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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >高橋 真理子氏 Vol.1

伝統にとらわれない自由な発想とチャレンジが消費者の心をつかむ 前編

高橋 真理子氏 Vol.1

【プロフィール】

株式会社ピックルスコーポレーション
開発室室長 兼 開発室企画開発課課長
高橋 真理子氏

大学卒業後、2000年に株式会社ピックルスコーポレーション入社。入社以来、大手コンビニチェーン・量販店向けの商品開発で最前線を歩み、新工場の立ち上げなどにも参画。商品開発の傍ら、新規売場開拓、他企業コラボレーションの推進なども務める。2016年1月より現職(開発室室長 兼 開発室企画開発課課長)に就き、ナショナルブランド商品のブランディングプロジェクトリーダーとして日々奔走している。


伝統的な漬物業界において、斬新な発想で時代をつかみ、異例の存在として順調に業績を伸ばしている株式会社ピックルスコーポレーション。今回は主力商品である「ご飯がススム」キムチシリーズにおける開発の経緯や、浅漬シリーズのブランディングプロジェクトについて、開発室室長の高橋真理子氏に話を伺いました。

聞き手:平野史恵(株式会社イズ・アソシエイツ クリエイティブディレクター)


ピックルスコーポレーションとは

平野

はじめに会社の概要について教えてください。


高橋

ピックルスコーポレーションは1977年に設立し、今年でちょうど40周年を迎えました。会社設立後直ぐにセブンイレブンと取引が始まり、その後、セブンイレブンのドミナント出店に合わせて、北は北海道から南は九州まで工場と物流の両方を構えています。これにより全国どこでも同じ味を、作ってすぐに届けることができているのです。主力商品であるキムチ、浅漬を中心に市場シェアでは業界トップを獲得しています。特にヒット商品である「ご飯がススム」キムチシリーズはほとんどのスーパーに入っています。


平野

現在高橋さんが所属する開発室企画開発課ではどのような業務を行っているのでしょうか?


高橋

主に「ご飯がススム」キムチシリーズや浅漬シリーズの商品開発からブランディングを担当しています。以前は「ご飯がススム」シリーズで浅漬を作ったりもしていたのですが、今は「ご飯がススム」はキムチのブランド、浅漬は浅漬ブランドというようにシリーズをわけてブランディングに取り組んでいます。「ご飯がススム」シリーズはCMをはじめこれまで多くのキャンペーンを行っているため、消費者からの認知度は高いのですが、浅漬シリーズについてはピックルスコーポレーションとしての認知度はまだまだです。そこで浅漬シリーズの定着のためにパッケージの統一に取り組んでいるところです。


平野

会社のロゴにある「野菜の元気をお届けします」とは、どういうことなのでしょうか。


高橋

このポリシーには、新鮮でおいしい野菜を加工してすぐ消費者にお届けすることで、人々の健康な暮らしづくりに貢献していくというメッセージを込めています。近年日本では「野菜は積極的に摂らなくてはいけない」という風潮が高まっています。弊社にとって漬物とは、これまでのような保存食の意味合いではなく、「新鮮な野菜」をおいしく味付けしたものなのです。新鮮さについては、弊社では取引先から注文を受けると、その日のうちに生産・出荷して翌日には商品をお届けしています。さらに漬物というと塩分が高く、賞味期限が長そうなイメージですが、できるだけ素材の味を生かし最小限の味付けで、新鮮な野菜本来の味にもこだわっています。またキムチや浅漬、サラダなどすべての商品の品質についても、従業員教育やISO9001ならびにHACCPの運用を行い、徹底した品質管理に努めています。


logo

野菜の鮮度が要。安定仕入の取り組み。

平野

農産物は天候や季節によって品質のばらつきがあり、仕入れは苦労されるのではないでしょうか?


