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スペシャルインタビュー 高校×大学の共創型ブランドモデルを設計 投票率日本一を目指す「投票デビューおかやま2025」の取り組みとは? 株式会社ファーストデコ 代表取締役 扇野 睦巳氏

IPU環太平洋大学 特任准教授
株式会社ファーストデコ 代表取締役
シニアトレーナー
岡山市出身。
中央大学大学院(MBA)修了。
社会課題解決型ブランド構築に取り組む。
ブランディング事例コンテスト大賞や中小企業庁長官賞、SDGs審査員特別賞など多数受賞。
2021年よりIPU環太平洋大学でブランド戦略論を担当し、野生鳥獣の利活用「IPUジビエ」やベトナム異文化交流「IPUカルチャー」など学生主体の実践型プロジェクトを推進。
理論と実践、パーパスと内面化(腹落ち)をつなぐ「統合型実践知」を研究の柱とする。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでは「岡山市から始める岡山県投票率日本一プロジェクト 高校生と大学生が投票で描く岡山の未来『投票デビューおかやま2025』」で初の高大連携の取組としてSDGs審査員特別賞を受賞。
実は都道府県別投票率で“全国ワーストクラス”の岡山県。
そんな中、「ブランディングで投票率をどうにかしたい」という学生の声をきっかけに、IPU環太平洋大学によるプロジェクト「投票デビューおかやま2025」がスタート。
大学生と高校生の共創型ブランドモデルを設計し、ワークショップやInstagramでのアプローチ、政策コンテストへの参加など数々の取り組みを行いました。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでSDGs審査員特別賞を受賞した事例「岡山市から始める岡山県投票率日本一プロジェクト 高校生と大学生が投票で描く岡山の未来『投票デビューおかやま2025』」について、IPU環太平洋大学特任准教授で株式会社ファーストデコ代表取締役の扇野睦巳氏にお話を伺いました。

学生の一言をきっかけにブランディングがスタート
本日は、2025年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」でSDGs審査員特別賞を受賞した事例「投票デビューおかやま2025」についてお話をお伺いできればと思います。
はじめに、今回のブランディングの背景について教えてください。
「投票デビューおかやま2025」は、投票という行動変容が起こりにくいテーマを、ブランド構築の手法を用いて“参加したくなる体験”へと転換した実践的プロジェクトです。
このプロジェクトが始まったきっかけは、学生からの「ブランディングで投票率をどうにかできませんか?」という一言でした。
いまは、よく「若者の投票率が低い、政治に興味がない」と言われています。
そこで、まず私たちは学生52名を対象に「岡山県の投票率と都道府県別の順位を知っているか?」というアンケートを取りました。
結果は、なんと96%の学生が「知らない」と答えたのです。
つまり、「無関心」ではなく「知らない」ことが課題だったわけです。

そこでパーパスを「若者が政治参加の主役になる」と決め、ビジョンに 「投票率日本一の岡山」 を掲げて、共感する仲間づくりから取り組みをスタートしました。

どのようにブランディングを進めていったのか教えてください。
本来であれば大学生を主なターゲットとしたいところでしたが、岡山県内の大学生の約6割は県外出身であり、その多くは住民票を移していません。
選挙権が地元にないため、県内での投票率向上の取り組みには参加しづらい現状がありました。
そこで、岡山市に住民票がある「岡山市の高校生」に着目。
県内でも特に投票率が低い岡山市を起点に、高校生と「岡山県投票率日本一」を目指すことに決めました。

次にしたことは、AIによるペルソナの生成です。
若者のリアリティを捉えるため、AIを使って「翔太」「美咲」という2人のペルソナを生成しました。
「翔太」はサッカー部の高校3年生で、説教っぽい話や強制されること、堅苦しい空気が苦手というキャラクター。
「美咲」は両親と妹がいる高校3年生で、一方的に押しつけられることや堅苦しい説明、怖い大人の言い方、政治の対立的なニュースが嫌いで、みんなと一緒に参加できる雰囲気を好むキャラクターです。
この感情がブランド設計の核心で、彼らの価値観を基点に、若者が政治を“自分ゴト化”できるように、高校と大学がタッグを組んだ共創型ブランドモデルを設計していきました。


ブランド・アイデンティティは、若者が社会の主役になるために「高校生と一緒につくる私たちのまちの未来」とし、若者が社会の主役となるブランド像を明確化しました。

ロゴマークは、岡山県の形をモチーフに、人とまちが一体化するデザインをAIで制作。
ブランドカラーは多様性と参加を象徴するマルチカラーにし、タグラインは「その1票が、若者の未来をつくる。」と決めました。


高校と連携してワークショップに挑戦
ほかにブランディングで手掛けたことを教えてください。
ゼミメンバーで話し合い、高校生と一緒に「理想の政党づくり」のワークショップに挑戦しようと決めました。
環太平洋大学と岡山県立東岡山工業高等学校(東岡工)とが連携し、「Project Based Learning(PBL)型」での授業を実施。
高校の授業では、6チームに分かれて「まちを良くするための理想の政党」を考えるワークショップに挑戦しました。
司会やファシリテーションは大学生が担当し、一方的に教えるのではなく、楽しく一緒に考える時間をデザインすることを意識しました。
結果的に、投票率を上げる、ということではなく、未来を一緒に作るPBL型授業として、地域の社会課題解決を実践的に学ぶことができたと思います。

この模様は、地元の新聞やテレビニュースでも紹介されました。


このほか、現代経営学科のInstagramで、「投票に行こう」という言葉は使わずに、投票率の可視化を通じた気づきを促すリール広告を、県内の18歳に絞って配信しました。
配信期間は7月19日~20日の2日間で、広告費用は20ドルほどでしたが、5000回近く再生されるなど大きな波及効果を生みました。

なお、20日に投開票が行われた参議院選挙では、政治への関心が全国的に高まったこともあり、岡山県の投票率は約7ポイント上がっています。
また、10代の投票率は参議院選挙では過去最高の42%を記録しました。


高校と大学の合同チームで理事長賞を獲得
活動を広げるための取り組みや、今後の展望について教えてください。
土台づくりを経て、2025年8月からは拡張フェーズに入りました。
ここでは、岡山青年会議所主催の「おかやまのまち政策アイデア甲子園」に挑戦しました。
大学生チームの中で唯一、高校と大学の合同チームでのぞみ、動物愛護をテーマにした政策が高く評価され、理事長賞を受賞したんです。
また、岡山市長選でも、投票率を可視化したチラシを岡山市内の高校へ持参し、生徒との対話を通じて投票文化の醸成に取り組みました。

今後は、国政選挙6回連続1位の山形県をモデルに、家族ぐるみで投票に行くという文化を作りながら、「教育×民主主義×ブランディング」の新しい形として岡山から広げていこうと思っています。
“投票”は義務ではなく、未来をデザインする行為です。
その価値を若者自身が発信、体験し、広げていく……これこそが、ブランド構築の力で社会課題に挑む新しいモデルだと考えています。

掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。


