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スペシャルインタビュー 3つのユニークなコミュニケーション戦略で認知獲得!ブランディングの力で“倒産寸前の建設会社”から“地域に愛される企業”へ 株式会社コムデザインラボ 高木 純

株式会社コムデザインラボ 代表取締役
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会1級資格取得者
ブランディングを軸に、空間の設計デザインからロゴマーク印刷物・ホームページなど、自社完結でデザインする“合わせ技一本のデザイン事務所”として活動。
BRAND MANEGEMENT AWARD2024では「幻の柑橘へべす」で大賞、BRAND MANAGER OF THE YEAR 2024を受賞。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでは準大賞・優秀賞を受賞。
創業90年を超える新潟県の老舗建設会社・田中組。
10数年前は、売り上げの倍を超える数十億の負債を抱えて倒産の危機に瀕していましたが、ユニークな戦略を次々と展開。現在は売り上げは10%増、平均年齢は5歳以上若返るなどの成果が生まれています。
2025年度のBRAND MANAGEMENT AWARDで準大賞と優秀賞を受賞した「新潟の企業グループ『ファムらいふ』と建設会社『田中組』のブランディング」について、ブランディングを担当した株式会社コムデザインラボの高木純氏にお話を伺いました。

ブランディングで“3つの課題”解決へ
本日は、2025年度「BRAND MANAGEMENT AWARD」で準大賞、優秀賞を受賞したブランディング事例「新潟の企業グループ『ファムらいふ』と建設会社『田中組』のブランディング」についてお話をお伺いできればと思います。
はじめに、今回のブランディングの背景について教えてください。
「新潟の企業グループ『ファムらいふ』と建設会社『田中組』のブランディング」は、倒産寸前だった建設会社が地域に愛される企業になるまでのブランディング事例です。
まず田中組について簡単にご説明すると、宮大工にルーツ持つ新潟県の建設会社です。
建設会社としての仕事は公共事業がメインで、建設事業を中心に介護、不動産事業の関連会社も持ち、地域に根付いた企業を目指してきました。
ただ、10数年前は売り上げの倍以上の数十億の負債を抱え、倒産寸前の危機に陥っていたのです。
そんな中、現在の代表である田中康太郎氏が家業の危機を救うべく大手建設会社を退社して新潟に戻り、代表に就任しました。
田中氏は、倒産寸前だった会社の再生に取り組みながら、社内改革の一手としてブランディングを検討しており、我々がご相談をいただいた、というのが今回のブランディングの背景です。

ブランディングでどのようなゴールを目指したのでしょうか。
田中組には3つの課題がありました。
まず1つ目は、建設、介護、不動産の3社の統率が取れていなかったことです。
バラバラな3つの会社をどう束ねていくべきか、打開策が見つかっていませんでした。

2つ目は、官公庁の仕事が9割ということです。
不確実な入札工事に依存しており安定的な売り上げ獲得が困難な状況でした。

そして3つ目は、採用についてです。
40名規模だった従業員の平均年齢は50.3歳で、20代は社長も含めて2人のみでした。
また、女性も1割未満と少なく、まったく採用ができていない状況でした。

そこで、これら3つの課題を解決すべく、2015年にブランディングに着手しました。
ご相談いただいた当初から田中社長が一貫して目指したのは「建設業をサービス業に変えたい!」ということでした。
そこで、まずは市場機会を探り、本来の地元の建設会社のあるべき姿とは、身近にいて信頼されるべき存在ではないか……という仮説を立て、地方の建設会社として求められている企業の姿を模索していきました。
社内総選挙を実施しブランディングを浸透
どのようにブランディングを進めていったのか教えてください。
まず初めに取り組んだのは、内部の意識改革です。
建設、介護、不動産という業種が違うメンバーをどう結びつけるかを考え、関連企業の全員を同じベクトルに向かわせるため、ホールディングス名を決める“社内総選挙”を提案しました。
代表から新卒社員まで1人残らず、自分の会社のグループ名とそのグループ名にした理由を提出してもらったんです。
社内総選挙を実施することで、ブランディングの意味を1人残らず浸透させようと考えました。

そして、全社員から集めた投票用紙のすべてに目を通し、「家族のようなおつきあい。LIKE A FAMILY HEART」というブランド・アイデンティティを導き出したのです。

このブランド・アイデンティティから、建設、介護、不動産のホールディングス名を「ファムらいふ」グループと命名しました。

さらに、「ファムらいふ」の前後の文字を取って、ふふふっとほほ笑むキャッチーなかりんのキャラクター「ふふ丸」も作りました。

この「ふふ丸」には、社内総選挙で掘り起こした、田中家の庭に生えていたかりんの木にまつわる家族愛のエピソードを落とし込んでいます。
こうして、バラバラだった3つの業種を「家族愛」というキーワードで束ね、グループとしての一体感を生みだしました。

具体的にブランディングで取り組まれたことを教えてください。
当初から掲げていた「建設業をサービス業に変える」をヒントに、3つの業種を束ねて「トータル建設サービス業」という独自のポジションを目指しました。
コミュニケーション戦略では、家族のような関係性を築くことを目指すため、「非営利、営業しない、宣伝しない」という、大手には決して真似できない非常識な戦略を立てたことが特徴です。
そして「家族のようなお付き合い」を浸透させるべく、3つのユニークな戦略を実践しました。
まず、1つ目の「ふふ丸看板戦略」は、信頼関係を築いた地主さんに許可をいただいて看板を設置するというもので、設置した数は350カ所を超えて大手企業にも負けない局地的な知名度を新潟で獲得できました。
なお、看板には宣伝文句は一切書いてありません。

また、2つ目の「社内ブログ戦略」では、社内ブログの更新本数が9530本を突破。
社長や役員、新卒スタッフ全員で取り組み、顧客との関係性はもちろん、社内のコミュニケーションも円滑になりました。

そして3つ目が「絵本戦略」で、広告要素を排除したオリジナルの絵本「ふふまるふふふ」を作成し、新潟市内の保育園など100施設に無料配布したのです。
絵本は家族愛を感じるオリジナルストーリーで、読み聞かせによる長期的な認知獲得の効果を狙いました。

当初は、「直接営業しない」という戦略に対して社内からの反発もありましたが、全社員に配られる経営計画書を通じて、ストーリーが大切なことや理念を発信し続けることの価値について説明し、社内理解を深めていきました。
売り上げは10%増、平均年齢は5歳以上若返り
ブランディングの成果について教えてください。
田中組は、以前は公共事業中心で民間の仕事が1割程度でしたが、ブランディング後は官:民の売り上げの割合が逆転し、安定した売上構成に変わりました。


一例を挙げると、配布した絵本をきっかけに保育園の改修工事を受注し、完成後は子供たちから感謝状を渡してもらうなど、地域との関係性も生まれています。
また、企業説明会では立ち見が出るほど盛況で、新卒社員は毎年3名ずつ入社するようになったことも大きな変化です。
従業員は60名を超え、平均年齢は5歳以上若返り、20代の従業員も7倍になりました。
女性就業率は業界平均を大きく上回る42.1%になっています。



そして、直接営業しない戦略を取ったにも関わらず、2020年以降は常に売上高20億を超え、当初から約10%の売り上げ増になりました。


今後も、「ファムらいふ」グループと田中組は「家族のような関係性」を実現させ、新潟の人々に必要不可欠な企業となることを目指していきたいと考えています。

掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。
