受講生の声|ブランド・マネージャー認定協会の実践事例とインタビュー

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スペシャルインタビュー フェスやイベントで経済活性化と企業認知度向上を実現! “企業主導型の地域ブランディング”とは? 株式会社オレンジフリー 代表取締役社長 蒲原 くみ 氏

株式会社オレンジフリー 代表取締役社長 蒲原 くみ 氏
プロフィール
株式会社オレンジフリー 代表取締役社長
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 マスタートレーナー

ブランディングデザイナーとして入社後、企業コンテンツ制作に携わり、NIKKEI NET広告賞、企業ウェブ・グランプリ等を受賞。
2019年 ブランディング事例コンテスト 大賞&中小企業庁長官賞 W受賞。
2015年 ブランディング事例コンテスト大賞受賞。
「企業のデザインは、戦略と一体で設計し、その企業ならではの価値を可視化すること」と考え、経営戦略と連動したブランド戦略・マーケティング戦略の策定から、独自性・価値を伝えるデザインまで一貫して手がける。
企業のリブランディング、BtoB企業のBtoCへの展開、ブランドの立ち上げ・強化、インターナルブランディング、採用ブランディングなど、プロジェクトの指揮を取り多様な案件を成功させてきた。
ブランディングの知見を知りたいとの依頼も多く、企業・大学・商工会議所・各種協会など幅広い場で、講演・セミナー・授業を行っている。
2025年度の「BRAND MANAGEMENT AWARD」で農商工連携審査員特別賞受賞。
インターナルブランディング部門 奨励賞 受賞。

瀬戸内海に面した香川県さぬき市・津田町。
「津田の松原」で知られる美しい海辺の町ですが、過疎地域への指定や海洋汚染、魚食離れなど大きな課題を抱えていました。
こうした地域の現状に向き合い、海と魚食文化を守る活動に乗り出したのが、地元の水産加工会社・株式会社安岐水産です。
同社から相談を受けた株式会社オレンジフリーは、企業のブランディングと地域のブランディングを重ね合わせる「企業主導型の地域ブランディング」という戦略を描き、その実践を支援。
安岐水産とともに取り組みを推進し、さまざまな成果へとつなげてきました。
2025年度の「BRAND MANAGEMENT AWARD」で農商工連携審査員特別賞を受賞した事例「過疎地域に指定された海の町で 企業主導型の地域ブランディング」について、戦略設計から実践支援までブランディングを担当したオレンジフリー代表の蒲原くみ氏にお話を伺いました。

地域と地元企業は“運命共同体”

本日は、2025年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」で農商工連携審査員特別賞を受賞した事例「過疎地域に指定された海の町で 企業主導型の地域ブランディング」についてお話をお伺いできればと思います。
はじめに、今回のブランディングの背景について教えてください。

「過疎地域に指定された海の町で 企業主導型の地域ブランディング」は、香川県さぬき市津田町を舞台に、地元の水産加工会社・安岐水産が中心となって進めた地域ブランディングの事例です。
水産業で成り立ってきた津田町は、3つの大きな課題を抱えていました。
1つめは、人口減少と高齢化が著しく、2021年に過疎地域に指定されたこと。
2つめは、瀬戸内海の海洋汚染。そして3つめが、日本の魚食文化の衰退でした。

こうした現状に誰よりも心を痛めていたのが、地元の水産加工会社である株式会社安岐水産の3代目社長、安岐麗子さんでした。
「安岐水産はこの町に育ててもらった。だからこそ、もう一度、町に賑わいを取り戻したい」。そんな地域への恩返しの思いから、安岐社長は社員とともに「お魚生活すすめ隊」を結成し、ビーチクリーンやお魚捌き教室など、海と魚食文化を守る活動を始めました。
また、自らが発起人となり、「さぬき市津田地区漁業活性化協議会」も立ち上げました。
しかし、思いはあっても、個々の活動をどのようにつなぎ、地域や企業の価値向上へと発展させていけばよいのか、その道筋が見えにくい状況でした。
そこで、「力を貸してほしい」とオレンジフリーにご相談があったのです。