高橋

そうなんです。ですが弊社の野菜の約7割が契約農家からの仕入れです。産地も「産地リレー」といって、季節によって仕入れる場所を変えながら、一年中おいしい野菜を届けられるようにしています。例えば冬野菜である白菜なら、夏場は長野などの高冷地から仕入れますし、冬場なら茨城などの近郊から仕入れるなど、一年中安定した仕入れを行う努力が欠かせません。そのため、原料部では直接農家と契約交渉したり、種苗メーカーと話し合いをすることもあります。契約農家には土づくりから協力してもらい、安心で安全な野菜を仕入れているのです。


平野

なるほど。安定した品質の商品をお届けするために大変な努力があることが伺えますね。では、御社の主力商品である「ご飯がススム」キムチシリーズについてお聞かせください。


高橋

「ご飯がススム」キムチは2009年に発売されたのですが、それ以前キムチというと韓国製本格キムチの特徴である辛くて酸味が強いものが主流でした。そのため主に食べているのは男性で、晩酌のおともというイメージが強かったんです。そんなとき会社から「キムチでヒット商品を!」と集められたのが女性だけの若手を中心とした開発チームです。



漬物の常識を覆す若い従業員

平野

御社では社員の平均年齢がとても若いですね。


高橋

はい。ですから新入社員の中には、これまで食卓に漬物が並ぶことがなかった、という人も多く、だからこそ伝統的な漬物の常識を覆す発想が生まれるのかもしれません。「ご飯がススム」の開発の際は、ターゲットとして狙ったのが30代から50代のスーパーで買い物をする主婦です。なぜなら毎日のご飯の献立を考えるのも、スーパーで買い物をするのもほとんどが女性です。ですから若い主婦が「自分も家族にも食べさせたいキムチ」をコンセプトにしたほうが、ヒット商品につながるのでは?と考えたのです。そこで味も子どもからお年寄りまで食べやすく、日本人の主食であるご飯によく合う「あまから(甘辛)」味にしました。また、キムチをそのまま食べるだけでなく、料理にも使いやすい味になるようにしたのです。


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平野

現在御社のホームページには、キムチを使ったアレンジレシピがたくさん掲載されていますね。


高橋

あのレシピはすべて私達開発スタッフが考えて作ったものです。料理の写真も私達が調理したものを撮影しています。最近は人気料理サイト「クックパッド」にもピックルスコーポレーションのページを開設し、レシピを紹介しています。 商品開発の際こだわったのは味ばかりではありません。パッケージも核家族化や少子高齢化、単身化といった消費者の変化に合わせて、容量を食べきれるサイズに変更しました。これまでの主流だったのが300~400gくらいで正方形や丸形のものでしたが、冷蔵庫に入れて場所を取らないよう200gの少量でスリムサイズに変更。それにより手ごろな価格帯で展開できたこともよかったのかもしれません。



広告やパッケージは社内で制作

平野

CMではテノール歌手がオーケストラをバックに歌ったり、子どもを登場させた面白い内容だったり、またパッケージにかわいいイメージのキャラクターを採用したりと、これまでの伝統的な漬物のイメージとは異なる展開をされていますね。消費者との接点についてもいろいろとこだわりがあるのでしょうか?



高橋

弊社では広告やパッケージデザインなどは外部の広告代理店に頼まず、自社ですべて行っています。社内にデザイナーがいて、デザイナーは商品開発段階から関わり、出来上がるところまで知っているので、コンセプトからブレないデザインができるのだと思います。パッケージに描かれている「ススムくん」のキャラクターは、入社3年目の女性デザイナーが描いたものです。販促も販売企画がどんなキャンペーンをするかを考えて実施しています。


平野

なるほど。そうやってヒット商品が生まれたのですね。しかし、当時からするとかなり斬新なコンセプトだったと思いますが、すべてスムーズに進んだのでしょうか?


高橋

やっぱり最初社内プレゼンしたときは、営業部からも上司からも酷評されましたよ。でもそもそも狙っているターゲットは年配の男性ではなく、若い主婦層です。社内でも女性や若手社員からは評価が高かったですし、購買ターゲットからのアンケートなどの裏付けも示し、何とか発売にたどりついたんです。弊社では新しいことにチャレンジすることを推奨する社風があります。やらないで失敗するより、やってみて失敗したほうがいい。チャレンジして失敗したことについては咎められないのです。ですから新しい発想がどんどん出て、それが結果として消費者目線に合っていたということなのかもしれません。


後篇へ続く