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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >大川 朝子氏 Vol.1

今の私にここちよい旅を提案する『ことりっぷ』のブランディング 前編

大川 朝子氏 Vol.1 株式会社昭文社 ことりっぷ事業部ブランド推進グループ

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【大川 朝子氏のプロフィール】

株式会社昭文社 ことりっぷ事業部ブランド推進グループ
(株)昭文社へ入社後、ガイドブック編集、広報・プロモーション担当を経て、2014年よりことりっぷ事業部。『ことりっぷ』のブランディング全般を担当し、『ことりっぷ』のプロモーションおよび自治体・企業とのコラボレーションを企画する他、「地域観光アドバイザー」として地域に入り、地域の魅力を発見するとともに観光活性化をサポートも。



ターゲットを絞りこんだ『ことりっぷ』の創刊

岩本

『ことりっぷ』は20代から30代の旅好きの女性に絶大な支持を集めているガイドブックです。今回はことりっぷ事業部ブランド推進グループの大川朝子さんに『ことりっぷ』のブランディングについてお話を伺います。はじめに、どのような経緯で『ことりっぷ』を出版することになったのですか。


大川

『ことりっぷ』は2008年2月に創刊したのですが、その1年前、書店まわりをして消費者に一番近いところにいる営業部から「女性向けのガイドブックを作って欲しい」というオファーがきっかけです。そこで編集スタッフはターゲティングからしっかり固め、マーケティングもしながらコンセプトづくりをして作っていきました。 『ことりっぷ』を一言でいうと「旅好きな女性の声に応えた、働く女性が週末に行く旅を提案する」ガイドブックです。 創刊時は国内版のみ38点だったラインナップも今は国内・海外版含め112アイテム、累計発行部数も1400万部を超え、お陰様でガイドブックとしては異色のロングセラー商品になりました。


岩本

当時、大川さんは広報側で支援されていた?


大川

そうですね。完成品を見たときの衝撃は今でも忘れられないです。オファー元である書店担当の営業部の責任者のところに行って「これは絶対売れます!」と生意気にも言った覚えがあります。実際、弊社がこれまで出版したガイドブックの中でもコンセプトと特長が際立って明確でPRがとてもしやすかったです。「旅好きな女性の声にこたえた」ということはもとより『ことりっぷ』の大きな特長である「持ち運びに便利な“軽さ”」や「情報が厳選されている」ことを数字で示したりして、より男性の記者にも響くように伝えました。予想通りマスコミからの反響は絶大でした。


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『ことりっぷ』のペルソナと特長

岩本

『ことりっぷ』のペルソナを教えてください。


大川

ターゲットとしては28〜35歳の旅が好きな働く女性です。想定としては首都圏在住、平日は都内でしっかりきちんと働いていて、普段頑張っている分、リフレッシュ・癒しとして“旅”が関心ごとのひとつ。京都・沖縄、台湾・ハワイなどの海外旅行もひととおり経験し、「やっぱり日本っていいよね」と日本の良さに気付きはじめたような、自分の価値観が見えはじめ、経済的にも自立している女性です。


岩本

その「ペルソナ」はどういう旅をするのですか?


大川

『ことりっぷ』は働く女性に週末の旅を提案したガイドブックなのですが、そのコンセプトもしっかりしています。 週末1泊2日、または有給を1日付け足しての2泊3日の小さな旅で、現地を暮らすように、さんぽするようにゆっくりする。そして旅の終わる頃には癒され、すっきりリフレッシュして「明日から頑張ろう」と思ってもらうような旅を提案、誌面で展開しています。 車ではなく基本、電車などの交通機関で行って、2泊3日で一冊を使い切るような、小さなエリアを紹介することが多いです。


岩本

『ことりっぷ』には他のガイドブックにはない特長と細やかな仕掛けが色々ありそうですが。


大川

大きな特長は3つ。さきほど申し上げた「軽さ」と「ガイドブックとはわからない装丁」、そして「厳選された情報」です。 本のコンセプトを決めていく中で「今までのガイドブックにターゲットは満足しているのか?」と原点に立ち返りました。編集部内でもある程度仮説をたてましたが、実態調査をとして女性1000人にアンケートを行ったり、旅行ガイドブックを使う旅好きな女性に対面調査を行い、ニーズしっかり聞き取りました。そこで出てきた共通項は「既存のガイドブックでは大きい・重い」「本当に女性におすすめな情報はどれか?迷わないよう教えてほしい」「ガイドブックとわかる本は恥ずかしい」というもの。
その要望を大事にして『ことりっぷ』では形にしたのが、最大のヒットの要因かと思います。
形にするというのは、たとえば表紙は地域の産物をモチーフとした「大人かわいい着物柄」。特に帯を取ると手帳のようにも見えて、ガイドブックとはわからないようにしています。また掲載情報も女性におすすめのスポットのみを厳選、従来のガイドブックの1/4の紹介数にして選びやすくしました。
さらに、読者目線での工夫も様々にしています。たとえば表紙も中面も和紙のような紙質のものを採用、手触り感をよくしたほか、誌面には余白部分もとって「間」をとり、そこに鉛筆などで書き込んでもらえるようにしました。
その他色々ありますよ。僭越ながら「ことりっぷ好き」という方は今でも多いです。その理由は様々だと思いますが、上記のような特長や価値感がわかる人には自然に伝わっている。
もともと女性のためのガイドブックを目指して作り上げた『ことりっぷ』ですが、ターゲットのセグメントは「性別」だけではなく、「志向別」ではないかと感じています。実際若い男性読者の方にも『ことりっぷ』ファンは多いですし、男女年齢問わず愛用されています。


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等身大の旅が『ことりっぷ』のブランドコンセプト

岩本

『ことりっぷ』のブランドコンセプトを教えてください。


大川

本のコンセプトは「等身大の旅」。等身大の旅とは、あくまでもユーザーが主人公であり、旅の仕方もあくせくすることなく、経済的にも無理することなく、自分の旅ができるような提案です。
今まで本の話ばかりしてきましたが、ことりっぷは「ブランドビジネス」としても確立されています。20~30代の女性を呼びたい地域や販促したい企業とのコラボレーションがたくさん生まれているからです。次回はその辺もお伝えしたいです。


岩本

次回は、大川さんがブランドマネジメントで苦労されている点や、仕事をする上で活かした過去のご経験について、お話を伺っていきたいと思います。


後篇へ続く