ブランディングでは、どのようなことから着手されたのでしょうか。

ご相談を受けて、まず私たちが捉え直したのは、「地域と地元企業は運命共同体」ということです。
地域が衰退すれば、企業の活力も失われます。
つまり、企業が持続的に成長していくためにも、地域の活性化は欠かせません。
そこで、企業ブランドが地域を照らし、地域ブランドが企業を押し上げる、そんな相関関係をブランディングでつくれないだろうかと考えました。
そして、安岐水産と津田町のブランディングを重ね合わせ、一体として推進する“企業主導型の地域ブランディング”を提案しました。

はじめに取り組んだのは、安岐水産のリブランディングです。
BtoBを中心としてきた企業ブランドを、生活者にも価値が伝わり、共感されるブランドへと再構築しました。
企業の強みや意志をBtoBの世界に閉じ込めず、BtoCへと接点を広げることで、海や魚食文化を守る活動に生活者を巻き込んでいこうと考えたのです。

海を守ることも、魚食文化を次世代へつなぐことも、企業や漁業者だけでは成し得ない。
生活者一人ひとりの意識が変わってこそ、未来が変わるのだと思ったからです。
そして、BtoB企業であっても、社会にどのような姿勢で貢献しているのかを示すことは、社員の誇りを生み、採用力を高め、結果として企業価値を上げていくことにつながると考えました。

そこで、全社員向けにブランディングセミナーを行ってブランドの重要性をレクチャーし、幹部でチームブランディングに取り組みました。
その中で導き出したブランド・アイデンティティは、安岐水産が届けたいのは日本の魚食文化を楽しむ心豊かな暮らしであることから、「瀬戸内から贈る、ひとクラス上のお魚生活」としました。
ブランド・ビジョンは、「いのちの海。未来へ。」安岐水産は「生命のゆりかご、海を守る企業」として記憶される存在を目指しました。

このブランド・ビジョンを軸に企業ロゴを刷新。
シンボルマークは、泳ぐ魚と瀬戸内海に浮かぶ島々を組み合わせたデザインで、右上に配した小さな島には、海の豊かさを未来へつないでいくという思いが込められています。

名刺やレターヘッド、ウェブサイト、会社案内など、あらゆるタッチポイントを刷新し、一貫したブランドイメージを構築していきました。

人を惹きつける“シンボル”でファンタジーとリアルをつなぐ

地域ブランディングでは、具体的にどのようなことに着手したのか教えてください。

地域ブランディングを企業が推進するには、人々の心に届く「見える活動」が必要です。
安岐水産が地道に続けてきた海と魚食文化を守る「お魚生活すすめ隊」の活動を、ブランディングによって人を巻き込む力に変えたいと思いました。
まず3C分析を行ったところ、「海洋汚染への関心はあるが行動に移せないギャップ」「魚食文化を守るための具体策の不足」という2つの課題が浮き彫りになりました。
そこで、生活者が“最初の一歩を踏み出せる場づくり”と、“ファミリーで参加できるお魚体験”が未来の魚食文化を支える鍵になるのでは、と考えました。
「お魚生活すすめ隊」の活動を特別な体験コンテンツに再編集すれば生活者を惹きつけられるのではないか。
体験コンテンツがあれば行政、企業、団体との共創も進み、交流人口の増加と地域活性化につながるのではないか、と考えたのです。

お魚捌き体験、ビーチクリーン、バーベキューなど、「体験」を軸に活動の全体像を描いていきました。

体験には課題もありました。
海を守る活動に誘っても「いいことだと思うけど……私にできるかなあ」となかなか参加してもらえず、社員も悩んでいたんです。

これは理屈で説得できる話ではない。
人の心を磁石のように惹きつける魅力的な世界観、「シンボル」の力が必要なのではないかと考えました。

そうして生まれたのが、海の環境ファンタジー絵本「ねこ海レストラン」です。
舞台は津田の浜辺。
二本足で歩く不思議なねこの“ちゅみ”と、東京から来た幼い姉弟との出会いから物語が始まります。
美しい瀬戸内ブルーの海や津田の松原に実際にある御神木、神社など、地元の風景を織り込み、訪れたくなる津田町を描きました。
そして、絵本の中に現実の海ごみ問題を登場させることで、ファンタジーとリアルをつなぎ、楽しさの中から環境への気づきが生まれる仕掛けにしました。
絵本の企画と物語の執筆は弊社会長でありグランド・マスタートレーナーの吉田ともこが担当しています。

