

聞き手

最後になりますが、御社として今後、具体的に取り組まれていきたいと考えていらっしゃることは何でしょうか?


田村

1つは食料自給率の問題で、国産野菜の使用量を増やしていきたいと考えています。ただ現在全国に1400店舗以上ありますから、国産材料だけでは間に合いませんので、徐々に。供給体制が整ってくれば、ほとんどが国産という姿になるかもしれません。ただ国産はそれほど安くありませんから、うまくバランスをとっていく必要があります。



田村

そのために農業法人を設立し、専用のハウスも作っています。若手農業者の育成とも絡めて、一緒に農業法人を作り、そこで生産される野菜は私どもの店で使うという仕組みです。私どもの店で使うから需要が見えやすい。だからいい野菜作りに専念してね、という風にモチベーションに繋げていけたらと思っています。さらにそこで作った野菜が社会の役に立つのであれば、私どものチャンネルだけではなくて、理念に合うような店舗に供給していくこともありえるでしょう。
2つ目は食育の問題です。フランチャイズ店舗でできる食育というのをやっていまして、その地域のフランチャイズのオーナーさんや店長さんが地元の小学校の総合教育の時間をお借りして、食事のバランスや調理のひと手間について学んだ後、子供たちに世界でたった1つの自分だけのテリヤキバーガーを作ってもらうということをやっています。
これは子供たちに正しい食を教えることで、実は私どものお客様を作るということに繋がっています。お金はかかりますが、僕はこれを未来への投資だと思っています。
3つ目は、安全という問題。2012年に、ISO22000認証を取得しており、国際基準で品質管理を進めています。また、アレルギーや栄養成分の情報を明らかにしていくこと、たとえばこだわりの野菜を多く使用した商品が、実はこんなにも身体にいいものだというのを外部の先生方の力も借りて、分かりやすくお伝えしたいと思っています。



聞き手

やはり、今後は「社会的価値」に関わる部分が多くなっていくように感じますね。目先の売り上げだけでなく、将来を見越した長期的な取り組みは、きっと御社の不屈の精神で実現されると思います。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。


※掲載の記事は2017年3月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。