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スペシャルインタビュー 未知の領域 “クラフトジン”を新たな柱に! 総出荷数13万本超「SETOUCHI DISTILLERY、クラフトジン瀬戸内のブランディング」とは? シュンビン株式会社 豊西 孝栄 氏

シュンビン株式会社/スタンダードトレーナー
京都府亀岡市出身。
滋賀大学経済学部卒業。
株式会社伊藤園でタリーズ等の缶コーヒー商品企画、カタリナマーケティングジャパン株式会社でアルコールメーカーのマーケティング支援を経て、2019年にシュンビン株式会社に入社。
ブランドコンサル課のリーダーとして基幹事業のブランディングを管掌。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでは「SETOUCHI DISTILLERY、クラフトジン瀬戸内のブランディング」で奨励賞受賞。
広島県呉市にある、1856年創業の老舗酒蔵「三宅本店」。
同酒蔵では、売上のほとんどを日本酒に依存していた状況に危機感を抱き、生き残りをかけて未知の領域である「クラフトジン」に着手。
生み出した「クラフトジン瀬戸内」は“新たな柱”として伸長しています。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDで奨励賞を受賞した事例「SETOUCHI DISTILLERY、クラフトジン瀬戸内のブランディング」について、ブランディングを担当したシュンビン株式会社の豊西孝栄氏にお話を伺いました。

危機感から“クラフトジン”に着手
本日は、2025年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」で奨励賞を受賞した事例「SETOUCHI DISTILLERY、クラフトジン瀬戸内のブランディング」についてお話をお伺いできればと思います。
はじめに、今回のブランディングの背景について教えてください。
「SETOUCHI DISTILLERY、クラフトジン瀬戸内のブランディング」は、広島県呉市にある1856年創業の老舗酒蔵「三宅本店」の後継者が衰退産業からの生き残りをかけ、「クラフトジン」を新たな売上の柱とすべく挑戦した事例です。
三宅本店様は売上のほとんどを日本酒に依存しており、創業当時からのブランド「千福」に支えられていました。

そんな中、そうした状況に危機感を抱いていた後継者の三宅清史取締役は、「今、変えなければ生き残れない」と若手主体の「ワクワク企画室」を創設して社内改革に着手されたのです。
そして社内意識を醸成するなど基礎となる土壌を確立したのち、新たな売上の柱を作るため、未知の領域だった“クラフトジン”に着手されました。
シュンビンと三宅本店様は10年以上前からお取引があり、今回、私が担当に変わったタイミングで一緒にゼロから考えるご決断をいただいた、という形です。

「瀬戸内の豊かな魅力を、世界へ」
ブランディングではどのようなゴールを目指したのでしょうか。
ゴールは2つあります。
まず定量的なゴールに掲げたのは、「第2の柱としてわかりやすい売上を作る」こと。
具体的には、クラフトジンで売上1億円を目指しています。
そして定性的なゴールは、「三宅本店で働く誇りや満足感を高め、外にも伝搬させる」ことです。
これらのゴールを目指すうえでのポイントは、プロジェクト開始時点から社員を巻き込んでいること。
社員の協力がなければプロジェクトは進められない設計を採用されたのです。

ブランディングで具体的に着手したことは、まずは“らしさ”を体現するため、海外のデザインアワードで受賞歴のあるシュンビン・アートディレクター/デザイナーの笠井を採用しました。
そして全体を統合する事業ブランド「SETOUCHI DISTILLERY」と商品ブランド「クラフトジン瀬戸内」を創り、3C分析を実施しました。
そこから抽出した強みは、地域資源の優位性、国内有数の柑橘の名産地であることなど。
一方、弱みは、直近で新規事業の成功体験がないこと、最後発であること、などでした。
そこで、市場機会の仮説を「自分の時間をゆったり過ごしたい人に向けて、瀬戸内の魅力を詰め込んだ商品・サービスを提供する」とし、ペルソナは「瀬戸内の雰囲気を持って帰りたい、周りに伝えたい観光客」と決めました。
なお、商品の機能的価値は、レモン・柑橘主体のジンであり、地域資源が持つ優位性を活用していること。
情緒的価値は、パッケージデザインからストーリー性を感じられる、味わいがダイレクトに伝わる作品のようなデザインです。
これらのことから、ブランド・アイデンティティは「瀬戸内の豊かな魅力を、世界へ」と決めました。

こうしたブランド・アイデンティティに基づくブランド要素ですが、まずシンボルマークは、瀬戸内海に浮かぶ島と海面にゆらぐ島の影をモチーフにしました。
そしてパッケージデザインは、書のロゴをメインに据えた王道感のあるデザインを採用することに決めました。

総出荷数13万本超を達成
ブランドの社会的価値について教えてください。
社会的価値としては、「企業としての責任」と「瀬戸内のフードロス問題の解決」が挙げられます。
「企業としての責任」は、1つめは衰退産業で生き残り、日本文化を守ること。
そして2つめは、地域経済を回す、地域としての誇りを守る、ということです。
また、もうひとつの社会的価値である「瀬戸内のフードロス課題の解決」については、傷で出荷できない瀬戸内産の甘夏を買い取り、第2弾として「クラフトジン瀬戸内 甘夏」を展開しています。
これは試験的に数量限定で始めた取り組みが定番化した形です。

肝心の商品であるクラフトジンは、広島駅近くのバーの監修のもと、試行錯誤を繰り返して柑橘の味わいが強く感じられる“BAR品質のクラフトジン”を完成させました。
そして、広島駅をはじめとするおみやげ店に導入したほか、ハードルを下げるためにミニボトルの販売も開始しています。

さらに、権威性の獲得のためにジンのコンペティションにも出品し、「クラフトジン瀬戸内 檸檬」は金賞を受賞することができました。
「日本タイポグラフィ年鑑2022」でも2部門で入選、「広島グッドデザイン賞」では奨励賞を受賞するなど、デザインアワードで高い評価を受けることができています。

ブランディングの成果について教えてください。
こうした取り組みによって、「クラフトジン瀬戸内」は2025年6月時点で総出荷数13万本超を達成。
広島のお土産の定番となりました。
今後は、ますますクラフトジン瀬戸内の売上比率を高めていくとともに、海外比率も上げていければと思っています。