世界観の鍵を握るのは、ビジュアル。
特に重要だったのが、主人公“ちゅみ”のキャラクターです。

思い浮かべるたびに懐かしく優しい気持ちになれる“ちゅみ”と、「ねこ海レストラン」の物語を宝物のように大切に描いてくださる方を探し続けました。
そうして出会ったのが、挿絵を担当してくださった絵本作家の菅野由貴子さんです。
物語を先に共有していた社員たちも、菅野さんが描いた“ちゅみ”を初めて目にしたとき、「そう、この子!」と大喜び。思い描いていた世界観が、そのまま目の前に現れた瞬間でした。

そして次に、この世界観を現実世界に実装しました。
社屋裏のコンテナショップをまるごと「ねこ海レストラン」にリノベーションし、ファンタジーとリアルがつながる場所をつくりました。
ウェルカムボードや「海を愛するきもちでつながろう」と書いたフォトスポットを設置。

店舗の売り上げの一部を海を守る活動に寄付することにしました。

こうして「絵本」と「店舗」、「お魚生活すすめ隊」などのブランド体験を連動させていったのです。

フェスで最高2200人を動員

ブランディングの成果について教えてください。

安岐水産、さぬき市、津田漁協、漁師、地元事業者、地域住民と共創した「津田港わくわくフェスティバル」はこれまで6回開催し、最高2200人を動員しました。
これは津田町の人口の約2.4人に1人が来場する規模感で、町外からも多くの人が訪れるイベントになりました。


イベントにはたくさんのキッチンカーが並び、買う人、食べる人、語り合う人で会場が賑わう。
その光景を目のあたりにして、交流で地域の経済が動き出すことを実感しました。
頻回に行っていた「お魚生活すすめ隊」の体験イベントも交流人口を着実に拡大させ、安岐水産の認知度も企業価値も向上しました。
「ディスカバー農山漁村の宝 奨励賞」や「将来世代応援企業賞」などを受賞し、各メディアの取材も相次ぐようになりました。

小さな飲食店などが点在する「ウラツダ」エリアなど、新たな賑わいも生まれています。

成果につながった要因としては、安岐社長と社員の価値観共有と行動力、「お魚生活すすめ隊」の継続的な活動、「ねこ海レストラン」による新しい世界観の提示、地域との共創、ブランド認知を広げるSNSでの継続的な発信などが挙げられます。
どれか一つが成果を生んだのではなく、これらを一つのブランド戦略のもとでつなぎ、継続してきた総合力こそが、今回の成果につながったと考えています。

企業から地域を動かす、新しい地方創生のカタチへ

最後に、今回の取り組みを通して感じたこと、今後の展望について教えてください。

今回の取り組みを通じて、改めて感じたのは、地域と企業は切り離して考えられないということです。
地域が元気になれば、そこに人が集まり、交流が生まれ、地元企業の価値も高まっていく。
一方で、地域を動かす力を持っているのも、そこで長年事業を続けてきた企業です。
強い地域をつくるためには、地元企業が先頭に立つことが、変化を生み出す最も確かな方法の一つだと実感しました。
地域に根ざして事業を続けてきた企業には、信頼やネットワーク、そして何より実行力があります。
ブランディングによって企業の価値と地域の価値を重ね合わせ、企業が起点となって人を巻き込み、地域を動かしていく。
私が「企業主導型の地域ブランディング」と呼んでいるのは、そんな新しい地方創生のあり方です。
過疎地域に指定された津田町にも、実際に人の流れと賑わいが生まれました。
「もう一度この町に活気を取り戻したい」。
そんな思いを持つ地域こそ、地元企業の力が必要なのです。
ブランディングによって、企業と地域、双方の価値を高める道筋を描くーこの手法はどの地域においても実現可能だと思います。

※掲載の記事は2026年9月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。
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